してんのっ! ~魔王軍四天王のお仕事はアイドル活動~ 作:ぶしゅくろ
「平和ですね~」
「そだね~」
四天王たちは執務室でのんびりだらりとテーブルに突っ伏していた。
最近は、戦闘前の
「最近、リアージュ王国との戦闘が起きてないらしいですわ。何もしてこないので、ほとんど休戦状態に近いんだとか」
「あのとき、勇者と大賢者のおっちゃんボコったから動かれへんのちゃうん?」
「それもあるのかもしれませんが……」
休戦するならそれで全然構わないのだが……。平和が一番! とユーフィはのん気に話を聞いていた。
一度、のんびりとリアージュの街を観光してみたい。なにしろ、あっちで知ってる場所は王城の中だけなのだ。
城の中しか知らないとか、箱入りのお姫様かな?
「失礼します」
のんびりムードの執務室に、ピシッとした空気をまとったユウさんが入ってきた。
有能マネージャーの登場に、何かお仕事が入ったのかな? とユーフィたちは体を起こす。
「ご歓談中、申し訳ございません。皆様に見て頂きたいものがあります」
見せたいものがあるというユウさんは、テーブルの上に水晶玉みたいな装置を置いた。ユーフィが勝手に『DVD球』と呼んでいる録画再生装置だった。
――何かいい感じの魔法で、映像を保存できる優れもののやつである。映像の綺麗さや大きさは魔石の大きさに比例するので、両手で持つようなこれは結構いいやつなのだ。
みんなで、何が映っているのか覗き込む――。
「これって……」
ユウさんが見せてくれた映像。そこには四人の美少女たちが歌って踊る姿が映っていた。
大勢の観客が熱狂し、ステージ上の四人と一緒に跳んだり声を出したりしながら一体となっている会場。
――まるで四天王のライブのようだ。
映像を見ていたユーフィは、あることに気づき、「ん?」と声を上げた。
ん~? なんか見覚えある人がいるような……。いや、気のせいか?
まさかそんなはずはないだろう……。幻術か? 幻術なのか? いや幻術じゃない、とユーフィは混乱した。
どうやら、それは他の三人も同じようで、三人とも複雑な表情をしている。
そんなこちらの混乱をよそに、いつの間にか映像のなかでは曲が終わり、大きな歓声が上がっている。
どうやら、最初の曲が終わったので、一人ずつ来てくれた観客たちへ声をかけていくようだ――。
――「はぁ~い♡ ざこざこお兄さんたちぃ~、今日も元気に跳びはねてるぅ~?」
――『うおおおおお! ピーチちゃあああん! 罵ってくれええええええ!』
――「きゃっ☆ きんも~♡」
「「「「……」」」」」
桃色の髪をなびかせながら、挑発するような表情で観客たちへ呼びかける蠱惑的な少女――。
この子、ピーチちゃんっていうらしいけど、なんだか初めて見た気がしないよ。不思議だね。
「……このピーチって子、どう見てもビッチィちゃんだよね」
「ですね」「ですわ」「せやな」
皆が思っていたことを代表してロザリーが口にした。
どっからどう見ても、かつての同僚――ユーフィにとっては
魔族側の者が何やっているのか、いろいろと大丈夫なのか、と疑問は尽きないが、これも自由気ままな彼女らしいといえば彼女らしい。かつてのトップアイドルであるビッチィが中心となれば、人気が出るのも納得だった。
お次は、なんかシスターさんが
お、新キャラが出てきたぞ、とユーフィは注目した。新キャラ言うな。
さらさら黒髪ロングストレートの清楚系お姉さん枠で、えちえち枠のピーチちゃんとは対照的である。
――「今日も世界が平和でありますように。みなさま、一緒に祈りましょう!」
――『うおおおおおおお! シャロンちゃあああん! お赦しくださあああい!』
――「ああっ! このような格好で踊る私を、お赦しください!」
「え、なになに? あやしい宗教かなにかなの?」
「いえ、彼女は教会のシスターだそうです。普段は静かにお祈りをしているので、そのギャップが人気だとか」
