萌え声人類種の天敵系ロリっ娘リコリス vs 俺たちのちさたき vs ダークライ 作:ごまぬん。
旧電波塔への侵入は簡単だった。
普段は立ち入り禁止になってるけど、警備員の人たちは真島一味の手で排除されてたし、ご丁寧に建物内の設備にも電気が通っている。
私も、ここが電波塔兼観光名所として運営されてた時期に客として入ったことは無いから、ちょっと新鮮かも知れない。
「はいみなさーん。逃げてー」
火災報知器の非常ボタンをポチッとな。
けたたましいベルが鳴った。これでビビって帰ってくれれば御の字なのだが。
何かものすごいスピードで上昇するエレベーターで、行けるところまで行く。
折れてるとはいえ元・観光名所だ。今でもある程度は掃除やメンテナンスをする人が居るのだろう。
タワーの中腹まで辿り着いたら……後は、非常階段かな。そこから先は敵地だ。
やってやろうじゃない。
喫茶リコリコの秘密兵器であるこの
単純に弾数を倍にしてもいいし、私みたいに『
「何だ?」
非常階段へのドアはきっちり施錠されていた。テロリストのくせに防犯意識が高い。
わざと大きな音を立てて"解錠"する。異変に気づいた敵の一人が階段を下りてくる。
「いらっしゃいませー」
「ぐあ!?」
暗がりから飛び出て一射。ノックダウン。
この『先生の弾ver.2』は拳銃用の3倍量の材料を使って作られる
たきな経理主任が聞いたら卒倒しそうだが、今回はリコリコ閉店セールなので出し惜しみは無し。
「!! 敵襲だ!」
「撃てッ!!」
「うおぉ!? ちょちょちょちょーい!!」
えぇ!? こっちに仲間倒れてるよねぇ、なに容赦なくブッ放してんのさ? それに階段は金属製だし、跳弾とか怖くないわけ!
うーん。この人、同僚とあんまり仲良くなかったのかしら……。
「あーもう!」
「がっ!?」
「やめんしゃいッ!!」
「おぐっ!!」
「あっ!!」
「ギャ!?」
あ、やべ。
調子良く倒したはいいけど、階段でやっつけたからゴロゴロ転がって来よる……!
えーと、まずこっちの人は蹴る! 次の人は踏む! 最後の2人は受け止める。
……、よし。
「階段は下手すると死ぬからねぇ。気をつけなはれや〜」
やれやれ、手のかかるテロリストどもだ。
「んで、この先は……っと」
またもやちゃっかり施錠されてたドアにドカン。
恐る恐る、扉を開く……。薄暗かった非常階段に光が差し、ついでに爽やかな風が吹き抜ける。
「ひゃあ。あっぶな」
地上では未曾有のテロが巻き起こっているというのに、空はこんなにも広くて青い。
10年前、真島によって爆破された旧電波塔。この先に進むためには、辛うじて破壊を免れていたり、後付で増設された細い
そして当然、そのか細く狭く不安定な足場は、真島一味に占領されているわけで。
まともに進むことは、許してくれないよねぇ。
「……。ビビらない、ビビらない」
たきなだったらこの距離から撃っても当てる。それは私には無理。
ニコルだったら───敵がうじゃうじゃ居る道なんて、わざわざ通らない。
「行くかっ」
人間用の足場が使えないなら、それ以外の場所を通るまでだ。
思い切ってひょいとジャンプ。旧電波塔の、蜘蛛の巣みたいに広がる、歪んだ鉄骨の上に着地。
「……ん? おい、あそこ……」
「あ? 何───」
「先手必勝ォ!!」
「ぐわぁ!?」
よっしゃ命中! からの〜、ダッシュダッシュダッシュダッシュ!
「ば、馬鹿な……。くそ!」
自転車や一輪車と同じ要領だ。ビビって速度を落とした方が、かえってバランスが取れなくなる……!
身体を左右に振りながら前に出る。多少足場が悪いくらいなら回避に支障は無い。反撃。
「うあっ!!」
……したはいいけど、
「ヤバッ……!」
わ〜!! 落ちちゃう落ちちゃうっ、ダメじゃんこんな高い所で気絶したら! いや私のせいだけどさ!
