萌え声人類種の天敵系ロリっ娘リコリス vs 俺たちのちさたき vs ダークライ   作:ごまぬん。

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リアルハロウィンまでにハロウィン回の執筆が終わらなかったので初投稿です。



Destination of echo(2/4)

 ───数ヶ月前、僕は因縁の相手である伝説のハッカー『ウォールナット』を倒した。

 これで僕は国内最高の、いや、世界最高のハッカーの座に登り詰めた……。

 

 ……はずだったんだけど。

 

「う〜ん………………」

 

 僕がウォールナットに勝利するきっかけをくれた連中が居る。アラン機関だ。

 その時に知り合った機関のエージェントから、また依頼があったのだ。

 恩というほどではないが多少の義理はあるし、頼られて悪い気はしない。金払いも良いしね。

 

「……ったく。あー、嫌んなっちゃうなもう……」

 

 んでまぁ……頼まれたのは、こないだ入国してきたっていうテロリストの支援。それと、最終的にそいつをDAにけしかけて、ある『リコリス』と対決させること。

 アランの男が真島と『そのリコリス』を戦わせたがってる理由は知らないが、何にせよDAの実態を暴かなくては話にならない。

 ……しかし、国家レベルの機密組織であるDAへのアタックは、たとえ僕の力をもってしても難しいと言わざるを得なかった。

 そこで、真島の部下を使って、リコリスの連中が使ってるネット端末を集めさせたりもしたわけだが……。

 

「命には、代えられないよなぁ」

 

 結果は惨敗。

 ヤツらのスマートフォンは……恐らく政府の専用回線を経由し、組織中枢の情報システムと連携した高度なセキュリティと、奇妙な通信プロトコルを備えた特別製だった。

 サンプルが集まれば解析が捗るような代物でもなく、おまけにスマホを奪取するための『リコリス狩り』では真島の配下連中に犠牲が出た。

 バランスだの何だのよくわからん理屈を並べ立てていたけれど、要するにヤツはその報復で僕を殺すと言ってきた───『3日以内にDAの拠点を見つければ許してやる』という条件付きで。

 

「クソッタレ。でも、やれることはやっとかないと……」

 

 匿名通信システムを使い、深層ウェブへと潜っていく。

 こんな場所に集まっているPCオタク(ギーク)どもなんぞ、僕どころかかつてのウォールナットにすら及ばない雑魚ばかりだが。ヒントくらいにはなるだろう。

 さて、どこから話を詰めたものか。

 

《政府専用の基地局を見つけたが、独自のOSで動いてて解析が難航してる。少しでも知ってることがあれば情報求む》

 

 っと……。

 よーしよしよし、レスポンス来てるぞ。ゴミどももたまには役に立つじゃないか。

 

《そんな危ない情報持ってるワケねーだろ!》

 

《消されるゾ》

 

《どっかの公的サービスにバックドアとか仕込んどる勇者おりゅ?www》

 

「何だよクソッ!!」

 

 どいつもこいつもカスばっかりだな!

 しかし、バックドア……。バックドアか。

 3日の期限さえ無ければ僕が自力でやってたところだけど、背に腹は代えられない。

 誰か、何かしら、足がかりだけでも残してくれていれば……。

 

《別にサイバー攻撃だけならイマドキ小学生でも出来るだろ》

 

《日本がITよわよわ国とかいう風潮 一理ない》

 

《ここ10年くらいでだいぶ事情変わったもんな》

 

《バックドアっつってもちゃんと生きてる奴じゃないとな》

 

《そんなこと出来る神がいるとしたら・・・》

 

 い……、いるとしたら……?

 

《ウォールナットだな》

 

《ウォールナットだ》

 

《これはウォールナット案件》

 

《ウォールナットは神!》

 

《ウォールナットは神!!》

 

《ウォールナットは神!!!》

 

《ウォールナットンゴ》

 

《ちくわ大明神》

 

《ウォールナット神》

 

《ウォールナットたん》

 

《誰だ今の》

 

 

 

「と゛う゛し゛て゛な゛ん゛た゛よ゛お゛お゛ぉ゛お゛!゛!゛!゛ ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛!゛!゛!゛!゛」

 

 この情報弱者どもがあああぁぁぁぁぁ!!

