萌え声人類種の天敵系ロリっ娘リコリス vs 俺たちのちさたき vs ダークライ   作:ごまぬん。

28 / 78

同棲回だ! ちさたき早く結婚しろ!(気ぶりの一般男性)



#6 Water,Oil,Fire
Lycoris's bizarre cohabitation(1/4)


「───司令! 4人目が襲われました。二子玉川から始まって今月のお台場、立川に続いて品川です!」

 

「チッ……。全隊員、モードSで警戒態勢!!」

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 それは、『松下さん事件』からしばらく経った頃。

 

「……え? リコリスが?」

 

 私はたきなからの電話で()()()()を知った。

 何でも、都内で活動するリコリスたちが、正体不明の犯行グループに襲撃され命を落としているらしい。

 残念ながら、リコリスの殉職率というものは総じて高い。排撃対象が決死の覚悟で激しく抵抗したり、情報部のミスによって敵勢力の規模を予想できず……というパターンはままある。

 が、今回はそういう話ではなく、明らかに組織的な『攻撃』であるとのこと。

 

<4人とも単独行動中に襲われたそうです>

 

「んん……な〜んで特定されてんだ?」

 

 DAは国家レベルでの機密組織、そのエージェントであるリコリスも機密の塊。

 常から日本の津々浦々で活動してはいるけれど、表向きは全国展開する中高一貫の私立校……みたいな偽情報(カバーストーリー)が流布されているはずだ。

 

<わかりません……。ですが、例の『ラジアータ』のハッキングと何か関係あるのかも>

 

 ───あぁ、道理で。

 たきながすっかりリコリコに馴染んだおかげで半分忘れてたけど、あの『銃1000丁消失事件』は未だに解決していない。

 取引された銃はしばし行方不明だったものの、既に『地下鉄襲撃事件』の下手人たちが使っていたことが判明しており、予断を許さない状況となっている。

 

<とにかく、しばらくよ。単独行動は控えなさいよ。それと……>

 

()?」

 

<今月の検診、昨日よ。と山岸先生(DAの医務室)が>

 

「……あ〜、そうだった」

 

 忘れてた……。何か変則シフトでお店が休みになったと思ったら。

 先生め、また余計な気を回してくれたな。結局ずっと映画のDVD観てたから無意味だったけど。

 

<忘れてたんですね>

 

「だってぇ」

 

<はぁ……。まぁいいです。それはそれとして。さっそく、今日からペアで行動しようと思います>

 

 おや。

 どうも先生に似てきたのか、最近のたきなは私の生活態度やらに口うるさくなったのだけれど、今日は溜め息ひとつで許してくれた。

 

「ペアって……。だいたい、ほぼ毎日お店で一緒じゃ───ん?」

 

 ピンポーン。インターホンの音。

 何だろ……? 今日は特に、荷物とか届く予定は無いはずだけど……。

 

 よいしょ。こらしょ。よっこらせ。

 つったかたー、ガチャリ。

 

「───夜は交代で睡眠を取りましょう!」

 

 扉を開けるとタキナンティウスであった。

 

「え?」

 

「安全が確保されるまで、24時間一緒に居ます!」

 

 マジかよ。

 

 

 

 ……ん? 待てよ?

 

 おぉ、我が竹馬の友、タキナンティウスよ。

 その大荷物に、『24時間一緒』宣言……。

 これは……これはっ……! もしかして、まさかして……!

 

「うちに泊まんの〜!?」

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 何がそんなに嬉しいのだろう……、笑い事ではないのだけれども。

 拒否されるよりはいくぶんマシだが、状況の深刻さを正しく理解していないのではないか……。

 

「……ん?」

 

 玄関をくぐったところで、奇妙なことに気づいた。

 というのも、千束の潜伏拠点にはどういうわけか、ひとつも家具が置いていなかったからだ。床のフローリングにはわずかな凹みも無く、新居同然の様相を呈している。

 意外や意外───あの錦木千束が、私生活では断捨離主義者(ミニマリスト)だったとは。

 

「プロの部屋だ……」

 

「あぁ、そっちじゃないよ。こっちー」

 

 

 

 千束に連れられて奥の部屋に向かうと、床下収納の取っ手があった。

 それが開いてみれば、想像していたよりずっと下まで梯子(はしご)が伸びており─────。

 

「そのへん座ってー。アイスコーヒーでいいかな?」

 

「え……、えぇ……」

 

 ()()()()()()()()存在していた。

 上層とは打って変わって一通りの家具と生活用品が揃っており、観葉植物まで置かれている。

 テーブルには……お菓子やらDVDやらが乱雑に放り出されている。定期検診をサボったのはこのせいか……。

 

「何なんですか、ここ?」

 

「長く仕事してると色々あるのよー。ここはセーフハウス1号。他に3つあるんだ」

 

 ということは、合計4つ?