「ごめんちゃーい!!」
「ぐぇ!」
咄嗟にもう一発撃って、無理やり通路の真ん中に押し込んでやった。すげぇぜ私。
「へっ、アホが!」
「え? わっ! わっ、わっ、わ!?」
誰がアホだこの! 聞こえてるぞチクショー!
あわわ、何とか避けてるけどこのままじゃ落ちる〜っ!! あっ落ちた。
「ちょちょちょちょ! う……わぁあ!?」
ぬおぉ負けるか! ショットガンを……背負う時用の紐を、こう、こうして、こう!
「ひぃ……」
せ───セーフ。どうにか適当な鉄の棒に引っ掛けられた。
下ですか? えーと、このまま落ちたら剥き出しのパイプ的な部分にブッ刺さって即死ですね。
「わ! うおぉ!?」
げえっ、まだ撃ってくんの!? いや当たり前か。
幸い敵のお兄さんの射撃はヘタクソだけど、空中じゃ身動きが、
「ぬわっ!? 紐ぉぉぉ!!」
落ちるっ……落ちない! 左腕を全力で伸ばして、良い感じの鉄の棒に掴まる!
しかし私が命を繋いだ代償として、ショットガンは東京の空に消えていった。
「あぶね……。……やりやがったな!」
ショットガンくんの仇!!
『救世主の銃』を抜き放つ。4発撃った辺りで命中。
「ぐっ! う、わ!? あぁ!!」
あら。敵のお兄さん、足を踏み外して助からないかと思ったけど、何とか通路の縁にしがみついている。やるじゃん。
「いいよ偉い! そのまま踏ん張って!」
2分後。
ふぅ……どうにか登ってこれた。ミッション・インポッシブルじゃねぇんだぞまったく。
「ハァ……ハァ……」
お兄さんもお疲れ。
「よく頑張りました」
だが許さん。
息も絶え絶えなテロリストの土手っ腹に、先生の弾を3発叩き込んだ。
◇ ◆ ◇ ◆
蛇ノ目エリカの『ニコルからの伝言』に従い、まだ使われていないはずの延空木の一般客用駐車場に向かうと、一台のスクーターがぽつんと停められていた。
やや陽に褪せた、年季を感じさせる空色の車体。千束がいつもセーフハウスから喫茶リコリコへの通勤に使っているものだ。鍵は刺さったままだった。
「……ニコル」
彼女には───わかっていたのだろうか。
千束が延空木攻略作戦に招集され、しかし参加できない事態に見舞われること。
それを知った私が、こうして千束を助けに延空木を離脱するということを。
ならば、ついさっきエージェント・ゴッホを派遣してくれたのも……。
「本当に、何でもお見通しですね」
命令違反することを予想されたのは、少し気恥ずかしくもあるけれど……すべての問題が解决した暁には、目一杯のお礼をしよう。
「きっと……また、みんなで」
決意を新たにし、スクーターのエンジンを点火する。
◇ ◆ ◇ ◆
「またここかぁ」
第1だか第2だか展望フロア。そこそこ広く、売店も入っていて、10年前にここでテロリストの集団と戦った。本人曰く、その中に真島も居たらしい。知らんけど。
綱渡りエリアからは、制圧した通路を使って入れそうだ。覗いてみた限り、下の階の騒ぎはまだ気づかれていなさそう。待ち伏せの心配は無い。たぶん、きっと、メイビー。
「ではお邪魔します!! そして道を開けろ!!」
「!?」
……あれ? 1人だけ? ザルすぎるだろ。
真島がヨシさんを攫った理由は、さすがに私でもわかる。ロボ太も『お前のようなリコリスに来られると困る』って言ってたし、これは要するに私を延空木に行かせないための時間稼ぎだ。
「テメェ……!」
「う〜ん」
ドン。おっと危ない。
しかし、それにしても……、ドン。あぶねっ。
延空木の方に人手を割いてて、こっちに回せる部下が他に居なかったのか? ドン。今のは惜しかったね。
男の銃を持っている方の腕を捻り上げる。ズドン。はい終わり。
「う、グゥ……!」
まぁ、いいか。敵が弱い分には都合が良い。
悪いけど君たちに構っている暇は無いのだ。
「ヨシさん! 千束ですっ!」
フロア内を一周見て回り、さらに上層階へ。
正直、どんな顔をして会えばいいのかわからない。でも……こうして声に出して呼びかけるのも、きっと無駄じゃないと思う。
そして、私は辿り着く。
うっすらと見覚えのある景色。ビデオ通話に映っていた場所。
何重にも巻いた縄で椅子に縛りつけられた、スーツ姿の男の人が─────。
「ヨシさん……!!」
「……千束」
パチン。
「!?」
どこからか、フィンガースナップの音が聞こえた。
同時にすべての照明が落ち、強化ガラスの窓にもシャッターが降り始める。光源が断たれ、フロア全体が暗闇に包まれる。
「よう。ヒーロー」
この声は───真島!
