萌え声人類種の天敵系ロリっ娘リコリス vs 俺たちのちさたき vs ダークライ 作:ごまぬん。
リコリコ公式が唐突にお出ししてきた裏設定集のせいでただいま絶賛悶絶中です。どうしてくれんのこれ?
─────追い詰めた。
「あんたが襲撃犯の親玉?」
蛇みたいな緑色に染めたモジャモジャの髪。如何にも悪党って感じの黒いロングコート。
今はこっちに背中を向けて項垂れているが、意識はある。
「……酷ぇじゃねぇか」
「うわ」
両手を上げつつ振り向いた男は、頭からダラダラと血を流していた。
しかし、暴走中の車から落ちた割に軽口を叩く余裕はあるようだ。
どうにか話が通じればいいけど……。
そう思った矢先、ニヤニヤと笑う男の口が、何かを噛み潰したように歪んだ。
空恐ろしいほど素早く滑らかに身を翻すと、私の『救世主の銃』のスライドを掴んで止める。
───強い。先生や『サイレント・ジン』と同じ、積み重ねた鍛錬と実戦の経験が調和した、完成された兵士だ。
「ぶッ!」
「あっ……!?」
瞬間、目に激痛。視界が真っ赤に染まる。
痛いは痛いけど、怪我をしたとかそういうのじゃない。何をされた?
額から流れた血を……いや、ゴムの匂い? これってまさか……
「はははははははは!!」
……目が、見えない。
視えない攻撃は、私も避けられない─────!
◇ ◆ ◇ ◆
夜更けの街で、それを見つけた。
乱暴に脱ぎ捨てられた黄色い外套。女の子らしいピンク色でデコレーションされたスマートフォン。
「───千束のポンチョとスマホが……!」
クルミの情報支援とニコルの"戦術予測"によって、千束の足跡を辿ることは出来ていた。ほんの少しずつ。
だが、肝心の本人を見つけられていない。リコリスの本領は隠匿性と機動力だ。前者はともかく、『敵』と交戦中であろう千束が頼みにするのは恐らく後者。全力戦闘中の
<手段は選んでられないか……! 街中のカメラをハックするっ>
<DAはまだ犯人の素性を掴めてないの!?>
車にて別行動中のミズキさんが毒づいた。
先刻まで『ラジアータ』へとアタックしていたクルミが答える。
<あぁ───そいつを探り出すために、リコリスを囮にしたけど>
<リコリスを囮に? 馬鹿なことを……!>
……店長の怒りは尤もだ。
確かに、リコリスは組織と使命のためなら死も厭わないよう教育されているが、それは決して犠牲を前提とした行動を選んでいいという意味ではない。
相手は既に4人のリコリスを屠った手練だ、最大の警戒をもって事に当たるべきで───。
<その囮のリコリスが敵のグループを皆殺しにしちゃって、尋問はご破産だとさ。使ってた銃は回収できたから、それで『武器の出処は地下鉄襲撃犯と同じ』ってとこまではわかったらしいが……>
……。……何だか他人事のような気がしないけれど、ともかく、襲撃犯の正体は未だ不明ということか。
「さっき銃声がした。近いよ、たきなお姉ちゃん」
<っと、そのようだな。ドローンを先行させる。ナビ情報を更新……、あぁっ!?>
「どうしました?」
<まずいぞ、千束がやられてる!! 急げ!!>
───私とニコルは、同時に銃を抜いた。
もう言葉すら必要ない。東京の闇の中を、疾風と化して駆けていく。
◇ ◆ ◇ ◆
殴打。蹴撃。人が、人を、傷つける音。
私が悲鳴を噛み殺す度、周囲を取り囲む男たちから歓声が上がった。
「───ゴム弾じゃなく! 実弾にしとけばよかったなァ!」
何度目かの蹴り。受けるしかない。
……致命傷には程遠い。私は最近、知り合った特異なリコリス───黒髪の剣士・御門かなはから、ある種の古武術について軽い手ほどきを受けていた。
専門的に修得したわけじゃないけど、最初の車の突撃から生き残れたのも、
「いいぞー!」
「ウオォ!!」
「ハハ。悪ぃな、品の無ぇ馬鹿ばっかりでよ」
