萌え声人類種の天敵系ロリっ娘リコリス vs 俺たちのちさたき vs ダークライ   作:ごまぬん。

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何がとは言いませんけど、リコリスの娘って全体的にチョロそうですよね。



#3 More haste,less speed...Get ready!
A human's walking is a succession of falls(1/3)


 喫茶リコリコ、ハッカー『ウォールナット』改め"クルミ"の居住スペース。

 2段構造の押し入れ、その上側を改造した空間へ、リコリコの店長補佐・中原ミズキが顔を出した。

 

「あーあ。散らかすなって言ったのに、こんなにしちゃって」

 

 とは言いつつ、怒るというよりは呆れた様子で、口元には笑みすら浮かんでいる。

 

「散らかってはないだろう。ぼくの機能設計は完璧だ」

 

 実際、押し入れひとつでクルミの世界は完結していた。

 数台のサーバー、数枚のモニター、薄いキーボード、循環液冷式の冷却装置、緊急時用の非常電源、緩やかな傾斜のつけられた座席(シート)

 活動規模の縮小を余儀なくされたにせよ、未だ国内最高峰の座に君臨するウィザード級ハッカーの住まいとしては幾分簡素である。

 

「アタシが聞けた義理じゃないけど、こんなんで本当にハッカーやれんの? 大体どこにネット回線……」

 

「企業秘密だ」

 

「ふぅん。ま、いいわ。そうそう、千束が言ってた例の写真、アンタにも送っといたから。ほらこれ」

 

 『例の写真』。

 ()()()()()()()に悩む一般女性、篠原沙保里から提出された証拠写真。

 その正体は、背景に銃取引の現場───たきながリコリコに左遷される原因となった『銃火器1000丁消失事件』の様子が映り込む、事件解決への唯一の手がかりだ。

 紆余曲折あってリコリコ支部の協力者となったクルミに、千束は写真の解析を依頼している。

 

「あぁこれね」

 

 ミズキが差し出したタブレット端末の写真を、クルミは一瞬だけ横目に捉えた。

 すぐに正面のモニターへ視線を戻し、キーボードを叩く作業に戻る。

 

「アタシがDA情報部に解析させたのよ。顔まではわからなくても、体格からおおよそのアタリは掴めるはず」

 

「つまりDAはここまでの画質しか持ってないということか」

 

 その台詞を聞き咎めたミズキが怪訝な顔をすると、クルミがちょいちょいとモニターを指差した。

 身を乗り出して押し入れの奥を見る。

 

「なっ……なぬ!?」

 

 ───そこには、DAとリコリコの持つ拡大画像よりも、遥かに詳細な解析結果が映し出されていた。

 輸送に用いられたコンテナのディティールもさることながら、その周囲に立つ数組の足と、全身が写っている赤毛の男の姿がはっきりと浮かび上がっている。

 

「何重にも補正が掛かっているから、現実とは多少違うだろうがな」

 

「いやアンタっ……嘘、えぇ? くうぅ……っ!」

 

「しかしまぁ、こっちよりはマシか。ミズキ、こいつがあればDA本部を出し抜けるかも知れないぞ。……ミズキ?」

 

「何でもねーよっ!!」

 

 仮にも元DA情報部としてのプライドを大いに損なわれ、ミズキは憤慨した。

 憤慨したが、貴重な証拠を挙げてくれたクルミに文句を言うわけにもいかない。

 

「なに怒ってんだ……。───お、時間だ」

 

 クルミは作業を切り上げ、押し入れの中からひょいと飛び降りる。

 

「そんなことしてたら膝痛めるわよ」

 

「安心しろ、ぼくはお前より若い」

 

「何をぅ!!」

 

「───はーい!! とっいうわけでぇ! 閉店後ボドゲ大会、スタート!!」

 

 リコリコ看板娘の声が響き、それ以上の歓声が応えた。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 閉店後ボードゲーム大会。

 およそ1ヶ月に1回の頻度で開催される、常連客限定の催しだ。

 一応、節度さえ守れば友人を招待してもいい決まりにはなっているそうだが、今のところ固定的な面子しか見たことが無い。

 