延空木に居たんじゃなかったの……!?
くそっ、暗くて何も見えな、
「ぐぁっ……!」
「ヨシさん!!」
撃ってきたっ。それも、私じゃなくてヨシさんを……!
「ハハハ。そうだ、避けると大事なヨシさんに当たっちまうぜ?」
周囲一体は真っ暗闇だ。それなのに、狙いが正確すぎる……暗視ゴーグルでも着けているのか?
咄嗟に
鞄を持つ手に何回か、重たい衝撃が走る。
真島の銃撃が一時止んだ。弾切れらしい。
こちらの様子を窺っているのか、リロードの音は聞こえてこない───今だ。
鞄から小型の懐中電灯を取り出す。こんなこともあろうかと……というわけではないが、リコリスの主任務は暗殺だから、暗闇での行動を助けるための装備も用意されている。
「ヨシさん、大丈……っ!?」
な……何? どうなってるの?
……縄が……切れて、ヨシさんが……居ない。
「真島ッ……!!」
◇ ◆ ◇ ◆
ようやく、旧電波塔まで辿り着くと───意外なと言うべきか、またもと言うべきか、私を待っている人が居た。
「あ! たきなさーん!」
黒髪の剣士、御門かなは。
今日はいつもの太刀型ブレードと脇差型ブレードに加えてもう一振り、柄に『阿寒湖』と書かれた木刀を携えている。
「御門? まさか……」
「ふふ、そのまさかなのですっ。タイチョーのご指示で助太刀に参ったですよ!」
やっぱり。何から何まで頭が下がる。
彼女の助力があれば百人力だ。敵にすれば恐ろしいが、味方ならばこれほど頼もしいリコリスも居ない。
「中は一度千束さんが通った後なので、それなりに警戒されてるみたいなのです。壁でも走れたら早いんですけどねぇ……それはミカドも10秒くらいしか出来ませんから」
「えっ?」
「というわけで、一緒に突破しましょー! 大丈夫、喫茶リコリコの方針は伺っているのです。このDA特製強化木刀なら、普通は斬られて死ぬ敵も、骨や内臓が潰れるだけで済むのです!」
色々とツッコみたい部分はあったものの、御門かなはと接する時は常識と正気を捨て去った方が早い。
今は千束を救うために手段を選んでいる場合ではない。何なら、私は別に殺さないことにはこだわってないし。
「わかりました。行きましょう」
誰にも邪魔させはしない。障害など、すべて打ち砕くだけだ。
◇ ◆ ◇ ◆
放棄された売店の商品棚を背中で押し、通路に出て即席の盾とする。気休めだが無いよりはマシだ。
「あんた、なんで」
「ここに居る、ってか? フフフ」
恐らく昔、何かの展示に使われていたであろうモニターが点灯する。真っ暗闇に慣れ始めていた目にはちょっときつい。
映っているのは……ニュース速報? 延空木の、展望フロアに───。
<映像は延空木からの中継です! 武装した少女たちが、発砲を繰り返していますッ!>
「……リコリス」
ど、どうしてリコリスがニュースに?
