コレクターが行く 作:見切り発車
その場に現れたUMBは【過呪染血 カースドブラッド】と頭上に表示されていた。
カースドブラッドは自らの縄張りに無遠慮に侵入してきた者たちに攻撃を行う。
スキルによって生み出された禍々しい巨大な針、それが大量に飛んでくる。
「!?」
「っ!」
カースドブラッドの攻撃に反応で来たものは少ない。
超級職であり超級でもあるコレクト、集まったティアンのうちAGI型でレベルをカンストしている数人。
あとはすべてカースドブラッドの攻撃を受け、そしてその効果を受けることになる。
「うああああああ」
「体が!!!」
それは怨嗟の声。攻撃を受けた怨嗟ではない。純粋に、呪われたから出された声だ。
そして一拍置いて攻撃を受けなかったものからも声が上がる。
「何だ!?何故だ!?」
「なっ!?避けたはずだぞ!?」
コレクトはこの様子を平然と観察し、そして自分の手首を切り裂いた。
自身が切り裂いた手首から流れる血を見て状況を理解する。
(体内の血が呪怨系状態異常の感染源になっている?
いや、植物も影響を受けている。生物の中にある水分を汚染するものか?
あの棘に当たっていないところまで影響が出てると考えるとあの棘から一定範囲内の相手に無差別発動か?
その割にあいつはピンピンしてるな。自身は影響の対象外か、そういう体質か?
いやこの汚染速度、自身も巻き込むレベルでないと実現はできないか?)
コレクトはここまで考え、そして動く。
(状態異常は問題ない。棘に直撃さえしなければ殺せる)
《呪転撃》を放つ特典武具を構え、カースドブラッドに向かい全速で進む。
当然、自身に向かってくる獲物を迎撃しようと棘を飛ばすカースドブラッドだが、コレクトは新たに取り出した刀で弾くか避けて進んでいく。
しかしカースドブラッド只のUBMではない。限りなく神話の域に近い存在だ。
先程まで飛ばしていた棘を全身から生やし、そのまま超音速機動で殴りかかってきた。
「なっ!?」
これはコレクトにとって完全なる想定外。
自身が動かずにわざわざ棘を飛ばし、状態異常を完全にレジストできるレベルの耐久力。耐久型のUBMという勘違いをするのも仕方ない。
ゆえに攻撃を避けきれず、しかし攻撃をしてきたカースドブラッド咄嗟に《呪転撃》を放った。
互いの一撃は激突し、その威力を発揮した。
コレクトの特典武具は破壊され、カースドブラッドの右前足は千切れ去った。
双方距離を取り、体勢を整える。
コレクトは新たな刀を2本取り出し、カースドブラッドは禍々しい腕を生やした。
(腕を生やした?
怨念が大量に籠もってるな。怨念を固めたか?)
そう思考しながら自身が切った腕を見るコレクト。
(血、流れてるな。怨念で脚を生やしたが本体は生身だな。
……あいつ
コレクトはカースドブラッドは生身で生きていると判断した。
生きてるならばコレクトの切り札が刺さる。
必殺の切り札を切るために近づく機を伺っていたコレクトだが、カースドブラッドは先手を取って決着をつけに動いた。
「なんだ?怨念が動いて?」
周囲の怨念が次々にそこらの存在流れていく。
死んだティアンに、周囲の木々に、そこらの草花に、ありとあらゆる物に怨念が宿っていく。
「まさか!?」
そうして大量の怨念が流れ込んだモノたちは蠢き出す。
まるでアンデッドのようになり、この場で唯一怨念に呑まれていないコレクトに向かってゆく。
「魔力は温存しときたかったがしょうがない!《サンドウェーブ》!!!」
残りの魔力をほぼ使い切り魔法を発動するコレクト。
砂が波のように蠢き、周囲のアンデッドたちを飲み込んで地に埋める。
弱い個体は倒せたが、むろんすべてを倒せたわけではない。
しかし、邪魔をする者たちはいなくなり、カースドブラッドまでの道ができた。
「今!」
コレクトは装備をAGIを上げるものに変え、今出せる全力で駆け出した。
これに対するカースドブラッドは相手が何をするかわからないが、勝負を決めに来たをこと理解した。
そして自身が作れる程度の相手では相手にならないことも理解し自らの手で相手取ることにする。
◆
カースドブラッドは怨念を振りまき、その怨念を利用するUBMだ。生まれた時から怨念を集め、怨念を振りまき、怨念を扱っていた。
UBMまで至った今においては怨念を利用し、瞬間的にアンデッドを生み出すことまでできるようになっている。
しかし、カースドブラッドが初めに怨念を利用した方法は自身に纏う鎧のような方法だ。
これにより数多くの強敵を屠ってきた。
現在古代伝説級のカースドブラッドは、古代伝説級の名に恥じぬ高さのステータスに怨念を使った強化を重ねると神話級の域にまで至るものだ。
この単純な方法が最もカースドブラッドの慣れしたんだ必殺の技だ。
そしてカースドブラッドはコレクトをそれほどの相手と認め、切り札を切ったのだ。
ここからはどちらが先に相手に自身の切り札を叩きつけられるのかの勝負である。
◆
(怨念を身に纏ってるな。それが切り札か?