シャロンと呼ばれている子のコールアンドレスポンスに驚いたロザリーにユウさんが補足する。
ほう、清楚系シスターのアイドルですか……、たいしたものですね。
ユーフィは前世のゲームで、清楚なシスターなのになぜかすごいえっちなキャラがお気に入りだったので、ひそかにテンションが上がった。
それにしてもこのシスター、ノリノリである。やはり
続いての子は、茶色の髪をパンを模した髪留めでポニーテールにまとめていた。
まちがいなく美少女なのだが、前の二人のインパクトに比べると普通の子といった印象を受ける。
――「み、みなさぁ〜ん! パン食べてますかぁ〜!?」
――『うおおおおおおおおお! コロネちゃ〜ん! コロネ一つくださいなああああ!』
――「わ、わたしはパンじゃないですよぉ~!」
「こ、今度はなんでパンなんですの?」
「この方は、街のパン屋さんの一人娘で看板娘だったようです。しかも、勇者の幼なじみでもあります」
「へえ~、あの兄ちゃん、こんなかわいい幼なじみおるのに誘拐なんかしたんか」
――そう言えばあの勇者って『童貞』って名前らしい。ヤバすぎでしょ。聞いた時は思わず笑っちゃったけど、流石にちょっとかわいそうかも。
ユーフィは、話のなかに勇者という単語が出てきたので、彼の名前を聞いた時の衝撃を思い出していた。
ちなみに勇者の名前は『ドウティー』なのでユーフィの聞き間違いである。童貞なのは間違っていないが。
でもあいつイケメンだし陽キャだし絶対童貞じゃないわ。しかも、こんなかわいい子が幼なじみだと?
こんなん絶対「今日はアイドル衣装でやってよ(笑)」とか言ってるぞ! 許せねえ! 今度会ったら絶対ブン殴ってやる――、とユーフィは決意した。
すまんな勇者、ボクはお前を殴らなあかん! 殴らな気がすまんのや!
ユーフィが勝手な妄想から勇者を『絶対許さんリスト』に登録していると、映像では最後の子が観客へ語りかけていた。
その人物は、ユーフィにとって、よく知っている人だった。
――「みんな~! 今日は私たちのライブに来てくれてありがと~!」
――『うおおおおおお! 姫様ああああああ! 結婚式まだですかあああああ!』
――「もうちょっと待ってね~!」
「うわっ、この子すっごくかわいい」
「ですわね。てっきりビッチィが中心のグループかと思っていましたが、これは……」
「なんつーか、この子は頭一つ抜けとるな。歳はユーフィと同じくらいか?」
クラリス姫を見た三人が驚きの声をあげる。
前からクラリス姫のことを知っていたユーフィは、まさにアイドルをデビュー前から知っていたということで後方腕組み彼氏面をしていた。
「ユーフィ様はご存じですね。彼女こそリアージュ王国の王女、クラリス姫です。この『クラルテ』も彼女の一声で結成されたとのことです」
「『クラルテ』?」
初めて出てきた単語にハテナマークを浮かべるユーフィ。
すぐにユウさんが補足説明をしてくれた。
「この四人のグループ名です。『輝き』や『透明』といった意味を持つ言葉のようですね」
ほえ~かっこいい。なかなか小洒落たネーミングじゃないか。
ユーフィは前世で『外国のかっこいい言葉』とか好きで調べていた時期があったのだ。
ドイツ語とかかっこいいからね。はあぁっ! クーゲル……シュライバアァァアァー! みたいな。ボールペンだけど。
「……なんか嬉しそうだねユーフィちゃん」
「うぇっ!? そ、そんなことないですよー」
「ふーん……」
ジト目ロザリーちゃんに突っ込まれてしまった。
厨二的な黒歴史に気づかれないように慌ててごまかす。
多分そういうことじゃないのだが、ぽんこつなので気づけない。また首輪ゲージが高まってきたな……。
しばらく、みんなでクラルテのライブに見入っていると、「まだオータク国として応じるかは検討中ですが――」と前置きし、ユウさんは衝撃的な言葉を口にした。
「四天王の皆様に宛てて、リアージュ王国の王女クラリス姫から『クラルテのライブ招待券』が届いております――」