萌え声人類種の天敵系ロリっ娘リコリス vs 俺たちのちさたき vs ダークライ   作:ごまぬん。

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「でたなゲッター○○」構文、何かの間違いで流行って欲しい(叶わぬ願い)



Alms goddess,or Revolution factory(3/3)

 星の見えない東京の夜闇の中、スポーツカー風のハイエンドモデル車が高速道路を走っている。

 車内には各種通信端末と連携する電子システムを備えており、フリーハンドでの音声通話も可能だ。

 現在の状態はオンライン。スピーカーからくぐもった声が響く。

 

<この距離のドローンに気づくとは>

 

 ノイズ混じりの加工された音声。

 通話の相手を指し示すカーナビの画面には、しかし何ら意味のある情報が記述されていない。空白の登録名、出鱈目な番号、戯画化された()()の意匠のアイコン。

 

「千束……か」

 

 手元の端末で直前までの記録映像を見返しながら、後部座席に座る男が呟いた。

 男の瞳に映るのは、一人の少女。旧電波塔事件の英雄にして、史上最強のリコリス───錦木千束。

 

<『リコリス』と知り合いか? 国家に仇成す者を消して回る噂の処刑人が、まさかこんな少女だったとは。驚きだ>

 

「さすがは『ウォールナット』。博識だな」

 

<無知であることが嫌いなんだ>

 

 片や本来の声色を明かさず、片や本心を声音に出さない。

 そういう者同士の、限りなく暗闘に近い会話が続く。

 

<……だから、もっと知りたいことがある>

 

「あぁ。報酬の件だね? こちらの代理人の不手際だ、支払いが滞っていることは謝罪しよう。依頼したD()A()()()()()()()()には満足している。充分報いる額を───」

 

<そうじゃない>

 

 男は視線を上げ、運転手の女とミラー越しに目を合わせた。

 

「ほう。何かね」

 

<どうして、こんな銃取引なんぞに関わる? "施しの女神"に禁忌(タブー)は無いのか>

 

 漆黒のフォーマルスーツの胸には、フクロウを象った鈍い黄金のバッジ。男が属する()()のエンブレム。

 

<───『アラン機関』>

 

 その単語が聞こえた刹那、男は一切の音を発さずに笑った。

 すぅ、と左手を立てる。運転手の女に向けたサイン。

 

「そうだな。生憎、君の質問に答えることは出来ないが。代わりに一つ教訓を授けよう」

 

 女がカーナビの画面を操作する。

 すると、高速道路から見えるビル群の一角が火を噴き、跡形も無く消し飛んだ。

 

「人は、無知である方が幸福なんだよ。ハッカー」

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 あの日から一昼夜明けて─────。

 

「おはようございます」

 

「おっ、来たねーたきな」

 

「おはよー!」

 

「出たなゲッターニコル。はい、じゃあ皆さん。まず制服に着替えますよー」

 

 バックヤードの更衣室にて、私は青い和風の『リコリコ制服』を支給された。サイズもぴったりで動きにくいということは無い。

 リコリスには定期的に免許(ライセンス)更新の義務がある。これは能力テストの他に健康診断も兼ねていて、DAの関係者ならばそのデータを照会することも可能だから、千束さんたちの計らいで用意されていたのだろう。

 ニコルの方は転属が『急に決まった』ため、こっちはさすがに用意する暇が無かったと思われるが……。

 

「悪いけど、ニコルはとりあえず私のお下がりで我慢してね。ちゃんとしたのはまた今度届くからさ」

 

「おー。千束のにおいする?」

 

「まだ若いくせして妙なフェチに目覚めよってからに。心配せんでもちゃんと洗ってあるって……だ、大丈夫だよね?」

 

「……くんくん。これは……」

 

「……これは?」

 

「ホルモン焼きそばのにおい!」

 

「変な嘘つかないでくれる!? たきなが勘違いしたらどうすんの!」

 

「だいじょうぶ、たきなお姉ちゃんは賢いもん。こんなことで騙されたりしないよ……千束と違って」

 

「か〜ッ口の減らないガキめ! ほら、下らないこと言ってないで、早く着替えた着替えたっ」

 

 まるで姉妹だな。顔立ちは全然似てないけど。

 千束さんはどうにもニコルのことが苦手なようだが、実際は喧嘩するほど仲が良いというやつだろうか。

 

「ニコル、どう? 私も二択までは絞れてんのよ。三つ編みかポニテってとこかな」

 

「あの、千束さん」

 

「たきなお姉ちゃんの顔立ちなら、わたしはやっぱり清楚系で行くべきだと思うの」

 