 ウォールナットはッ!! 死んだだろッ! 今は僕が……んああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 

 

 

 それからは結構真剣に協力してくれるヤツも何人か現れたが、その日の内に全員逮捕された。逃げ切ったのは僕だけだ。

 クソが───使えない凡人どもめ!

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 ───よし、仕込みは万全っと。

 さぁ休憩だ。今日もよく働いた……果報は寝て待てってね。

 

「むしゃむしゃ」

 

 お、このフルーツあんみつ結構イケる。

 初めて食べたけど、こう、特にバニラアイスが乗ってるのが良い。和菓子の概念を前向きに冒涜してる辺りが。

 

「……クルミ? 調査するんじゃなかったの?」

 

「やってるよ。ファイアウォールを突破するドリルが2基、警戒網を麻痺させるジャマーが2基、データを抜き取るクローラーが2基、万が一の時『ラジアータ』の反撃を食い止めるセンチネルが2基。ジャマーAとセンチネルB以外はbot化してるし、その2基も半自動操縦だ」

 

「はっ? 『ラジアータ』の反撃って……アンタ、DAをハッキングしてんの!?」

 

 何を今更……あっ、これは言っちゃいけないんだった。さすがにな。

 長く傭兵やってて経験豊富なミカとか、異様に勘の鋭いニコル辺りはうっすら疑ってる節はあるけど。

 

「さすがはクルミさん……やばいね」

 

「わたしより小さいのにすごいねぇ」

 

「ミカド、算術や絡繰りの術はさっぱりなのです。今後はクルミ先生と呼ばせていただくです!」

 

 おいおい、そんなに褒めるなよお前たち。いくらぼくでも舞い上がっちゃうだろ。

 ……どうでもいいが、御門は何で当たり前みたいな顔してバックヤードまで来てるんだ?

 

「フッ。ちょろいね」

 

 もぐもぐ。

 しかし、これマジで美味いな。無限に食えそうだ。

 

「たきなー! おかわりっ」

 

「…………」

 

 何故か微妙に不満そうな目で見られた。解せぬ。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

「……もう2日だ! というかあんたらの方こそ、僕よりDAのことに詳しいんじゃないのか!? 拠点の場所くらい教えてくれたって……!」

 

<知っていれば教えています。そもそも、真島の怒りはあなたの作戦のせいでしょう>

 

「はぁ!? あいつが頭おかしいだけだろ!」

 

<とにかく、上手く彼の興味を惹いてください。要は何事もバランスですから。失礼します>

 

「あっ……。……バランス、バランスって……! お前らあぁぁぁ!!」

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 リコリコ終業後、千束のセーフハウス1号。

 

「わははははは!」

 

 お笑い番組を見る千束の爆笑をBGMに、食器を洗いながら考える。

 

「…………。……ジャンケンの勝率は、統計的にどの手も3割なのに」

 

 結論から言うと───『家事分担ジャンケン』において、私は全敗していた。ただの一度も例外なく。

 家事スケジュール表にはもはや私の名前しか書かれていない。当然、料理も洗濯も掃除もすべて私の仕事だ。

 

「やっぱり『眼』の力? でも、銃撃とジャンケンじゃわけが違う……」

 

「たきな? どうかした?」

 

「いえ何でも。どうぞ、紅茶です」

 

「ありがと。───ん?」

 

 といったところで、千束のスマホが大きめの音を立てた。何かしらの警報にも聞こえて、少々物々しい。

 

「あー、()()()()。3週間ぶりだな」

 

「は?」

 

 表情から笑みを消して立ち上がる千束。

 ……本当に何かの警報なのか?

