萌え声人類種の天敵系ロリっ娘リコリス vs 俺たちのちさたき vs ダークライ   作:ごまぬん。

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Vengeance is mine(3/3)

 

 血と硝煙の世界に身を置いて20余年。

 生涯で最も困難な戦いはこれであったと、間違いなく断言できる。

 

「あは。おじさん、すごいねぇ」

 

 眼前に立つ敵は、緩やかに波打つストロベリー・ブロンドの髪の少女。

 日本の国体を護持する暗殺者『リコリス』にして、さる事件により世界中にその異名を轟かせた『赤帽鬼(レッド・キャップ)』。

 

「わたし、とっても楽しい!」

 

 猥雑な市街地を平地同然に駆ける身体能力、異常なまでに高精度の射撃、未来予測にも等しい戦闘勘。

 なるほど、悪鬼の名に相応しい特徴だ。どれ一つ取っても並みならぬ脅威である。

 だが……何よりも……。

 

「こんなに死んでくれない人は久しぶり! ねぇおじさん、わたしとお友達にならない? この依頼が終わるまでは敵同士だけど……もし生きてたらでいいからさ」

 

 こちらとて一端(いっぱし)の殺人者だ。ただ黙って攻撃されていたわけではない。

 スタームルガーMk.Iの.22LR弾は──致命打こそ無くとも──既に何度も敵の四肢や肩口、脇腹に頬を掠めている。

 あの学生服は強化繊維製のようだが、機動力重視なのか『無いよりはマシ』程度の防弾性能しか持たない。先刻の高所からの落下といい、ダメージは確実に蓄積していた。

 

「それじゃあ、もうちょっとだけ遊ぼっか♪」

 

 相手の意識が防御や回避から攻撃に向かう刹那、生じるわずかな隙。そこへ後の先で反撃を叩き込むことは可能だ。

 そうでもしなければ当たらなかった。

 

「あはっ」

 

 ───されど、斃れぬ。

 流した血の分だけ動きが鈍っている様子はあるものの、攻撃すべてが必殺の構えであることに変わりは無い。

 数々の驚異的な異能など、きっと『あれ』の本質ではないのだ。この狂気という言葉ですら生温い攻撃性、五体が砕けようとも眼前の敵を喰らい潰そうとする殺意こそが、赤帽鬼(レッドキャップ)の真に恐るべき特質。

 

「あっはは!」

 

 こちらが1発撃つ間に、赤帽鬼(レッドキャップ)の銃弾は3発襲いかかってくる。

 此度は何とか防ぎ切ったが、服に仕込んだ防弾繊維の方が限界だ。()()()()()()()9()()()()()()()()()()()()()()こうもなる。

 自分と敵は双方共に手負いであり、どちらかが根負けした時点で戦いは終わる。条件は同じだった───ただし、相手が人間ではなく幽鬼の類かも知れない、という点を除いて。

 

「にひ」

 

 放った応射に対し、赤帽鬼(レッドキャップ)は一切の躊躇なく前に飛び出してきた。

 弾丸がこめかみを切りつけて赤い花を咲かせるが、()()()()()()()()()で足を止める悪鬼ではない。

 左手のカランビット・ナイフが閃いたかと思えば、次の瞬間にはまったく逆の方向から回し蹴りを打ち込まれている。

 筋力こそ10代前半(ロー・ティーン)かそれ以下の年齢に相応ながら、その体術の冴えは現役の総合格闘技のプロにも匹敵しかねない。

 肩と腋を固めた右腕で防ぐも、衝撃の入り方が明らかに鋭い。恐らく靴の爪先に()()()がある。

 

「わは!」

 

 ナイフ、蹴り、ナイフ、蹴り、蹴り、ナイフ、蹴り───中身が悪鬼とはいえ、プロの傭兵(大の大人)少女(子供)相手に情けない。防戦一方とは!

 

「……!」

 

 しかし、

 

「およ?」

 

 ───捉えたぞ!!

 

「がっ……!?」

 

 中指と薬指は(ひしゃ)げ、手の甲側の肉が広範囲にわたって削げ落ちているが、まったく動かせないわけではない。

 元はと言えば殺す気で撃った50口径弾を逸らされたのだ。身代わりになった左腕が無事では済まない──実際、無事とは言い難い──と思い込むのも無理からぬこと。

 

「……!!」

 

 ただこの一瞬のために、左腕を温存していた。

 潰れた指が発する激痛に歯を食いしばりながら、赤帽鬼(レッドキャップ)の襟を掴み、背中から床に叩きつける。

 胴体を踏んで動きを……さすがにガードしたか。だが、これでもう逃げ場は無い。

 

「か……は、ぁっ……! ……、ふふ!」

 

 ……悪鬼め。何が可笑しい?