 一応、このハウス1号がメインで他の3箇所はサブだそうだが、どうしてそこまで多くの拠点が必要に───あぁ、いや。

 

()()対策ですか」

 

「おっ、さすが勘が良いね」

 

「"いのちだいじに"って方針、やっぱり無理ありません?」

 

「またまたそんなこと言う〜。納得してくれたんじゃなかったの?」

 

「今も納得はしていませんが、尊重はします。()()()()するなら尚更」

 

 千束は、少しだけ寂しそうに笑った。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 出したコーヒーを飲み終え、いそいそと荷解きをするたきな。

 その背中を見ながらふと、何か忘れてるような……と感じる。

 私はしばし頭をひねり、ようやく思い至って、聞いた。

 

「そういえば、ニコルは?」

 

 星谷ニコル。喫茶リコリコで働くもう一人の同僚。

 あの『赤帽鬼(レッド・キャップ)』──海外系の非合法組織の間ではこう呼ばれているらしい。まったくお似合いだ──であれば滅多なことは無いと思うけれど、それでも13歳の女の子だ。万が一ということも……。あるかな……? あるか? ……あるかも知れなくもなくもないだろう。うん。

 

「連絡はしたんですが、『そういうことならアテがあるから』と断られてしまいまして。私も転属の際にDAから潜伏拠点を提供されましたし、きっと御門とでも一緒に居るんじゃないでしょうか」

 

「ふーん。……そっか」

 

 ……。何というか……時間が過ぎるのは早いなぁ、って思う。

 最初に会った頃のニコルは、DAからの命令でひたすら敵を叩き潰す、殺人マシーンというよりは人間型の爆弾みたいなリコリスだった。

 それがまぁ、私やフキ──フキは若干怪しいラインかしら──以外の友達が出来て。のっぴきならない事情があるとはいえ、誰かとひとつ屋根の下で暮らすまでになったのか。

 ちょっぴり寂しいような気もするけど───やっぱり、嬉しいな。娘の結婚式に出席するお母さんって、もしかするとこんな気分なのかな。子供どころか恋人すら出来た試し無いけれども。

 

「まぁ~、ニコルなら大丈夫っしょ。襲撃犯とか普通に返り討ちにしそうだしね。おまけに御門も居るとしたら、相手の方がかわいそうなくらいかも」

 

「確かに」

 

 苦笑するたきな。たきなはリコリコ支部に来てからの大人しい(当社比)ニコルしか知らないはずだけど、『排撃者数第1位(ダブル・オー・ワン)』の二つ名の意味は理解してるみたい。

 とはいえ、銃弾を刀で斬り落とすやつ(御門かなは)に『タイチョー(隊長)』と呼ばれてるトコなんか見たら、尖ってた頃のニコルを知らなくても察しはつくか。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

「───くしゅんっ」

 

「おろ? タイチョー、夏風邪ですか?」

 

「うぅ……、この(あば)ら屋が埃っぽいのが悪いんだよぅ。本当にここDAの潜伏拠点(セーフルーム)? 確かにわたしのアパートよりは広いけどさ……」

 

「鞍馬のお山に居た頃の(いおり)はもっとボロっちかったのです。壁の穴から熊が入ってこないだけマシなのですよ」

 

「熊? 森林開発の影響で、関西圏の山にはそんなに出ないでしょ? 居ても四国とかあのへんだし」

 

「えっ?」

 

「えっ?」

 

「……。……じゃあ、ミカドの知ってるあの動物は、熊じゃないのです……?」

 

「……この話やめよっか」

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 さて、私とてタダで他人の家に上がり込もうと言うほど恥知らずではない。

 

「共同生活を送る上で公平な家事分担です!」

 