 

 

 

 千束が上層階に繋がる梯子へ向かうと、こんな声が聞こえてきた。

 

「……おい!! 居ねぇぞ!」

 

「でもさっき、確かにこの部屋に入ったはずだッ」

 

 知らない男たちの声。

 ───そうか。まさか昨日の今日で実物が来るとは思わなかったけれど、これが……。

 

「どうも、こんばんは」

 

「は?」

 

「え?」

 

 そして銃声。打撃音。数度の悲鳴。

 私が一拍遅れて梯子を登り終えた頃には、もう勝敗が決していた。

 

「はいサヨナラー」

 

「「うわああぁぁぁぁ!!」」

 

 2人の男が文字通り蹴り出され、窓を突き破ってアパートのベランダから落下していった。

 そこそこ高い所から落ちたが……なるほど、真下がゴミステーションなんだ。ゴミ袋がクッションになる。

 

「あっ……しまった、また窓注文しなきゃ〜」

 

「お疲れ様です。……このための2階構造ですか」

 

「まぁね。あんなチンピラくらいならいいんだけど、昔は『リリベル』も来てたから」

 

「リリベル?」

 

 リリ、ベル……確か、鈴蘭(スズラン)を指す和製英語が『Lily bell(リリーベル)』と言うのだったか。

 どことなくリコリスと似た雰囲気の組織名だが───。

 

「あぁ……んーとね、男の子版リコリス? みたいな。おっかないよ〜」

 

 何と。それは初耳だ。

 

「知りませんでした……。DAの傘下組織ですか?」

 

「傘下っていうか、お隣さん? 公安(警視庁)寄りのこっち(リコリス)特戦群(自衛隊)寄りのあっち(リリベル)で住み分けしてるみたい。指揮系統から何から完全に別物で、私も詳しくは知らないんだ」

 

 真面目な顔でそう解説した後、千束は急ににやりと笑い、

 

「てか……何何? たきな、男の子に興味あんの〜!?」

 

「そういうことじゃないです」

 

 かく言う千束は興味あるのだろうか。

 まぁ、私たちには戸籍が無いから婚姻も難しいし……恐らくはリリベルとやらも事情は同じと思われるので、少なくとも現役の間は無縁の話だ。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 ……真島の興味を惹けと言われてもな。

 別に大して付き合いが長いわけでもないし、ましてやあと半日じゃDAの拠点を割り出すのも厳しいし。

 

 半分諦めの境地で、アランの男が言っていた『あのリコリス』の足跡を辿ってみる。

 理由はわからないにせよ、あいつが真島と『例の』を会わせたがっていることだけはハッキリしている。

 上手く真島の注意を逸らせるような情報が手に入ればいいんだが……。

 

<たっだいま〜>

 

 幸い、『例の』は機密組織のエージェントにしては開けっ広げな生活をしており、自宅の特定に成功した。

 ドローンを飛ばして監視……はぁ、まったく。

 僕に協力した雑魚の内、児ポ法の容疑(名目)パクられた(逮捕された)やつが何人か居たけど、これじゃ僕も児童盗撮犯じゃないか。

 

「……ん?」

 

 すると、『例の』が入っていったアパートの一室に、不法侵入を試みている不埒者が居た。

 外面こそ女子高生とはいえ、国家機密の暗殺者を手籠めにしようとはガッツのある連中だ。

 窓から見える部屋の様子は……、妙だな。殺風景すぎる。もしかして、あそこ自体が何かのフェイクか? 奥に隠し部屋があるとか?

 

<おい! 居ねぇぞ!>

 

<でもさっき、確かにこの部屋に入ったはずだッ>

 

<───どうも、こんばんは>

 

 

 

 そこからは、圧倒的だった。

 

 予想してはいた。『リコリス』は自分たちを狩りに来た真島の一味にも反撃し、何人かは殺している。それだけ手練の暗殺者ということだ。そこらのチンピラが敵う道理は無い。

 

 だが、この白金の髪のリコリスと来たらどうだ。

 大の男が2人がかりでも、影すら踏ませない。すべての暴力を躱し、容赦なく銃撃を加え、最後にはベランダから外へ蹴り出す。

 素人目にもわかる───こいつはリコリスの中でも別格だ。

 

「何だ……こいつ」

 

 ……これを。この映像を見せれば、真島も興味を持たないか?