 ルガーの残弾すべてを脳髄に叩き込んでやる。この距離なら外しようもない。

 何を企んでいるか知らんが、これで終わりだ─────。

 

 

 

「───さ、せ、る……かぁーっ!!」

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 どういう意味でそう言ったのか、といえば。

 

 まず、『サイレント・ジン』に足蹴にされているニコルが目に入った。

 ちょっと……いや多少……、……かなり性格に問題はあるけど、それでも大事な仲間だ。助けなきゃ、と思った。

 

 しかし半秒遅れて、いくらプロでも()()()()()にニコルが後れを取るか? という疑問が頭に浮かんだ。

 比喩でも誇張でもなく、私は星谷ニコルが負けたところを見たことが無い。ニコルは勝てる戦いしかしない。

 あいつは狡賢くて、とにかく執念深くて、信じられないほど負けず嫌いだ。

 ニコルが()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 絶対に何かある。

 サイレント・ジンが気づいていない、私自身もまだ見破れていない、最後の最後の最後の最後に用意された罠が。

 

「!?」

 

「フッ……!!」

 

 まだ少しばかり距離があるが、鉄板の足場から足場へ跳躍(ジャンプ)しつつ、『救世主の銃』を抜き放った。

 最強だ何だと言われちゃいるけど、ぶっちゃけ私の射撃の腕は並みだ。たきなのような正確さも、ニコルのような読みの強さも無い。

 だから、私に出来るのは───。

 

「─────!」

 

 サイレント・ジンは器用にもニコルを踏みつけたまま振り返り、右手の拳銃を連射してくる。

 無論、一発たりとも当たってやるつもりは無い。様子見や加減をする気も無い。

 最短最速のフルスロットルで行く。たぶん、そのくらい急がなければ()()()()()()

 

「……!?」

 

 牽制弾を数発。横に走って応射を回避しながらマガジンを交換。

 向こうも弾切れ、さらに左腕の負傷でリロードがままならない。

 普段は『眼』と反射神経に飽かしたゴリ押ししかしてないので、キャリアの割に勘みたいなものが育っていない私だが……こういう時、相手が何をしてくるかは知っている。

 

「……! ……、!」

 

 咄嗟に拳銃の前後を持ち替えて、銃床(ストック)での殴打───読めていた。きっと()()()()()()()()()からだ。追い詰められた人間こそ侮ってはいけない。

 膝を沈めて姿勢を低くすると、頭上すれすれをサイレント・ジンの右腕が通り過ぎていった。

 相手の胴体に銃口を押しつける。この先生の弾も、当たり所が悪ければ骨や内臓のひとつくらいは持って行ってしまうけれど、残念ながら容赦は出来ない。

 

「ごめん!!」

 

「グッ───!?」

 

 問答無用で引き金を引き続け、『救世主の銃(M1911DCMカスタム)』の6+1発全弾を叩き込んだ。

 合成樹脂の赤い粉末が飛び散る。サイレント・ジンは、気丈にもしばらく踏ん張っていたが……やがて限界を迎え、その場にどさりと倒れた。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 埃を払いながら起き上がったニコルの姿は、まぁ相当にボロボロだ。

 傷だらけだし、制服も所々破れていて、何なら割と血まみれである。なんでニコニコ笑ってられんの?

 

「あは〜! 千束、助けてくれてありがとっ」

 

「……ご機嫌だな? 私が言うのも何だけど、この人まだ生きてるよ?」

 

「この依頼が終わるまで生きてたら、お友達になろうって約束してたの。次は依頼とか関係なしに、もっと本気で()()()と思って!」

 

 う、う〜ん……。

 ひとたび『敵』を前にすると悪鬼羅刹が如く猛り狂っていた時期に比べれば、多少丸くなったのは間違いないんだろうけど。

 代わりに、もっと根本的な部分でさらにタチが悪くなっている気がする……。

 

「ちなみに一応聞くけど、私が来なかったらどうする気だったわけ?」

 

「えー、気になる? 千束にはあんまり教えたくなかったんだけどぉ……」

 

 ニコルは左手の変な形のナイフを示し、次に首に巻かれた黒いバンドと、そこに取り付けられている超小型カメラを指差した。

 ……あれ、あんな通信機、私とたきなには渡されてないぞ?

 

「そこ危ないよー」

 

 逆手に持っているグリップの底面、奇妙に盛り上がっている部分を親指で押すと、カチッという小さな音───。

 

「ぬお!?」

 

 瞬間、超小型カメラから『何か』が射出され、私の後ろの鉄骨に跳ね返って床へ落ちた。

 その正体は、一本の針だ。太めの注射針のように見え、艷やかに青みがかった黒い金属で出来ている。

 

「……、……カメラじゃなかったのねそれ」

 

「えへへ。小指の爪くらいの量で、バッファローとか動けなくする毒なの。人間ならミリグラム単位でも……ふふ!」

 

 ……10年リコリスやってきたけど、こんなに命の危機を感じたのはいつ以来だっただろうか。

 まったく予測していない状態からあの速度で射出される毒針など、私ですら回避できたかわからない。

 本当にこのちっこいのはもう……。普段はこんな風に考えないのだが、サイレント・ジンさんは真剣に私に感謝すべきだと思う。

 

