萌え声人類種の天敵系ロリっ娘リコリス vs 俺たちのちさたき vs ダークライ 作:ごまぬん。
筆者は生まれてこの方彼女の一人も出来たことが無く、およそ女性全般の趣向に理解が及ばないので、キャッキャウフフ回の執筆にあたりタキナンティウスのアレっぷりには大いに助けられてるンゴねぇ……。
午前11時47分、駅前。
言い出しっぺとして一応早めに来ておいたのだが、待ち人の方も几帳面な性格なので、合流はすぐだった。
「お待たせしました」
我が竹馬の友(仮)、タキナンティウスである。
「おっ! ……お〜、おぉ……?」
……いや、まぁ、確かに。昨夜の時点でそんな予感はしてたけども。
ラフなTシャツに……、飾り気の無いジャージのズボン……。ごくごく普通のスニーカー……。
素材が良くないと許されないやつだこれ。何ならたきなという逸材であろうと別に許されてる感じはしない。
「……新鮮だな」
私は努めて言葉を選んだ。嘘は言っていない。制服着てないたきなを見るのは初めてだし。
「問題ないですか?」
私は努めて言葉を飲み込んだ。言い始めたらキリが無いからだ。
……というか、待てよ。あの背負ってきてるの……リコリスの
「───、銃持ってきたな貴様?」
「財布くらいしか荷物が無く、どうにも落ち着かなかったもので」
「おう抜くんじゃねーぞー」
「制服も持ってきました。抜く時は着替えます」
何でそういうとこばっか用意周到なんだよ。
「千束は……その衣装は自分で?」
「衣装じゃねぇ」
ファッションじゃい。丈長めのアウターにホットパンツの組み合わせで、脚をカッコよく見せるのがミソね。
タキナンティウスに解説しても伝わらなさそうだから言わないけど。
「───おーい!! 千束ー! たきなお姉ちゃーん!」
とか何とか言ってたら、我らがストロベリー幼女様もご到着。
白いフリルブラウスにパステルグリーンのレーススカート。緩やかにウェーブする赤銀の長髪を、今日は左側でサイドテールにしている。
「そうだよ……! これだよっ、素材の味を活かすってのはこうやるんだよ! わかるかいタキナンティウス!」
「タキナンティウス……?」
意外かも知れないけど、ニコルはあんまり小物を好む
よって、シンプル加減ではタキナンティウスに匹敵するのだが……はい。まぁ、UNDEI NO SAですよね。
「何の話? 素材とかタキナンティウスと……か……」
星谷ニコルの笑顔が凍った。きょとんとするタキナンティウス。誰か助けてくれ。
「……、……。えっと……その。……言い忘れてたけど、今日はもう1人来てるんだ。ふたりも知ってる子だよ。荷物持ちのつもりで呼んだから、こき使ってあげてね! ね?」
ニコルがフォローに回った。もうダメかも知れない。
リコリコ支部のおもしれー女ランキングは、井ノ上たきながトップを独走しつつある。
ところで、ニコルが呼んだもう1人っていうと……?
