萌え声人類種の天敵系ロリっ娘リコリス vs 俺たちのちさたき vs ダークライ   作:ごまぬん。

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タイトル回収の時間だああああドコドコドコ



Savage lightning bolt(4/n)

「ふん、ふん、ふん、ふーん♪」

 

 赤銀の髪のリコリス、星谷ニコルが歩いている。

 場所は建設中の12階建て高層マンションの屋上。建設中とは言っても、外観に限れば完成は間近であり、後は工事用クレーンの撤去と内装の調整を残すのみとなっている。

 

 とはいえ、そのマンションが完成することは当分無い。

 ここは国防機密組織DAが保有するれっきとした資産であり、『工事計画が一時凍結された無人のマンション』というカバーストーリーの下、あらゆる目的に利用されるからだ。

 

 そして今回は、そのヘリポート付きの広い屋上に、ある『物体』が運び込まれていた。

 工事用クレーンに混じって鎮座する、暗緑色の防風雨シートに包まれた『物体』。

 

「んしょ、っと」

 

 少女は『物体』に取りつくと、そこに掛けられたヴェールをいそいそと引き剥がしていく。

 小柄故にその作業には結構な苦労があったものの、すべてを終えて『物体』の全容が顕になった瞬間、ニコルは感嘆の声を挙げた。

 

「わぁ……!!」

 

 ─────それは、長大で、奇妙で、異様な、強化合金とカーボン・フレームの塊だった。

 全長およそ3.8mの角柱状の基礎構造体(メイン・フレーム)。自動車のシートめいた銃座。上面に立ち並ぶ排熱フィン。

 随所から伸びるケーブルは軟質金属でコーティングされており、そのうち何本かは濃灰色の冷蔵庫のような燃料電池へと接続されている。

 

「かっこいいっ!」

 

 ニコルは意気揚々と銃座に乗り込み、電源を起動してOSの立ち上がりを待った。

 騒々しい駆動音と共に、各種配線がオンラインに。やがて銃座に設けられたメインモニターの中央に、飾り気の無いゴシック体の文字が浮かび上がった。

 

「ふふっ……携行型電磁加速投射砲(ハンディ・レールガン)だって。これのどこが?」

 

 『YHV-X16 HANDY RAILGUN/Prototype(試製携行型電磁加速投射砲)』─────。

 従来の火薬ではなく、並行に置かれた2つの電極器(レール)の中間に磁性を帯びた弾体を装填し、電磁気力(ローレンツ力)で加速して撃ち出す次世代型運動エネルギー兵器(Kinetic energy penetrator)

 

「えーと、EMPシール(電磁パルスの封じ込め)が万全じゃないらしいから……。へぇ、スマホはこっちに入れとくんだぁ」

 

 莫大な電力と大掛かりな設備を必要とする、本来は未だ発展途上の技術ながら───YHV-X16は、DAの技術研究部門と防衛省・防衛装備庁が共同開発した、最新鋭の工学技術の結晶だ。

 国内最高峰の技術者たちによって設計、建造されたその試作型レールガンは、『砲身・銃座・電源の小型化、ユニット化による運搬性の向上』というコンセプトを見事に達成している。『携行型』の名称の由来はこの点からだ。

 

 そして、もちろん、()()()()()()()()()()()()に存在していいものではない。

 

「システム、オールグリーン♪ 給電開始ーっ!」

 

 ゴウン、という重苦しい唸りを挙げ、地上に神の怒りが顕現する。

 4基の大容量燃料電池から汲み出された雷鳴が、黒い砲身の中で解放の瞬間を待つ。

 

「クラスⅦ権限……あっこれか。『ラジアータ』に優先処理を申請、全演算資源(リソース)の0.07%をバイパスして……。GPSと気象観測網に接続……、あと攻撃座標周辺の監視カメラ映像を……。諸元入力、衛星からの観測データを基に誤差修正……」

 

 菓子作りのレシピを(そら)んじるかの如く、少女は黒鉄の雷竜に(はみ)を噛ませ、手綱を握り、鞍上から自分好みに調教していく。

 

「いやぁ、それにしてもゴッホちゃんはすごいなぁ。わざわざわたしのために、こんな玩具(おもちゃ)を手配してくれるなんて! ……技研の人たちがちょろいだけかも知れないけど」

 

 小型化の代償として、YHV-X16の火力と射程は世界的に主流の──と言ってもレールガンという兵器カテゴリ自体、いずれの国でも試験運用の段階を出ていないのだが──固定砲台型には劣る。

 

「ま、それじゃ───やろっか。あは」

 