「『掃除屋(クリーナー)』さんに現場清掃頼む時は注意するよう言っといてね」

 

「わぁニコルちゃんたら優しい。わざわざ撃つ必要あった?」

 

 ───と、それはさておき、依頼はまだ終わっていない。

 東京観光は台無しになってしまったけれど、まずは松下さんをお店(リコリコ)に避難させよう。

 アメリカに帰る空の便は明日8時に出航だから、それまで松下さんを守り、どうにかして空港へ送り届ける。

 敵も、味方も、みんな"いのちだいじに"。

 

 

 

<よくやってくれた>

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 ミズキさんが疲れた身体に鞭打ち、勝手に移動し始めた松下氏を追いかけている。

 私はというと……周辺警戒の名目で、何となく付かず離れずの距離を維持している。

 

「クルミ」

 

<どうした?>

 

「その……店長とミズキさんの下調べを疑うわけではありませんが。今一度、松下さんについて、クルミの情報網から洗い直せませんか?」

 

<ん……? まぁ、構わんが。ここに来て何故?>

 

「……多分、もうすぐわかると思います」

 

 千束たちと再び合流。

 向こうの方に倒れている黒い長髪の男が『サイレント・ジン』だろう。

 無傷の千束とは対照的に、交戦していたニコルは傷だらけだ。

 いつもの笑みを絶やしていない辺り、見た目より深刻ではないのかも知れないけれど、彼女がここまで追い詰められるとは意外だった。ジンはそれだけの強敵だったらしい。

 

<千束>

 

「……松下さん」

 

 ───さて。

 問題は、ここからだ。

 

()()()()。そいつは私の家族の命を奪った男だ。殺してくれ!>

 

「で、でも」

 

<本来ならあの時、私の手でやるべきだった! 家族を殺された20年前に!>

 

 通信機の向こうで、店長が息を呑む音が聞こえた。

 

<───待て。その頃(20年前)、ジンは私と同じ会社に居たはずだ。多少後ろ暗い仕事もやったが、それなら私が覚えている……>

 

<君の手で殺してくれ! 君は『アラン・チルドレン』のはずだ!>

 

「……っ!?」

 

<何のために命をもらったんだ!? その意味をよく考えるんだ!>

 

 困惑が広がっていく。

 千束の表情が曇り、隣に立つニコルの目の色が変わる。

 

「松下さ───」

 

「千束」

 

 ニコルが、右手の銃を持ち上げようとして、やめた。

 理屈は未だに判然としないが、ニコルの『勘』はよく当たる。

 今の行動は、そのニコルが松下氏を『敵』だと認めたことの証左に他ならない。

 ……しかし、それならそれで、ニコルなら一息に撃ってしまいそうなものだが。どうして途中で止めた?

 

「言いたいことがあるなら、はっきり言った方がいいよ」

 

 あのニコルが死ぬべき『敵』だと判じておきながら、自ら手を下さない。

 例によって千束の信条にしぶしぶ協力しているというより、それは─────。

 

「ニコル……。……、わかった」

 

 千束が松下氏の前に歩み出た。

 胸元のペンダントを握りしめて、言う。

 

「───松下さん。私はね、人の命は奪いたくないんだ」

 

<……は?>

 

「私はリコリスだけど、誰かを助ける仕事がしたい。これをくれた人みたいにね」

 

 梟を象った、鈍い金色のエンブレムを示す。

 錦木千束に心臓を与えた命の恩人との、唯一の繋がり。

 

<……、何を言って? 千束……>

 

「……?」

 

<それでは、アラン機関は君を……! その、命を───>

 

「もういいよ」

 

 

 

 

 

 声を上げる暇すら無かった。

 

 ニコルのラドムVISwz1935が火を噴き、松下氏の()()()()()()()()()()()を粉砕した。

 

「ちょっ……!! ニコル!? 何やって」

 

「ずっと変だと思ってたんだ。最初に会った時から」

 

 迷いの無い足取りで進み出ると、手を伸ばして松下氏のヘッドギアを掴み、頭から引き剥がす。

 露になった松下氏の目は、当然ながら虚ろだ。病に冒された表情筋は動くことが無い。

 そう、病だ。進行した筋萎縮性側索硬化症。何も、不自然な、ことは─────。

 

「………………。…………ぁー……」

 

 虚ろだ。

 虚ろで、弱々しくて、()()()()()()()()()呻き。

 先刻まで千束と対話していた人格()が、するりと抜け落ちてしまったかのように。

 

























まぁ要するにニコルの能力は何かというと、戦闘中は常に『/Zero最終盤の言峰綺礼』とか『GNフラッグに乗ってる時のグラハム・エーカー』とかと同じ状態になってる、というだけの話です。
素面で常時回避判定し続けてる千束や、素面で機械みたいな精密射撃が出来るたきなほど特化して使いやすい能力ではない感じです。
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