「タイチョー、待ってくださぁい!」
人波をかき分けかき分け、やってきたのは─────。
ニコルとは対照的にほどいて流した、やや癖のある艷やかな黒髪に、
淡い水色の布地に雲のような綾模様があしらわれた、──びしっと締められた黄色の帯も含めて──素人目に見ても上等な着物。履いているのはもちろん
色合いこそ"初夏のJK"らしいポップで爽やかなものだが、それは控えめに言ってとんでもないレベルの和装美人であり、
「誰?」
「どなたですか?」
「えっ?」
「うぇ!?」
知らない人だった。
どう見ても、知らない人だった。
……いや、なんかぁ。
正確に言うと、その麗しの日本撫子フェイスに似合わぬ無駄に元気そうな声には、聞き覚えが無くもない気がしなくもな───。
「ミカドですよぅ、御門かなは! おふたりともひどいのですっ! お店にだって通ってますし、何より
たきながこの世の終わりのような顔をした。
多分、私も似たような顔をしていたと思う。
◇ ◆ ◇ ◆
「武器相場に変化無し───か」
風呂場の扉を開けると金髪ロリであった。
「テメー……何してんだ?」
「見てわからんか。風呂だ」
アタシは言った。
「アホかー!! 営業中だぞ!!」
3分後、扇風機の前に居座って物理的に声を震わせて遊ぶクルミに、さっき聞いた台詞について問う。
まったく、そういう話は風呂場以外の所でして欲しいところだ。
「……。武器相場に変化が無いから、何なのよ?」
「闇市場に撒かれてないってことだよ。この筋では追えない……、おっと」
後ろに居るアタシの方を向こうと頭を上げた末、ぺたんと畳に寝転がる天才ハッカー(笑)。
たきながコイツのことを"錦木千束族"と呼んでいる理由がわかる気がする。何かこう、挙動が同じだもの。
「1000丁も銃をガメてどうすんだ? 人間の腕は2本しか無いのよ」
「さぁな。兵隊が500人居るんじゃないか?」
「軍隊か! そんなのDAが見逃すはず無いっしょ」
DAはキモい組織だが、所属している人間はすこぶる優秀だ。それは情報部に居たアタシもよく知ってる。
例の銃取引に限ってはこっぴどくやられたようだけど、そうして面子を傷つけられた今、DAは血眼になって消えた銃の行方を追っている。その網にかかること無く100人規模の兵隊を作れるとは、とても思えない……。
「おーい、君たち」
店長の声……あ、そうだ。営業中だった。
「はいはい、はーい。アンタも早く着替えて手伝いなさい。今日はガキども3人、夕方まで帰ってこないんだから」
「……はいよ」
まぁコイツも、言動の割にはガキにしか見えないんだけど。
実際いくつなんだろう、この伝説のハッカー……?
◇ ◆ ◇ ◆
結局4人で連れ立ってショッピングモールに行くことになった。
どいつもこいつもビジュアル偏差値が高すぎる。私はリコリスの秘匿性だの何だのに気を払ってない方だけど、さすがにここまで視線を集めてしまうと空恐ろしい。
おう見世物じゃねーぞ散れ散れ! 私のたきなだ! ニコルと御門は……はい、ウチで責任持って最後まで飼います……。
「たきな、1枚も持ってないの? スカート」
「制服だけですね。……普通そうでしょう?」
「まぁリコリスは大体そうなのです」
「和服持ってるヤツが何か言ってるな」
「じゃあ買おうよ! たきなお姉ちゃん、絶対似合うって!」
……。こうしてると、みんな普通の女の子だよなぁ。うん。
「服のことはよくわかりません。千束やニコルが選んでくれれば」
「え? いいの!? おぉぉ、やったー! テンション上がるわ~はははははは!」
「あは〜。千束、おじさんみたいだよ?」
誰がおじさんか。私だってお前らと同じ普通の女の子だわい。
◇ ◆ ◇ ◆
「どっちがいい?」
と千束。
……どっちでもいいというか、どっちがいいか全然わからない。
「両方試せばいいんじゃない?」
とニコル。
なるほど道理だ。道理だが、実際に脱ぎ着するのは私だということを忘れているのではなかろうか。
「おぉ〜!!」
「こっちもこっちも! かわいい〜!」
「ハイカラなのです!」
「「「めっちゃかわいい!!」」」
「…………。どうも……」
恥ずかしい……。
