ドラゴンボールはアビスに落ちてしまった!   作:ペン汁

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ハッキリ言ってやろうか
メイドインアビス要素は最後の方にしかない……


ドラゴンボールはアビスに落ちてしまった!

 

 

 

 

 

 孫悟空が魔人ブウを倒してから、数ヵ月。

 世界を救った英雄は、とある山岳地帯でドラゴンレーダーを片手に、ゆっくりと動いていた。

 

 

 

「お~よしよし……。オラ何にもしねぇから、それ、こっちに渡してくんねぇか……?」

「キキッ?」

 

 悟空が『自分は無害だ』と示すためか、両手をパーにして頭の横に置きながら、目の前の生き物に近づく。

 彼が近づいていたのは……『セルジュニア』だった。

 

「それくれたらよ、後でたらふく美味いもん食わしてやっからさ! な?」

「キ……」

 

 セルジュニアが小さな両手で持っていたのは、『四星球(スーシンチュウ)』。

 彼の視線が悟空の顔と四星球を何度も行ったり来たりして……瞬間、非常にあくどい笑みを浮かべた。

 

 嫌な予感がした悟空が冷や汗を流して手を伸ばすが、少し遅い。

 

「ウキキーッ!!」

「あ”ーっ!!!」

 

 セルジュニアは手に持った四星球を、空の彼方へ投げ飛ばした。

 規格外の腕力から放たれたそれは、大気圏を一瞬で飛び越え、宇宙の何処かへ飛んで行ってしまったのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――……それでさ、宇宙船とドラゴンボールの場所がわかんねぇと、オラも集めようがねえぞ」

「全く……まぁ、しょうがないわね。元はと言えば私が頼んだことだし」

 

 世界的企業、カプセルコーポレーション。

 その社長であるブリーフ博士の自宅兼研究所に、悟空とブルマ、そして悟空に抱えられているセルジュニアの3人が居た。

 

 

 ……実は、孫悟空はブルマからドラゴンボールを集めることを依頼されていた。

 魔人ブウという尋常ではない強敵を乗り越えたからか、更にラブラブになったブルマとベジータ。そしてもう一ヵ月もない頃に、ベジータの誕生日が訪れる。

 

 そこで彼女はベジータに心から喜んでもらおうと、彼が本当に欲しい物を知るために、神龍を呼び出そうとしているのだった。

 

 

 悟空はブルマにドラゴンレーダーを渡す。

 彼女はすぐにレーダーを分解し、常人では分からない機械や器具を用いて改造して、一瞬で元の形に組み上げた。

 

「はい。これで宇宙の何処かに行ったドラゴンボールの場所が分かるわ」

「いーっ!? 随分とはえぇんだな~!」

「こういった事もあろうかと、レーダーの強化モジュールを作っておいたの」

 

 渡されたドラゴンレーダーを、抱えられた腕の中から手を伸ばして奪おうとするセルジュニア。

 そんな彼の鼻っ柱を、ブルマが指でドン!と押した。

 

「いい!? 元はと言えば貴方のせいで宇宙に飛んでって、態々探す羽目になっちゃったのよ! 今度余計なことしたら承知しないんだから!!」

「おいおいブルマ、そんなに怒らなくても……」

 

 悟空が怒り心頭と言った様子の彼女をなだめようとした瞬間。

 セルジュニアが、ブルマの指先を『カプッ!』と噛んだ。

 

 

 

 

「―――い”っ”っったぁ~~~~いっ!!!!」

 

 

 

 

 真っ赤に腫れた指先をぶんぶんと振り回すブルマ。

 その声に反応したのか、バタンバタンと扉を勢いよく開けてこちらに走ってくる音が聞こえる。悟空には気を探ることでそれが誰かすぐわかった。ベジータである。

 

「やっべぇ! ベジータがこっちに来る!」

「い”っ……孫君、はやく行って! ベジータのサプライズプレゼントの件、バレたらホントに承知しないわよ!」

「うわっ、わかったわかったって!」

 

