萌え声人類種の天敵系ロリっ娘リコリス vs 俺たちのちさたき vs ダークライ 作:ごまぬん。
ちなみに筆者の中高生時代における英語の成績は平均2とか3であり、各話のタイトルは機械翻訳頼りの適当です。誰か校正してくれ。
War of the secret stealers(1/3)
青白い縁取りと黒い面の四角形が幾何学的に組み合わさった、それは世にも奇妙な部屋だった。
電子データ上の仮想空間に、鎮座する影が2つ。片方は、マスコットにしてはいまいち愛想に欠けるリスの着ぐるみ。もう片方は、ブリキの玩具めいたステレオタイプなロボット。
もちろんお互いに生身の姿ではなく、正体を隠すためのアバターだ。
「───アラン機関とは!」
ロボットのアバターが話し始める。
もちろん加工されているが、その喋り方にはどこか悪童めいた攻撃的な幼さがあった。
「世界的に展開する謎の支援組織だ。個人か集団かもよくわからんが、貧困や障害を抱える一方で優れた才能を持つ人間を探し出し、無償の支援を施している。スポーツ、文学、芸能に科学など幅広い……」
「そんな子供でも知ってるようなことを聞きに来たわけじゃない」
リスのアバターがロボットの独り語りを遮る。低く耳障りで、陰鬱な印象の加工音声。
実際、アラン機関の支援を受けた『アラン・チルドレン』はあらゆる分野で目覚ましい功績を残しており、連日のようにニュースとなっている。
機関そのものは徹底した秘密主義で、『天才たちへの支援』という行動の他に知られていることは何も無い。その目的や思想すらも不明瞭だ。
だが、彼らが送り出す『子供たち』が各界に与える影響はあまりに大きい。いつからか組織の全容を暴こうとする者は居なくなった。
「フン。ま、要するに殺しで利益を得てる類の連中じゃないってこと」
「だが、奴がぼくを消そうとしたのは事実だ。秘密主義で有名な組織だから、『
互いにウィザード級ハッカーである彼らはそのことを熟知しており、故に身辺の守りには最大限の注意を払っていた。
「何故、ぼくのマンションを特定できたのか。公権力と繋がりのあるDAにしてやられたのはまだいいが、アランはそうじゃない。この短期間で2度も拠点を割られたのは初めてだ」
───
リスは目線で答え合わせを迫る。ロボットは『へっ』と鼻で笑い、仮想空間内のモニターを起動した。
「3、2、1……ドカン!」
決定的瞬間。マンションの一室から噴き上がる火炎。
マスコミに持ち込めば確実に特集が組まれるであろう、完璧な証拠映像。
「……。よく撮れているな」
「だろ? この日のためにドローンを新調したんだ。まぁ結局生きてたし同じことだったけど」
勝利への確信を──加工されていてもわかるほどの──込めた声音で、ロボットが宣告する。
「でも、今居る場所は
「やはりか。お前が奴にぼくを売った」
「あの男だけじゃないぜ? 僕が考えられる限り最強の戦力を
「何だと? 『ロボ太』、お前───」
ウォールナットが疑問を口にし終わるより先に、ロボ太は通信を切った。
仮想の対談部屋が崩壊し、0と1の演算リソースに還元されて消失する。
「ククッ……ハハハハハハハハ!!」
そうして、ブリキのロボットの被り物をした少年は嗤う。
仄暗い部屋の中、都合10枚の液晶モニターの光だけが現実の空間を照らしている。
「この国のトップ・ハッカーが入れ替わる時がついに来た!!」
少年は辛抱堪らずメールアプリを起動し、ある取引完了の通知を読み返した。
今回使った4重の仲介屋は、じきにどれか1人が欠ける羽目になるだろう。恐らくもう二度と再現できないルートだ。
ロボ太自身、かなり危ない橋を渡ったが───それに見合う価値はある。
「老人よ、さらばだッ! フフフ、ハハ……ハハハハハッ……ハハハハ───ハハハハハハハハ!!」
◇ ◆ ◇ ◆
喫茶リコリコでの仕事にも慣れてきた頃、久々に
「───で、どんくらい急ぎ?」
「武装集団に襲われているそうだ。現在進行系でな」
私としても久しぶりの実戦だ。武装のチェックは入念に行う。
ついでにふと鏡を見て、『例の作戦』の時に貼った絆創膏がそのままなことに気づいた。傷はもう治っているので剥がしておく。
「まぁ。そりゃ大変だ。たきな~、仕事の話もう聞いてる?」
「はい、一通り」
「おっけ~! あ、
薄茶色の紙袋。中身は……まぁ、いま気にするものでもない。
「ミズキは?」
「もう動いてる。逃走ルートの確保中だ」
「お、張り切ってんね。珍しい」
「報酬が相場の3倍、それも一括前払いだ。経験上、やめておけと言いたいところだったが……」
「ははぁ道理で。……だったが?」
「依頼の相手が相手でな。コネを作る意味で無視できなかった。会えばわかる」
そう、その通り。
喫茶営業が終わった後、昨夜の内にブリーフィングは済ませている。私もいささか面食らったが、店長の判断は正しいと思う。
……というか、あの時は千束さんもその場に居たはずだ。どうして『今朝初めて聞きました』みたいな顔を……?