世間一般の女子高校生というものは、本当にいつもこんな会話をしているのだろうか? 下手な拷問よりよっぽど恐怖を感じる……。
「たきな〜。リップグロス持ってる?」
「あ、ついでだから御門も何か買いなよ。普段こういうとこ来ないでしょ?」
「う〜ん……。ミカドも服くらいは選びますけど、正直お化粧ってよくわかんないのです。ちゃんとご飯食べてよく汗かいてお風呂入ってぐっすり寝てれば、肌なんて荒れようが無いじゃないですか」
「……。嘘、マジで? あれ完全にすっぴんなの?」
「漢方はたまに飲んでるらしいけど、基本そうだよ。まったく、たきなお姉ちゃんといい……。このナチュラルボーン美肌生命体どもめ……」
何か恨めしそうな目で見られた。隣の御門かなはと目が合い、揃って首を傾げる。
帯刀していないからかも知れないが、何だか初めて彼女とわかり合えた気がした。
「ところで千束、本来の目的を忘れていませんか」
「おっとそうだ。下着だった」
やれやれ。長い一日になりそうだ。
◇ ◆ ◇ ◆
「……あん?」
<───久しいな、アランの虎よ。経過は順調かね>
「おぉ。何だ、アンタらから連絡してくるなんて珍しいな。順調……、まぁそうだ。今のところ上手くいってるぜ」
<それは僥倖>
「ただ、どうだろうねぇ……。世の中、何事にもバランスってモンがあんだろ? 俺の経験上、ここらで一発潮目が変わる気配がするっつーか。平たく言やぁ、どうにも順調すぎるってこった」
<また支援が必要か?>
「いや。アンタらは最高のビジネスパートナーだが、頼り切りになるのはそれこそ釣り合いが取れねぇ。ここからは俺のステージだ。当分世話になるつもりは無ぇよ」
<フッ……。あぁ、そう来なくては。君が如何なる可能性を地上にもたらすのか、楽しみにしているよ。アランの虎>
「クククッ……良いねぇ。不名誉な渾名は山ほど頂戴してきたが、ここまで詩的で笑えるヤツは初めてだ。なぁ、『
<感慨深いものだ。我々がその名で呼ばれるようになって200年経つ>
「へぇ? アランより古いのか。じゃあ本当の名前は何て言うんだい」
<ふむ。確かに良い機会だ、君には伝えておくとしよう。我々の真の名は─────>
◇ ◆ ◇ ◆
オレンジ制服チームと一時離れ、ランジェリーショップに来ている。
「どう? 好きなのあった?」
「好きなの……を、選ばなきゃいけないんですか?」
「えっ?」
『えっ?』はこっちの台詞だ。
店長から下着は持参、と言われた時も相当困った。リコリス寮ではすべての衣類が支給品だったからだ。
今はさっき買ったシャツとスカートに着替えているが、その前に着ていたジャージ──本来は就寝時用──だって、転属の際に寮監さんから餞別として持たされたものだった。
まぁ、でも、強いて言うなら……。
「……。仕事に向いているものが欲しいですね」
「あ〜銃撃戦向けのランジェリーですか? そんなモンあるかぁ!!」
無いらしい。残念。
というか、仕事向けのものとして見るならば、
「
「いや先生がそこまで考えてるわけ無いだろ」
考えてなかったらしい。そうかな……。付き合いの長い千束が言うならそうかも……。
「だいたい、トランクスなんて
「パンツって見せるものじゃなくないですか?」
「いざって時どうすんのよ」
「いざってどんな時です?」
そこまで会話のラリーが続いたところで、何故か千束がフリーズした。あと何故か顔が赤くなっている。
常識的に考えて、やむを得ず他人にパンツを開示すべき機会というものが存在するとは考え難い。純粋に疑問なのだが……。
「……っ、知るか!」
そんな無責任な。
まぁ───どうしてもと言うなら、こちらにも策がある。
愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶのだ。そして、私が学ぶべき
「では千束」
「ん? ……えっ……ちょ、は?」
千束の手を引き、試着室に引っ張り込む。
くれぐれも注意してカーテンを閉める。
「な、何……?」
「千束のを見せてください」
「え!?」
そうか。どうやら、今が千束にとっての
同年代の友人とコミュニケーションを取るとなれば、このような場面に遭遇するものなんだな。私も覚えておこう。
「見られて大丈夫なパンツかどうか知りたいんです」