 1週間における料理・洗濯・掃除という3種の家事を、平等に分配したスケジュール表。

 この生活がどれだけ続くかは不明だが、こういった予定は最初から決めておくに越したことは無い。

 

「つまんなーい」

 

 ……と、思っていたのだけれども。

 

「つ……つまらない……?」

 

 それは……うぅむ。

 まぁ、千束の性格上、こうやって突っぱねられることを想定していなかった私も悪いか……。

 

「では……、ジャンケンとかで決めますか?」

 

「お? ───いいね! それいいね、ジャンケン!」

 

 えらく嬉しそうだな。よほど自信があるらしい。

 ジャンケンの勝率というものは統計的に、つまり誰がやっても3割前後に留まる。結局、私が考案したこの表と近いスケジュールに収まるはずだ。

 

「んじゃ行くよー!」

 

「はい」

 

「「最初はグー!! ジャン、ケン───」」

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 喫茶リコリコ。

 夏らしくと言うべきか、カウンターに並べられた何個ものスイカを見て、店長補佐の中原ミズキが吼えた。

 

「安かったからって仕入れ過ぎじゃない!?」

 

「余ったらジュースにでもすればいい。頼りにしてるぞ」

 

 今でこそ鷹揚な年長男性といった風情のミカではあるが、故あって足に障害を負う以前は、民間警備会社(PMC)で働くれっきとした傭兵(戦争屋)だった。そもそもが日常に黒社会の影が差す地域の出身であり、幼少期から非合法組織を隣人として育ってきたというのだから筋金入りだ。

 そういうわけで、平和な日本に来て15年以上経つ今も、ミカの金銭感覚は是正されていない。

 

「こそこそ……」

 

「まったくもう……こんなでっかいの、切る身にもなって欲しいわ……!」

 

「……あ〜ん」

 

「何してる。働け」

 

 カウンターの下から忍び寄り、切られたスイカのつまみ食いを試みる金髪幼女(クルミ)を、妖怪婚活メガネが遮った。

 

「ぼくは電脳戦専門だから」

 

「近頃はずっとゲームして遊んでるだけでしょうが!」

 

「良いことじゃないか。街が平和な証拠だ」

 

「うるせー! スイカ返せ!」

 

 そうしてしばらく揉み合うミズキとクルミ。

 そんな二人を見かねた───という様子でもなかったが、店の奥から出てきたミカが言う。

 

「クルミ。手伝ってもらいたいことがある」

 

「? だから、ぼくは……」

 

「もちろん電脳戦だよ」

 

「よしきた。……しゃくっ」

 

「あー!!」

 

 ミズキの叫びも虚しく、スイカ一切れがクルミの口の中に消える。

 

 すると、それと同時に店のドアが開いた。

 

「───おはよー!! 労働者諸君!」

 

「おはようございます」

 

 元気よく、あるいは礼儀正しく挨拶をして入ってきたのは千束とたきなだ。

 二人の仲はかなり進展したものの、この組み合わせがまったく同時刻に出勤してくるというのは珍しい。大抵はたきなの方が早い。

 

「ん? あぁおはよ。聞いたよー、えらいことになってるわね」

 

「みたいだねー。でも私らDAじゃないから大丈夫だよ」

 

「それは詭弁でしょう。可能性はゼロじゃありません」

 

 見れば、ミカがスマホでどこかに電話をかけていた。

 しかしながら、相手とはあまり実のある話は出来ていないようで───。

 

「……次の被害を防ぐためにもなると思うが。そうだ。……、あぁ。そうか……。わかった」

 

楠木さん(楠木司令)?」

 

「本部から追加の情報が?」

 

 ミカは黙って首を横に振った。

 リコリコ支部は元より、DA本部との折り合いが悪い。仮にも支部なのにろくな情報共有がされない状況は改善していなかった。

 

「かーっ、天下のDA様は相変わらずだね。何でそんな面子にこだわるんだろ」

 

「ま、そのためのクルミだ。情報戦は任せよう」

 

「いえす。勝手に覗いちゃうから、よー」

 

 カウンターと厨房のさらに奥、バックヤードでゴロゴロしている伝説のハッカーを見て、他の4人は『本当に大丈夫かなぁ』と内心思うのだった。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 ─────都内某所、東京湾が見える海沿いのアパートにて。

 