 悟空の背中を肩で押し、無理やり宇宙船の中へねじ込むブルマ。

 遠隔リモコンのボタンを叩き壊す勢いで押し、宇宙に向かって勢いよく発進させた。

 

 

 バンッ!と研究所の扉が開く。

 鋭い目つきで辺りを伺うベジータがブルマの方を見て、大声で叫んだ。

 

「――ブルマ! 何だ今の声は!!」

「な、なんでもないのよ。ちょっと指を挟んじゃっただけで……」

「……フン。そうか」

 

 くるりと、その場で振り返るベジータ。恐らく修行を行っていた重力室へ戻るのだろう。

 扉をゆっくりと閉めていき、完全に閉まり切る、その直前に。

 

「……気を付けろよ」

「! え、ええ」

 

 ポッと顔を赤らめたブルマの顔を、ベジータは見ることがなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 急発進した宇宙船は既に大気圏外に突入していた。

 小窓から眼下の地球を覗きながら、悟空が呟く。

 

「お~、あぶねぇ。あんなとこベジータに見られたら、オラ本当に殺されてたぞ」

「キキッ」

「おめぇもそう思うか、ハハッ! ………ん?」

 

 腕の中に抱えたセルジュニアを見る悟空。

 数秒、彼を見つめたまま固まり。

 

「……まさか、おめぇと二人っきりで旅すんのか?」

「ウキキッ!」

 

 元気のいい掛け声と共に、セルジュニアが悟空の鼻を殴った。

 スーパーサイヤ人でもない状態で、完全な不意打ちだったからかモロに食らってしまい、鼻血を出して壁の方に吹っ飛ぶ。

 

 鼻血を出す悟空を見て嬉しそうに小躍りするセルジュニア。

 

 

「……う、ウソだろぉぉ~~~!?」

 

 

 普段大して悩む事のない悟空が、久しぶりに頭を抱えて叫んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――ナメック星に悟空が向かう際に乗った、球形の宇宙船。

 

 内装は当時の悟空のトレーニングに耐えられるよう、特別頑丈に作られていたはずだが。

 まるで怪獣が暴れ回った後のように、内壁に凹んだ跡や爪で引っ掻いたような傷が無数に出来ていた。

 

「だりゃりゃりゃりゃ!!」

「キキキキッ!!」

 

 しかし、ボロボロになるのは仕方ないのかもしれない。

 今この場にいる2人は、怪獣など百匹まとめて掛かってきても余裕で蹴散らせるほどに強いのだから。

 

 超サイヤ人の悟空がセルジュニアの腕を掴み、地面に叩きつけた。

 しかし全身に伝わる衝撃を気に留めることもなく、小柄な体格を生かして悟空の腕に絡みつき、そのまま悟空の肩の関節を外す。

 

「いってーっ!! 何すんだ!!」

「キキ―ッ!!」

 

 すぐさま関節を元に戻し、セルジュニアに殴り掛かる悟空。

 それに応戦するため、彼が特大の気功波を放とうとしたところで。

 

 

 

 

 

 ――――チーン!

 

 

 

 

 カプセルコーポレーションが開発した、暖めるだけで出来立てほやほや、プロも唸る味の料理が出来る――――いわゆる冷凍食品の進化版。

 10分前から暖めていたそれが、ようやく暖め終わった音がした。

 

 お互い戦闘態勢を解き、腹の音を鳴らす。

 パン!と自分の腹筋を叩いた悟空が、セルジュニアに笑いかけた。

 

「ふーっ……セルジュニア! 飯にすっか!」

「キキッ!」

 

 

 一流レストラン並の味がする炒飯を頬張りつつ、お互いの皿に乗った餃子を奪い合う2人。

 

「それにしても、やっぱセルジュニアはつえーなぁ! 昔のオラが苦戦するわけだ!」

「ウキキッ」

 

