萌え声人類種の天敵系ロリっ娘リコリス vs 俺たちのちさたき vs ダークライ 作:ごまぬん。
井ノ上たきな、おもしれー女……。
Takina and Pants and Mysterious enemy(1/4)
忘れがちだが、喫茶リコリコは一応、DAの支部という扱いだ。
よって、実は店舗の地下に、防音措置が施された射撃訓練場が設けられている。
リコリコ開店時にかかった
30m先の人型ターゲットの肩口に、5発当たったところで諦めた。
一般的に、現代の
私はこの距離内であれば、90%以上の確率で狙った位置に命中するよう訓練しているのだが───。
「……何ですかこれ」
赤いゴム製弾頭の非殺傷弾。千束がいつも使っている弾だ。ミカ店長によるハンドメイドらしい。
重量増加と破砕促進のための金属粉末を圧縮成型したフランジブル弾であり、人体を貫通しない『最強の輪ゴム鉄砲弾』。
しかし、通常の銃弾と比べて弾頭が非常に軽く、発射後は急激に運動エネルギーを失い、弾道が安定しないという欠点がある。
現実的な有効射程はせいぜい10mと言ったところで、私もいくら訓練したところで20mより先は狙い撃てる気がしない。
「私も当たんない」
隣のレーンの千束がにへらと笑いながら言う。
実際、結構な回数撃っていたが、私と同じ30m先の的に掠りもしていない。
「だからですか?」
あの『銃弾に突っ込んで全部避けて殴る』戦法は、という部分を省略して質問する。
以心伝心というには程遠いけれど、まぁ千束ならこのくらいは察してくれるものだ。
「そう! 近寄れば絶対当たるっ」
「私には無理ですね……」
弾倉を通常の9mmパラベラム弾に換装。
慣れ親しんだ重みが手に返ってくる。
「この命中率では自分を守れない」
ましてや、敵も味方も"いのちだいじに"など。
同じ的に10秒で8発───よし。胸部バイタルパートに全弾命中。
「わぁお。すごいねたきな、機械みたい。ニコル並みじゃん」
ニコル並み? そうなのか。
今日も任務で不在だった赤銀のリコリスの姿を思い出す。言われてみれば確かに、千束は牽制だったり距離感を図るために景気良く弾を使うが、ニコルはあまりそういう動きをしているイメージが無い。
……ふと、浮かんだ疑問を口にする。
「そういえば、ニコルにもその非殺傷弾を使わせていますよね。本人は千束ほど完璧な回避は出来ないと言っていました。何の意味があってそんなハンデを?」
「あー……。いや、……その。ぶっちゃけると意味は……無い、かな。私のわがままに付き合わせて、悪いとは思ってるよ。でもほら……」
千束はしどろもどろになりながら、私と向こうのターゲットを両手で指差した。
「たきななら多分、無理に先生の弾使わなくたって、わざと急所を外して撃てると思うんだよね。実弾でも。どう?」
「まぁ、恐らくは」
「だよね! ……けどさぁ、ニコルにはそれが出来ないんだよ。あの子は人を撃つとき必ず3発撃つ癖があるけど、その3発以内で必ず殺しちゃう。急所を外さないというより、急所を
うん……?
