萌え声人類種の天敵系ロリっ娘リコリス vs 俺たちのちさたき vs ダークライ   作:ごまぬん。

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リコリコ新作続報ッ リコリコ新作続報ッ

これ以上はあえて語るまい……。
あ、ついでと言っては何ですが今回はラブコメをします。



#16 Enter of strange journey(4/n)

 

排撃者数第1位(ダブル・オー・ワン)』星谷ニコルの来歴には謎が多い。

 

 国防組織DAが戦闘員とする少年少女(リリベル・リコリス)の大半は、何らかの理由で尊属親類を失った孤児だ。上級職員(スタッフ)同士の間に生まれた“2世”や、DAの存在と秘密を知ってしまった人間を助命と引き換えに雇用している場合もあるが、ごく少数である。

 星谷ニコルもその例に漏れず、出身は岐阜県美濃市の北端。小さな地方都市の片隅で起きたトンネル崩落事故の生き残りとされている───記録上は。

 

()()()()()

 

 あれから約束通り2日後、私たちを迎えに来た委員長こと冨加宮カズラさんと移動中。今回は鉄道を利用するので車の運転は無し。

 任務地には数日から1週間程度の滞在を見込み、各人それなりの大荷物で、何も知らない一般市民が見れば季節外れの部活動の合宿といった様子。

 ただし、少々意外だったのはミカ店長で、対DANE攻撃作戦のオペレーターの一員としてDA本部から招集が掛かった。普段なら断ることも出来たけれど、本作戦組とリコリコ組の間を取り持つ役目が必要だろうとのことでそちらへ向かって別行動。私たちの目的であるニコルとの接触は……何かと微妙な点が多いから、正直ありがたい。

 

「はい。───話すのが遅れて申し訳ありませんでした。何分、機密事項にあたる内容でしたので……」

 

「うわ、またDAの闇絡みかぁ……」

 

()()? ……いえ、聞かないほうがよさそうですね。さておき、リコリス候補の身辺調査が情報部の管轄であることはご存知でしょう」

 

 リコリスの身元について、原則的にそれが本人に知らされることは無い。この()()()世界一平和な国・日本において孤児になったということは、つまり陰惨な事件や事故の被害者である可能性が高く、その真相自体が大きなストレスになり得るからだ。

 これもまた個々人の事情や性格を鑑みて、情報が開示されることはあるが……もとい、それにしても奇妙な話だった。

 DAとて慈善事業者ではない。大抵のリコリスは赤ん坊の頃に養育施設などから引き取られ、物心つく以前よりあらゆる分野の技能と知識を叩き込まれて育つ。そうでなければ、ある程度の教育基盤が備わっていることを期待できる者に声が掛かる。

 情勢不安な地域の、真の意味で素性の一切知れぬ種類の子供を招き入れるようなことはまず無いだろう。ひとえに孤児とは言っても、相応の分別がつかないようでは極秘の国家事業に徴用など出来ない。

 

「あぁ。そう言えば、ドットフィフスってほとんど『中途採用組』だったわね。やっぱ『揺り籠組』とは合わないのよあの子ら」

 

「前提として、身体測定のデータと周辺地域の医療機関の出生記録を照合した限り、『星谷ニコル』に()()()()()乳幼児は少なくとも3名居たという事実があります。DAが記録しているのは、その中で最も信憑性が高いと判断された1名のプロフィールです」

 

「迂闊と言えば迂闊だが……『排撃者数第1位(ダブル・オー・ワン)』、『赤帽鬼(レッドキャップ)』か。リリベルの間では錦木殿より有名かも知れん。素性の怪しさよりも、特記戦力としての価値が勝ったわけだ」

 

「まぁ、そもそも保護当時は推定3歳でしたからね。何らかの組織の工作員にしても幼すぎる……尤も、その1年後に施設を脱走して初戦果を挙げたのも事実ですが」

 

 リコリコへの赴任初日に千束が語ってくれた話だ。

 ニコルが4歳になった頃、DAの施設を脱走して先輩リコリスの運転する車両に密航し、出撃先でターゲットの排除に成功したという逸話。何度聞いても信じ難い“星谷ニコル伝説”の始まり。

 

「……単純にデータが無い、というだけなら情報部の怠慢で話は済みます。しかし、星谷ニコルの()()が明らかになった頃、情報部は彼女の身元について再調査を実施しました。その結果……」

 

「また問題が?」

 

「えぇ。───動員されたエージェントが、全員、再起不能になったんです」

 

 …………。

 ……、───え?

