萌え声人類種の天敵系ロリっ娘リコリス vs 俺たちのちさたき vs ダークライ   作:ごまぬん。

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たきなさんのアライメントが秩序・悪から中立・悪くらいになっちゃってる感じがしますが、仕様です。



#2.1 Starry nights,All that remains,Of warriors' dreams

 ────今日は何もかもが最悪だったが、最後にひとつだけ良いことがあった。

 

「ごめんなさい───」

 

「すまねぇ」

 

 千束さんと色黒の男───武装集団のリーダーらしき人物が、同時に言って同時に顔を上げた。

 

「な……何で謝るの? だって、あなたの、仲間を……やったのは……」

 

「お前こそ何言ってんだ? さっきのあれとお前らに、どんな関係があるんだ」

 

「え?」

 

 私たちを襲った黒髪のリコリス、御門かなは。

 彼女は『ウォールナットとその護衛を討伐しにきた』『リコリスが敵だとは思っていなかった』という言い方をしていた。

 つまり、今回の襲撃はDAによるれっきとした『ウォールナット討伐作戦』であり、御門かなはと───恐らくはもう1人、あの雷じみた"砲撃"をしてきたリコリスは、()()()()()()()()()()()()()()()()()だと思っていたわけだ。

 

「そうだったのか」

 

「……うん。だから」

 

「いや。()()()、違ぇって言ってんだろ」

 

「何が! だって私たちは───」

 

「さっきからうちのハッカーと連絡がつかねぇ。俺たちを雇って、今回の襲撃を指揮してたヤツだ」

 

「……?」

 

「ハメられたんだよ。あのクソハッカー……最初から俺たちごとウォールナットを消すつもりでいやがった。俺たちはウォールナットの目を眩ますための撒き餌(陽動)でしかなくて、さっきの砲撃とサムライが本命だったんだ。これは推測になるが、お前たちは()()()()()()()()だろう」

 

 ───たとえウォールナットの方にどんな護衛が付いていようと、横から全部消し飛ばせたんだからな。

 目線はサングラスで隠れているものの、リーダーの男は苦み走った表情で告げた。

 

「ど……どういうこと?」

 

「……。……どういうことも、何も」

 

 これは……いささか以上に厄介なことになったぞ。

 

 御門かなはとの戦闘終了後、血相を変えて飛んできた千束さんの協力により、応急処置は完了していた。

 右の二の腕と肋骨2本にヒビ、というところか……。まぁ、それはさておき。

 

「───そこの方」

 

「何だ」

 

「我々は本来、あなたたちのような無法者を討つのが使命なのですが」

 

 左の後ろ手にS&W M&P9を隠し持ちながら言う。

 先刻の"錦木千束族"との戦いでは不覚を取ったが、今度は油断も出し惜しみもしない。少しでも危険な動きをした瞬間に3度眉間を撃ち抜いてやる。

 

「たきな?」

 

 そうならないように祈りつつ。

 

「たった今、我々の方でもすぐに対処せねばならない懸念事項が出来ました。なので、ここは一時休戦して、互いに見なかったことにしたいと思います。いいですね?」

 

 リーダーの男は、しばらく腕を組んで考え込み……。

 

「それが良さそうだ。俺たちも暇じゃない───家族の仇を取らなきゃならねぇ。あのクソハッカーを見つけ出して、バラバラに切り刻んで、海の魚の餌にしてやる」

 

 やがて、遠くからサイレンが聞こえてきた。店長が手配したという緊急車両だろう。

 私たちは、『同じ相手に命を狙われた』という縁で奇妙な友情を感じ、二度と出会わないことを願いながら別れた。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 車内の空気は重い。

 緊急車両───救急車の患者用担架に、血まみれのリスの着ぐるみが寝かされている。

 この車が病院に行くことは無い。意味が無いからだ。着ぐるみの中に入っていた人間は、治療の余地も無く既に死んでいる。

 

「…………ウォールナット、さん……」

 

 千束さんはずっとこんな調子だ。無理もない。

 今日一日で、色んなことがありすぎた。

 窓から差し込む優しげな夕日すらも、あの黒髪の剣士が着ていたリコリス制服を思い起こさせて、私たちの心を癒やしはしない。

 

 

 

 

 

<─────もういいんじゃないか?>

 

 

 

 …………、……?

 

 何だろう。幻聴だろうか。今、目の前の着ぐるみから声が聞こえたような。

 あまりのストレスに、どこかおかしくなってしまったのだろうか、私は。

 

「……、!?」

 

「千束さん?」

 

 あれ?

 どういうことだ。その表情は……まさか、千束さんも幻聴を?