「明治政府の樹立以前に組織された暗殺部隊、『彼岸花』」

 

 『アランの男』からの新たな依頼を受け、『真島』なる謎のテロリストと接触し、その潜伏先に通うようになって早1ヶ月。

 ウォールナットの好敵手にして今や国内最高のハッカーを自称する少年、ロボ太は窮地に立たされていた。

 

「その学名から現在は『リコリス』と呼ばれている。ここまでは前に話した通りだが、僕の調べによると───」

 

「おいおい。違うだろ?」

 

 真島はハンバーガーを齧りながら言った。口調は軽かったが、恐ろしく低い声だった。

 平素着ているコートとアロハシャツを脱いだ裸の上半身には、真新しい包帯が巻かれている。

 そしてロボ太の背後には、真島の配下である屈強な男が2人。

 

「いっ……いやいや! 待てよ聞けって、次のターゲットは……」

 

「替えの利く駒なんざいくら潰しても変わんねぇよ。なぁ、お前がちゃんと俺の目的を理解してるかどうか、確認してもいいか?」

 

「……日本に入国したマフィアやテロリストが忽然と姿を消す、その理由の究明と解決……」

 

「わかってんじゃねぇか。そのリコリスと、元締めの『DA』とやらをブッ潰す」

 

 毒々しい緑の縮れ毛の男は、半ばまで消費したハンバーガーをテーブルに叩きつけた。

 

「うわ!?」

 

「お前がガキどものスマホを調べりゃ敵の本拠地が割り出せる、っつゥから持ってきた」

 

 飛散する肉汁とバーベキューソースが、机上に乱雑に置かれた携帯端末を汚していく。

 それらすべては、ここしばらくの『リコリス狩り』によって得た戦利品だ。

 

「そこからIPアドレスを辿ってるトコなんだよ。でも民間のキャリアじゃなくて専用の秘匿回線を使ってるみたいで、おまけにコイツのセキュリティが」

 

「おい」

 

「あっ!? えっ、え、お、おい!」

 

 真島がひとつ顎をしゃくると、配下の男たちがロボ太の両腕を固めた。

 "底意地の悪い痩せた被り物小僧"であるロボ太に、拘束を振りほどく筋力など備わっているはずも無い。

 

「何? 何ッ!?」

 

「もう1ヶ月だぞ?」

 

「ヒ……!」

 

 テロリストは流れるような動作で拳銃を抜き、ロボ太の額に突きつけた。

 被り物越しとはいえ、引き金を引けば眉間に穴が開くことは間違いない。

 

「お前の指示で俺の仲間が32人死んだ。最後の6人は()()()()()()()()()()()()()()一方的に全滅だ」

 

「う……。ぎ、犠牲が出たのは想定外だったけど……、それが一番速いし! 今度のリコリスだって面白いはずでっ」

 

「駄目だ。こっちはお前の指示通りに動いた。その結果がこれだ。このままじゃバランスが悪い」

 

 ロボ太は───しかし、その場での処刑を免れ、

 

「あと3日でDAの場所を探し出せ」

 

「うわっ!?」

 

 配下の男たちはロボ太を軽々と担ぎ上げると、潜伏拠点であるアパートの廊下へ叩き出した。

 ロボ太は冷たく硬い床面にしたたか尻を打ちつけ、喉元まで出かかった罵倒の言葉を、男たちが部屋に戻ってから吐き捨てた。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

「ったく……! 何だってんだよクソッ……。───もしもし。もしもし!?」

 

<はい。こちら姫蒲(ひめがま)

 

「ロボ太だ! ボスを出してくれ!」

 

<申し訳ありません、ただいま手が離せないようでして。ご用件なら私が伺います>

 

「チッ! ……あんたのボスからの追加の依頼だけど、あのリコリスに真島は全然興味持たないぞ! 正直、ぶつけるのは無理だと思う!」

 

<少々お待ちください>

 

「……ッ。………………」

 

<───はい。『頑張れ』>

 

「は?」

 

<『頑張れ』と仰っています>

 

「え……」

 

<ですので、頑張ってください。失礼します>

 

「あっ!? ……は、えっ……」

 

 ロボ太は、通話が切れたスマートフォンの画面を、しばし呆然と眺め─────。

 

 

 

「僕は頑張ってるよおぉぉ───っ!!」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。