萌え声人類種の天敵系ロリっ娘リコリス vs 俺たちのちさたき vs ダークライ   作:ごまぬん。

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そういえば、ロリっ娘っていうと皆さんどのくらいの年齢層をイメージするんですかね?
さすがにアンケート機能を使ってまで聞こうとは思いませんが……。



Welcome to "Lyco Reco"! And...(2/3)

 あの日を境に、私の世界は随分と様変わりしてしまった。

 

 私こと井ノ上たきなは、独立治安維持組織『DA』に属するエージェント───通称『リコリス』。

 階級は第2級(セカンド)。学生服を模した紺色のユニフォームはその証だ。赤い制服の第1級(ファースト)には及ばないものの、それに次ぐ実力はあると自負している。

 出世にはさほど興味が無いけれど、孤児だった私を拾い上げ、文化的な生活と教育を与えてくれた組織には感謝している。

 その恩を、国家の安寧を脅かす犯罪者を討つことで返せるのだから、リコリスの仕事はほとんど天職にも等しいと思っていた。

 

 ───少し前までは。

 

 発端はDAの情報部が大規模な兵器の密輸、つまり銃取引の兆候を掴んだことだった。

 当然、私たちはその現場を押さえに向かったわけだが……。

 どうやらこちらの動きが漏れていたのか、突入した都内某所のビルは既にもぬけの殻だった。

 

 国が運営する暗部組織に雇われたプロフェッショナルとはいえ、人間のやることだ。DA情報部とて失敗する時はある。

 頻度こそ多くないが、そういった過去の事例については組織内でも周知されているし、イレギュラーが発生した場合に備えた作戦規定も存在する。

 

 より問題だったのはその後。

 私たち実行部隊は、目標のビル屋内に残留していた敵勢力と交戦に入った。

 それだけならまだ敵を掃討して撤退──あわよくば捕虜を取って尋問にかける──すればよかったのだが、このとき運悪く何らかの()()()()()()()が重なり、司令部との通信が途絶。

 指揮系統の混乱により、こちら側に無用な被害が出てしまったのだ。

 

 そこからは───まぁ、今は反省している。

 

 膠着状態となった戦況を打破するために、私は規律を乱して独断で行動した。

 味方を巻き込む形で機関銃を掃射するなど、これが逆の立場だったらと考えてみるとぞっとしない。

 人質に取られていたセカンド──確かエリカと言ったか──が無事だったのは、自分の射撃が正確だったから……と言いたいところだけれど、さすがに運が良かっただけだろう。

 

 しかし、それでも、()()()()()だったのだ。

 理解はしている。自分がしでかしたことの重大さを。国防機関のエージェントとしての失態を。

 でも、納得はしていない。私は敵を殲滅したし、他の味方を死なせなかった。

 作戦目標は最初から破綻していて、あの場に存在するのは生きるか死ぬかの殺し合いだけだった。

 

 DA(組織)から下された処分は、小規模支部への出向。要するに左遷。

 今まで積み上げてきた功績はほとんどチャラになった。頭を冷やしてイチからやり直せということだ。

 

「───そこにも一人、リコリスが居る。生意気だが優秀な奴だ。得られるものもあるだろう」

 

 ただ、これでも情状酌量はされた方である。養成所に突き返される(事実上の懲戒免職)どころか、第3級(サード)への降格さえ言い渡されなかったのだから。

 一応は助ける形になったあのセカンドの嘆願と、口論になった現場指揮官のファーストから殴られた……つまり、その場で私刑を受けていたことが効いたらしい。

 何とも皮肉な話で涙が出そうだ。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 組織から提供された潜伏拠点(セーフ・ルーム)での荷解きを終え、出向先の支部へと足を運ぶ。

 京都支部から関東本部への栄転が決まった時は柄にもなく興奮した覚えがあるけれど、それももう遠い過去のことだ。

 

