うおっ乳デカいね♡ 違法建築だろ   作:珍鎮

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お久しぶりでございます♡ 今回は短めになります、申し訳ありません♡
来週以降は毎週月曜日の22時に更新致します♡



準備が必要だでな。料理のさしすせそ

 

 

 

 ──ラスボスを倒さねばならない。

 

「…………ふぅー」

 

 まずは息を整えよう、というわけで体育館付近の中庭にあるベンチで空を仰ぎ、体内の空気を全て入れ替えるつもりで大きく息を吐いた。

 二月の澄んだ冷たい空気が肺を潤していく。

 まるで平和な日常を象徴するかのような、暖かな木漏れ日がさす昼休み。

 そして隣には気の置けない男友達。

 ──作戦会議をするならば、今この瞬間をおいて他にはないだろう。

 

「なぁ、山田……」

「モグモグ……うん? ぁ、これ一口欲しい?」

「いやチーズカレーパンが欲しいわけではない」

「そう? 購買の新作、美味しいのに」

 

 いつも学食で育ちざかりを免罪符に爆食いしている俺たちが、わざわざ昼食をパンに変えてまで人の気配がない場所まで逃げ込んだのにはワケがある。

 ラスボス……最後の怪異を何とかするための策を、彼に立案してもらうためだ。

 その旨は既に伝えてあるので早速話を切り出していく。

 

「教室でも伝えた通り、ラストバトルに関する立案会議をしよう」

「はいよー」

 

 なんとか彼にもシリアスな雰囲気になってもらいたいという一心で真剣な表情を保ちながら言ってみたものの、俺の()()()()()を知っている親友君は相も変わらずのほほんとしたままだ。

 

「なぁ頼むよ真面目に聞いて」

「はいはい、ごめん。じゃあ秋川、まずは現状を改めて振り返ってみようか。はいポテト」

「うむ……」

 

 山田が差し出したポテトをひょいぱくとつまみつつ、現在俺が陥っている状況を俯瞰してみることにした。

 

 まず、マンハッタンカフェと邂逅したきっかけであり、高校二年生の学生生活の大半を疲労困憊で支配する原因となった“呪い”との戦いは既に終わっている。決着をつけたぜ、廻る呪いに。

 因縁の敵であったカラスは、よくわからんがなんかいろいろあって雑にウマ娘っぽい姿への擬人化を果たし、いまはゴールドシップに面倒を見られながら人間社会を勉強している。

 

 しかしそれでは終わらず、俺にとって最後の障壁が立ちふさがった。

 それがいわゆるラスボスである。

 

「で……秋川。そのラスボスって誰なんだっけ」

「去年、たくさんのウマ娘たちが遊びに来る夏祭りを、スーパー催眠大会に変更した輩のことだ」

「あー……なんか一部のウマ娘さんたちしか覚えてない事件、だっけ」

 

 俺と関りがある数人の少女たちだけが覚えている集団催眠事件。

 その元凶である真っ黒な人型の怪異──とりあえず以降は『催眠おじさん』と呼称する──そいつがつまるところのラスボスなのだ。

 カラスと唯一タメ張れる強さだったネームドの敵こと、催眠おじさん。

 一度夏祭りで俺に倒された彼は、こちらの相棒であるサンデーが消えた際、その混乱に乗じて再び現実の世界へ戻ってきた。

 そして、今世紀最大の事件が発生した。

 

「聞いてくれ山田。俺はヤツのせいで──死ぬほどムラムラして腹が減ってバチクソねむい」

 

 そう、今現在の俺は生涯で最も強大な三大欲求の飢えに直面しているのだ。

 

「ほーん。大変だね」

「オイ真面目にきいて!!」

「だ、だって……字面がマジメじゃないんだもん……」

 

 吠える俺に狼狽える親友。なんとか寄り添ってくれているのは分かるが、やはり意識の壁の厚さを感じずにはいられない態度だ。俺が悪いのは分かってんだよゴメンねダーヤマ。

 まず大きな進歩として、遂にユナイトによる反動ダメージの詳細を彼に明かした。相棒と見る具体的な夢の内容だけを除いて、抱えている事情のほぼ全てを、だ。

 これは山田との認識の擦り合わせをしたいがための決断だ。

 以前までの『なんかレース後にやたら疲れている』という情報だけでは彼も意見を出しづらいかと思ってぶっちゃけてみた。のだが、もしかすると逆効果だったかもしれない。ままならない、ね。

 