 昔、超サイヤ人2になれなかった頃、セルジュニアと戦った悟空。

 恐らく、あの時戦ったセルジュニアと目の前のセルジュニアは別個体だろうが、とんでもなく苦戦したのを覚えている。

 

 そして魔人ブウを倒した悟空ですら、超サイヤ人1の状態ではセルジュニアと互角。実力がある程度拮抗しているおかげで良い修行になるのだ。

 

 

 山盛りの料理を食べ終わり、すぐさま立ち上がって構える悟空。

 

「よっしゃ! 続きを―――――」

『目的地、上空です』

「ん……もう着いたんか。ちっくしょー、ここからが良い所だったのによ」

 

 船のアナウンスがそう言ったので、渋々と悟空は気を霧散させる。

 そして、壁にある小窓から自身たちの眼下―――目的地の星を眺めた。

 

 宇宙船に乗り始めて約一週間、ナメック星と真反対の方向に同じくらいの距離を行ったところにある星。

 ドラゴンレーダーが示す信号は、その星の雲の隙間から見える、超巨大な大穴から発せられていた。

 

「おわーっ!! でっけえ穴だなー!」

「……?」

 

 セルジュニアが大穴を覗くも、こてんと首を傾げる。

 その仕草から『どうしてあの穴に行くんだ?』という意思を嗅ぎ取った悟空は、ブルマに渡すのを忘れていた6つのドラゴンボールをセルジュニアに見せた。

 

「あそこにな、このドラゴンボールっちゅう奴を探しに行くんだ! おめぇが投げた奴だよ、これこれ! こいつを7つ集めると、どんな願いでも叶っちまうんだ!」

「…………」

 

 

 ――セルジュニアは知能が低いわけではない。

 自身が投げた物がドラゴンボールという名前の物体である事。そのドラゴンボールを探すために宇宙に出て、あの大穴へ向かっている事。こんな事は既に理解している。

 

 しかしどうして、その『ドラゴンボール』というただの玉を集めているのか? それが分からなかった……いや、知らなかった。

 

 悪戯好きと呼ぶには悪の方に針が振れすぎている彼が、『ドラゴンボール』という玉の持つ力を知った瞬間。

 取る行動など1つしかなかった。

 

 

 

「キーッ!!」

「あっ!!」

 

 悟空が持つドラゴンボールが6つ入った袋を奪い取り、窓をぶち破って宇宙空間へ飛び出した。

 セルジュニアは宇宙空間でも活動できるが、悟空は死んでしまう。よって追うこともできない。

 

「こらー!! 何すんだ、セルジュニア―っ!!」

 

 自動遮断プログラムが働き、割れた窓の代わりに鋼鉄製のシャッターが閉まった為、空気が漏れ出る心配はない。

 1つ横の窓に移動し、セルジュニアの様子を見ようとした瞬間。

 

 

 

 ――――ズドォォォオン!

 

 

 

「うわっ!!」

 

 宇宙船が大きく揺れ、目的地の星――大穴から少し逸れた海へ向けて勢いよく落下し始めた。

 セルジュニアが船の裏側に回り、勢いよく蹴り飛ばしたのだ。

 

 駄目押しと言わんばかりに気功波を放つと、宇宙船はブースターが千切れ飛び、完全に制御不能のまま落下していく。

 

「キキッ、キャキャキャキャッ!!」

 

 腹を抱え、ひとしきり無邪気な笑いをあげた後、大穴に向かって飛び始めるセルジュニア。

 ドラゴンボールがあの穴にあるのは知っている。

 7つ集めるとどんな願いが叶うのも分かっている。

 

「キキキ……」

 

 明確に、何か叶えたい願いはない。

 しかしどんな願いでも叶うアイテムがあるのなら―――欲しいのは人間だって、サイヤ人だって、セルジュニアだって同じなのだ。

 

 全身に籠める気を爆発的に増加させ、更にスピードを上げて大穴に向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 十数分後。

