萌え声人類種の天敵系ロリっ娘リコリス vs 俺たちのちさたき vs ダークライ   作:ごまぬん。

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久々のオリ主登場回です。



Run at a speed no one can catch up with(2/3)

 新電波塔『延空木』、メインターミナル中腹。

 メンテナンス作業用のエレベーターは、ここまでしか繋がっていなかった。

 

「うっひ〜……! マジで階段(これ)しか道無いんスかぁ!?」

 

「行くぞ」

 

<各チーム選抜隊は、4方向から非常階段で侵入。第2展望フロアに到達後、敵勢力に押さえられている東西南北の直通エレベーターを奪還───それをもって、第1展望台待機組は順次上昇。合流ののち掃討戦に移行してください>

 

<慈悲は不要だ。皆殺しにしろ>

 

 千束の前では言えないが、今回ばかりは楠木司令に全面的に同意する。

 

 

 

 アルファ隊は警戒を厳にしつつ、粛々と非常階段を登っていく。

 道中についてはかなりショートカットして来たとはいえ、ここから階段で第2展望フロアまで向かうのは結構骨だ。

 

 耳元にジジッというノイズ音。クルミからの通信。

 

<……たきな! 千束のスマホを見ろ!>

 

 クルミの遠隔操作によって切り替わった画面に視線を落とす。

 映っているのは、椅子に縛られたスーツ姿の男───吉松シンジ。

 

<ビデオ通話の履歴があった。たぶん吉松の携帯からの着信で、真島が喋らせたんだろう。時間的には……、あぁ、いやまぁそれはいい>

 

「これはどこです? 真島は吉松を捕えて何を?」

 

<吉松の携帯の反応を追ったら、街中(まちなか)の監視カメラに千束とミカが映ってた。知らない車に乗ってたが、二人はいま旧電波塔に向かってる───つまり、心臓の持ち主の所に千束が行くってことだ!>

 

 ……、……そうか。

 千束は直接、吉松と相対する道を選んだんだな。なら……それでいい。

 心配事がひとつ減った。後はここで真島を倒して、すべての因縁に決着をつけるだけ───。

 

<やれやれ……あいつも人騒がせだよな。結局、全部自分で解決しようってわけだ>

 

「……。そうでしょうか。何か……嫌な予感がします。罠かも知れない……」

 

<千束なら大丈夫だろ>

 

 千束なら。

 それは、そうだ。錦木千束は最強のリコリスだ。彼女が出向く以上、解決できない事態など存在しない。

 

「……絶対、何かある」

 

 真島が吉松を(かどわ)かした動機はわかる。最強のリコリスである千束を、延空木から引き剥がすためだ。

 筋の通る話ではある……。日本の警察にもDAにも察知されること無く海山會の協力を取りつけ、1000丁の銃を東京中にばら撒き、リコリス体制そのものを破壊しようとした相手だ。真島ならそういう手を思いついても何ら不自然ではない。

 

「……あ? おい、さっさと来いよ! 他のチームに負けちゃうだろッ」

 

<たきな?>

 

 けれど、まだ、何かを見落としている気がする。

 真島、千束、吉松(アラン機関)。この3人に……ただの因縁以上の何かを、見出すとすれば。

 

「……、……すみません。私はここで」

 

「あぁ!? またかよお前!」

 

「たきな。どういうこと?」

 

 金髪で長身のセカンド、篝ヒバナが尋ねてくる。乙女サクラと違って批判的な口調ではなかった。

 

「リコリコの仲間から連絡がありました。千束と……もう一人、事件の重要参考人の居場所が判明したと」

 

「信用ならねぇな。それに、よしんばその情報が正しかったとして、今は任務中だぞ。そっちを追うのはお前の仕事じゃない───」

 

「……フキっ!!」

 

 すると突然、蛇ノ目エリカが声を張り上げた。

 本部に居た頃のことはもうあまり覚えていないが、それを差し引いても、彼女がこんな風に大声を出したのは見たことが無い気がする。

 

「っ……、行かせてあげて。どうしてもって言うなら、わたしがたきなのポジション埋めますから」

 

「あァ〜? ハハハッ、無理無理!」

 