「えっ! あっ……えぇ……?」
「早く!」
同性の友人同士とはいえ、そう長々とパンツを見られるのも愉快ではないだろう。さっさと見て終わらせた方が千束のためだ。
「うっ……」
「……」
「く、曇り無き瞳……。うぅ……!」
やっと開示する気になってくれたようだ。ありがたい。
「たきなのため、たきなのため……」
ふむ……。
へぇ、これが……。ほう……。
……う〜ん……。
「───これが私に似合うっていうと違いますよね?」
「そうだよ何で見せたの私ッ!!」
◇ ◆ ◇ ◆
紆余曲折あったが、無事に実用性とデザイン性が両立した下着を発見することが出来た。デザイン性については正直未だに理解が及ばないけれど、千束の目があれば間違いは無いだろう。
先刻の一件をどうにか忘れようとしているのか、やたら朗らかな調子で千束が言う。
「これでもうトランクスとはおさらば! 男物のパンツは全部処分するからねっ」
「はい」
数ヶ月共に過ごした戦友たちとの別れは名残惜しいが、古着屋にでも売却すればいいだろう。サイズが違うから店長に譲渡するわけにはいかないし。
「さ、て、と。次は、千束さんお待ちかねのおやつタイムだ〜!!」
何? そんな予定は聞いていない……。
「目的は完遂しましたよ?」
「完遂て。仕事じゃないんだから……今日一日付き合ってよぅ。ほら、ニコルたちももうすぐ合流するってさ」
千束が懐から取り出したスマホを振りつつ言う。
ニコルはゲームセンター、御門かなはは書店に行っていたらしい。前者はさておき後者が意外すぎる。私はあの黒髪の剣士について色々と誤解をしていたのかも知れない。
「かわいい後輩を置いては帰れないよね、たきなお姉ちゃん?」
「確かに。お転婆な先輩を置いては帰れませんね、千束さん」
遠方から駆け寄ってくるふたつの影を見やりながら、私たちはくすくすと笑い合った。
◇ ◆ ◇ ◆
ショッピングモールから移動して、千束オススメのカフェ……というよりパンケーキショップへ。
白を基調とした店構えで、リコリコとはまた違った落ち着きがあり、テラス席からは旧電波塔も見える穴場スポットだ。
「フランボワーズ&ギリシャヨーグルトリコッタタッチベイビーケークとホールグレイハニーコームバターwithジンジャーチップス、それからオレンジカルテットチーズfeat.アポロヌスドラゲリオンとカタマッチャナッツマシクロミツマシマシカカオマシクリームマシマシで」
「かしこまりました〜」
一体全体何をかしこまったのだろう。私にはアマゾンの奥地に潜む未開の部族のシャーマンが詠唱する呪文にしか聞こえなかった。この世にあんな猛々しい名称の食品が存在するとは驚きだ。
メニューを開いて20秒でダウンした私(と御門かなは)はオーダーを千束とニコルに丸投げしたのだが、その判断は完全に正解だったと言わざるを得ない。
「……。名前からしてカロリーが高そうですね」
「野暮なこと言わない。女子は甘いものに貪欲でいいのだ」
「然り然り。リコリス寮じゃこんなの食べらんないからねー」
謎の同調を見せる千束とニコル。
仕事の時は非殺傷弾の是非を巡ってしょっちゅう小競り合いになっているが、基本的にこの二人は仲良しだ。
「私は寮の食事も美味しいと思いますけど」
「あーね。あの料理長、元・宮内庁の総料理長だったらしいよ」
「それってすごいんですか?」
「……タイチョー、もしやたきなさんって意外と残念なひtゴフッ」
「そうだよ! 国の偉い人とかのご飯作ってたんだから!」
なるほど、それは確かにすごい。またひとつ勉強になった。
「でもスイーツは作ってくれないんだよなぁ。何故か一生かりんとう出してくるんだよね」
「私、あのかりんとう結構好きです」
「そりゃあなた最近来たからだ。10年あれだけは飽きるよ〜」
「千束はそんなに本部に出入りしてないから知らないだろうけど、実はこないだ抹茶味ときな粉味が増えたんだよね」
「マジかよ!? 11年目にして衝撃のブレイクスルー……!!」
「お待たせいたしましたー」
などと、千束が独り騒いでいる間にパンケーキが来た。