 気持ちは痛いほどわかるが、幻聴が同時に聞こえるなんて少々変だ。何だか気味が悪

 

「よっ……と」

 

「あ!?」

 

「え───!?」

 

 げ、げ、げ、幻聴どころじゃなかった……!!

 自動小銃の一斉射撃で蜂の巣となり、噴水のような鮮血を飛び散らせて死んだウォールナットが、担架の上で身を起こしている!!

 

 絶対なる境界を踏み越えたはずの魂が、いま冥府より舞い戻った。

 仮初めの器(リスの着ぐるみ)を脱ぎ捨てて、この世ならざる真の姿が顕となる───。

 

「ぷはぁ〜ッ!!」

 

 ……、……。

 ……というか。

 

 ウェーブのかかったブラウンの長髪。

 私たちより一回り年上らしい顔つき。

 

「ええぇぇぇ─────ッ!?」

 

 完全に、知っている人だった。

 

「暑ぅ〜!! ビールちょうだい!」

 

「ミズキさん……!?」

 

 あと何故か運転席から缶ビールが飛んできた。

 え? 今の、一体誰が投げて───。

 

「ミズキぃ!? ななななな何でぇッ!?」

 

「落ち着け。千束」

 

「ええぇ先生!?」

 

 運転席から顔を出したドライバーの正体は、ミカ店長だった。

 『こちらの息が掛かった車両が』とか何とか言っていたが、まさか自ら出向いてくるなんて。

 

「ぐびっ、ぐび……。かぁーっ!」

 

「えっ、あ、うぇ……はぁーあー!? い、いや、でも、だって血……」

 

「ん? あぁ、これ防弾。派手に血糊が出んのがミソね。マジクッソ重いけど」

 

 ミズキさんが着ぐるみの腹部を押すと、随所に空いた穴から偽物の血液が噴き出した。

 他方、缶ビールを持っていない左腕でグッとガッツポーズを作り、自分は健在だとアピールしてくる。

 

 そして、そう───ウォールナット(リスの着ぐるみ)の中身がミズキさんで、何事も無く生きていてくれたのは、とても喜ばしいけれど。

 

「あの……。では、本物の『ウォールナット』さんは?」

 

「あっ!! そうだよどこ行った!? さ、さっきこの頭から声がして───」

 

<ここだ>

 

「うわっ!」

 

 ここ? どこだ?

 千束さんの言う通り、着ぐるみの頭部から例の加工音声が聞こえては来るが……。

 

<人間は常に自分が信じたいものを信じる。ぼくを殺したがってる奴が居るのなら、いっそ()()()()()()()()()

 

「……!?」

 

「うわ!」

 

 そうして、車両前部の助手席に置いてあった()()()()()()が独りでに開いた。

 

「─────死んだ人間を追う意味は無いからな。遺産の相続人以外には」

 

 気だるげで、皮肉っぽく、()()()()()()()()な声。

 肩口まで垂れた金髪はボサボサで、あまり手入れされている気配が無い。 

 一見した印象は星谷ニコルによく似ているが、背丈は彼女よりさらに低いかも知れない。

 

「んっ? ん、しまった電源を……暗い……」

 

 目元から上と耳を覆うヘッドギア。あれでスーツケースの中からこちらの様子をモニターしていたのか。

 両手でヘッドギアを取り外そうとする彼女(ウォールナット)へ、私は辛抱堪らず質問を投げかけた。

 

「では……わざと撃たれたんですか?」

 

「……コホン。そうなるな。君がぼくの本体(スーツケース)を盾にした時は肝が冷えたが。ちなみに()のアイデアだ」

 

 店長が運転席から片手を上げた。

 まったく……。敵を騙すにはまず味方からとは言うが、やはり店長は人が悪い。

 

「着ぐるみ以外にも色々用意してたんだけどねぇ、ハリウッド並みの大爆発とか……。……全部無駄になったというか、あんなガチでヤバいのが来るとは思わなかったわ……」

 

「同感だ。銃撃はどうにか耐えられたが、あの砲撃やサムライ・リコリスの剣はどうにもならなかった」

 

「途中からマジ生きた心地しなかったっての、まぁ実際()()()()んだけど。ダッシュで逃げ出さなかったアタシを褒めたい」

 

「とはいえ、想定外の事態にもよく対処して見事だった。……あぁ、砲撃とサムライはカウントしてないから安心しろ」

 

 『ウォールナット』がヘッドギアを外すと、隠されていた蒼い瞳が露わになった。

 頭には、ウサギの耳のような飾りのついた黒いリボンを着用しており、額を出している……というよりは、目元に髪が掛からないようにしているのか。

 