 歩くこと数十分───自分は方向音痴ではないはずだが、少々道に迷っている。

 GPSとの相性が悪い土地なのか、地図アプリの挙動がやや不安定だ。

 ふと、例の作戦のことが思い出される。あの通信障害さえ無ければ……。いや、もっと言うならば、あのセカンドが下手を打たなければ。それ以前にも、より高度で柔軟性の高い作戦が立案されていれば……。

 

「……はぁ」

 

 やめよう。過ぎたことを悔やんでも仕方ない。ましてや自分以外の誰かを責めるなど。

 例の作戦に関わった人間全員の落ち度を(あげつら)い始めたらキリが無い。生きていればどうしようもなく間が悪い時というものはある。

 報告書も始末書も完璧に仕上げて提出して来た。あれは確実にDAの財産になるはずだ。もちろん、私の経験値にも。

 

「すぅ……ふぅ……」

 

 適当な公園に立ち寄り、ベンチに座って休憩。深呼吸。

 地図アプリと紙媒体のハンドブックを突き合わせ、道順を再確認する。

 こういうことも起きるかと思い、早めに出発して正解だった。幸い、先方に伝えた訪問予定の時刻までは余裕がある。

 

 ……、そういえば。

 深呼吸で思い出したけれど、あの奇妙な通信は、『声』は一体何だったのだろうか。

 射撃には自信があるし、他に状況を打破できそうな手段も考えられなかった。『声』に促されずとも、私は同じ決断をしていたんじゃないかと思う。

 ただ同時に、本来なら制止されるべきだったとも理解している。指揮官のファーストが激怒したのは尤もだ。

 

 それなのに……あの『声』は、私の行いを肯定していた。決断にお墨付きをもらえたような気がしたのだ。

 

「『また一緒に遊ぼう』、か」

 

 変な台詞だ。あまりに異様で説明のつかない記憶。

 作戦の顛末に直接関係は無さそうだと思い、報告には挙げなかったが……ともすればあれは、極限状態の私が見た白昼夢だったのかも知れない。

 

 空に浮かぶ薄雲を眺めながら、そんなぼんやりとした考えを巡らせていると─────。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

「お姉ちゃん、どうしたの?」

 

 ふわふわした高い声が聞こえ、私は顔を上げた。

 

 小学校高学年くらいの女の子だ。見ようによっては中学生にも見えなくはない。

 身長は目算で145cm前後。赤みがかった銀灰──いわゆるストロベリー・ブロンド──に染めた髪を腰まで伸ばしており、色素の薄いオリーブ色の瞳と相まって、まるでこの世ならぬ妖精のような印象を受ける。

 仕立ての良い白のブラウスとワインレッドのスカートに身を包むその姿は、まさしく深窓の令嬢といった風情か。

 

「お構いなく……あぁ、いや」

 

 この辺りに住んでいる子だろうか。せっかく声をかけてもらった手前、無下にするのも忍びない。

 

「実はちょっと、道に迷ってしまって。この住所に向かいたいのですが、わかりますか?」

 

 スマホに表示された地図を見せる。

 少女はしばらく画面を覗き込み、

 

「んん? ……あ、ここは『リコリコ』だね」

 

「リコリコ?」

 

「うん、『喫茶リコリコ』! わたしも今からちょうど行くところだったんだ〜。お姉ちゃんも一緒に行こうよ!」

 

「そうでしたか。では、道案内をお願いします」

 

 喫茶リコリコ……、本当にDAの支部なのか?