「締め切り明日って言ってたッスよねぇ?」

 

「明日よ。()()の私には関係ないし」

 

「よしましょう仕事の話は」

 

「ハッハッハ。そうですよ、実は自分も勤務中で」

 

「刑事さんもワルだねぇ」

 

「早く始めようよー」

 

 尤も、こういう面子だからこそ参加できている催しなのだろう。

 店からすると、そこまで入れ込んでくれているとはありがたい客だが……人としてはどうなんだ。

 

「たきなも一緒にやろうよー。レジ締めなら私も手伝うからさ」

 

「もう終わりました。レジ誤差ゼロ、ズレ無しです」

 

「はっや。ってことは……もう暇でしょ?」

 

「たきなお姉ちゃーん! こっちこっち!」

 

 ちなみにあの『ウォールナット討伐作戦』の後、ニコルは何故か()()で謹慎処分───出撃禁止命令を喰らったらしく、ずっと喫茶リコリコで給仕に専念していた。

 詳しいことは何やら言いにくそうだったので聞いていないが、腕と肋骨を痛めている身としては、働き手が多いだけでも助かった。むしろ出撃できないのは私も同じだったので、ちょっとシンパシーみたいなものすら感じている。

 

「たきなさん! どうですかー?」

 

「いえ結構です」

 

 あと例の黒髪の剣士、御門かなはが常連客に加わった。リコリスの外出禁止規定とは何だったのか。

 ニコルが彼女の首根っこを掴んで謝罪に来たため、敵対関係の清算は終えた──そもそもウォールナット周りで(やま)しい事情があるのはこちらの方だ──けれど、やはり一度殺されかけた相手だ。正直、どう接していいかわからないというか……。

 

「おじさん多すぎなのかなぁ」

 

「恥ずかしいのよ。お年頃」

 

他人(ひと)の店で遊ぶ方がおかしいんだけどねぇ」

 

「ミカド、今日こそタイチョーに勝つのです! ゲームでなら負けませんよっ」

 

「ふっふ〜ん。御門はすぐ顔に出るからなぁ」

 

「ま、最後はぼくの一人勝ちだ。悔しがる準備をしておくといい」

 

 ─────暖かくて、眩しい光景。

 最初こそ面食らったけれど、きっと『喫茶リコリコ』はこれでいいのだ。私が水を差す必要などどこにも無い。

 

「混ざってきたらどうだ?」

 

 ……、店長まで。

 

「そうすれば、DAに戻れますか?」

 

 卑怯な言い草だという自覚はあったが、それでも、本心だった。

 店長は……表情はフラットなまま、残念そうな気配だけを放射して、それ以上何も言わなかった。

 

「ねーぇ、たーきなー」

 

「何です」

 

「やっぱり一緒にゲームやろっ。ね?」

 

「骨の傷に響くので、帰って安静にしたいのですが」

 

「いやいや、もう1ヶ月経ってるでしょ。いつまでも通用すると思うない。明日は?」

 

「明日は定休日ですよ。……もう着替えてきます」

 

「そーそー、だから明日も引き続きゲーム……」

 

「千束」

 

 尚も食い下がる千束さんを見かねて、店長が助け舟を出してくれる。

 ありがたい。話のわかる大人だ。

 

 ……と思っていたのだが。

 更衣室のドア越しに、こんな話し声が漏れ聞こえてきた。

 

「千束、ライセンス更新は済ませたのか?」

 

 普通に千束さんに話があったらしい。

 リコリコの制服を脱ぎながら、何とはなしに耳を傾ける。

 

「うぇっ? あー……いや、まだ……。……あんな山奥まで行くのダルいし」

 

 如何にもズボラな千束さんらしいが、やはりあの人は己がリコリスであるという自覚が足りないのではなかろうか。

 たとえ人を殺さない弾を使っていようと、そもそも銃を持てることが特権であって、当然の権利ではない。

 

「だと思った。運が良かったな、明日が期限だぞ。ここの仕事を続けたいなら行ってこい」

 

「そりゃそうだけど……。うぅ、ゲーム大会ぃ……! 先生、上手く言っといてよ! 先生の頼みなら聞いてくれるでしょ? 楠木さんは───」

 

 ……何?

