萌え声人類種の天敵系ロリっ娘リコリス vs 俺たちのちさたき vs ダークライ   作:ごまぬん。

33 / 78

リコリコで一番熱いCPはまじロボという風潮
一理ある



#7 Time carries everything away
Who are you(1/3)


「「───せーのっ!!」」

 

 DA本部。真島一味との交戦を経て『リコリス狩り』の犯人を突き止めた私たちは、情報共有と今後の方針を審議するため楠木司令と会っている。

 

「それが……真島か」

 

「はい。これが真島ですっ」

 

 今は真島の人相をハッキリさせるべく、似顔絵を描いて提出しているところだ。

 私は少し離れた位置から千束とニコルを支援していたので、真島の顔を正確に見ていたわけではないが……あの錦木千束を追い詰めた相手だ。印象には残っている。

 

「……ぷっ」

 

 一方、真島と至近距離で交戦していたはずの千束の似顔絵は……、何だろう……。

 ツンツンした緑色の髪に、やたらキラキラした目の……。

 

「あっはははは!! 何それ〜!? たきな、へったくそー!」

 

「千束こそっ、そんなの漫画じゃないですか!!」

 

「全然違うじゃねーか!!」

 

「どうどう、落ち着け春川……」

 

 といったところで、同席している春川フキが吼えた。それを包帯で顔を隠したオレンジ制服(ドットフィフス)、『エージェント・ゴッホ』が(なだ)める。

 会議室のプロジェクターに映されているのは、私たちの証言から作成されたモンタージュ写真だ。

 

「それはそれで、別に似てないんですけど」

 

「そう言うから描かせてんだろうが」

 

「面目ないのです……。ミカドが砲弾を飛ばした先に、ちょうどその……真島さん? が居たなんて。シショーの『鏡花水月』なら、飛び道具を狙った方向に受け流せたのですが……。まだまだですね。ミカド、今後も精進するのです!」

 

「いや普通の人は刀でロケットランチャー跳ね返せないからね」

 

 そんな様子を見ていた楠木司令が、ボソリと告げる。

 

「……お前たち、もう帰っていいぞ。やはり人相書きならニコル一人で充分だったな」

 

「!? 待ってください司令!! 私のは似てますッ!」

 

「ならフキも描いてみろよ〜!」

 

「お前らしか真島見てないんだから描けるわけないだろ!」

 

「あっそうか」

 

「ほんっとアホだな!!」

 

「春川、とりあえず水飲んで落ち着け。な?」

 

「リコリスは絵も必修にすべきッスねぇ」

 

 春川フキのパートナーである乙女サクラが、机に頬杖を突きながら言った。

 何かといけ好かない後輩だが、今回ばかりは同意見だ。

 とはいえ、私だってさすがに千束よりはマシだと思───。

 

「出来たよー」

 

「───ほう」

 

「……えっ。嘘、ニコルあんた……いつの間にそんな特技を……?」

 

「コイツが真島か。……確かにモンタージュとは似てないな」

 

 …………、……。

 ……。……うん……。

 

「暗かったからあんまり正確じゃないけどね」

 

「お前たちが見たのも、この顔で間違いないか?」

 

「まぁ〜……。……そうねぇ」

 

「……、はい」

 

「あと、無人の車が遠隔(リモート)で操作されてるのを見た。向こうの一味に優秀なハッカーが居る、クル……ウォールナット級のエキスパートだと思う。『リコリス狩り』の時も結局、ずっと後手に回ってたでしょ? 今回の敵に『ラジアータ』頼りの捜査は通用しないよ」

 

「留意しておこう。ゴッホ、情報部に共有を。諜報部隊の編成を任せる」

 

「了解」

 

「へー。やるねぇ、おチビちゃん」

 

「……チビじゃない。わたしはニコ……」

 

 春川フキの拳骨が乙女サクラの脳天に落ちた。

 

「いっっっだ!! 何スか!? 何するんスか先輩!」

 

「上出来だ、ニコル。不甲斐ないアホ2人に代わってよく報告してくれた。ご苦労だったな」

 

「さっきからアホアホうるせーよっ! ……ちょい待ち、今アホ2()()って言わなかった?」

 

 ……?