「これまでの秋川はなんだっけ、ユナイト後の反ダメを夢の中で回復させてるんだっけか」

「あぁ、増幅した欲望を現実で満たそうとするとヤベぇことになるから。例えるなら一日に十回食事して四十時間くらいを睡眠に費やさないといけなくなる……的なイメージですな」

「それなら……まぁ何でもできる夢の中で解消するしかないか。てか夢の世界ってすごいね、万能じゃん」

「……その万能さに甘えきってしまっていた反動が今なんだよ」

 

 そう、夢の中でなら何でもできる。

 だが、逆にそれを封じられると回復手段が何もない、という事になる。

 

「ヤツの……催眠おじさんの細工によって、俺はその肝心要の“夢の世界”そのものにログインすることが出来なくなっているんだ。あいつのせいでほぼ毎日のようにザコ怪異も出現するというのに。忸怩たる思いだよ」

「それは……うん、大変だね」

「マジで大変なんだぞッ!! 食いすぎて腹がブチ壊れないよう昼飯の量を抑えたことによって幻覚が発生しお前の太い腕が段々とアメリカンドッグに見えてきたっ!!! ガブっ」

「ひゃあ、おちついてぇ! ごめん、ごめんってばァ……っ!」

 

 このように気を抜くと瞬時に精神崩壊しかねない究極のデバフ状態に陥ってしまっているというわけだ。

 シビれるほど強力な目薬やミントタブレットなどで睡眠欲はまだ耐えており、なるべく女子を視界に入れず読書や男子との会話を繰り返すことで、色欲も意外と誤魔化すことができている──のだが食欲がマジでヤバい。

 食っても食っても満たされず、胃袋の容量をオーバーしても食べ続けようとしてしまうため、苦いお茶や強烈な花の香りがする香水などで、そもそもの食べたい欲求を減退させる方向へシフトして無理やり一命を取りとめている形だ。

 

(──ハヅキ、だめ。山田君の腕を噛むの、ストップ)

 

 うるせぇな忠告ありがとう♡ 言っとくがお前は絶対に俺の視界の中に入るなよ。そのしっとり耳に張り付くような激かわダウナー美少女ボイスが鼓膜に響くだけで目が回りそうなんだからな。背中合わせで精いっぱい。

 

(顔を見たらいけないのはハヅキにも言えること。もしこっちを振り返ったら世界が終わります)

 

 それは獣のような激烈ベロチューをするということ? 獣を心に感じ獣の力を手にする拳法、獣拳。

 

「……あー、秋川? まずは情報収集からしようよ。カラスの時もそうだったけど、強力な怪異は一般人でも視認できる姿になるんでしょ」

「がぶ」

 

 盲点でした。そういえばそうじゃん、確証はないが可能性もゼロではない。さすがダーヤマ冴えてる。

 

「調べ物は放課後にするとして、とりあえず教室に戻ろ」

「がぶっ」

「帰り道は女子を見ないよう僕を盾にしていいから」

「がぶがぶ♡」

「うん。……あの、そろそろ噛むのをやめてね」

 

 

 

 

「いやマジですまん山田」

 

 すっかり茜色に染まった空の下、親友に頭を下げながら帰路についている。もうこれが何度目の謝罪になるのか分からないが何度でも謝り倒す所存だ。

 ──めっちゃ爆睡をかまして多少はマトモに戻ったのが現在の状況である。

 五限と六限を生贄にド昼寝を発動した結果、こうして多少は人間に近しい生物に戻れたわけだが、親友に対する横暴を忘れたわけでもないので謝りまくるしかないのだ。ごめーんゴメンごめん!!! あの時の私はただの動物でしたッ! ゴリラ科ゴリラ目ゴリラ。

 

「も、もういいってば。腕を噛まれたの、別に痛くもなかったから割とマジでどうでもいい」

「いや……なんか理不尽にキレたりもしたし……」

「それは僕がまともに取り合わなかったからでしょ。ムラムラするとか眠いとかお腹減ったとか、言葉の弱さで誤解しちゃってた。ごめんね」

 

 し、親友……人間が出来過ぎている……。誰にも奪われたくない。

 

「それより秋川、作戦は覚えてる?」

 

 分かれ道のT字路で一旦足を止めての最終確認。件のラスボスとの戦いに向けた作戦会議は昼休みの内に終えている。

 

「おう、誘い受け作戦な」

 

 ゆるゆるな頭でも再確認できるようメモしておいたスマホの画面に目を落とし、改めて内容を振り返ってみることにした。

 山田が立案してくれた方法は二つ。

 まずは現在俺が陥っているデバフ状態の解除。コレの方法に関しては追々。

 その次に、わざと敵を挑発して戦いの舞台に引きずり込む。噂の“ウマ男(ノーザンテースト)”として府中のあちこちを走りまわることで、催眠おじさんの気を引いて現世に出現させ──レースをして、勝利する。