 

「司令と会うんですか?」

 

「うおっ……!? バカ!! 服!」

 

 服?

 あぁ、着替えが途中だった。下着まで脱いでるわけでもなし、親しい人間が相手ならこのくらいは許容範囲だと思うのだが。

 すぐさまリコリス制服を纏って戻る。

 

「私も連れて行ってください」

 

「早ッ」

 

「お願いします」

 

 90度、腰を折って頼み込む。

 楠木司令───関東一円のリコリスを統括する、影の世界の女王。

 『最強のリコリス』である錦木千束との協働によって、私は成果を示した。篠原氏の写真。

 あの写真と千束さんの声があれば、私はまた……。

 

「…………、……」

 

「お願いします」

 

「……。……わかったよ、たきな」

 

 顔を上げると、錦木千束の紅い瞳と目が合った。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

「お待ちしておりました。錦木様、井ノ上様」

 

 特急電車で東京を出て静岡に。駅に着くと迎えの車が来ており、それに乗って目的地へと向かう。

 行く先は富士山麓樹海の一角、DAが保有する国有地に建造された施設───関東本部だ。

 

「……んべっ」

 

 敷地内へのゲートを通過する瞬間、車窓の外を眺めていた千束さんが、何故か舌を出したような気がした。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 生体認証と手荷物検査をクリアし、二人のリコリスがDA関東本部に入場した。

 そのまま受付に向かい、各々の所用を伝える。

 

「錦木さんはライセンス更新ですね。健康診断と体力測定がありますので、隣の医療棟へどうぞ。井ノ上さんは……」

 

「面会希望です。楠木司令にお会いしたいのですが」

 

「はい、確認します……。あぁ。司令は現在、会議中ですね。終了予定は2時間後となっていますが?」

 

「では待ちます。訓練所の使用申請を───」

 

 たきなの話が終わるまで手持ち無沙汰そうにしていた千束は、自分たちの背後から突き刺さる複数の視線に気づいた。

 紺の制服(セカンド)が1人、ベージュの制服(サード)が2人。

 

「あの子って……」

 

「ほら! 味方殺しの」

 

「DAから追い出されたんでしょ?」

 

「組んだ子、みんな病院送りにするんだって。こわっ」

 

「指令は無視して当たり前だとか……」

 

「え〜? どうしてそんなことするの?」

 

 聞こえていると思っていないのか、それともわかっていて聞かせているのか。

 無視できない程度の囁き声を発しながら、その3人はたきなを見ていた。

 

「……。何だぁ、あいつら? たきなの気も知らないで」

 

「千束さん。私、訓練所の方に行ってますから」

 

「え? あっ! ちょ、ちょっとたきなー!」

 

 聞こえていたのかいなかったのか、たきなは振り向きもせず足早に去っていった。

 千束としても励ましの言葉をかけたいところだったが、ライセンス更新の必要性と天秤にかけることは出来ない。予定時間は決められている。

 結局、釈然としない気持ちのまま、医療棟へと赴くしかなかった。

 

 

 

「───あ……。……たき、な……」

 

 そして、彼女たちを陰から見つめるもう一つの視線に、千束もたきなも気づくことは無かった。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 健康診断を終え、次は体力測定用のユニフォームに着替えるべく更衣室に行くと、先客が居た。

 

「おや」

 

「……。千束か」

 

 恐ろしく悪い目つきに、ジョン・コナーみたいな髪型。ターミネーターね。

 今は制服こそ着ていないが、私と同じファースト・リコリス───春川フキだ。

 とにかく規律にうるさく、頑固で偏屈で、おまけに睡眠中に歯ぎしりをする性質(たち)だけど、それらを差し引けば至極優秀なリコリスである。

 

「しっかり者のフキさんが、ライセンス更新最終日なんて。どうしちゃったの?」

 

「忙しかったんだよ、喫茶リコリコ(お前んトコ)に引っこ抜かれた『排撃者数第1位(ダブル・オー・ワン)』の穴を埋めるためだ。お前のズボラと一緒にすんな」

 