 いや、きっとフロント企業の類だな。組織の性質上、接客業を営んでいるのは珍しいが。

 場末の喫茶店の裏に秘密組織の拠点が置かれているとは……なかなか洒落が効いている。スパイ映画みたいだ。

 

「えへへ、まっかせてー。あのね、リコリコはね、お菓子がおいしいんだよ! 特にスペシャルパフェがサイコーで───」

 

 少女は実に楽しそうに、これから向かう喫茶店のことを話してくれる。

 私はその裏の顔に用があるのだけれど、一度くらいは客として訪問してみたいところだ。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 和装カフェ『喫茶Lyco Reco(リコリコ)』───ここが私の新たな職場だ。

 よく手入れされた花壇と、随所に用いられたステンドグラスが目を引く木造の建物。

 平日の昼間なのであまり繁盛しているようには見えないが、雰囲気は良い。

 

「ん?」

 

 ───と、そこで妙なことに気づいた。

 一見して繁盛していないと思ったが、それはそうだ。営業時間の書かれた看板に『本日、都合につき午後1時から臨時休業』という貼り紙が追加されている。つまり、いま店内に客は居ない。

 そして午後1時といえば、私が事前にこの喫茶リコリコ支部の責任者と連絡を取り、挨拶に行くと決めた時間なのだ。

 

「あれ? 閉まってる……」

 

「……そうみたい、ですね」

 

「うーん……。お姉ちゃん、せっかく楽しみにしてたのに。ごめんね……」

 

 ふむ。

 まぁ、せっかく道案内をしてくれたこの子には悪いが、これは恐らく()()()()()()だろう。ならば───。

 

「いえ。実は私、ここのアルバイトの面接に来たんですよ。今日はお店の人が特別に時間を取ってくれたみたいです。なので、謝らないといけないのはむしろ私の方ですね……。すみません」

 

「え? そうだったんだ! じゃあお姉ちゃん、これからリコリコでお仕事するの?」

 

「それは面接次第ですけど。ともかく、道案内ありがとうございました」

 

「うん! 頑張ってねー、お姉ちゃん!」

 

 元気よく手を振る少女に見送られ、私はその建物の扉を開けた。

 何であれ、他人に応援されるというのは悪い気分ではない。

 経緯が経緯だけに憂鬱になっていたが、少しはマシな顔で"面接"に臨めそうだ。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 看板に恥じず、『リコリコ』の店内はおよそ和を基調とした装いで統一されていた。小上がりの座敷席などはその最たるものだろう。

 とはいえ、一般的なカウンターや階段を上がった中二階にはテーブル席もあり、また各種設備はしっかり現代的だ。

 ステンドグラスから差し込む自然光によって、空間は暖かい輝きに満ちている。仄かながら存在を主張するコーヒーの香りも、安穏とした雰囲気を演出するのに一役買っていた。

 ……これはいよいよ、リコリスとして着任したのがもったいなく感じてしまうな。

 

「───あぁ、来たか。たきな」

 

 私を出迎えてくれたのは、紫の和服を着たアフリカ系の中年男性。一見して不思議な取り合わせだが、妙に様になっている。

 足が悪いのか杖を突いてはいるが、彫りも皺も深く、如何にも歴戦のエージェントといった風貌だ。

 しかし、着用している黒縁の眼鏡の下には、ごく柔和な微笑みが浮かんでいる。

 

「はじめまして。本日付でこちらに転属となった、井ノ上たきなです」

 

「ふぅん。その子がDAクビになったってリコリス?」

 

 店のカウンターの一角を占領している女性が言った。

 緩やかなウェーブのかかったブラウンヘア。女性らしい丸みを帯びつつも均整の取れた肢体。

 ミカさんと同じデザインで色違いの、畳っぽい緑色の和装を身に纏っている。喫茶リコリコの従業員であることは間違いない。

 それに、ここでこうして話を聞いている以上は、DA側の人間であるはずだ。

 つまりは彼女が……。

 

「クビじゃないです。貴女から学べ、との命令を受けて参りました───()()()()

 

 錦木千束(にしきぎちさと)

 "現役最強"にして"史上最強"のリコリス。第1級(ファースト)の中の第1位(ファースト)

 10年前に起きた空前の大規模テロ『旧電波塔事件』を、当時わずか7歳で解決に導いたという伝説的英雄。

 正真正銘DAの最高戦力であり、それは本部から独立してこのような支部で活動しているという事実に表れている。あまりに高すぎる能力故に、並みのリコリスとは足並みが揃わないのだ。

 

「此度の転属は本意ではありませんでしたが、東京で一番のリコリスから学ぶ機会を得られて光栄です。この現場で自らを高め、本部への復帰を果たしたいと考えています」

 

「それは千束ではない」

 

「"それ"って言うな」

 

 あれ?