 

 この作戦を以て、カラスから始まった異界ファンタジー生物共との闘争、ないし『いま何よりも優先してやるべきこと』という最も重要なタスクにケリをつけることができるわけである。

 そうしてようやく俺に──いや、関わってくれた仲間たちみんなに()()()()()が還ってくるのだ。

 ……ともあれ、最初は俺と相棒の治癒から入らなければ。

 

「じゃあ山田、ノーザンテーストのスーツの件は頼んだ。デジタルさんとマックイーンさんには改めて俺からおまえの連絡先を渡しておくから、今後のやり取りはそっちで頼む」

 

 そして親友には身バレ防止の為、ウマ男用コスチュームの製作に携わってもらうことになった。

 今もマスクやグラサンやパーカーのフードなど、なるべく顔を隠しながら速攻でザコを祓ってはいるものの、おそらく誘い受け作戦には多くの時間を要するため、街の人々に注目される確率も必然高くなる。

 それで普段の軽装備では心もとないということで、いつからか頓挫していたスーツの作成を今一度決めたというわけだ。

 

「……秋川ぁ」

「なんだよ」

 

 心なしか不安そうな顔。どしたの。

 

「ねぇ本当に? いやコスプレ製作は僕が言い出したことだし、そこは問題ないんだけど……」

「うん」

「……めっ、め、メジロマックイーンさんとデジたんさんにも手伝ってもらうの、マジ?」

 

 そこかい。彼女らが俺たちの事情を知っていることは既に把握済みのハズなんだが。

 

「大丈夫だよ、昼休みに確認は取ったし。それに向こうも『何もしないほうが不安だ』って言ってくれてたわけだから、仲間としてここは素直に力を貸してもらおうぜ」

「そっそうだけどさぁ……ッ! もうそこは飲み込んだけどさァ! なんかっ、こう、単純にアホほど緊張するんだけどッ!!? デジたんさんと二人きりでもギリギリなのにッ!!」

 

 デカい声を出して抗議する山田だが、この男に関しても昼休みに言質は取ってある。不安がぶり返しているところ申し訳ないが了承してくれた以上は全力で頼らせてもらう所存だ。

 

「あー……マックイーンさんとは会話したこと無かったんだったか」

「う、うん。世間一般の男子からするとそれが普通です……」

 

 確かに山田の気持ちも分からなくはない。有名になる以前から交流があったデジタルはともかく、メジロマックイーンは彼からすればシンプルに画面の向こう側にいる著名人でしかないのだ。それに彼女の知名度を差し引いても、初対面の女子とのコミュニケーションは緊張して然るべきだろう。

 とはいえ、俺たちには大人や警察が対応できないファンタジー迷惑野郎たちから府中の市民を守る義務があるのだ。……正確には義務なんざないが、見てみぬフリをするわけにもいくまい。ここは腹を括ってもらわねば。

 

「まぁ大丈夫だよ、マックイーンさんめっちゃ陽キャだから。気まずくなるようなことはないと思う」

「……いま、日本の財界の一端を担ってる巨大財閥のご令嬢を陽キャ呼ばわりした?」

「山田が思ってるよりも結構俺たちの事情を把握してくれてるから、いろいろぶっちゃけた話をしても平気だぜ」

「ねぇーッそういう問題じゃないんだけど!!」

「あとほら、おまえも面識があるゴールドシップが合流してくれるらしいから。アイツとデジタルさんがいるならだいじょぶでしょ。じゃあバイト行くんで後は頼みます!」

「なんなんだよもう~ッ!!」

 

 トラブルに巻き込まれたラブコメ主人公みたいなリアクションをする山田に手を振ってひとまずその場を後にした。

 

「あ、秋川ー! 体調わるいんだから気をつけて向かいなよー!」

 

 マジでおまえそういうところだぞ? 疲れた心に気遣いがスーッと効くぜ。格納ウェポン。

 

 

 ……

 

 …………

 

 

 分かれ道で解散してから数時間後、閉店したバイト先の喫茶店にて。

 俺は店内を清掃しながら本日の客入りについて少々物思いに耽っていた。

 ──サイレンススズカを始めとした有名ウマ娘がここのアルバイトになって以降、年明け前までこの店は国民的アイドルの接客目的の人々で溢れかえるようになっていた。

 雑誌の懸賞などで握手会のチケットを当てる必要もなく、コーヒー代だけで憧れの有名人に会えるとなれば、そんな状況になるのも当然であった。

 