「道理で」

 

 そりゃあ仕方ない。

 ニコルは謹慎処分の常連客だが、あの子が居ないと東京支部の稼働率は目に見えて落ちる。ましてやそれがリコリコに引き抜かれたともなれば……うしし。

 まぁ、それはそれとして。

 

「……。───……、先生(ミカ教官)はお元気か?」

 

 ()()()()()

 

「元気だよ〜。フキもたまには遊びにおいで」

 

「あぁ!? だから……!」

 

「はいはい、任務外の勝手な外出は禁止ってね。あ〜、規則撤廃の署名集めてたの懐かしいなぁ。あれまだ続いてる?」

 

「クソッタレ。お前もあの連中も、何がそんなに不満なんだ」

 

「フキさんは不満じゃないのかえ? 会いたい人に会えないのに」

 

「っ……!! あぁうっせぇ! 終わりだ終わり!」

 

 わかりやすいやつだ。普段からこれくらいしおらしければ可愛いのに。

 

「……、……たきなとはどうだ」

 

 あら。

 そうか、そっちは予想してなかった。でも、

 

「もちろん! 私は殴ったりしませんからねぇ」

 

「チッ……しつけーなお前も」

 

 うむ、理由はどうあれ殴るのはひどい。いつかちゃんと謝って欲しい。

 それこそ今日でもいいけど、フキには無理だろうな。けっ。

 

 移動し、隣同士のランニングマシンに乗りながら話を続ける。

 

「たきなを? ……何で連れてきた?」

 

「ん〜? 何でって……」

 

「どうせ戻りたがってるんだろ」

 

「そうなのよねぇ。DA(ここ)の何がそんなに良いのやら」

 

 私には本当によくわからない感覚なのだが、フキはそんな私を赤ん坊でも見ているかのような顔で言った。

 

「お前が変なんだよ。孤児だった私たちは、DAに拾われてここで育てられた。親に対しての感謝ってもんは無ぇのか?」

 

「いやそれはあるけど。でもこう、ほら、人はいずれ……親離れ? しなきゃみたいな」

 

「先生持って行っといて親離れもねーわ」

 

 それもそうか。これは一本取られたな。

 相変わらず弁の立つ女だ。たきなの一件も上手いこと誤魔化してくれればよかったのに、なんちゃって。

 

 次。反射神経測定。なんか光る機械をシュバババって押すやつ。

 一応私が歴代最高スコアを持っているのだけれど、3年に1回くらい更新されるのでビビる。もちろんその度に取り返している。

 ちなみにフキは中の上くらいだ。大体、この子の真価は、直接戦闘力というよりは───。

 

「特に、転属組にとっちゃ本部(ここ)は特別だからな」

 

「はぁ。てか、それがわかってるならフキも協力してよ」

 

「そいつは上層部が決めることだ」

 

「んなこと言わないでさ〜」

 

 やれやれ。取り付く島も無い。

 優秀で品行方正で、楠木さんとも仲良しなフキさんの口添えがあれば……とも思ったけど。そう都合良くはいかないな。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 体力測定、終了。

 スコアはすべて合格ライン。これにて喫茶リコリコの独立は保たれた。

 

「ハァッ……ハァ……。……っ、相変わらずタフだな……」

 

「そりゃどーも」

 

 何もかも全力でやるからそうなるんだ。ほどほどにしときゃいいのに。

 確かに、いつも真面目なのはフキの良いところだけどさ。

 

 もう一言二言からかってやるかと思った、その時だった。

 

「─────久しぶりだな、千束」

 

 ……それどころじゃなくなった。

 赤毛に白いスーツのおば……女の人、楠木司令。DA関東本部と東京支部を取り纏めるやんごとなきお方。

 

「どうも〜」

 

 フキをそのままでっかくしてお偉いさんにした感じのキビシー人で、怒りっぽくはない代わりに冷たくて容赦が無い。

 個人的には嫌いな人ではないのだが、喫茶リコリコ支部のファーストとしては油断ならない相手だ。

 

「更新期限ギリギリに滑り込みか。リコリスの義務は果たさないくせに、ライセンスの特権は欲しがるんだな」

 