「敵は5人から10人程度、アマだがプロ寄りだ。ライフルも確認した。気をつけろ」
「了ー解。行こっ」
無言で頷き、千束さんと並んで
直前、無視できない違和感を覚え、私は口を開いた。
「そういえば、ニコルはどこに?」
喫茶リコリコ支部に所属するもう一人のリコリス、ここ数週間当たり前のように一緒に居た赤銀の髪の少女が見当たらない。
前回の篠原氏の事件では最終的に3人で戦ったけれど、今日はミズキさんの直掩にでも出ているのだろうか?
「ん? あぁ、あのイチゴカラー幼女は欠席。昨日ちょっと早めに帰ってたでしょ? DA本部からの呼び出しだってさ」
「そうでしたか……」
思い返せば、あのオレンジ色の制服は特殊部隊所属の証だったな。たとえ喫茶リコリコ支部に転属になろうと、有事の際は本部からの指令が優先されるのか。
個人的には複雑な気分だが、そういう事情なら仕方ない。
「まぁ〜戦力は減っちゃうけど。あいつ、今回みたいな依頼だと暴走しそうだしなぁ」
ていうか、と千束さんは付け加える。
「私に言わせればむしろ、大人しくリコリコで働いてた方が意外なんだよね。星谷ニコルといえば、朝起きて銃触って朝ご飯食べて銃触って二度寝して出撃して、お昼食べて銃触って出撃して、晩ご飯食べて銃触って出撃してお風呂入って寝る……みたいな生活がデフォの
……千束さんはたまにこうして"星谷ニコル伝説"を語ってくれるのだけれど、私はただの一度として本当の話だと信じたことが無い。
篠原氏の事件の時に見せた動き──曰く『千束の見様見真似で本人ほど完璧じゃない』らしいが──といい、千束さんに匹敵するレベルの優秀なリコリスであることは私も思い知った。
しかし、少々毒舌のきらいこそあるものの、ニコルは基本的に明るくて利発な普通の女の子だ。千束さんが言う
「ま、そこはそれ。ニコルが向こうで何やってんのかは知らないけど、帰ってきたあいつが泣いて羨ましがるくらい大暴れしてやろうぜっ。相棒!」
「今回の依頼は強襲ではなく護衛ですよ」
「いやそうじゃなくて……、そうなんだけどそうじゃなくて……。そうなんだけど……」
? どうしてそこでフリーズするんだ。
また何か間違ったことを言ってしまっただろうか……。
◇ ◆ ◇ ◆
─────独立治安維持組織『
青いベルベット風のカーテン。対談用の机と白のソファ。青々とした観葉植物。
何も知らなければ高級ホテルのエントランスにでも見えそうな空間に、3つの陰があった。
「『ウォールナット』が死んだ?」
170cmを超える長身に、夕焼け色のリコリス制服を着た
頭部を白の包帯で包む、顔の無い暗殺者───コードネーム『ゴッホ』。上官の手前、今日はソフト帽を被っていない。
「ダークウェブの噂です」
暗いベージュのレディーススーツを着こなす、栗色のボブカットの女性が答えた。
『ゴッホ』とは打って変わってごく平凡な成人女性にしか見えないが、彼女は東京支部司令官付きの助手だ。
東京のリコリスを率いる上位者の傍らに控え、あらゆる中間管理を担う秘書兼参謀であり、その存在無くして組織の円滑な運用は有り得ない。
「噂って……。大体、ウォールナットはオレが仕留めたじゃないですか」
「ですが、奴は過去30年で何度も死んでいますし」
「アレはダミーじゃありませんでしたよ。押収された証拠品を見たでしょう」
「得体の知れん奴だ。しかし、これで
軍服風の白いスーツを纏った赤毛の中年女性が、厳粛な声音で言った。
DA東京支部司令官───楠木。日本の中心地、帝都の守護を担う影の衆の女王。果断にして無慈悲なるリコリスたちの長だ。
「抜かれたデータ諸共消えてくれれば大助かりだが、
「では裏取りか再攻撃を?」
「いや、恐らく向こうも慎重になっている。そう易々と尻尾は出さんだろう。いま例の銃取引周りからお前を遠ざけるのは避けたい」
「司令。
『喫茶リコリコ』支部が獲得してきた篠原沙保里の写真。1000丁の銃が消えた
錦木千束が召喚した『クリーナー』により、取引の関係者に直接尋問する機会はまたも失われたが、事態の進展に寄与するアクションであったことは間違いない。
「やはり作戦開始時刻の3時間前だということです」
「偽の取引時間を掴まされるとは……我々も焼きが回ったな」
「結構ボケてますね。でも元からピント合ってないし、こんなもんで限界かな」
「特定できるか?」
「もうしばしお時間をいただければ、必ずや」
「あぁすみません、その資料ってオレにも回してもらえますか?
そこで唐突に、ゴッホの懐のスマートフォンが鳴った。
楠木は咎めない。喫茶リコリコとは異なる意味で、DA全体の動きと『独立』している彼女にしか務まらない仕事は多くある。
「失礼、少しだけ。……げっ、ニコル? 何の用だよクソッ……」
端末を耳に当てるや否や、とても文字には起こせないような罵倒と皮肉を連射し始めるゴッホ。
顔には出さなかったが、お互い妙な身内を持つと苦労するな、と楠木は思った。
高額報酬の一括前払い……。うっ、頭が……。
どうにかしてロボ太君の格を上げたいという野望。
まぁロボ太君が小物っぽいというか、ウォールナットが強すぎるだけな気もする。