 だがそれでも、この電磁気の申し子は、3.35kgの専用砲弾を秒速2520m───音速の7倍超(マッハ7強)で飛翔せしめ、最大射程は20km以上に達する。

 観測衛星とのデータリンクによる間接照準を前提とし、事前に察知しない限り防御も回避も不可能な、規格外の超長距離狙撃だ。

 

「……さん」

 

 砲口から紫電が散る。

 

「にぃ」

 

 細い指が引き金に触れる。

 

「いち───」

 

 甘やかに囁かれた『ゼロ』の一声は、青天に轟く霹靂によって掻き消された。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 『ウォールナット』が─────死んだ。

 

 依頼は失敗だ。

 逃走ルートを先読みされ、伏撃を受けた。向かい側、こちらと同じような放棄された量販店(スーパー)か、あるいは工場の跡地らしき建物に、敵の後詰めが控えていた。

 リスの着ぐるみには無数の穴が開き、そこからおびただしい量の鮮血が噴き出している。

 

「───やった!! やったぞッ! 10発は入れてやった!」

 

「どうする? 護衛の女もやるか?」

 

 追撃は……無かった。

 あくまで目標はウォールナット一人ということか。

 

 何の慰めにもならない。

 

「……、……。……店、長」

 

 インカムをオンラインにして、喫茶リコリコ支部の長へと連絡を入れる。

 それでも、私たちはリコリス。銃を握って戦うプロだから。

 

「失敗です───護衛対象は死亡しました」

 

 さほど間を置かず、店長が返答した。

 

「そうか……、残念だ。……すぐに迎えを寄越す、こちらの息が掛かった緊急車両だ。遺体と()()を回収して離脱しろ」

 

「了解」

 

 私の横の、千束さんは───とにかく、愕然としている。

 敵の命すら奪わない人だ。ましてや、自分が守っていたはずの相手が目の前で殺されるなんて。

 ウォールナットが軽率であったことも事実だが……それを理由に自分を赦せるような図太さは、きっと持ち合わせていない。

 

「千束さん」

 

「………………」

 

「……、千束さん。ご遺体と荷物を回収して離脱しろと、店長が」

 

「…………。……、うん」

 

 扉から屋外に出て、念のために残敵を警戒しつつ、リスの着ぐるみを───死者を運ぶ。

 とりあえずは壁面の陰へ。緊急車両が来るとのことだが、道路までは少し遠い。そもそもいつ到着になるか……。

 

「千束さん、荷物の回収のために中へ戻ります。動けますか?」

 

「え……。あ、いや……。───っ、ごめん」

 

 今はちょっと、とか細い声が続く。

 錦木千束がここまで憔悴しているのを見るのは、もしかしなくとも初めてだった。

 

「ではこちらで待機を。店長が緊急車両を手配しています、合流したら連絡をください」

 

「うん」

 

「すぐに戻りますが、スーパーの中にさっき制圧した敵が残っているかも知れません。その時は」

 

 ……その時は、

 

「いえ。()()()()()()()。ご心配なく」

 

 そう言って駆け出そうとした刹那、千束さんが私を呼び止めた。

 

「たきな」

 

「はい」

 

「……ごめん、何でもない。あとよろしく」

 

「───はい」

 

 感傷だ。リコリスとしては不適格かも知れないが、人としては当然の。

 私も……ずいぶん(ほだ)されてしまったものだ。早く荷物を回収して戻ろう。

 

 

 

 そして、千束さんに使わされた10秒が、私の命を救った。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

「───彼の傍に居るのは護衛か?」

 

<殺した方がよかったですか?>

 

「いや……。良い仕事だった。先月からの依頼はこれで完了だ。長期間、ご苦労様」

 

<……はい>

 

「機会があれば、その時はまた頼むよ」

 

<ありがとうございます。ご用命とあらば、また……僕に……>

 

「───どうしたね? 何か懸念でも?」

 

<い、いえ……その。何というか。……僕は、『ウォールナット』と『リコリス』を過大評価していたようです。あんな簡単な罠に引っかかるなんて>

 

「ふむ……。あぁ、そうか。アレらは確か、君が用意した()()ではないという話だったな。不安かい?」

 

<そうは言っていません。これまで散々僕をコケにしてくれたくせに、いざ本気でやり合ってみたら拍子抜けだったというだけです>

 

「なるほど。それならいいが。……存外、好きだったりしたのかね。ウォールナットが」

 

<……、冗談でもやめてください。さすがに怒りますよ>

 

「敵の人格を認めろと言ってるんじゃない。類稀な才能を研鑽するには、対等に切磋琢磨できる好敵手が必要ということさ」

 

<ハハッ───。そういうことなら、あのいけ好かない老人も、僕の役に立っていたのかも知れませんね。おかげで僕は今や、名実共に国内最高のハッカーだ>

 