「これで今回の依頼は完了だ。ご苦労だったな」

 

「えっ……ちょ、は……、ちょっ……と待って」

 

 千束さんの表情は、どうにも曖昧で一定しない。

 ……それもそうか。私だってあまり現実感が無い。

 大体、諸々の作戦を抜きにしたって、『ウォールナット』の正体が金髪の幼女だったという事実だけでも……こう……。

 

「い、色々聞きたいことはあるけど。つまり、その……本当は全部、予定通りで……。少なくとも、私たちは、誰も死んでないってこと……?」

 

「ん。───そうよ」

 

 『最強のリコリス』の顔が、くしゃりと歪んだ。

 

「……。……、……よかったあああぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜っ!!」

 

 頬と目元を真っ赤にして、色んな意味のこもった涙を流して、錦木千束は叫んだ。

 

「みんなっ……みんな、無事、で! ううぅ……!」

 

「まぁこの子、とにかく気前良かったしねぇ。こっちも命懸けちゃった」

 

「もぉぉ……。……死なせちゃったと、思ったし……! あ〜、もうぅ!」

 

「ちょ───」

 

 助手席を降り、リスの着ぐるみをつついて──多少は思うところがあるのだろうか──いた『ウォールナット』に、千束さんは抱きついて頬擦りした。

 

「よかった〜!! 無事でっ、無事でよかったぁ、ほんとっ……! ほんとぉぉ〜!!」

 

「わ、わかった。わかったからやめろ。鼻水が……」

 

 ……やれやれ。

 本当に……本当に、色々あったけど。

 

 私たちは確かに、ひとつの命を守ったんだ。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 ところで。

 

 やるべきことが、もう一つある。

 これは多分───仕事の終わりじゃなくて、もっと大きい何事かの始まりなのだから。

 

「すみません、ウォールナットさん」

 

「ん? 何だ?」

 

「お疲れのところ申し訳ないのですが、もう一仕事だけお願いできませんか。()()()()()()()でいいので」

 

「ちょっ待、たきな? アンタ何勝手に……」

 

「ふむ。一応聞いておこう」

 

 懐からスマートフォンを取り出して手渡す。

 昼間の会話を覚えていたのか、『ウォールナット』は相当に怪訝な顔をした。

 

「それの電話回線に、いま出来る限りのセキュリティを施してください。どこからも盗聴できず、通話履歴も残らないようにするのがベストです。このあと一度きりでも構いません」

 

「いいのか? ぼくに触らせて。せっかく助かった命、リコリスの3個大隊を差し向けられるのは御免だぞ」

 

「少々事情が変わったんですよ。あなたも聞いていたのでは?」

 

「待て、たきな。ずいぶん長いこと通信を入れて来なかっただろう。まずは私たちに情報を共有しろ」

 

 む……そうか。

 ミズキさんは着ぐるみの操演者(アクター)に集中していたし、店長はずっとお店(リコリコ)で待機していたからな。

 いざ改めて口にしてみると、なかなか恐ろしい話だが……。

 

「───D()A()()()()()()()()()()()()()。狙いはウォールナットさんでしたが、私たちが護衛に付いていたところを、相手のリコリスに見られています」

 

「……。……、あぁ。そりゃまずいな」

 

「???」

 

「おーい千束ー、帰ってこーい。……いや、ボケかましてる場合じゃないわよマジで」

 

「ハッ、こいつは傑作だ。トラブルの絶えない最高の職場で働けて光栄だよ」

 

 伝説のハッカーは、片頬を上げてニヒルに笑った。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

<……もしもし、ニコル? 今いいですか?>

 

「たきなお姉ちゃん? お姉ちゃんから掛けてくるなんて、珍しいね。それに知らない番号だったからビックリしちゃった」

 

<えぇ、リコリコ支部専用の秘匿回線だそうで、私もついさっき存在を知りました。それはともかく、少し聞きたいことがあるんです。御門かなは、というリコリスを知っていますか?>

 

「御門? ……たきなお姉ちゃん、知り合いだったっけ? 確かに今、わたしの隣に居るけど」

 

「ほぇ?」

 

<知り合いというわけでもないのですが。ついさっき()()()()()()()()

 

「えっ」

 

<いいですか。今から大事な秘密の話をするので、よく聞いてください。私たちリコリコ支部は今日─────>

 

 

 














「……みーかーどー? 何でそんな大事なことを言わなかったのかな?」

「ひょえ……。だっ……だって、えと、タイチョーが先に言ったんじゃないですか! 今は仕事の話は無し、どこの焼肉屋がいいかって!」

「……」

「ひぃぃぃ無言でにっこりしないでえぇ!?」
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