『ラジアータ』は何をやって……っ。そうか、このための
「あっちのリコリスは今や全国デビュー中だ。ハッ! これでお前らは終わりってわけだ」
……そりゃあ私だって、DAによるリコリス体制を良く思ってはいない。
けれど、私たちの存在によって守れる命があるのも事実で。それに、こんな形で暴露したところで、世の中に余計な混乱をもたらすだけだ。
自由と無秩序は同じじゃない。こいつのやり方は───間違ってる。
商品棚の陰から出て、声のした方に銃口を向ける。
私が引き金を引くより早く、頭のすぐ横を弾丸が通り抜ける音がした。
「ッハァ!」
「うっ!?」
身を翻そうとした瞬間、蹴り足らしき重たいものが左腕に突き刺さった。ほとんど勘だったが、一応腋を固めておいて助かった。
続けて、顎の辺りに硬い
「っ、……!」
いや……それはどうでもいい。女の子的にはどうでもよくないが日本の危機とは比べられない。
問題は、真島がこの暗闇の中、どうやってこちらの位置を捕捉しているのかということ。思えば、さっき一瞬だけモニターを点灯したのも、暗闇に適応しようとするこっちの目をリセットする意味があったのだろう。
「見えてんの……!?」
「
何……、
「がっ!」
真島の裏拳が胸元に入った。制服のおかげで見た目ほどのダメージは無い。
わざと大袈裟に倒れたふりをして、転がって距離を取る。よくわかんないけど、下手に動かない方がよさそうなのは確かだ。
チュッ、という独特な舌打ちの、微かな音が耳に届いた。
「相手の微細な動きで、射線と射撃タイミングを判断する。すげぇ能力だ……アランが興味を持つわけだぜ」
今のは───まさか……。
……なるほど。今までは信じられなかったけど、こいつも確かにとんでもない"才能"を持ってる。
まるで私の『眼』と対になっているかのような、恐るべき才能を。
「音か」
自ら何らかの音声を放ち、周囲の物体からの反響を聞き分けることで、完全な暗闇の中でも視覚に頼らない状況把握を可能とする。潜水艦の音波ソナーや、コウモリやイルカが超音波を使ってやっていることと同じ原理だ。
「正解」
耳元で声。後ろに敵。
すかさず振り返ってトリガーを絞るも、当たらない。
「だが、わかったところでどうする?」
再び前蹴りが襲いかかってきて、
「っ!」
捕まえた。突き込まれる左足に対して腰を折り、太腿とお腹で挟む。
さっき聞いた声の記憶を頼りに、真島の頭部があるはずの箇所を撃つ。
しかし───。
「ハッ!」
「あっ!?」
……弾切れ!
「らァ!!」
左の回し蹴りが来る。
こういう、時は……! 力の流れに逆らわずに……捻って、
「んぐっ……く!」
「おっ……!?」
蹴り飛ばされる瞬間に真島の左足を捉え、抱き込むようにして投げ倒す。
ようやく少しだけ目が慣れてきた。真島が銃を取り落とした、というより空中に放り投げたのがうっすらと見える。
リロードが必要な『救世主の銃』に代わって、真島の銃を奪う。額に向けて、引き金を、
「───いいのか? そりゃ実弾だぜ?」
……あ、
「よっと!!」
「うあぁっ!?」
真島の銃を構えた右腕が弾かれると同時に、靴底が私の胴体を叩きつけた。
再び間合いが離れる。……さすがに結構効いたが、おかげでこっちの銃をリロードする暇が稼げた。
牽制のために撃ち込むべき……いや、下手に動くとその音でこっちの位置が知れる。
「……聞いたぜぇ? ヨシさんからよォ。つまんねぇ縛りで才能枯らしてんだってな」
向こうがまた、エコーロケーションのための舌打ちをするまで待てば? そうすればまた場所の見当は……いやいや、耳の良さと聴覚を使った戦闘経験は真島の方が上だ。
特殊な才能や盲目などの障害が無い人でも、3ヶ月くらい訓練すれば似たような芸当が出来るようになるらしいが……私もマネしてみる? この土壇場で? アホらし、却下。
「けど、俺はお前のそういうトコ好きだぜ」
どうする。どうすればいい。
考えろ───考えろ、考えろ。
「
「お前と一緒にすんな!!」
「なァ。二人でアラン機関を叩かねぇか? うちのハッカーと爺さんはよくやってくれちゃいるが、どうもアランの本丸については一筋縄じゃいかないようでな」
アラン機関? どうしてここでその名前を……。
「ヨシさんは痛めつけてもなかなか口を割らねぇんだ。けど、お前が相手なら
……こいつ! ヨシさんを傷つけておいて、よくもいけしゃあしゃあと!!