「ニコルも……」

 

「なるほどね。そりゃ尤もだ。しかし、だからこそあえて……?」

 

「開店時間が……」

 

「あえて、攻めの姿勢を見せていく……!」

 

「よぅし決まり! ではお嬢さんちょっと失敬、これをこうして! こう! こう!」

 

 そして、飲食店なので長い髪は纏めましょう、という話になり。

 

「───はい、いっちょ上がり〜!」

 

「おぉ〜! たきなお姉ちゃん、かわいいっ!」

 

 結局、私は三つ編みでもポニーテールでもなく、耳の後ろ辺りで二つ結びにしたツインテールとなった。

 自分で言うのも何だけれど、私はあまり愛想の良い人間ではない。この手の髪型は似合わない気がするのだが……。

 とはいえ、千束さんとニコルには好評のようだし、彼女たちの目から見て不格好でないなら及第点だろうか。

 

「んー。たきながツインテなら、ニコルは三つ編みかなぁ。清楚系をあえてキュートにしたんだから、逆に貞淑な感じで……バランス取っていこうか」

 

「うん、いいよ! 上手に結んでね」

 

「えぇ? あんた小器用だし、そのくらい自分で出来るでしょ?」

 

「えー!? たきなお姉ちゃんにはやってあげたのに! 不平等だー!」

 

「……。あの、なら私がやりましょうか? あまり他人の髪を結んだ経験はありませんが、ご指南いただければ覚えますので」

 

「やったぁ! たきなお姉ちゃん大好き!」

 

「えぇい、しれっと末っ子ポジに収まるのやめい! わかったわかったやればいいんでしょやれば!」

 

 自由奔放に見えて、意外と世話焼きな千束さんであった。

 いや、この場合はニコルが甘え上手なだけか?

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

「二人とも、よく似合ってるじゃないか」

 

「でっしょー! たきなはもちろん、ニコルだって顔と声だけは良いからねぇ」

 

「あは、胸とお尻だけは大きい千束が何か言ってる〜」

 

「それもはや褒めてすらなくない!? あーもう、とりあえず全員集合ー! 先生とミズキもっ」

 

 千束さんがスマートフォンを取り出し、カメラを起動する。

 これは……あぁ、自撮りというやつか。リコリスとしては何らかの機密事項に抵触しそうだが、ここは『ラジアータ』の性能を信じよう。運用開始から30年、DAの通信インフラと情報戦を支えてきたスーパー人工知能(AI)は伊達ではない。

 

「アンタねぇ。イチャついた写真をひけらかして大変なことになったカップル、つい最近見なかったかしら?」

 

「まだ言ってる……。良い歳した大人が、僻まないの」

 

「僻みじゃねーよ! アタシはSNSへの無自覚な投稿がトラブルを招くってことを……」

 

「これは私も入るべきなのか? 女性は女性で固まった方が受けが良いんじゃないか」

 

「いいからいいから、寄ればいけるって。ほら───みんな笑って〜、はい、チーズ!!」

 

「ぶい!」

 

 パシャリ。……あ、笑うの忘れた。

 しかし、まぁ、別にいいか。たとえ私が仏頂面でも、千束さんとニコルが同じ画面に居れば充分華やかだろう。ミズキさんもあんなことは言いつつ、完璧な営業スマイルで写ってるし。

 

「じゃ、これがメニューね。下げたお皿はここに、先生の指示があったら冷蔵庫を……。こういうのはミズキがやってくれるから……」

 

 それから、業務全般について説明を受ける。

 昨日、私とニコルは休暇扱いで、あの戦闘の疲れを癒やすと共に、喫茶リコリコのマニュアルを読み込んで来いと指示された。

 マニュアルは一昨日の内にミズキさんが用意していたものらしい。DA情報部の出身だけはあり、なかなかわかりやすくて大いに助かった。

 

「あ、と、は……ニコルはどうせ上手くやるだろうからいいとして。どう? たきな。心の準備は?」

 

「問題ありません。間諜(スパイ)技術の講習なら受けています。一般人を演じる要領で対応できるかと」

 

「んん……? ま、まぁそれならいっか!」

 

 ───といったところで、ついに開店(オープン)の時間になった。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 コーヒー用のお湯が沸く音に、涼やかな鈴の音が重なる。

 本日最初の来店客にして、私とニコルにとっては初めての"お客さん"である。

 

「おっ。ほら、お客さん! 練習通りにっ」

 

「挨拶の練習なんてしましたっけ?」

 

「……、うん。まぁ適材適所だ、最悪上手いことニコルに合わせて!」

 