うぅん……それは、何というか……。
「……良いことなのでは? 私たちリコリスは、人の急所を撃つのが仕事ですよ?」
「えぇ!? たきなまで! 今はもう違うでしょ〜!!」
「はいはい」
本当に困った
◇ ◆ ◇ ◆
また数日経ち、閉店後の買い出しを終えてリコリコに帰ると、千束が座敷席を占拠していた。
「よっ! いよいしょ! とう! ほっ……あ!? んああぁぁぁ〜っ!!」
最近になってからクルミの要望で設置された液晶テレビ。
ハッカーらしくと言うべきか、クルミはボードゲームのみならずビデオゲームの類も好んでいる。今は千束に交代して遊ばせているようだ。
「ぐや゛じい゛ぃ゛〜!!」
「ムキになりすぎだろ」
「だって! この人、名前がムカ───」
「何してるんですか?」
「おったきな! 良いところに。これやってこれやって!」
などとせがまれ、あれよあれよと言う間にVRゴーグルを着けられた。
射撃訓練の時に使う防弾ゴーグルとイヤーマフに比べるとちょっと重いが、これは……。
「おぉ……ん、へぇ……」
視界が一気に塗り替わり、気づけば私は、ポップでファンシーなカラーリングの……気持ち住宅街? っぽい空間に立っていた。
ふと視線を下に向けると、……うん。腕や脚が緑色になっている。まぁゲームだもんな……。
「はいはいこれ持ってー」
「ライフル……」
「ガンアクションだよガンアクション! 仇取ってね〜」
「えっ? 千束が市街戦で負けたんですか?」
「……」
「ゲームのアバターが相手だと調子が出ないそうだ。肉体の微細な動作が、グラフィックの限界に覆い隠されるからだな」
「ちょっまっ、何で言っちゃうかなぁクルミ!?」
なるほど。これは意外なところから有益な情報が。
"錦木千束族"攻略の糸口として覚えておこう。
「お、もう次の試合始まるぞ」
「ぐぬぬ……えぇい、とにかくよろしく! たきなっ!」
「了解」
さて、我らがファースト様のご命令だ。
私はプロゲーマーという職業に理解のあるタイプだが、生憎とこれはリアルの身体能力がモノを言う体感型ゲーム。
本職の
◇ ◆ ◇ ◆
千束は激怒した。
必ず、かの邪智暴虐の
千束にはゲームがわからぬ。千束は、
喫茶店で働き、悪人をしばいて暮して来た。けれどもビデオゲームに対しては、意外と人並みにしか以下略。
まぁ〜意外とというか、いくら目が良くても
いや普通の格ゲーとかなら結構やれるよ? ガチでやり込んでるプロの人とかには、さすがに経験の差で負けるけどさ。でも小足見てから昇竜余裕な千束さんにとっては、大概のアクションゲーなんて楽勝なわけよ。
だからこのVRシューティングは……うん、ノーカン!
さておき、千束には竹馬の友(予定)があった。タキナンティウスである。
今は此のVRシューティングで、千束の仇を取っている。
その友が、そんなモーション逆にゲームの方が対応してないだろ、みたいな挙動で座敷をドッタンバッタン大騒ぎするものだから、私とクルミは大変な苦労をした。机をどけーの、座布団をどけーの……。
前から思ってたけど、たきなって何かに熱中すると周り見えなくなるよね……。いや、よりにもよって私が言えた義理ではまったく無いのだが。
さておき、さておき、事態はその最中に起こった。
タキナンティウスが、紺のリコリス制服のスカートを翻し、大きく跳び退った刹那である。
私は見た。見てしまった。無駄に目が良いのも考えものだ。
ちなみにクルミは見てなかったらしい。
千束は激怒した。
必ず、かのタキナンティウスに一言かましてやろうと決意した。
「お〜。やるな」
「えっ!? マジで!?」
さておき、さておき、さておき、試合はたきなが勝った。
「っっっしゃあああああ〜〜〜〜〜!!」
「喜びすぎでしょ」
◇ ◆ ◇ ◆
「っっっつあああァぁぁぁぁ〜!!」
「おぉー。すげぇな今のエイム……。次次、あたしッス〜!」
「こいつ……! 急に別人みたいに動き変えやがって!」
「先輩……。ネットゲームにムキになりすぎッスよぅ」
◇ ◆ ◇ ◆
「「だって!」」
<WINNER CHISATO>
「「こいつ名前がムカつくんだ
<LOSER FUKI>
◇ ◆ ◇ ◆
たきなが華々しく勝利を飾った後の事である。一人の看板娘が、リコリコの店内で雨やみを待っていた。
ごめん嘘ついた。雨は別に降ってない。
リコリコの店内には、この美少女のほかに誰もいない。
ごめんまた嘘ついた。
「クルミー」
「ん?」
口を開きかけて、一瞬躊躇った。
が……これも我が竹馬の友(暫定)、タキナンティウスのためだ。意を決して言う。
「……たきなのパンツって見たことある?」
「あるわけないだろ」
即答かよ。別に即答でいいだろ。それもそうか。
「ちぇー。何でも知りたいんじゃないのかよ」
「もしかしてあいつ、ノーパン派か?」
「いやいやいやいや」