リーダーの男───配下には『真島さん』と呼ばれるそいつも、理解している。理解していて、明らかに加減し、無駄に甚振っている。
私を半ば包囲する一味の数は、ざっと見ても30人を超えていた。この人数で正面から一斉に銃撃された場合、この『眼』をもってしても回避は難しい。
「……。……なぁ」
とりあえず上体を起こすと、真島の拳銃が私の額を照準していた。
緑の天パに、血に濡れた額。チェシャ猫みたいな笑い顔。
ジョーカーって現実にも居たんだな、でも顔が白塗りじゃないし……とか、能天気な感想が頭に浮かぶ。
「お前の『使命』は何だ?」
「……?」
「
真島は空いている方の左手で、ちょいちょいと首元を指した。
思わず同じ場所に手をやる。そこにあったのは───当然、『鈍い金色の梟』のペンダント。
「"
───そして、目の前に居る人間がどれほど面白かろうと、それは
「……っ」
嬲られている間に真島の即席顔料は拭った。レディの大事な顔にこんなもん吹きつけるとか、とんでもないやつだ。
回復した視界で周囲の様子を窺う。相変わらず嫌になるほど敵だらけ。無傷でやり過ごすのは不可能だ。ましてや、ここから逆転して制圧など。
「ま……どうでもいいか。お前はここで賞味期限切れらしいぜ、
ただし、それは。
こいつらが戦っているのが、私ひとりだった場合の話だ。
◇ ◆ ◇ ◆
「たきなお姉ちゃん」
「はい」
「わたしは、どうしたらいいと思う?」
「……。千束には悪いですが」
「うん」
「私は千束ではないので、
「いいね。じゃあそれで」
◇ ◆ ◇ ◆
最初の10秒で、すべては終わっていた。
ぱすっ、という奇妙な音がして。
「……!」
真島の銃が手元から弾かれた。
すぐさま弾丸の飛んできた方角を見やるが、そこには茂みと暗がりしか無い。
「ぐわ!!」
「うぉお!?」
そうしている内にも、
「あっ、足があぁぁ……!」
「クソ!! どこだッ!?」
「ここだよ」
蜂蜜めいた甘やかな───しかし、聞く者の魂を鷲掴みにするような冷厳極まる声と共に、『何か』が放り投げられた。それにガラスの割れる音が2つ続く。
「……あっ? が、あ!? ぁぁああぁぁぁぁぁ!!」
「ひっ、ぎゃあ、あああ!! あづッ、熱いいいィィびィィィ!!」
そして、一味のうち2人の男が
火炎瓶。引火しやすい
生肉の爛れる悪臭と、『目の前で仲間が燃えた』という
「───あぁ。良い夜だね」
横合いから銃撃を受けているにもかかわらず、全員の視線がそちらに向いた。
そこには、恐怖の源が立っている。生身の人間に火炎瓶を投げつけた、つまり、
投擲の距離を稼ぐためだったのだろう、公園に違法駐車された真島一味の車の天井に乗っている。
冷ややかな蒼の月光を背に、赤銀の髪を揺らす小さな影が、男たちを睥睨していた。
「死ぬには良い日だ。そうでしょ?」
次の行動に反応できた人間が、その場にどれだけ居ただろうか。
黄昏色の制服のリコリス、星谷ニコルが跳躍する。両手に握られた"双剣"が、鋭利な煌めきを放射する。
「ごぁあ!?」
真島一味の1人の顔面がX字に裂け、鮮血が噴き出す。
ジェリコ941とラドムVISwz1935に装着された、2振の
「お゛っ」
「あぎゃ」
「が」
その場でくるりと回転しながら、3度発砲。血の色の煙が3度咲く。きっかり3人が倒れる。
一見して掠めたようにしか見えなかったが、それは
対人間の無力化、瞬間的な衝撃力に特化した『
「ヒッ……!!」
「汚い」
「ぶぇあ!?」
突き上げられた銃剣が、男の下顎と舌を貫いた。
刃が脳まで達しなかったのは幸運か、それとも"なるべくいのちだいじに"という取り決め故の手心か。
「ビビるな!! 囲め!!」
真島が配下に檄を飛ばすものの、一度染みついた恐怖は簡単に消えることが無い。
最初に火炎瓶を浴びせられた2人は、既に燃焼する黒い塊と化している。
「臭い」
「ギャッ!!」