 しかしこの喫茶店は、もとは繁華街から程よく離れた路地の裏手にある落ち着いた雰囲気が売りの店だったわけで。

 たくさん並んでたくさん注文して頂くことで売り上げ自体はウナギのぼりだったものの、行列によるご近所への影響や店の規模に対する客数のキャパオーバーなど、店長の頭を悩ませる課題が山積みだった。

 ──だがそれも過去の話だ。

 

「お疲れ様、秋川君。もうそれくらいで大丈夫だよ」

 

 背中に低音の渋いダンディなイケボがかけられた。

 振り返ると、そこにはこの店の店長である壮年の紳士が立っていた。

 

「あ、はい。……店、今日は落ち着いてましたね」

 

 掃除用具を片付けてから彼のそばまで行くと、店長は大人の余裕を含めた柔らかい笑みを浮かべた。

 

「ふふ、事前予約制がうまくいったのかな。といっても、彼女らが入ってくれる日以外は以前のような雰囲気に戻ってくれてるけど」

「そうっすね、バタバタ忙しいのもやりがいがありますけど……やっぱコレくらいのが落ち着きます」

 

 心地の良い疲労感のまま店長と裏手へ戻り、エプロン等を収納して帰り支度を始めていく。

 ここで簡単に説明しておくと、アルバイトはあまり忙しくなくなった。

 サイレンススズカとメジロドーベルの出勤数が週に二日ほどとなり、肝心の彼女たちが店に立つ日は事前予約が必須かつ定員も決まったことで、以前のような長蛇の列や人気チェーン店レベルの忙しなさは無事に解消された。

 ほどよく働いて、ほどよく疲れて帰る。まさに理想のアルバイトである。

 

「それじゃ秋川君、帰りは気をつけて」

「はい、お疲れ様です店長」

「お疲れさ──」

 

 挨拶もそこそこに、明日の軽い仕込みに戻ろうとした店長が、言葉の途中で足を止めた。どうしたのだろうか。

 

「店長?」

「……そ、そういえば、今夜はカフェがお邪魔するって聞いたけど……」

 

 途端に緊張したような面持ちに変わったおじ様を見て、思わず笑いそうになった感情を飲み込む。マンハッタンカフェの感情の機微が分かりやすい部分はおそらく彼に似たのだろう。

 

「ええ、今日と明日、勉強を見てもらう予定で。ちょっと学期末のテストがヤバそうで……お恥ずかしい限りです」

「そっか、勉強会ね。……うん、勉強会……」

「さすが現役トレセン生って感じですごく心強いですよ。あの、真面目に今度なにかお礼をさせてください」

「い、いやいや! いいんだよ、全然気にしないで。娘が好きでやっていることだから、そんなに畏まらないでね。うん……」

 

 もう態度があまりにも年頃の娘を心配するお父さんすぎます! おてて震えてますよ。

 ここで警戒せず許可をくれるあたり、多少は俺自身も信頼してくれているという事なのだろうが、やはり高校生の青さには思うところがあるらしい。ナニもしないんで安心してくださいねお義父さん。

 

「か、カフェには……その、明日ちゃんと寮へ戻ることを伝えておいてくれる?」

「了解しました。それじゃあお疲れ様です、また来週お願いします」

「ぅ、うん、お疲れ様。今日もありがとうね」

 

 店長への挨拶を済ませて裏手から外へ出る。

 すると、扉のすぐそばで待ち人の存在に気がついた。

 数分前に先に外へ出ていたバイト仲間こと、マンハッタンカフェだ。そのマフラーを巻いて髪がモフってなってるところかわいいね。アールヌーヴォー。*1

 

「ごめんマンハッタンさん、おまたせ」

「……はい」

 

 …………?

 なんかジト目だ。どうしたのだろうか。 

 

「……あの、お父さんが言っていたことは気にしないでくださいね」

「えーと、寮に帰るように、ってやつ?」

「はい……きっと見当違いなことばかり考えているようなので……」

 

 別に誤解ではないんじゃない? 去年の夏にボクのほっぺにチューしたこともしかして忘れてる? 呆れ返るばかり。

 

「では……いきましょうか。夢の世界の入場阻害に関する対抗策は……また自宅でご説明するので……」

「あぁ、よろしく頼むよ」

 