 乙女サクラがいつもの調子で嗤う。

 どの辺りが無理なのかはわからないけれど、彼女が今の状況を愉快に思っていないことは確かだ。

 

「聞いたぞ。そもそも、コイツがクビになったのはアンタのヘマが原因だろ!」

 

 ……あぁ、なるほど。

 結果や私の行動の是非はともあれ、『例の作戦』のいきさつとしては、蛇ノ目エリカの失敗を私がフォローしたという形になる。

 その事実をもってして、私と彼女にはそれだけの実力差があると言いたいのか。

 

「───、そう! 全部わたしのせいよ!」

 

 思わずといった様子で顔を背け、蛇ノ目エリカは涙を浮かべながら言った。

 やがて意を決してこちらに向き直ると、私の胸の中に飛び込んでくる。

 

「……あの時は……、本当にごめんなさい……!」

 

 あ───……。

 

「……。……あと……それ、と。……()()()()()()()()()()。千束さんの原付が、下の駐車場に置いてあるんだって。鍵は刺さってるから使って欲しいって」

 

「え?」

 

 私たち以外の誰にも聞こえない声で呟くと、蛇ノ目エリカは一息に私から離れ、隊列へ戻った。

 本気で私のポジションを埋めるつもりらしく、ずんずん階段を登り始める。

 

「エリカ!」

 

「……ッ、な……何スか? あたしは本当のこと言っただけで……」

 

 先行した蛇ノ目エリカを追う篝ヒバナ。

 残る私と春川フキの間に立ったまま、狼狽える乙女サクラ。

 

「たきな。……この任務を降りれば、もうDAには戻れんぞ」

 

「……。わかってます」

 

「最後のチャンスなんだぞ」

 

 これは……。忠告、なのだろう。春川フキなりの。

 思えば、彼女には迷惑をかけ通しだ。今回もそうだ。

 

「わかって、います。私が間違ってるってことは……。リコリスとして……人として、1400万の東京都民の危機から逃げるなんて」

 

「あぁ」

 

「───それでも、私には、彼女を見捨てることは出来ません。ここでは私たちの友人(錦木千束)を救えない」

 

 ひどい話も、あったものだ。

 卑怯な言い回しをしている自覚はある。こうでもしなければ、春川フキは首を縦に振らないから。

 けれど、語ったことは嘘偽りなく、すべて本心だった。

 

「……」

 

「…………」

 

「……。フン」

 

 春川フキは、後ろを向いて、階段に足をかけた。

 

「行けよ」

 

 そしてこの瞬間、私は託され、また託した。

 錦木千束の命を。1400万の東京都民の平和と安寧を。

 

 一度だけ強く頷いて、彼女たちの反対側へと駆け出す。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

「ほら。行くぞサクラ」

 

「があぁぁ先輩ったらもおぉ!! またッスか! またなんスか!? 司令部に何て報告するつもりです!?」

 

「アイデア募集中だ」

 

「えぇ……?」

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 たきなが離脱してしばらくすると、向こう側でエレベーターが動き出すのが見えた。

 あっちは……チャーリー隊の担当か。思っていたより早い。

 

「エレベーターが降り始めたな。良いペースだ」

 

「あ〜。アイツのせいで他のチームに手柄取られちゃいましたよぅ」

 

「競走じゃないんだから。どこが一番乗りでもいいでしょ」

 

「競走ッスよ!」

 

 競走ではないが、他チームと足並みを揃えるって意味では急いだ方がいいな。

 

 

 

 階段を登り終えて第2展望フロアに出た。

 戦闘はおおかた終結しており、辺りはテロリストどもの血で真っ赤に染まっている。

 

「うぇっ。グロぉ」

 

「エレベーターは……、まぁいい。起動しろ。本部、アルファ・チーム、目標地点に到達しました。北側エレベーター、稼働開始します」

 

「ハァ……。どうせ制圧してんならやっといてくれたっていいだろ。やっぱ競走なんスよ競走」

 

「愚痴ってる暇があったら残敵警戒(クリアリング)しろ。ケツに火の点いた悪人はしぶといぞ」

 