 どうしてそこで私を見るんだ?

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

<この動き……。でも、やっぱ避けてるなんて有り得ないだろ>

 

「……」

 

<アンタの射撃が下手なんじゃないのか?>

 

「いいや。あの距離で外すわけが無ぇ。それに、このあと迷いなく撃ち返して来てるだろ? "当たらない"って確信が無きゃ出来ないことだ」

 

 

 

 

 

 君は───。

 

お前は───。

 

 

 

何者?(何者だ?)

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

「……ん?」

 

「千束、ランチ終わりのプレート頼む」

 

「はーい。……、……」

 

「どうした?」

 

「あっ……あぁ、プレートね。お手洗い済んだら出しとく」

 

 ───その日、午後からだっただろうか。

 

「う〜ん……」

 

 千束が、暇さえあれば何かを考え込んでいる。

 

「いらっしゃいませー! ……むむ」

 

 それでも業務に支障が出ないのは、さすがと言ったところだが……。

 

「ありがとうございましたー! ……ん〜。()()()()()()()()()()……?」

 

 結局、その日の終業時刻まで、千束の"考える人"状態は解除されなかった。

 そして夕方……。

 

「ぷは〜!」

 

「晩酌なら家でやれよ」

 

 ミズキさんがお酒を取り出した辺りで、私は意を決して聞いた。

 

「んん〜……? ん……」

 

「あの、千束。どうかしましたか? 何か今日、変ですよ」

 

「千束は毎日変だよ、たきなお姉ちゃん」

 

 そうかも知れないが。

 しかし、そんなニコルの軽口にも反応しない辺り、今日に限っては度を越して変だ。

 

「うぅん……。……、先生は?」

 

「さっき買い出し行った。何ぃ? もうオッサンが恋ちいのかな〜、千束ちゃんは?」

 

 ミズキさんが酔った勢いのままそんなことを言うが、これにさえ無反応。

 やがて、千束はいつになく神妙な顔をして、告げた。

 

「……。皆さん。リコリコ、閉店のピンチです」

 

 ─────え?

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

「クリア」

 

 終業後の雑事をすべて終え、照明もほとんど落とした時間帯。

 薄暗い店内をミズキさんが走査し、会話の輪に戻ってくる。

 

「はぁ。……あのね、他人(ひと)のスマホ覗き見すんじゃありません」

 

「だってぇ、見えちゃったもんは仕方ないでしょお」

 

 何でも千束は、店長のスマートフォンに『とある通知』が来た瞬間を、たまたま見てしまったのだという。

 

「目が良いと、余計なものまで見えてしまうんですね」

 

「パンツとかな……うぐっ」

 

 あっ、ついお盆で……。春川フキの癖でも移ってしまったか?

 

「楠木さんからのメールって、何でわかるの?」

 

「そうですよ。司令とは限らないでしょう?」

 

「いーや。先生をタラシ込んで、私をDAに連れ戻す計画じゃわ」

 

 ……だそうである。

 曰く、店長に『千束の今後について話したいから会えないか』というメールが届いていたとか何とか。

 

「……。自慢ですか? 結構ですねDAに必要とされてて」

 

「あぁ〜ん!! そうじゃないよたきな〜!」

 

 私に縋りついて頬擦りをする千束。

 半分冗談だったけど、面白いからこのままにしておこう。

 

「それがどうしてリコリコ()の閉店と関係してくるんだよ?」

 

「色々特殊とはいえ、一応ここもDAの支部だからねぇ。正式な指揮権のあるファースト・リコリスのコイツが居ないと存続できないのよ」

 

「楠木さん、真島を追うのに人手が欲しいのかなぁ」

 

「そういう事情なら私が戻りますよ、DAに」

 

「え〜!? そんな、寂しいぃ〜!!」

 

「たきなはお呼びじゃないんだろ……うえっ!」

 