こちらは相手に触れるだけでいいが、相手も一撃でこちらを殺せると考えて動いた方がいいな)
疾走しながら相手の変化を見極めるコレクト。
されどこれから行う行動に変化はない。一手で決める為に駆けるのだ。
怨念を身に纏ったとしてもカースドブラッドがやることが変わることはない。
大量の棘を飛ばす。ここまでなら最初と変わらない。しかし違うのはここからだ。
カースドブラッドはそこらに埋まっているアンデッド達の怨念を利用する。
周囲の怨念を爆発させたのだ。これによりコレクトがアンデッドを埋めてしまったのが裏目に出る。
これにより土煙が立ち込めカースドブラッドの姿を隠すだけでなく、コレクトの歩みを鈍らせる。
だがしかし、それでコレクトは止まらない。その程度では止められない。
このくらいのことは神話級との戦いにおいてすでに超えたものだ。
ゆえにコレクトは駆け続ける。
棘を弾き、躱して突き進む。断続的に発生する地中の爆発は怨念が濃い場所を注意し、被害を最小限に抑える。
しかしどれだけ上手くやっても消耗は避けられない。じりじりと削られながらされど突き進む。
コレクトがカースドブラッドの前に辿り着いた時にはすでに半死と言っても過言ではない状況だった。
だがコレクトの切り札には影響がなく、行動にも影響がない。
ここからはどちらが先に相手に一撃を入れるかの勝負。
先に動いたのはカースドブラッド。ほぼ万全の状態の神話級クラスが先行するのは当然。
カースドブラッドが繰り出したのはなんの捻りもない単純な叩きつけだ。
だがしかし、圧倒的なステータスから振るわれるそれはそこらのエンブリオの必殺スキルにも匹敵するもので、これを回避できなければ何もできず死んでいくだろう。
しかしコレクトは前に走り出した。
避けず、自ら攻撃に受けに来ているようなコレクトに驚くカースドブラッドだが、しかしそれで攻撃を中断することはない。
これで勝利を確信したが、コレクトは懐からあるアイテムを取り出し後ろに放り投げた。
それは一枚の紙だった。これがただの紙の一枚であれば勝敗は覆ることはないだろう。
だがしかしそれはただの紙であればの話。コレクトが投げたのは魔法を封じた符であった。
その符に封じられていた魔法は単純な爆発の魔法。自身の後ろで行われた爆発はコレクトの背を押し、カースドブラッドの攻撃を避け、かつ懐まで入り込んだ。
「届く!」
カースドブラッドは驚愕した。しかし驚愕をしたとしても即対応してくる。
今、カースドブラッドは全身に怨念を纏っている。そしてカースドブラッドは怨念を爆発させることができる。ゆえにこれから行われるのは大量の怨念を使った自爆だ。
だがコレクトがカースドブラッドに触れる方がわずかに早く、そして、その刹那ですべて終わった。
倒れ伏すカースドブラッド。そして流れるアナウンス。
【<UBM>【過呪染血 カースドブラッド】が討伐されました】
【MVPを選出します】
【【コレクト】がMVPに選出されました】
【【コレクト】にMVP特典【呪染輪 カースドブラッド】を贈与します】
「これを切らされるとはな。
お前は強かったよ。ものすごくな」
自身の獲得した特典武具を見ながらつぶやくコレクト。
コレクトはカースドブラッドを一撃で殺しきった。
何をしたのかはひどく単純だ。生物が生きている上で必須の体内電気をすべて消し去ったのだ。
それを成したのは現在ロストジョブとされている【絶王】のスキル。
コレクトは過去に、縁と奇跡で獲得できたジョブを育てているうちに手に入れらのだ。
コレクトは普段【絶王】のジョブを秘匿している。
切り札を隠すのは超級として珍しくなく、それを切らせたカースドブラッドはやはり強かったのだ。
そしてコレクトは歩き出す。本来の目的である【死霊王】の獲得のために。
コレクトが歩み去ったここに残されたのは荒れ果てた地と、残った怨念のみであった。
終わりはあっさり。
余談だけどレジェンダリアで指名手配も食らった。半分は自業自得でもう半分は冤罪。
あと描写してないだけで特典武具の影響とかもある。
追記
ここでは【絶王】のこと【絶王】って表記してるけど多分名前は【絶姫】だと思う。でも伝えやすいため【絶王】ってしてるってことにしといて(焦)。
ついでに【死霊王】も【死霊姫】かもしれないけどちょっと許して。