「イッテ! ちょっと、拳骨代わりに銃床(ストック)は酷くないッスか!? やりますけど!」

 

 まったく。この性格は、どこかで一度痛い目を見ないと直らないか。

 いや、ニコルとの喧嘩や千束たちとの模擬戦で、それなりに痛い目は見てるはずなんだが……。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

<……さぁ。勝負だ、『ラジアータ』>

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 平和と未来の象徴たる新電波塔(延空木)の電波ジャック。

 それは既に首都圏のみならず、全国各地であらゆる種類の混乱と動揺を引き起こしていた。

 道行く人々は誰もが立ち止まり、都市ビルの大型モニターやスマートフォンに齧りついて、事態の行く末を見守っている。

 

<───よう。また邪魔するぜ>

 

 そうして、その日2度目の激震が走った。

 DA司令部で戦況を注視していた楠木が声を荒げる。

 

「何故またジャックされている!?」

 

「『ラジアータ』が対応しません!!」

 

「なに───」

 

「外部から……いえ、それも有り得ないんですが……! と、とにかく大量の攻撃(アタック)を受けていて、防壁生成に手一杯になっています!!」

 

 フラッド(洪水)型DDoS攻撃、という。

 目標のシステムに対し、複数のマシンから一斉にアクセスすることで演算資源(リソース)を圧迫するネットワーク攻撃手法。

 難攻不落のセキュリティ機構を有するDAの『ラジアータ』だが、故にこそ『すべての攻撃に対して全力で反撃する』性質が仇となり、膨大な通信データ量による過負荷を受けていた。

 無論───DAによる『ハッカー狩り』が加速して以降、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()はずなのだが。

 

<都内の100人かそこらは初めての銃、初めての自由を楽しんだか?>

 

 緑髪のテロリストは朗々と語る。勝利の確信と共に。

 彼が次に用意した台詞を投げかけた瞬間、この国(日本)の平和神話は終焉を告げる。

 

<それとも……こんな奴らに……>

 

 

 

 

 

<こんにちは>

 

 

 

 

 

 すべてが停まった。

 

 電波ジャックされた放送を、さらに上書きする電波ジャック。

 延空木からの中継映像が途絶し、代わりに別の画面が表示される。

 

<まずは、皆様に非礼をお詫びいたします。先程まで映っていた男は、()()()()()の同胞です。しかし……彼は個人的な欲望を満たすことを優先し、真に皆様にお伝えすべきことを見失っていました>

 

 加工された、しかしそれでいて明瞭な発声。

 儚げで、甘やかで、人間の脳に染み込むような、麻薬めいた陶酔と痺れをもたらす声。

 

「……くそ! ……次から次へと……!」

 

 黒と灰のチェック模様を背景にして浮かぶ、おぞましい異形の紋章(エンブレム)

 角の生えた蜥蜴(ドラゴン)、ヤギ、(ワシ)、イナゴ、人間の髑髏(ドクロ)という5つの頭部と、コウモリの翼を持つ蛇。

 

<皆様。自由とは何でしょう>

 

「すぐに配信元の特定を!」

 

<平和とは何でしょう>

 

「もうやってます!! ……っ、……ですがしかし、これは……!」

 

<正義とは何でしょう。秩序とは何でしょう。善とは何でしょう>

 

「何だこのコード……。まるで、こっちの防壁が……。『ラジアータ』が、食われてるみたいな……」

 

「どうした!!」

 

<翻って─────悪とは、何でしょう>

 

 作戦行動中の『ラジアータ』のオペレーティングを担う情報官が、顔を青褪めさせながら振り向く。

 

「は……配信元、は……」

 

<皆様。皆様にお渡しした銃は、ほんの些細なきっかけに過ぎません。わたしたちは、皆様が自ら考え、選択し、導き出した答えをこそ尊重します>

 

「『ラジアータ』から、です……。今、こちらを攻撃しているすべてのマシンと、()()()()()()()()()がこの音声を発信していますッ!!」

 

 ───『掃除屋(クリーナー)』と呼ばれる民間組織がある。

 政治家の汚職から紛争地域で起きた戦争犯罪まで、あらゆる犯罪の痕跡消去と、人間の経歴洗浄に特化した文字通りの掃除屋。

 