私はホームアローンファニーゴー……全粒粉の生地に蜂蜜と何か黄色いチップス的な物体が乗ったもので、千束は推定イチゴのソースと白いクリームが掛かったもの、ニコルは千束のそれに似た推定オレンジソースのもの、御門かなはは生地に抹茶が練り込まれているもの。
無論、考えるまでもなく……。
「わっは~!! おいしそ~!」
「これは───糖質の塊ですね」
「たきなお姉ちゃん。人間、一生で食べられる回数は決まってるんだよ。すべての食事は美味しく楽しく幸せであれ!」
「美味しいのは良いことですが。リコリスとして、余分な脂肪はデメリットになります……」
「そのぶん鍛錬と仕事で取り返せばよいのです! 都会の甘味にはそれだけの価値があるのですよ!」
「良いこと言うねぇ御門! まったくその通りだっ。いただきまーす!!」
いただきます、の唱和。
私がとりあえずナイフとフォークを持ったまま固まっている間にも、3人はめいめいパンケーキを胃袋に収めていく。
TNT火薬換算で四畳一間くらいは吹き飛ばせそうなカロリーの爆弾を喰らい、頬を綻ばせる少女たち。
これが、一歩路地裏に入れば非情なる暗殺者に変貌する──1名だけ当てはまらないが──とは、誰も想像すらしないだろう。
そうして、恐るべき糖質の塊を討つべく腰を据えたのも束の間、千束が何かに気づいた。
「……ん?」
見ると、金髪の男性と赤毛の女性が、つい先刻の私と御門かなはよろしく、メニュー表を眺めながら頭を悩ませている。
日本語がわからないのだろうか。確かに、あのメニュー表には日本語話者の私たちにすら難解な単語が羅列されていた……し、そもそもカタカナになっているだけであれは英語だ。顔立ちからしてラテン系と思しき男女は、よくよく聞いてみるとフランス語を話していた。
「───、むっふ〜」
千束はおもむろに笑い、席を立って彼らの下に向かう。
リコリスは一般教養として各国の言語にも通じており、観光レベルの翻訳なら容易い。
『最強のリコリス』は、持ち前の社交性を遺憾なく発揮し、あの魔導書に書かれた呪文の数々を懇切丁寧に解説しているようだった。
「はぇ〜……。千束さん、すごいのです。ミカドはアメリカ語なんてさっぱりなのです」
「……あれ、フランス語ですよ」
そういえば……千束も異端のリコリスだけれど、御門かなははそれに輪をかけて異質なリコリスだ。
銃は使わず、金属製の
「ニコル。前々から聞きたかったのですが……『ドットフィフス』とは、どんな階級なんですか? リコリスの最下位階級は
「そ、そこから?
後半部分はボケのつもりで言ったのだが伝わらなかった。気の利いたジョークというものは難しい……。
「……まぁ、そんなに良いもんじゃないのは見ての通り。御門みたいに、能力は
「だから『
「……? タイチョーがお目付け役なんて嘘なのです、一番腕っぷしが強いだkグフッ」
「うん。色々あって今は3人しか居ないんだけど、まぁ楽しくやってるよ。ちなみに
「あぁ……」
完全に理解した。
"錦木千束族"が現れる度に喫茶リコリコ支部の独立を認めていたらキリが無い。いっそ『そういうもの』として囲い込んでしまった方がよほど効率的だ。
司令部直下の極秘任務を取り扱う特殊部隊、という肩書きにも説得力がある。
「ふぃ〜。お節介焼き完・了っと! みんな何喋ってたの?」
そんなことを話していたら、私たちのファーストが戻ってきた。
「ちょっとね。千束のせいで楠木さんも大変だなって話を」
「えぇ? なーんでそこで楠木さんなのよ。……てかたきな、全然食べてなくない? 仕方ないなぁ、お節介ついでに千束さんがあーんしてあげよう!」
「いえ結構です。いただきます」
二人っきりの時ならともかく……ニコルや御門かなはの前ではちょっと……。
言いつつ、切り分けたパンケーキを口に運ぶ。───ただ甘いだけかと思いきや、全粒粉生地とバターの香ばしさに、
「……美味しい」
麗らかな初夏の日差しの下、心地良いそよ風がテラス席を通り抜けていく。
───千束と店長が『喫茶リコリコ』を作ったから、巡り巡ってドットフィフス・クラスが設立され、ニコルと御門かなはの二人は出会えたのかも知れない。
世界のすべては繋がっているのだ。様々な味が一皿に集ったパンケーキのように。あるいは、広大で猥雑な東京の街を吹く、一陣の風のように。