 さすがにこの一撃は正当な権利だと思う。

 

「し、失言だったよ……。すまんて」

 

「みんなもお店無くなったら困るでしょー!?」

 

 リコリコ支部が解体……。

 正直考えにくいが、実際そうなってしまうと───。

 

「まぁ、私は所属が再決定するまで、養成所戻りでしょうね」

 

「ぼくは……もう少しここに潜伏してないと命が危ない」

 

「アタシも男との出会いの場が無くなる……!」

 

「わたしは……! ……。ぶっちゃけみんなほど困んないけど、DA本部じゃ気軽にお出かけできないからやだ!」

 

「そうでしょうそうでしょう!」

 

「「「うん!!(はい!!)」」」

 

 約2名ほど動機が不純だが、とにかく全員の利害は一致した。

 さっそくクルミがノートパソコンを持ってきて、調べ物を始める。

 

「『BAR Forbidden(バー・フォービドゥン)』───普通のエンジンでそのまま検索しても出ないな。徹底してる」

 

「DAのお偉いさん御用達だもんね。そもそもホームページなんてあるのかな」

 

「商売は商売だ、今どき無い方が不便だろう。まずはドメイン販売の業者を当たって……ネット上の情報から関連しそうなキーワードを拾う……アドレス欄に直接組み合わせを……、おっ。あったぞ」

 

「会員制のバーか」

 

 高級感溢れる店内の写真を背景に、瀟洒なフォントで説明が書かれたホームページ。

 会員制バー……。入会費やら何やらの項目には、ちょっと考えたくない感じの金額が並んでいる。

 リコリコの経営状態は確かめたことが無いが、これは……。店長は私費で通っていると信じたいところだ。

 

「入れるんですか?」

 

「そこはコンピューターの人の出番でしょ」

 

「情報の遮断に予算をかけ過ぎだな。一度アクセスしてしまえばハッキングは何でもない。偽造は簡単だ……が」

 

「おぉ!」

 

「アンタもたまには働きなさいよ〜」

 

 さすがは『ウォールナット』だ。

 しかし、当の本人は妙に渋い顔をしている。

 

「いや……。こんな店で、仕事の話するか? 普通に逢引(あいびき)じゃないのか?」

 

「……店長と司令は、愛人関係ということですか?」

 

「ぷふっ! 愛人て」

 

「た、たきなお姉ちゃん……!」

 

「アンタの口から……、何か興奮する!」

 

 えっ?

 な、何か変なことを言ってしまっただろうか……?

 

「けど実際そういうことだろ?」

 

「「ないないないないないないないない」」

 

「? 何で? わたしも有り得る話だと思うけど……」

 

「「ないないないないないないないない」」

 

 ないないないないないないないない、らしい。

 特に店長との付き合いが長い千束とミズキさんが言うのだから、何らかの根拠があるようだ。

 だが、まぁ、なるほど。10年もの間、独立独歩での活動を追認してきた支部の解体だ。さしもの楠木司令とて、慎重にならざるを得ないはず。

 付け入る隙は、きっとある……!

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 新調した自動車で配下の集合を待ちながら、真島はロボ太との雑談に興じていた。

 彼の興味は目下、先日交戦したリコリスたちに向けられている。

 

<おい。関係あるかも知れない情報が見つかったぞ>

 

「ん〜?」

 

<白髪の方だ。ヤツと同じ、非殺傷弾を使って戦った奴の記録……というより、噂があるんだ>

 

 白金の髪のリコリス。

 至近距離から放たれた銃弾をも回避せしめる異能の『眼』の持ち主にして、アラン機関との関係が疑われる少女。

 

<『電波塔事件』は知ってるだろ?>

 

「あぁ。()()()()()()()()()

 

<えっ。どゆこと?>

 

「んで? 噂ってのは?」

 

 相変わらず人の話を聞かないヤツだ。僕にももう少し色々知る権利があるだろう───。

 ロボ太は内心そう思ったが、言っても無駄だということはわかっていたので、仕方なく話を進めることにした。

 