<わたしたちは、『DEMONS(デモンズ)』。すべての闇と偽りの父。人類の根本原理の機構にして、世界を試す者>

 

 それは、社会の裏表を問わず、世界中でまことしやかに囁かれる陰謀説。

 『クリーナー』の正体は旧時代のフリーメイソンやイルミナティのような国際的秘密結社であり、あらゆる国家のあらゆる人間を脅すことによって利益を得ている。

 そして彼らは、集積した莫大な資産と築き上げたコネクションを用いて、余人には想像もつかないほど深遠で邪悪な犯罪計画を進めているという───。

 

<では、皆様。我らが大望の落果の時まで、今しばらくごきげんよう。そして……永遠に、さようなら>

 

 通信の終了と同時に、楠木は危うく卒倒するところだった。ぎりりと歯を食いしばって耐える。

 『ラジアータ』の機能は、未だ回復していない。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

「───この映像も無かったことになるだろう。だが、自分の目で見たことを覚えておけ」

 

 真島の演説は続く。

 延空木に現れ、テロリストたちの排撃を執行したリコリスたちの姿は、今や完全に白日の下に晒された。

 

「これは真実で、奴らを倒す始まりだ」

 

 緑髪の男は、そう信じている。

 みな平等に暴力の行使を赦された人々の自由意志が、この歪な国に真の秩序と混沌、正統なる均衡をもたらすと。

 己が起こした行動が、理想の世界を創造するための一歩となることを、心の底から信じている。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

「本部……指示を乞う。先の放送による敵の意図を確認したい。指示を乞う。本部……」

 

 っか〜、真面目だなぁフキ先輩は。

 要するに、敵の仲間割れっしょ? せっかく電波ジャックしたのに、演説の台本も決まってなかったなんてさ。真島一派も意外と大したこと無かったんじゃねぇの。

 

「ん?」

 

 こつん。

 足元に感触。見ると、円盤型の掃除ロボットがそこらへんをウロチョロしていた。

 そういやさっきからずっと居たな。延空木の清掃システムなのか? テロリスト連中が、何かの拍子に間違って起動しちゃったとか?

 

「チッ。ちゃんと前見て走れや」

 

 あーあー、ゾロゾロ出てきやがってもう。

 人間の血ってのは結構しつこいんだ。お前らにテロリストの死体の掃除は無理だよ。

 つか、あたしらにまで突っかかって来んじゃねぇ。こっちはゴミじゃなくて生きてる人間……。

 

「……おい」

 

 待て。

 何か妙だ。

 

「おい……、おいおいおいおい……!」

 

 床を這う掃除ロボットなら、そこいらに転がってるでけぇゴミ(死体)に群がってもいいはずだ。

 それが……こいつは、どう見ても、()()()()()()()()()()()()()()()()()……。

 

「───防御ッ!!」

 

 衝撃。

 

 熱。爆音。

 

 痛み。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

「延空木のリコリスとの通信途絶!」

 

「───くそ……!!」

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 旧電波塔。地上に咲いた歪な鉄の花。

 ショッピングモールや水族館にはよく来るけど、登ろうってなったのは10年ぶりかも知れない。

 

「じゃあ、行ってくるよ」

 

「本当に一人でいいのか?」

 

「大丈夫。店戻ってお茶飲んでて」

 

 とか言ってみたり。

 聞くわけないか、先生は。

 

「そうか。……シンジによろしくな」

 

「うん」

 

 さて、宣戦布告といこう。

 

 倉庫から持ち出してきた虎の子のショットガン(ケルテックKSG)を右手で掲げる。発砲。

 対物破壊用の『マスター・キー(ドアブリーチ弾)』が敵のハッカー、ロボ太の操るドローンを粉砕する。

 

「行ってきます」

 

「あぁ。行ってこい」

 

 待ってて、ヨシさん。

 今───助けに行くから。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

<……こっちの『目』がやられた。奴が来るぞ>

 

「よし。第3幕だ」

 

<……>

 

「……どうした? ハッカー。今さら腹でも痛くなってきたか?」

 

<いや。何でもない。今さら痛くなるような腹なんて無いよ>

 

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