なんつー発想してんねんこの金髪ロリ。ニコルより背低いのにジョークのセンスがオッサンなのよね。
「別にたきなが何履いてようと履いてなかろうと自由だろ」
「履いてないのはさすがにダメだと思うけど、一般常識として。……クルミ? まさか……」
「いやぼくもパンツは履いてる」
「そうだよねごめん。何この異常な会話」
「お前が言い出しっぺだろうが」
はい。すみません。
しかし、人のファッションセンスはそれぞれだ。何を履いてようと個人の自由、至極ご尤もである。
問題は─────。
「……しゃーない」
「何が」
「聞くな」
女にはやらねばならぬ時というのがあるのだ。
◇ ◆ ◇ ◆
「たっだいまー!!」
「あぁ。戻ったか、ニコル」
「ずいぶん長い任務だったな。地方遠征か?」
「うん、九州。ご飯は美味しいし、
「ミズキはもう帰ったが、千束たちは
「ふぅん。あっ、これお土産だよ。明太子と芋焼酎」
「オッサンじゃねーか。どうやって買ったんだ」
「ひみつ! 千束たちにも渡してくるねー」
◇ ◆ ◇ ◆
「…………あ─────っ!!!!!!!」
更衣室の扉がガチャっと開くとニコルであった。
いや言ってる場合じゃねぇのよ。
何たって今、私の手は、井ノ上たきなのスカートをめくっているのだから。
「ふぇっ……ち、千束……! たきなお姉ちゃんも……、いつの間にそんな仲に……。わたしというものがありながら!」
「ちょっ、ちょいちょい待って待って待って!? 何か確実に致命的な誤解が!! てかオメェーとも別にそういう仲じゃねぇよぉ!」
「……? そういう仲とは?」
いっそ殺してくれ。
……いやいや、自棄を起こしている場合ではない。
たきなについて、ニコルがあらぬ誤解をしていることより深刻な問題がある。私はその解決に向けて動いているだけだ。これだけは本当の事をお伝えしたかった。
「ほら! これ!」
私はたきなのスカートをめくっている手をそのままに、内側に秘められた『惨状』をニコルに提示する。
「ひゃあぁ!? やっ、わ、わたし、えっちなのはいけないと思います!!」
「キミそんなこと言うタイプだっけ!? とにかく違くて! お願いだからこの現実を見てよ!」
「何なんですかもう……」
うん、私もそろそろテンションで押し切るのも無理あるなと思い始めたところ。
オーケー、一旦落ち着こう。お互い、お互いだ。ステイクール、よし。
どうにかニコルを
「───ハイ、たきな君。まずはチミ、これは一体全体何かね」
たきながノーパン派でないことは確認済みだ。
しかして、そのスカートの下に鎮座していたのは……濃灰色の、短パンとかスパッツっぽく見えなくもない、されどそれらとは決定的に違うモノ。
「下着ですけど」
「そうじゃなくて! ───
これは、そう、あれだね。いわゆる『トランクス』って奴だね。
少なくとも見かけ上ないし社会通念上は女子高校生に相当する私たちが、履いているべきではないものだね。
「ほんとだ……。たきなお姉ちゃん、どこでこれを?」
「え? ……これが指定なのでは?」
「は?」
どういう……ことだ……!?
◇ ◆ ◇ ◆
下手人はすぐに見つかった。
「聞かせてもらいましょうか!」
「む……。うぅむ」
先生だ。喫茶リコリコ支部の管理者。
たきなは、『
フキほど堅物ではないが、かつてDA本部に居たリコリスとして規律や序列を重んじる彼女にとり、支部のルールについてお伺いを立てる相手は先生の他に有り得ない。
「店の服は支給するから、下着だけ持参して来てくれと」
「どんな下着が良いかわからなかったので」
「だからって何でトランクスなの〜!?」
「いや店長が」
「好みを聞かれたからな」
「アホかーッ!!」
ニコルは苦笑いしていた。良くも悪くも空気を読まないニコルにしては珍しい表情だ。
クルミえもんは、面倒事の気配を察知して既に押し入れに帰還していた。
「これ履いてみると結構開放的で……」
この女マジで言うとる?
「そうじゃなーい!! もぉ〜、たきな! 明日12時、駅集合ね!」
「? 仕事ですか?」
「ちゃうわ!! パンツ買いに行くの!」
逆にどうして他の用事だと思ったのか。
あんまり大声でパンツとか言わせんなよ恥ずかしい。
「あは〜! やったぁ、みんなでお買い物〜♪」
「しれっと自分も混ざってんじゃないよ。別にいいけど。……おっとたきな、制服は着てこないでねー。私服でよろしく私服で」
言ってから相当な不安があることに気づいたが、せっかくのお出かけにリコリス制服を着ている方がよっぽど良くない。
どうして今の時点からコラテラル・ダメージを受けることを確信しているかは……深く考えたくない。
さて、そうと決まればうかうかしていられないな。早く帰って明日の支度だ!
◇ ◆ ◇ ◆
「……。……、店長」
「どうした?」
「指定の私服はありますか?」
「そういうとこだよたきなお姉ちゃん」