 

「───はっ」

 

 まさか……。

 

「そのオッサンでもねーよ」

 

「ここの管理者のミカだ」

 

 あっ。

 

 ……彼は元DAの訓練教官で、ここ喫茶リコリコ支部の責任者である。

 本名かコードネームかは聞かされていないが、今まで書面とメールでしかやり取りしたことが無かったから、てっきり女性だと思っていた。

 そもそも、男性のエージェントは『リコリス』とは呼ばれない。

 

 ミカさんの方はわかったが、じゃあこっちの女性は……?

 

「彼女は中原ミズキ。元DAの情報部で、今はリコリコの店長補佐として働いてもらっている。要は後方支援担当だ」

 

「ん、そういうこと。……嫌気が差したのよ。孤児を集めて、アンタらリコリスみたいな殺し屋を作ってるキモい組織に」

 

「はぁ……。これは失礼しました。……店長補佐?」

 

「あぁ、まぁな。私も普段はここの『店長』という(てい)で通している。出来れば君にも(なら)ってもらいたい」

 

「なるほど。了解です、店長」

 

 何だ、別人か。

 でも確かに、言われてみれば、10年前に7歳なら今は17歳であるはずで……申し訳ないが、ミズキさんはそれよりいささか年嵩に見える。

 

 ならば件の錦木千束はどこに、と思っていたところ。

 ───店先のドアと鈴が勢いよく音を立て、一人の少女が現れた。

 

「たっだいまぁ!! 先生、大変! 食べモグの口コミにさぁ、『この店(リコリコ)のホールスタッフが可愛い』ってー。これって私のことだよねぇ!?」

 

「フッ、アタシのことに決まってるじゃない」

 

「冗談は顔だけにしろよ酔っ払い」

 

「はぁー!? アンタちょっとそれどういう意味!」

 

 やや金色がかった白髪──プラチナ・ブロンドというやつか。さっきの女の子と言い、最近はこういう染髪が流行りなのだろうか──をボブカットにした、真紅の瞳を持つリコリス。

 彼女もここまでの例に漏れず、華やかな赤色の和装を着こなしている。

 背丈は私とそう変わらないが、やや肩幅が広いか。人好きのする笑顔とフレンドリーな態度に反し、体幹は安定していて立ち姿に隙が無い。

 では、今度こそ彼女が─────。

 

「ん? お? あらぁリコリス……、今日は何のご用事で?」

 

「もう話したろう、千束。彼女が例のリコリスだ。今日から相棒だからな。仲良くしろ」

 

「え!? この()が……! あぁよかったぁ!」

 

()()()()?」

 

「あっ。えーと、いやぁ何でもないよ? こっちの話、こっちの話」

 

 随分とテンションが高い。表情もコロコロ変わって、正直苦手なタイプだ。

 これが最強のリコリス? よく身体を鍛え上げていることは見て取れるが、あまりに跳ねっ返りが強いような……。

 

「ふふ。では改めましてぇ……リコリコ看板娘の千束でっす! よろしく相棒〜!!」

 

「井ノ上たきなです。よろし───」

 

「たきな! 初めましてよね? このへんじゃ見ないと思ってたんだ」

 

「は、はい。去年、京都支部から転属になったばかりで」

 

「おぉー転属組! 優秀なのね。歳は?」

 

「16ですけど……」

 

「じゃあ私が一つお姉ちゃんかぁ! あ、でも『さん』は要らないからね。ち・さ・と、でオッケー! それでそれで───」

 