回し蹴りを一つ。筋肉と脂肪の層を突き破るインパクトによって、男の腎臓が血を吐いた。
リコリスに支給されるローファーの爪先と踵には、防護シートを兼ねた軽量金属カップが仕込まれている。体術に優れたリコリスが使えば、人体の骨や内臓程度は容易く砕いてのける。
「気持ち悪い」
「あぁ!?」
「ぐお!!」
脚を引き戻す動作と同時に、両手の銃の引き金が絞られている。
"1人3発"の縛りすら必要ない。『
「撃て! 撃てッ!!」
「今までと同じリコリスだ! ただのガキだ、やれるだろう!」
ようやく我を取り戻した真島一味が反撃を開始する。
ニコルは後ろも振り返らず駆ける。一味が停めているバンを遮蔽物として、襲いかかる銃弾を回避していく。
「うぐぁ!!」
だが、そうして彼らが取り戻した士気を嘲笑うかの如く、たきなの後方支援が反撃の機会を奪う。
都心部とはいえ夜間の暗所で、
「畜生、またやられた! もう一人居るぞッ!」
「んなことわかってるよ! でも姿が、ぎゃぁっ!?」
実際のところ、錦木千束と井ノ上たきなを
接近戦で無双の強さを誇る千束に、正確無比の射撃を持ち味とするたきな。この二人の連携が完成すれば、同時期にリコリコへ配属された──目下、DA最大の獅子身中の虫である──ニコルの制御を確実なものと出来る。
ただ一点、想定外だったのは───極限の超直感により
「殺せェ!!」
「───吐き気がする」
「つぁっ……!」
「へ?」
「
「「おごごごごごご」」
アサルトライフルの銃口を身体の両側から向けられた瞬間、ニコルは射手2人の大腿部を撃つ。
非殺傷弾の激痛が彼らを襲うも、一度引き金にかけた指は戻らない。制御を失った銃弾が、赤銀の髪の少女を避けて、敵の同士討ちを誘発する。
「……」
「ンだァこいつら……!」
縦横無尽に暴れ回る『
『救世主の銃』。最初に殴りつけられたとき思わず取り落としていたが、無用心にもすぐさま拾える場所に放置されている。
「っ!」
「うぉあ!?」
「ぐあっ!」
「チッ……!」
千束が攻撃を再開した。形勢不利を悟った真島はすぐさまその場から走り出す。
とはいえ、時間は真島一味の味方だ。ロボ太の通信指揮によって、都内に潜伏中の配下が続々と集合しつつある。ニコルとたきな、千束の奮戦にも限界が見えていた。
「だりゃっしゃあぁ───い!!」
ミズキの咆哮と共に、喫茶リコリコの赤い営業車両が現れた。
真島の部下を3人ほど撥ね飛ばしつつ、千束の前で停止する。開いたドアの向こうにはミカと、先んじて回収されていたたきなの姿がある。
「千束!! 乗れ!!」
「うおぉ、とりゃーっ!」
急いで後部座席へと滑り込む千束。割と無茶な姿勢で回収されたのはたきなも同じらしく、そうでなくとも一般的な自家用車の後部座席という空間は、大柄な男性1人と女子高校生2人が座るにはいささか手狭だった。
「せ、狭い……」
「詰めてください……」
「ミズキ! 出してくれ!」
「は!? ちょっ、え、ニコルは!?」
「何か知らんけど『わたしなら平気』だってさ! 行くよ!!」
たきなの銃撃が止み、千束が去ったことで、真島一味の注目はニコルに集中している。仲間が集まってきたことで当初の恐怖も薄れていた。
孤立した『
「……逃がすかよォ!! アランのリコリスッ!」
───リコリコ・チームにとって幸いだったのは、一味の首魁である真島の興味が千束に向いており、逃げるリコリコ営業車と残ったニコルにターゲットが分散したこと。
<僕にここまで苦労させといて、逃がすなよ!!>
「へぇ、車も
「千束、こっちは弾切れですっ!」
「ひ~!!」
<マジかよこんな時にッ! お前ら、
「……
真島一味にとって不幸だったのは、
携帯式対戦車擲弾発射器・RPG-7から発射される対戦車ロケット弾の初速は、弾頭にもよるが秒速115m───およそ時速400㎞以上に達する。