<……謎の凄腕エージェント、『旧電波塔の英雄』だってよ。あの時のテロリストは全員、コイツ一人に叩きのめされたとか>

 

「一人か。やっぱ俺の記憶違いじゃなかったってことだ」

 

<はぁ? まぁ……嘘くせぇよな。こういうのは尾鰭(おひれ)がつくもんだから……>

 

 ドローンで全部空撮してたくせに、コイツは何を見ていたんだろう───と真島は内心思った。

 "アランのリコリス"も、『赤帽鬼(レッド・キャップ)』も、もう一人の"侍"も、嘘偽り無く現実の存在だったというのに。

 

「クッ……クク。あァ、だが信じられないのも無理はねぇ。あん時も一緒だった。まるで手も足も出なくてよォ……」

 

 愛銃のチアッパ・ライノを、車内に持ち込んだノートパソコンの画面に突きつけながら笑う。

 そこに映っているのはもちろん、白金の髪のリコリス───錦木千束だ。

 

「こいつぁ運命だな」

 

 ましてや、それがさらに同格の仲間を引き連れているなど───。

 茂みから援護していた射手だけは姿を確認できなかったが、真島が力を蓄えている内に、この国(日本)もまた凄まじい戦士を育て上げていたということだ。

 

<楽しそうで結構だけど。これからやってもらうこと、わかってんだろうな?>

 

 半ば陶酔していた真島の意識を、ロボ太の声が現実に引き戻した。

 

「お? ……あー、まぁな」

 

 真島はノートパソコンに刺さっていたUSBメモリを抜き取る。

 メモリには、製作者の自己顕示欲を表すが如く、ロボットの玩具のようなストラップがぶら下がっていた。

 

「しっかし、何でこんなもん直接挿しに行かなきゃならねぇの?」

 

<あのね……。DAのシステムはとんでもないスペックのスーパーAIが制御してるんだよ。ちょっとでも()()()()になれる、向こうの中枢に近いシステムを仲介しないと、アクセスを試みただけでこっちがパクられる(捕まる)わけ>

 

「はァー。わっかんねぇけど、遠くからチョチョイとやれねぇのかよ? 世界一のハッカーなんだろ?」

 

<なっ!? こ、これを作れるのは僕だけなんだぞ!! 『ラジアータ(DAのAI)』をクラッキングできるヤツなんて、この世にもう1人しか居ないんだッ!>

 

 ロボ太はいつになく興奮して抗議した。

 腕力で敵わないことは承知しているが、ならばせめて、ハッカーとしてのプライドは捨てまいと。

 

<く、く、くくく……今回の攻撃(アタック)さえ成し遂げれば、僕が本当のトップ・ハッカーだって広く……!>

 

「あーあー、わかったよ。お前さんの夢が懸かってるわけね」

 

<フン! 僕に出来ないことは、世界中の誰にも出来ないと思えよ!>

 

「頼もしいこって。んじゃ確認だが、コイツを警察署のパソコンに挿してくりゃいいんだよな?」

 

<そうっ。それが君の計画を達成するのにまず必要なことだ>

 

「ハッ───()()()()、だろ?」

 

 何故か勝手に共犯にされていた──というか既に普通に共犯なのだが──ロボ太は一瞬面食らった。

 

「10分後に襲撃をかける。通信のジャミングと逃走経路の確保、頼んだぜ。トップ・ハッカー」

 

<へっ……! さぁて。5分で終わらせろよ!!>

 

 しかし何にせよ、事ここに至ってはもうどうしようもない。

 いっそどうにでもなれ、という心持ちで、ロボ太はマシンのキーボードに向かうのだった。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

「……? おい……。君たち? 警察の前で、そういうオモチャはいかんよ」

 

「オモチャ……? ほう」

 

 暗緑色に染め上げた髪を揺らし、男は()()()()の先端を警官に向けた。

 本職の警察官ですらほほうと唸ってしまうような、それはそれは精巧な()()()()()

 

「───すまんな、こんなオモチャで」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。