 うぅっ……何なんだ。

 気づけば私はズルズルと、質問攻めの沼に(はま)っていった……。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 最初は面食らったが、これから一緒に働く相手なのだ。円滑なコミュニケーションを図るのも仕事の内と考えれば、多少パーソナリティを明かすこともやぶさかではない。

 すべては概ね和やかに進行し、やがて、

 

「───だからって、殴るこたぁないでしょうよ!!」

 

 ……頬に貼ったガーゼ───例の作戦で指揮官のファースト、春川フキから殴られた時の傷を見咎められ。

 千束さんは今、元々知り合いだったらしいその春川フキに対して、電話口で文句をまくし立てていた。

 

「あの……千束さん……」

 

 私は、店の奥の固定電話に齧りつく千束さんを、何とも居た堪れない心持ちで見ていることしか出来なかった。

 その視線に気づいた店長とミズキさんが顔を見合わせ、苦笑する。

 

「ああなると長いわよ。コーヒーでも飲む?」

 

「いえ……。お気遣いなく」

 

 とは言いつつも───どうにも間が保たない。

 店長やミズキさんとも、世間話の一つくらいはしておくか。

 

「そういえば、ここの設備ってかなり本格的ですよね。表向き(カバー)の仕事にしては手が込んでいるような」

 

 千束さんの剣幕はまだ続いている。

 短い間だったが、件の春川フキとは関東本部のリコリス寮で同室だった。因縁の相手とはいえ、まったく情の無い間柄でもないだけに、正直割と気まずい。

 私も完全に納得はしていないにせよ、既に済んだ話として割り切っている。失態はこれから取り返していけばいい。だから、そこまで庇い立てしてもらう必要は無いのだが……。

 

 すると、店長はてきぱきとコーヒーを淹れて私に差し出してきた。

 目線と手振りでカウンターにつくよう促される。

 

「フ───ただの表向き(カバー)ってわけじゃない。我々にとっては、どちらも本業だ」

 

「……、ありがとうございます。いただきます」

 

 私は大人しく椅子に座り、コーヒーを口に運んだ。

 これは……うん。芳醇な香りに角の立たない苦味。コーヒーに詳しくない私にも、プロの仕事とわかる一杯だ。DA支部と喫茶店、どちらも本業と言い切るだけはある。

 

「どうだ、千束は。想像と違ったろう」

 

「えっ。あ……、いや」

 

 イエスともノーとも言い辛い……。

 店長も存外人が悪いな。しかし、この癖の強いリコリコ女性陣と張り合う以上、多少はしたたかでなければやっていられない気もする。

 

「まぁ───。何事にも物怖じしないのは、良いことだと思いますけど」

 

 とりあえず、当たり障りの無い評価で誤魔化しておく。

 能力が高ければ、そのぶん難度の高い任務が割り当てられる。そうして困難を克服していけば、人格は自ずと成熟するもの……などと、漠然と考えてはいたが。

 現役最強とも称されるリコリスが、わざわざ本部から独立して小規模支部で活動している事実を、私はもっと真剣に捉えるべきだったのだろう。

 

「……うっせぇ!! アホっ!」

 

 千束さんはそう吐き捨て、受話器を叩きつけて通話を終えた。一呼吸してからこちらに振り返る。

 

「よし。たきな! さっそく仕事行こう!」

 

 お、ようやくファーストらしい発言が。

 彼女たち赤い制服のリコリスには、私のようなセカンドやサードに対する現場指揮権がある。

 

「はい、お供しま……」

 

「あぁーっと、ちょい待ち! 先生のコーヒー、おいしいでしょ? 私は着替えてくるから、ごゆっくり〜」

 

 ……しまった、同じ赤だから違和感に気づくのが遅れた。

 あの和装は喫茶リコリコの制服であって、リコリスとしてのユニフォームではないのだ。

 

「た〜きなっ」

 

「?」

 

 そして店のバックヤードに消えていく直前、千束さんは"うしし"と笑ってこう言った。

 

「───『リコリコ』へ、ようこそ!」

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