隠匿性を重視──というよりは
新幹線よりも高速で飛来し、戦車の重装甲すら貫徹する爆轟の砲弾。
本来は人体などの脆弱な目標に対して効果を発揮する兵器ではないが、その高い運動エネルギーと飛散する超高圧の
斯様な代物に、生身の人間が真正面から立ち向かうことなど、果たして可能なのだろうか。
「お待たせいたしました、タイチョー」
─────
そういった芸当が可能だからこそ、
人類史において最強格の暴力装置たる『銃』。凶悪な犯罪者やテロリストと戦うにあたり、銃火器の運用を旨とする
彼女が頼みとするのは常に、その腰に佩いた長短一対の『刀剣』のみである。
帝都に降りる夜の帳の中を、銀の軌跡が奔った。
まさしく神速の一太刀。振るわれた大型超音波振動ブレード『玉兎』の刀身が、秒速115mで噴進する対戦車ロケット弾の表面をするりと
次の瞬間、横合いから加えられたわずかな力によって、砲弾の軌道が捻じ曲げられた。
「……あ?」
ゆらゆらと飛んで行った砲弾は、ロボ太が制御を乗っ取り、今まさに真島が乗り込もうとしていた自動車に直撃する。
炸裂したメタルジェットがバンパーを粉砕し、その運動エネルギーが車体を貫き、燃料タンクに充填されたガソリンに着火した。
爆炎が膨れ上がる。発生した衝撃波によって真島は吹き飛ばされ、公園内の人工池に頭から突っ込んだ。
◇ ◆ ◇ ◆
誰も、恐らくは千束やニコルですら、謎の乱入者が何をしたのか理解できなかった。
それは、彼女が修めている古流武術の『技』だ。
古武術とは言うが、現代に至るまで多くの門下生に継承され、新たな機軸を取り込んでは淘汰し、常に発展と洗練を続けてきた最新鋭の技術体系でもある。
「
高速で飛来する敵手の飛び道具を
理屈にしてみれば単純な技だが、実際それを為すのにどれほどの研鑽と技量を要するかは、もはや語ることさえ出来ない。
修羅の一念、鬼神に通ずる。精妙の域を遥か超越し、人智の及ばぬ魔技にまで到達した至高の剣術。
銃を使えない異端のリコリスにして、国士無双の剣士。御門かなはの真骨頂である。
「やっほ、御門」
「タイチョー、ご無事で……聞くまでもなかったですね。すみません」
異様な光景だった。
銃火器で武装した30人近い屈強な男たちが、たった2人の少女を前に沈黙している。
真島という司令塔を失ったことは言い訳にならない。雇われとはいえプロの傭兵なのだから、彼らとて自己判断で動くことが出来たはずだ。
「それにしても───この人たち、変じゃありませんか?
「リコリコ支部の方針なんだよー。わたしも正直うんざりしてるけど、千束とはあんまり喧嘩したくないから……」
「じゃあ仕方ないです。ミカドはそのへん加減とか出来ないですが、どうしましょう?」
この鉄火場で堂々と立ち話に
それは、大胆不敵というよりも、
「首さえ刎ねなきゃいいよ。御門の腕なら
「う〜ん……。そうですね、やれるだけやってみるのです! ……こないだもそれで怒られちゃいましたし」
───ドットフィフス・クラスの開設以前。
『
楠木はニコルの
だが最終的に、4人の例外を除き23人が死んだ。星谷ニコルの赴く戦場とは、それほどまでに過酷で苛烈な世界だったのだ。
4人の例外。
錦木千束。
春川フキ。
エージェント・ゴッホ。
そして、御門かなは。
「御門と一緒に遊ぶのは久々だね。クルミちゃんの時は離れ離れだったし」
「? クルミ先生がどうかしたのです?」
「あ……。これまだ言ってなかったっけ。まぁいいや、終わったら教えてあげる。だから今は」
「はっ、委細承知。ただ斬り捨てるのみなのです」
二体の
そこにもはや戦いは無く、殺伐たる蹂躙が残るばかりであった。
Q.
A.そうです。
Q.フキさんって千束に比べると実力は劣る印象だけど、どうしてニコルと組んで死ななかったの?
A.まず、フキさんも
それに加えて、ニコルが考える