 

「最初に任務にあたった情報部エージェント2名は、現地調査へ向かってそのまま失踪。これを追って派遣されたリコリス2名も、立て続けに死亡が確認されました。事態を重く見たDAは、エージェント5名と護衛のリコリス3名からなる特別調査チームを編成しましたが、うち6名が死亡または行方不明に。生き残った2名も、精神に甚大なダメージを負っており……」

 

「ちょちょちょ待っ、待って待って待って……! 何それ、急にホラーなんですけど!?」

 

「実際、オカルトホラーみたいな話ですよ……。それ以来、調査は打ち切られ、関係者にも箝口令が布かれることになりました」

 

「……賢明だな。これが表沙汰になればDAの面子は丸潰れだ。有効な反撃は出来ずとも、犯人の目星だけはついていた真島の比じゃあない」

 

 神妙な面持ちで、カズラさんは告げる。これから私たちが相対するものの正体を。

 

「作戦目標は星谷ニコルとの接触ですが、今回、私たちが戦うのは彼女やDANEではありません。クラスⅨ(最上級)機密案件、秘匿コード『(オウル)』───闇に潜んで忍び寄り、音も無く獲物の喉笛を切り裂く死の影こそ、我々の敵です」

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 ─────信じてもらえないかも知れないけれど。

 

 思い出せる限り最初の記憶は、母親を踏み潰しながらこの世に生まれた時。

 後になって聞いたところによれば、その場に居合わせた誰もが泣いて喜んでいたという。わたしを産んで直後に亡くなった母も含めて。

 

「████はねぇ、████様と一緒に生まれてきたんだよ」

 

 生まれて初めて握ったものは、先の尖った五寸釘。

 離乳食として食べていたのは、赤黒くてぶよぶよした果実。

 

 記憶と言うには曖昧で、夢と言うには生々しい光景。

 普段は思い出すことも意識することすら出来ないのに、ふとした時に瞼の裏をちらつくものがある。

 

「だから、きっとおなりよ。立派な████様に、なるんだよ」

 

 老婆のようにも、少女のようにも聞こえる不思議な声。微睡みの中でだけ耳に届く、どこまでも優しい誰かの残響。

 

「……、██。██の███、███が███ものでも██。████───きっと、███の███ように██████」

 

 朝の光が、すべてを忘却の彼方に持ち去っていく。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 そういえば、どうして急にニコルの出身地の話題になったかと言うと。

 

「っは〜……やっと着いたぁ! う〜ん、でも空気が美味しい! 許すっ」

 

 岐阜県美濃市北端、甜壱(あまい)村。

 2週間前、列島最北端よりもさらに北方──30年ほど前に起きた()()()の紆余曲折の末に転がり込んできた、あるいは100年前の意趣返しの如く掠め取った()()()──にて、輸送船団に紛れる一隻の潜水艇の姿が確認された。

 物の界隈では『Ласточка(ラストーチカ)』───(つばめ)の通称で知られるそれは、現行の軍用艦に匹敵するステルス性、5日で太平洋を横断する驚異的な船速に加え、年単位での無補給航行が可能な『アラン機関』の手になる先端技術の結晶と言われている。

 その中には、機関の支援を受けて開発に携わった『アラン・チルドレン』が自ら搭乗して───()()とされるのは、少し前までの話。

 

 ───現在、世界中で話題となっているのが『チルドレン狩り』だ。

 最初は正体不明の武装集団による襲撃・殺傷事件に始まり、もといその『武装集団』がアラン機関の活動実態──“天賦の才の発現”のみを至上命題とし、目的と結果の善悪を問わぬ狂気性──を暴露する声明を発表したことで、かの組織は一気に大衆からの支持を失った。