 

「……くっそ~、セルジュニアの奴……やってくれやがって!」

 

 海に不時着した宇宙船の扉から、頭のたんこぶを抑えながら体を出す悟空。

 ドラゴンボールを奪われはしたものの、ドラゴンレーダーだけは何とか死守した。これさえあれば、ドラゴンボールを持つセルジュニアの身柄を追うことが出来る。

 

「ハァァァアアッッ!!」

 

 全身に気を籠め、超サイヤ人を超えた超サイヤ人……いわゆる超サイヤ人2へと変化する。

 

「こうなったら、オラの方がよっぽどはえぇ……。待ってろよ、セルジュニア!!」

 

 黄金色のオーラを纏いながら空を飛び上がり、ドラゴンレーダーの差す先―――大穴へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――時は一週間前へと遡る。

 それはちょうど、セルジュニアがドラゴンボールを投げ……そこから数時間が経過したころだった。

 

「おや……これは何でしょうか」

 

 悟空たちが大穴と呼ぶ、正式名称『アビス』の深界五層にて居を構える探窟隊『祈手(アンブラハンズ)』。

 彼らは一層から流星の様に飛来し、五層に地響きと轟音と共に落下した謎の物体の調査に来ていた。

 

 余りの轟音と地響きで目覚めてしまった五層の捕食者、カッショウガシラを消し飛ばしながら進んでいると。

 直径10mに及ぶクレーターの中心で、寿色に輝く半透明の玉が鎮座しているのを発見したのだった。

 

 

 祈手(アンブラハンズ)のリーダー、黎明卿のボンドルドが玉を拾い上げた。

 まず手に取って率直に思ったのは……恐ろしく硬い。

 

 一層から五層までは軽く1万m以上ある。なのに、恐らく一層から降って来たであろうこの玉には少しの傷すらも付いていない。

 これだけの頑丈さ、アビスにある遺物の中でも明らかに異質。どんな機能があるかは分からないが、この頑丈さだけで特級遺物認定を受けてもおかしくはない。

 

 そして次に、ボンドルドが思ったのは。

 寿色の玉の中に赤く輝く、4つの星であった。

 

「……4番目、という事でしょうか。これほどの物が後3つも……いえ、もしかするともっとあるかもしれませんね」

「パパ! それ何なの?」

 

 クレーターの中に降りてきていた祈手(アンブラハンズ)の1人の背から顔を出す、緑色の帽子を被る捻じれた白髪の少女。

 ボンドルドは彼女の方にゆっくりと振り返り、例の玉を見せる。

 

「プルシュカ。これは遺物ですよ。手に取ってみますか?」

「うん!」

 

 寿色の玉を受け取るプルシュカ。

 非常にシンプル。ただの寿色のガラス玉の中に赤い星が入っているだけの、装飾品としてはありふれた物。少し腕の立つガラス職人に頼めば、同じものをいくらでも作ってくれるだろう。

 

 しかしプルシュカは。

 包む掌から迸るように伝わる、言葉で表せないほど大きな力が全身を駆け巡ったような気がして――一瞬にして、その玉の虜になってしまった。

 

「パパ……これ、欲しい!」

「おやおや。困りましたね。それはまだ調査もしていない遺物で、危険かもしれないんですよ」

「いいの! ……それにこの玉、なんだか危険って感じがしないから、多分大丈夫!」

 

 ボンドルドは祈手(アンブラハンズ)を一瞥した後。

 彼女の頭にポンと手を乗せた。

 

「分かりました。その遺物はプルシュカにあげましょう」

「ホント!? ありがとうパパ!!」

 

 ぎゅーっと足に抱き着くプルシュカを、ボンドルドは肩に持ち上げ。

 部下である祈手(アンブラハンズ)と共に、自身の基地であるイドフロントに引き返していったのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ハッキリ言ってやろうか
メイドインアビスをあまり知らない作者にはこれ以上書けないので次話はない……
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