 前言撤回。やっぱ嫌いだこのおばさん。

 

「DAの仕事もたまにやってるじゃないですかー」

 

「千束! 司令の前だぞ!」

 

 あらまぁフキさんったら改まっちゃって、姿勢めっちゃ良いなぁ。手押し相撲したら勝てなさそう。

 

 と、それはさておき……。

 せっかく楠木司令殿と会ったんだ。言いたいことは言っておかなきゃ。

 

「───たきな、何で追い出したんですか?」

 

「命令違反だ。聞いてるだろう」

 

「命令違反? あぁ。()()()()()()になってるんですね」

 

 楠木さんがわずかに眉を顰めた。私以外の誰にもわからない程度に小さく。

 基本的にいつも仏頂面(ポーカーフェイス)の楠木さんだが、私の目から逃れようなんて無駄なことだ。

 

「でも、たきなは仲間を助けましたよ」

 

「その結果、1000丁の銃は未だ行方不明だ。商人どもを殺すべきではなかった」

 

 またそれか。

 私はスマホを取り出し、『例の写真』を表示して言う。

 

「これ見たでしょ? たきなが失敗したっていうなら、司令部だって失敗してます。楠木さんにも責任あるんじゃないですか?」

 

「おい千束ッ!」

 

 フキの声と同時に、楠木さんの表情がさらに固くなった。また私以外にはわからないくらいに少しだけ。

 

「……他人の処遇を気にする前に、もっと働いて欲しいものだな。こちらも遊びでライセンスを出してるわけじゃないんだぞ」

 

「あーっ誤魔化したー!!」

 

「やめろ!!」

 

 やめてたまるもんか。というか、

 

「大体? ファーストにだって指揮権はあるよね。もっと上手にみんなで連携してれば、たきなが一人で先走ることも無かったかも知れない。これは現場のリーダーにも問題あったんじゃないですかね!」

 

「〜ッ……! そいつは……仕方ない、だろ。通信障害で……司令部と連絡が」

 

「───フキ」

 

「!!」

 

 ()()()()

 

「通信障害ぃ? 『ラジアータ』でモニターされてる作戦中に通信障害なんて、普通じゃないでしょ!」

 

 ───戦略・戦術司令統合支援AI『ラジアータ』。

 日本国内のあらゆる通信インフラに対する優先権を持ち、犯罪者の情報収集とリコリスの情報隠蔽を同時に担うスーパー人工知能。

 『国家的暗殺事業』の要であり、たとえ1分でも機能が損なわれるようなことがあれば、DAの活動全体に悪影響を及ぼす。

 

「ただの技術的トラブルだ。2分で復旧する予定だったが、その前にたきながスタンドプレーをやって作戦失敗に繋がった。それだけだ」

 

「いやいや、ちょっと楠木さん……!」

 

 だからこそ、『ラジアータ』のセキュリティは万全で、針や糸が通る穴すら存在しない。

 物理的な故障に対しても、普段から予備のコンピューターが山ほど用意されていて、首都圏に核爆弾が落ちたってまだ動く。

 ……らしい。そんな感じのことをクルミ(ウォールナット)が言ってた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()なんてヤバすぎでしょ!?」

 

「何を言ってるのかさっぱりだな」

 

 あぁもう、煙に巻かれてしまった。

 だけど逃がさないぞ───たきなの人生が懸かってるんだ。

 

「楠木さんっ!」

 

「やめろ千束!! 命令も聞かず独断専行するリコリスなんざ使い物にならねぇ! ……それだけだ」

 

「フキぃ〜……」

 

 まったくこの子は……この人たちは……!

 

 助手さんを引き連れ、廊下の向こうに消えていく軍服風の白スーツ。

 私はせめてもの抵抗として、楠木司令殿の背中に向かって吼える。

 

「たきなをDAに戻してあげてくださいよ───!!」

 

「……。……無駄なことを。もう後任が来てんだよ」

 

 フキが何かを小さく呟いた気がしたが、私は楠木さんに怒りを募らせることに必死で、どんなことを言ったかまではわからなかった。

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