 無論、アラン・チルドレンが世界にもたらした恩恵は数限りない。人間は一度得た利便性を手放せないもので、そも機関の活動を非難する手段として殺害という蛮行を選んだことを糾弾する声もまた多く───しかし一方で、突出した個が生み出す()()()()()()を歓迎しない者は、それよりもさらに多かった。

 今や世論はチルドレンという“新人類”を巡って、彼らを支持する側とそうでない側に二分され、後者の過激派による個人攻撃や産業テロが社会問題と化しているのだ。

 

 ……少し話が逸れたが、ともかく。

 世界中の紛争に火を点けて回り、さらには昨今の『チルドレン狩り』を主導する武装集団が“拠点”としているのが、件の潜水艦『ラストーチカ』だという。

 

「そして、その所有者が……民間警備会社(PMC)Diner MAJIMA(ダイナー・マジマ)』ってわけだ」

 

「二重の意味でまさか、だわね。真島が生きてただけでもびっくりなのに、ニコルと組んでるなんてなぁ……」

 

 アラン・チルドレンはその携わる分野における宝であり、機関の支援を受けて頭角を現す頃には相応の社会的地位に就いているものだ。ましてや真島のような負の側面の体現者───すなわちは戦闘能力や兵器開発、殺戮の才を見出されたチルドレンも存在するとなれば、彼らを害する方法は極めて限られる。

 それをこうも次々と、“狩り”と称されるほどに容易くやってのけ、さらには市井の人々まである種の尖兵として利用しているということは……。確かに、あの2人が組めば、この世に殺せない人物など存在しないように思える。

 

「……けれど、何度でも止めると約束しました。私たちが生きている限り、ずっと」

 

 といったところで、『ラジアータ』がその『ラストーチカ』と搭乗員の足跡を追跡した結果、ニコルが潜伏しているのがここ甜壱村だと判明した。

 現在、『DANE』を構成することになるであろう複数の犯罪組織は横浜(神奈川)へと集結しつつあり、彼らの動向を注視するには不便な土地のはずだが……。

 

「件の星谷ニコルは単独行動中、か。なるほど不可解だが……存外、たまの機会に里帰りしているだけだったりしてな」

 

「うわー、それあるかも。抜け目ないように見えて案外直情的だかんね、やりたいこと最優先っていうか……まったく誰に似たのやら」

 

 ……これ、ツッコミ待ちかなぁ。

 

「まぁ、真面目に仕事するのは明日からでいいっしょ! 小さい村だけど色々あるっぽいよ〜、温泉とか神社とか。ほらこれパンフレット」

 

「こら健康優良不良リコリス。遊びに来たんじゃないのよ」

 

「とはいえ……『(オウル)』は個人なのか組織なのか、それとも野生動物や自然現象の仕業なのかすら判然としない。現状、あまりに情報が少ないのは事実ですし……ひとまず全面的な現地調査を行うという方針は、間違ってないかも知れませんね?」

 

「やったっ!! さっすが委員長、話がわかるぅ~!」

 

 おぉ……なんということだろう。カズラさん、千束の操縦が上手いぞ。これがフキさん辺りなら大声で怒鳴りつけて喧嘩になっていそうなものだ。

 まぁ、近頃はDAから舞い込む仕事も多くて(というか今回の件もそうなのだが)なかなかにハードなスケジュールだった。重要な、そして恐らく危険な案件であることは間違いなく油断は禁物だが、そのくらいの役得はあってもいいだろう。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

「先生。お久しぶりです。また先生の指揮下で戦えるとは思ってもみませんでした、全力を尽くします」

 

「あぁ、フキ。久しいな。しかし今回の作戦、私はあくまでオペレーターの一人に過ぎない。いざという時は楠木の全体指揮に従うように」

 

「は……それは、もちろん」

 

「それに、リコリスとしては現役最後の出撃と聞いたぞ。決して無理はするな。必ず生きて戻るんだ」

 