あと耳元で囁くな気持ち悪い! 無駄に良い声なのが余計腹立つっ。
振り向いて発砲……くそ、これじゃさっきまでの展開の焼き直しだ。どうすれば……。
「───ん?」
視界の片隅に落ちていた、見覚えの無いスマホの画面が点灯した。
着信音が1回、2回、3回……。
◇ ◆ ◇ ◆
「隔壁が作動してる? これじゃ、屋内に入れても進めない……」
「ふぇ? な、何か問題発生なのです?」
「っ……、……。……! いえ、待ってください。クルミ!」
<どうした?>
「真島は
◇ ◆ ◇ ◆
遊ばれている。
殺す気が無いわけじゃない。銃は撃つ。肉弾戦も容赦ない。ただ、実力の底を見せていない。
尤も、この絶対有利の状況下、10年前の個人的なリベンジを果たさないでいてくれるとも思えないが。
「ハッハァ───!」
一際強い足音。仕掛けてくる。
反対側に飛び退き、銃を向けようとするが、次に何をしてくるか読めない。銃撃か? 蹴りか? 拳か、あるいは組み付きか、それとも。
「っ……!」
超聴覚を抜きにしても、真島は超一流の戦闘技能の持ち主だ。
わずかな隙が致命傷に繋がる相手。迷っている暇は無い。次に取るべき行動を少しでも間違えば死ぬ。
私……私、は─────。
「天朧真月流、奥儀の弐」
真島の足音が、一瞬だけ止まる。
それが命取りだった。
「『
生まれてから一度も聞いたことの無いような、甲高く歪んだ金属音が、幾度となく響き渡る。
次の瞬間、展望フロアに降りていたシャッターの一角───ちょうど私と真島の居る位置の隔壁が、
「「……!?」」
そして、差し込む陽光と共に現れたのは。
「フッ!」
「が……!」
艷やかに流れる黒の長髪と、鋭い意志が宿った菫色の瞳。
喫茶リコリコの経理主任にしてDAのセカンド・リコリス、井ノ上たきな。
「……ハ!」
「っ!」
不意討ちの前蹴りは通ったが、追撃の回し蹴りはいなされた。
すかさず銃を向けるたきな。しかし、引き金を引く寸前で右手を弾かれた。外れる。
「お前には用は無ぇって言っただろ───」
……
視界さえ戻ればこっちのものだ。その場で射撃体勢に入り、先生の弾を叩き込む。
「ぐっ!! ぬ、ぐっ……ァァ!!」
怯まない……! 防弾チョッキか? アロハシャツの下に仕込みがあるようだが……。
「いづっ……!?」
たきなが弾かれた右手を戻し、狙いを修正して発砲しようとした瞬間、再び腕を取られた。
射線が捻じ曲げられて、私の方に───いくらたきなの射撃でも当たらない。たきなの射撃精度は、私とは異なる種類の目の良さありきだ。
「チッ」
「うっ!」
真島の長い脚がたきなを捉え、冗談のように人体が宙に浮いた。
頭を打ってしまう前に受け止める……と同時に、真島が発砲。
救助の隙を狙うとは卑怯な。だが、こうして見えている限りは怖くない。
「……!」
う……、片手ではちょっと限界があった。
連射を受けて衝撃に耐え切れず、吹き飛ばされる鞄。
けれどその頃には既に、たきなも姿勢を整えている。
……気になることはいっぱいあるけど。
ここから第2ラウンドってことで、いいよね?