「フッ……まぁ、君はまだ若い。充分合理的な理由が無ければ物事は成立しない、と思い込んでしまうのは人間の(さが)だからね。時には、ありのままの事実を受け止めることも重要なんだ」

 

<? どういう意味です?>

 

「人間、素直が一番ということだよ。ビジネスには何よりも信用が求められる。そういった点では、私は君のことを気に入っているんだ。ロボ太君」

 

 

 

 ─────道具らしくてね。

 

 通話を終了してから、吉松はぼそりと呟いた。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

<やった!! やったぞッ! 10発は入れてやった!>

 

<どうする? 護衛の女もやるか?>

 

「……。……いや……、必要ない。なぁ……お前たち。飯を、食いに行こ───」

 

 ()()()()()()()()()()稲妻じみた轟音が、東京の白昼を裂いた。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 ─────それは、唐突に起こった。

 

 雲もほとんど出ていないのに、何故か雷の音が聞こえた。

 すわゲリラ豪雨か、と思って空を見上げようとして、出来なかった。

 

 向かい側の建物の一角が、黒煙を噴き上げて爆砕したからだ。

 

「なっ……!?」

 

「うわ!?」

 

 激烈な振動と突風が大気を乱雑に掻き回し、私たちは思わず腕で顔を庇う。凄まじい衝撃波。

 幸いこの距離に居た私たちは無事だ。閃光や火炎も確認できなかったから、恐らく爆撃の類ではない。

 だが……しかし、だからこそ恐ろしい。純粋な運動エネルギー弾だけで、この規模の破壊を生み出せるのか? 私たちは何をされた?

 

 さらに、()()は一度では終わらなかった。

 どぎゅうん、という雷鳴らしき怪音が再び響き渡り、建物に穴が……いや、陥没孔(クレーター)と呼ぶべきものが穿たれる。

 限りなく対物徹甲銃(アンチマテリアル・ライフル)に近い『何か』であることは辛うじて察せられるが、それはあまりにも威力が高すぎた。

 

 ─────たった3回。

 結局、3回だけで『その音』は止まり、2分足らずで廃墟が瓦礫に変わった。

 ……あの建物に陣取っていた武装集団の末路は、言うまでもない。

 恐らく、いま生きているのは、反対側の廃スーパーに居た敵の先発隊だけだ。

 

「あっ……っ、あぁぁ……」

 

 ()()()()を理解した千束さんの顔が、みるみる内に曇っていく。この世の終わりを垣間見たような表情。

 犯罪組織に同情などすべきでないにせよ、これほど壮絶な破壊の光景を見てしまうと、千束さんの思想が少しは理解できた気がする。

 こんなものは、およそ人間の死に方ではない─────。

 

「おろ?」

 

 そして、輪をかけて最悪なことに。

 

「制服……そこのお二人、リコリスなのです? おかしいですねぇ。『ウォールナット』の護衛は、ガラの悪そうなお兄さんたちだって聞いてたのですけど……」

 

 危機的状況というものは、連鎖するらしい。

 

「まぁ、いいのです! ミカド、タイチョーに()()()()()()()()()と言われて来ましたので!」

 

 知らないリコリスだ。黒髪を一つ結びのおさげにしていて、背丈は私や千束さんと同じくらいだろうか。

 制服の色(階級)は───オレンジ色(ドットフィフス)

 

「不幸なすれ違いだったら申し訳ないのですが─────御命(おいのち)頂戴仕(ちょうだいつかまつ)るです」

 

 

 







【#2(2/3)の後の会話】

「すみません、お見苦しいところを」

「構わん。生意気な小娘を相手にする苦労はよく知っている」

「あっ、でも……朗報かもですよ。リコリコの筋から『ウォールナット』の身柄についてのタレコミがあったそうです。作戦(オペレーション)の草案を送ってきました」

「確認します。……、……。司令、火器の無制限使用の申請が出ていますが」

「ふむ。ゴッホには一度許可した手前、再び承認するのもやぶさかではないが。何を使う気だ?」

「技研から提供された試作型のスナイパーライフルだそうです。現場周辺の封鎖とカバーストーリーの流布もお願いしたいと……こちらを」

「……、5km先からの精密狙撃……。それに、銃声をまったく異なる音声に変えて欺瞞する能動的消音器(アクティブ・サイレンサー)か。またずいぶんと大きく出たな。どう思う? ゴッホ」

「まぁ、ニコルがやるからには当てるでしょう。リコリコ筋の情報の信憑性も低くはない。()()()()()()()()()が1人減るだけでもありがたいし、やってみて損は無いのでは?」

「……いいだろう。オペレーションの実行と、申請された火器の使用を許可する。情報統制には細心の注意を払うように」

「了解です。ニコルにはオレから連絡を」

「すぐに情報部に取り次ぎます」
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