「───、はい!」

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

「あっづぅ~……!!」

 

 う~ん、ミズキとクルミに付き合って長風呂してたらのぼせた……。

 やっぱり歳取るとお風呂が長くなるって本当なのかな? いやいや、普段はイジり倒してるけど、実際せいぜい一回りくらいしか変わんないって。それにクルミの方はどう見ても……うむむ、しかし……。

 たきなと委員長はさっさと上がっちゃってどうしてるかしら、と思っていたら旅館の談話室から話し声が聞こえてきた。そういえばよくわからない本がいっぱい置いてあったな。委員長は本好きだからきっと話が弾んでいることでしょう。

 

「む」

 

「あ。ゲンさんも今上がったとこ?」

 

「あぁ」

 

 そして水も滴る良い男。ぶっちゃけ私のストライクゾーンには入ってないものの、確かにミズキがあと10年経ったらな~と言い続けているだけはある。

 てか例のオールバック隊長といい、リリベルって意外とイケメン多いよな……。もちろんリコリスも美少女揃いで負けてないけどね、私とか!

 

「ねーゲンさん、オールバックのリリベル知ってる? 赤服の子でさぁ、延空木テロの時にやり合った部隊の隊長っぽかったんだけど」

 

「うん? ……あぁ、いや、作戦中のコールサインしか知らないな。比較的大きな作戦で現場指揮を任されていることが多いから、優秀な兵士ではあるのだろうが」

 

「へぇ。うちで言うとこのフキ枠か。苦労してそう」

 

 自販機でコーヒー牛乳を買う。おっ、物価が安い。嬉しい。

 DEMONS事変の余波でてんやわんやになってからはDA本部からのお小遣い(活動費)も心細くなっていて、海外渡航でそれなりに予算を食ったことも重なり、最近のリコリコは質素倹約志向なのだ。

 

「ゲンさんは普段どんなことしてるの?」

 

「訓練、訓練、それに訓練だ。DEMONS事変は例外にせよ……もとい、あれを引き合いに出すが、そもそも俺たち“軍隊”(リリベル)が出張る羽目になった時点で事態は急を要する。培った能力を実戦で振るえないことに不満を持つ者も居るが、俺たちがそうして訓練だけに没頭していられるのも、錦木殿らリコリスの活躍があってのことだ」

 

「そっか」

 

 案外と普通だなぁ。あ、それから……。

 

「リリベルと言えば、リコリスの───……いや。ごめん、何でもない」

 

「……」

 

 ───リリベルのもう一つの役割。

 DAは秘密組織だ。世界一平和な国を謳うこの国で、最も血に濡れた闇の処刑人。

 けれど、どんなに取り繕ったって、組織を形作っているのは人間だ。命を奪い奪われる極限環境に、耐えられなくなれば……。

 

 うん。そりゃあ、言いたいことは山ほどある。

 悪を殺す悪───という矛盾は、たとえ国家がその背後で存在を是認していても、きっといつか破綻する。私や真島が何かを訴えるまでもなく。

 ゲンさんたちリリベルは、きっと()()()()に一番近い場所で戦っている。

 

「一般論として、どんな人の生命も尊重されるべきだと言うことは出来る。また率直で素朴な感覚として、俺も人間の命を奪うことには相応の抵抗がある」

 

「……うん」

 

「───しかし一方で、俺は錦木殿とまったく意見を同じにすることは出来ない。度し難く、救い難い邪悪というものは現実に存在する。この国の平和(ありかた)はひどく歪で脆いが、それは()()()()()()()()()()()()()()を捨て置いていい理由にはならん」

 

 DAが採用している『ラジアータ』を用いた高度予測システムは完璧じゃない。技術的脆弱性という意味ではなく。

 あのスーパーAIを最初に開発した技術者たちは、100年前の大戦によって一度は壊滅した『八咫烏』上層部の強い意向にもかかわらず、システムの根幹に最高優先度の“倫理プロテクト”を組み込んだ。