 コートのポケットに手を突っ込むなどして二月の凍えるような寒さに対抗しつつ、二人並んで帰路へ着く。

 これから俺の自宅へ戻ったあと、最終作戦の第一段階を始めることとなる。

 マンハッタンカフェには昼休みにした山田の策は共有済みであり、また店長に説明した学期末のテストのための勉強会という部分も別段ウソではない。

 どのみち催眠おじさんを誘い出すための作戦を決行するためにはある程度の時間が必要なのだ。

 

 やることはアグネスデジタルたちコスチューム製作チームによるノーザンテーストスーツの完成だけではない。

 サイレンスと樫本先輩が、作戦決行当日に催眠おじさんをおびき寄せるため俺が走る市街地の安全なルートを思案してくれたり、ドーベルや愛しのやよいが、市民への被害を気にせずラスボスとのレースに臨むための特別なコースを見繕ってくれたりなど──とにかくいろいろだ。

 

 とにかく俺はまずステータスを正常に戻すことが先決。

 その後は分担して取り掛かっている各チームを見て回って最終調整。

 ソレら全てに付き添ってもらう補佐役兼アドバイス役こそが、いま俺の隣にいる漆黒の少女というわけである。時間が空いたら勉強するので店長にもウソはついていない。ここ大事。

 

(────カフェ!!? カフェ~ッ♡♡♡!?♡♡)

 

 あと今夜はバチクソ発情している相棒を押さえる役でもある。おまえの方が冷静じゃないことあるんだ。あっちょまてまてまって。

 

「うおぉっ落ち着けェ……ッ!!」

『ん、邪魔ッ゛!!!!!!!』

「……っ!? ふ、二人ともどうしたんですか……」

 

 お昼の睡眠による回復も時間経過で無に帰し、遂に俺より先に煩悩に支配された相棒を両腕で拘束した。あまりパワーが強くないあたりゴリゴリの筋肉疲労を感じる。マッサージはおじさんに任せて♡ あらゆるリンパを殲滅するからね♡

 

『ふーっ、フーッ、放してハヅキ。ちょっと変なとこ触ってる。えっち。訴訟』

 

 ここで解放したらおまえがマンハッタンに訴訟される側になるだろ。誠意みせろよマスコミにリークするぞ。

 

「は、葉月さん……? ええと、もしかしてこの子も貴方も……かなり危うい状態ですか……?」

 

 マンハッタンの言葉に全力で頷くことで状況の理解を求める。

 実は俺だってあの美少女すぎる誘い受けの風雲児を我が物にしたい欲で壊れかけているのだ。いま少なからず冷静に俯瞰できている理由は、ただ先に相棒がぶっ壊れたからというだけである。たぶん逆でも同じ状態になっていた。オイ落ちつけよデッっけぇケツ!! ワクワクしてくるよ。

 

「……とりあえず、急いで自宅へ戻りましょう。秋川理事長のお猫先生から、一時的に興奮を鎮静化する道具を預かっているので……」

『オイルでテカテカにしないと何も始まらないでしょ。カフェの髪の匂いで香水を作らせていただく』

 

 おまえ本当に壊れすぎ。ナメるのも大概にしろよ全身ムチムチ抱き心地最良モンスターがよ。生まれてきてくれてありがとうな。

 

「もう、葉月さんに迷惑かけちゃダメでしょう。おちついて、ね……?」

『その優しい物言いが私を狂わせる。いつもありがとう、ヴィーナスだよ。七福神』

「オイ俺の影響を受けすぎだろマジで黙れよッ!!」

『すっごい腕の圧力。15ニュートンはあるでしょ』

 

 こいつそろそろ本当に取り返しがつかなくなるかもしれない。これはもう強制的にユナイトして帰るしかない。

 

『ねぇ放して』

 

 ムリだっつってんだろ!

 

(んっ……ほんとにむり。尻尾が擦れて大変。逆効果。カフェの前でダメな顔になっちゃう。その気もないのに尻尾を触るなんてご法度です。武家諸法度)

 

 それはアメイジングだね。いま社会性を喪失するか俺と一つになるか三秒で決めろ! モンティホール問題。

 

『……わかった。ユナイトする』

「よき選択だ」

 

 うむ、しっかり大和撫子の魂が見えるよ。下品な女がよ、マゾメスにも程がある。

 ──あっユナイトしたらコイツの興奮も伝わってきた。ほぉ゛っ♡♡

 

「……二人とも、帰ったら必ず冷静に戻しますから。あと少しの辛抱です……こちらへ……」

 

 先導してくれるのはありがたい。しかしおててを握らないで! 迷子は手を握って案内するのが文化じゃからな。ニッポン秘境旅。

 

*1
新しい芸術。

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