 そう、要はバランスだ。真島はイカれたテロリストなんだから、日頃からずっと人を殺したいと思ってるに違いない。他人への好感度が常にマイナスから始まるんだ。

 僕が生き残るためには、どんな形であれ真島に好かれなきゃならない。

 

 さっそく連絡を取ろう。

 映像も夜間撮影だから、もっと見やすく加工してやって─────。

 

 

 

「……ふんッ!!」

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 部下に命じて、スレッジハンマーで鍵を叩き壊させた。3名様ご入場ってな。

 にしても……まさか今どき普通の物理鍵とは。世界一のハッカーを自称する割には無用心な奴だ。

 

「へぇ……」

 

「!? あ!? ど、ドアがぁ!!」

 

 ───()()()()

 ゴチャゴチャしたパソコンの前に、変なロボットの被り物をしたチビが一匹。ロボ太だ。

 

「おう。もう3日経ったぞ」

 

「まっ、ままままだ半日あるだろぉ!? ていうか、どうしてここが……!」

 

()()()……っつっても伝わらねぇか。ちょっと()()()()()使()()と知り合いでなァ。……そんで?」

 

 目配せして部下に両脇を固めさせる。

 逃げるのを防ぐためじゃない。なるべく恐怖を与え、苦しませてから殺すためだ。

 

「あっ……。いや、あの……」

 

「そんで?」

 

「待て! ヤダ……! 何だよッ、待てって! あのリコリスが」

 

「『リコリスが』じゃねぇよ」

 

 懐のチアッパ・ライノを抜いてロボ太の額へ。

 感触と音からして、このふざけたマスクに大した材質は使われてない。普通に撃てば死ぬだろう。

 

「待って!! 待ってッ! 見て欲しいものがあるんだ!!」

 

 ハァ……。鬼才ハッカーってもガキは所詮ガキか。つまんねぇ命乞いしやがって。

 こんなことなら、意地を張らずに『掃除屋(クリーナー)』───いや、『■■■■■■』のお歴々とヨロシクやってた方がマシだったか。

 

「他の奴らは死んでんだよ?」

 

「待て……! すっ、すごい映像がぁ!」

 

「バランス取らなきゃなァ!!」

 

「頼むッ、ビデオ見てぇ! お願いだ! 待て……! うぁあぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 

<待ちたまえ、アランの虎よ>

 

 

 

 

 

 ……あ?

 

「───え?」

 

 

 

 何だ、今の音声は?

 コイツのパソコンのスピーカーから聞こえたが……。

 

<……ほう>

 

 モニターの表示が切り替わる。

 

()()()。我らを利用したつもりか>

 

 聞き覚えのある(しゃが)れ声が耳朶を打つと同時、一人の『リコリス』の姿が目に入ってくる。

 白金の髪。ハイレベルな身のこなし。そして。

 

「……こっ、……こいつだ!!」

 

 ここぞとばかりにロボ太が喚き立てる。

 

「こいつがきっと、リコリスのトップだ! DAの本拠地を割るのはいいが、襲撃の前にこいつを殺しておかないと……お前たちは、全滅するぞッ!!」

 

 ─────あぁ。

 

「なるほど。……()()()()()()

 

 知っている。そんなことは。

 お前に言われるまでもない。俺は……俺は、あの真紅の瞳に……。

 

「真島さん?」

 

「離してやれ。予定変更だ」

 

「へ……。ぁ……、どうも……」

 

 最高だ。面白くなってきやがった。

 金も人手もずいぶん使わされたからなァ……。そりゃ、これくらいの収穫が無きゃ釣り合わねぇってもんだ。

 

「おいチビ。いやロボ太」

 

「ひゃいっ!?」

 

「明日、そいつを倒しに行く。今すぐ作戦を考えろ」

 

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