「やっちまったぁ……」
ショッピングモールでの騒動から十数分後、近くのショッピングモールにあるスターバックスに入った條士はテーブル席に座って両手で顔を隠しながら俯いていた。ついカッとなって暴れた自分を反省しているのだ。
「あの、大丈夫ですか?」
「これで何度目だよぉ、学習しろよ俺ぇ………よし、反省終了。もう平気だ」
向かい側に座る少女が心配そうに訊くと、條士は気持ちを切り替えたのかスッとした表情になる。
「で?俺に何か用か?質問にはある程度答えるが、此方の質問にも答えて貰う。良いな?」
「は、はい」
突然冷静になった條士に戸惑いながら少女は質問する。
「貴方が空城條士ですね」
「そうだ。と言うより、ゲーセンに居た時既に名前を呼んだだろ?」
「そうですが……」
「次は俺から質問する。君は何者だ?」
今度は條士の方から質問する。
「私は姫柊雪菜。獅子王機関の剣巫です。獅子王機関の事は知ってますね?」
「国家公安委員会が設置した特殊機関。大規模な魔導災害やテロを阻止する組織……だったか」
「はい」
「君がこの絃神島に来た理由は?」
「第四真祖、
物騒な言葉を口にした少女を見ると、條士は溜め息を吐く。
「やれやれ、やはり
「気付いてたんですか!」
條士の言葉に今度は少女、雪菜が驚く。
「安心しな、
「その"調べた"と言うのは、先程魔族を倒した事と関係があるんですか?」
雪菜はショッピングモールで起きた奇妙な現象について訊いた。あの後、倒れた男2人は再起不能になったと思ったら
「悪いが、その事について答えられない。言った筈だが、ある程度は答えるってな」
「なら第四真祖をどうやって殺したんですか?
「それも答えるつもりは無い」
「そうですか……」
條士が肝心な事を話さない事に雪菜は表情を顰めながらも納得する。もう少し粘ると思ったが疑う事なく信じる様子に、彼女が素直な性格であるからだろう。
「それで、獅子王機関は何故俺に監視を付ける?生憎俺はテロリストでは無いんだが」
「獅子王機関は第四真祖を殺した貴方を第四真祖と同等の危険分子と見ているからです。もし貴方が人類にとって危険な存在だと判断した場合、監視役である私が貴方を抹殺する様、獅子王機関三聖から命令を受けています」
「やれやれ、ゾッとしないな」
そう言って條士はテーブルに置かれたアイスラテを手に取り、ストローで一口飲むと再びテーブルに置いた。
「監視の件は分かったが、君の服装を見るに俺が通う学校の中等部の生徒として暫く潜伏するつもりか」
「はい。近くで監視しないと意味がありませんから。ですので、明日から貴方の監視をしますので、くれぐれも変な事はしないで下さいね。空城
「……ああ、よろしく。姫柊」
こうして、條士と雪菜の奇妙な関係が始まった。
◾️◾️◾️◾️
雪菜と別れた條士は絃神島南区にある9階建てのマンションに到着する。このマンションが條士の居候先である。條士はエレベーターに乗り7階のボタンを押すと、エレベーターが上昇する。そして7階に到着した條士は部屋の鍵でドア玄関ドアを開けて中に入る。靴を脱いで廊下を進み、明かりの付いたリビングに辿り着く。
「ただいま」
「條士くんおかえりー!」
可愛らしい声と共にキッチンから現れたのは少し幼い容姿をした少女。名は暁凪沙。條士の居候先の同居人である。
「遅くまで試験勉強してたの?」
「……ああ。基樹と浅葱と一緒に」
「そうなんだ。あ、ご飯出来てるから早く手を洗って来て」
「分かった。ちなみにだが、夕飯のメニューは?」
「生姜焼きとお味噌汁、あと人参のサラダだよ」
「そうか……。ファラフェルじゃなかったか」
ファラフェルとは、潰したひよこ豆やそら豆に香辛料を混ぜ合わせ丸めて食用油で揚げた中東アジアの伝統料理の1つ。日本で馴染みあるモノで例えると、所謂豆のコロッケである。エジプトではそら豆のみ、シリア、レバノン、イラクではそら豆とひよこ豆を半分ずつ、パレスチナやイエメンではひよこ豆のみで作ることが多い。ちなみに、そら豆を入れた方がファラフェルがしっとりすると言う。
「それこの間作ったでしょ?條士くんイギリス系の血筋なのに」
「昔
「あたしカチャトーラが良い!」
カチャトーラ。イタリア語で"猟師風の料理"と言う意味を持つイタリアの肉料理の1つ。トマト、タマネギ、ハーブ、ピーマンに蒸し煮した鶏肉やウサギ肉が用いられ、南イタリアでは赤ワイン、北イタリアでは白ワインで煮込まれる。
「俺、あまり鶏肉好きじゃあ無いんだけど……。分かった。明日の夕飯当番は俺だし、作ろう」
「やったー!」
喜ぶ凪沙の姿を見た條士は一先ず荷物を置く為に自室へ移動する。