「いらっしゃいませー!!」

 

 やれやれ……。こんなことならホールスタッフなんて引き受けず、店長に喫茶メニューの調理を教えてもらうべきだったか……。

 

「───やぁ、ミカ」

 

 そう言って現れたのは、優雅に撫でつけられたクリーム色の髪を持ち、上品な紺のスーツを纏う痩身の男性。

 第一声からして、店長(ミカさん)の知り合いなのだろう。その店長は……何故か若干複雑そうな顔をしたものの、常連客の手前、そこまで露骨な態度は取らなかった。

 

「いらっしゃいませ」

 

「おぉ、ヨシさん! いらっしゃいっ。1ヶ月(ひとつき)ぶりくらいじゃないですか〜?」

 

「今日は早いな、シンジ」

 

「久しぶり、千束ちゃん。あぁ……実は海外出張の帰りで、どうにも時差ボケ気味でね。昨夜の内から決めていたんだ、今朝起きたらここのコーヒーを飲みに来ようって」

 

「ありがたいことだ。いつものでいいか?」

 

「よろしく頼むよ」

 

 ヨシ……シン……、ヨシ何とか(ヨシさん)・シンジ氏と言ったところか。

 私はマニュアル通り、冷水と手拭きを持ってきて提供する。

 

「どうも。───それにしても、しばらく来ない内にずいぶん賑やかになったね?」

 

「って思うじゃん? 実はこっちの二人、今日が初めての出勤でして。ヨシさんが初めてのお客さんなんですよ!」

 

「本当かい? ハハ、光栄だが少し照れくさいな」

 

 ()()()()は頭を掻きつつ、私たちの方を向いてこう名乗った。

 

「はじめまして、私は吉松(ヨシマツ)。吉松シンジだ。小さい会社で輸入雑貨の貿易商をやっている」

 

 なるほど。小さい会社で……ということは、社長かそれに近い役職なんだろうか。身なりが良いのも納得だ。

 

「新人の井ノ上たきなです」

 

「お手伝いの星谷ニコルでーす」

 

「うん、よろしく。で……ミカ(店長)とは元々古い知り合いだったんだが、しばらく疎遠になっていてね。ほんの半年ほど前、この店の調度品を新調したいと相談を受けた時、偶然再会したんだ」

 

「めっちゃ驚いてたよね、先生」

 

 店長が目を閉じて溜め息をつく。痛いところを突かれたといった風情だが、特に反論する気配は無い。

 

「フフ。いやはや、あの時は私も驚いたな───。おっと、そうそう」

 

 吉松氏ははっとして自分の鞄を開いた。中から四角い暗緑色の紙袋を取り出し、千束さんに手渡す。

 

「はい、千束ちゃん。これお土産だよ」

 

「おぉ!? えへへっ、何これ〜。今度はどこ行ってたの? アメリカ? ヨーロッパ? あっわかった、中国でしょ!」

 

「残念。ロシアさ」

 

 海外出張の帰りに、わざわざ行きつけの喫茶店へ土産を持ってくるとは。大人の見栄の一言で片付けるには太っ腹なことをする。

 

「あちゃ~そっちかぁ! ふぅん……じゃ、先生と出会ったのもロシア?」

 

「千束。そのくらいにしなさい」

 

「えぇ〜いいじゃん教えてよ〜」

 

「まぁ、機会があれば。おいおいね」

 

 程なくして、店長のコーヒーが出来上がった。

 

「───美味い。また腕を上げたか?」

 

「世辞は止せ。10年ずっと同じ味だ」

 

「先生、嘘ついちゃダメだよ~。最初の頃はとても飲めたもんじゃなかったって」

 

 朗らかな笑い声が喫茶リコリコを包む。

 ……みんなを笑顔にするのが私たちの仕事、か。

 

「ありがとうございましたぁー!!」

 

 吉松氏は社長業らしくそれなりに忙しい身のようで、コーヒーを飲み干すとじきに退店していった。

 大体いつでも元気に明るく振る舞う千束さんだが、吉松氏と話している時は特に楽しそうな気がする。

 存外に年上趣味……いやいや、何事もすぐに()()()()発想に結びつけるのは良くない。店長の知己ということで、純粋に親愛の目を向けているのだろう。

 

「……。……アラン、機関───」

 

 氏の去り際、ニコルが何かを小さく呟いていた気がしたが、私は考え事に気を取られていてよく聞こえなかった。















たきなのバイト用の髪型決めるシーンって、本編にありませんでしたっけ? 無い? 知らなかったそんなの……。
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