 推定無罪の原則───殺人という手段を執行する以上、絶対にただの1人も()()()を生まない誓い。たとえ10人の凶悪犯を野放しにしようと、100人の戦闘員を犠牲にしようと、無辜の善人が理不尽に死ぬことを許さなかった。

 だから、『ラジアータ』の判断に()()はあっても()()は無い。

 

「このような割り切りを欺瞞だと、正義を言い訳に使っていると批難されることは仕方がないだろう。だが……()()()()()()()()この世界が陥っている状況は、恐らく錦木殿が思うよりも、さらにずっとシリアスで緊張感に満ちている。賛同してくれとまでは言わない。ただ、理解しておいて欲しい。いつか、もしもの時のために」

 

 そう話すゲンさんの目は、いつになく鋭く、また途方もなく遠いところを見つめているようだった。

 

「───、うん。わかった、覚えとく」

 

 ……きっと、命を徒花と散らす者(リコリスとリリベル)同士で、これ以上語ることも無いだろう。

 

「……乞われてのこととはいえ、妙な話をしてしまったな。明日からは本格的に任務開始だ、お互い早く休むとしよう」

 

 ひょいと立ち上がるゲンさん。しかし、どんだけ低く見積もっても170cm台後半はあるのに、部隊内だと背が低い方らしい。男の子って……。

 ちなみに当然っちゃ当然だが、宿はゲンさんだけ別部屋を取っているので、

 

「おっけ〜。寂しくなったらいつでもこっちの部屋遊びに来ていいからね♪」

 

「フ……部隊の仲間に聞かれたら嫉妬で殺されそうだ」

 

 さて、私もそろそろ秘密の花園に帰るとしますか。

 たかだかウン時間電車に揺られたくらいでヘバるほどヤワな鍛え方はしてないけど、お風呂入ってこの夜更けとなればさすがに眠たく───。

 

「ふぁ……、───ん? にゅっ、うわぁ!」

 

 ぬおっ、私としたことが! こんな所にスロープあったっけ!?

 段差が少なくていいけどちょっと予想外、うわわ転び……!

 

「錦木殿ッ!」

 

 転……ば、ない!

 ん? いや、あれ? 転んではいるな。てか思いっきり後ろに倒れたな。重力が……でも、それにしては頭も背中もお尻も痛くないぞ?

 

「───平気か?」

 

 あっ、何か至近距離から声……。背中と腰に、硬いような柔らかいような。人肌の感触だ。

 ……、───……て……ていうか、さ。

 

「ふぇ!? ……あ、ひゃい……」

 

 これ───さぁッ! いわゆる『お姫様抱っこ』……ってコト!?

 う、うわぁ……わぁ、わぁ、わぁッ……! 近いよ近い近いって顔ぉ!

 ひえぇゆっ、浴衣! 格好、乱れてない? なんかこう、恥ずかしいことになってないかなッ!?

 

「あうぅ……! そ、その、ゲンさっ……!」

 

「どうした? やはりどこか痛むか?」

 

「……いえっ!! だいじょぶれす!」

 

 あっっっっっぶねあぶねガチ恋距離。恐ろしく素早い復帰、私じゃなきゃ撃沈してたね。日々の鍛錬に感謝。

 っはー……。はー……。し、心臓バクバク言ってる……いや私に限っては言ってないけど。しばらく涼んで落ち着いたはずの血流がえらいことになっとる。

 てゆーか、何なん? 転びかけた人間を助けるためにやるのがお姫様抱っこって何なん? 童話の世界から来たん? ゲンさん、恐ろしい子ッ……!

 

「あまり大丈夫には見えないが……。よもや温泉で? すまない、気づくべきだったな。いま処置を───」

 

「ほ、本当に何でもないからぁ! おやすみッ!!」

 

 うぅ……明日からどんな顔して会えばいいの〜!?

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

「……ハッ!? ラブコメの波動を感じる……!」

 

「幻覚だろ。それよりミズキ、明日はあっちの温泉に行くのはどうだ? 効能はもちろんだが面白い(いわ)れがあるらしくてな……」

 

























ちなみに浴衣は乱れてました。
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