ドルフロ×呪術廻戦   作:羽の折れた鷲獅子

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前話との落差が酷い


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 戦術人形は傀儡なのか、それとも呪骸なのか。それは統率する本人も分かっていない。

 

 呪骸は体となる人形の中に呪力の核があり、自立して動く。傀儡は言ってしまえばマリオネット、呪力で直接操作する人形のこと。

 だが戦術人形達には核となる射撃管制コアがあり、自立思考と行動を行い、しかし場合によっては奏によるフルコントロールで動かすこともある。

 

 呪骸と傀儡の両方の性質を併せ持つ。それが奏の戦術人形達であった。だがそれだけではないのが、奏が特級に分類される理由である。 戦術人形は「質量を持つ呪力」という側面も持つ。故に人形達は常に存在しておらず、必要なときに呪力でボディを形成、出現という形になる。だからこそ暗殺の類いを得意とし、完全犯罪も可能とする。 

 

「面倒な上は飼い犬に手を噛まれないと嫌がらせを止めないのかねぇ」

「指揮官が最初に暴れたときの人たちはもう居ませんからね。文面だけで判断してるのではないでしょうか?」

「十分あり得る。あぁ、スプリングフィールドはこの後呪詛師の監視任務に出てるペロサと交代を頼む」

「了解しました」

 

 

 スプリングフィールドと呼ばれた人形はきれいに礼をして「消えた」。文字通り、影も形もその場からきれいになくなったのだ。これが、奏の戦術人形の汎用性の高さである。

 人形でありながら人形にあらず。存在矛盾を現実にする、それが実力の高さを物語る。

 

 椅子の背もたれに体重を預け、天井を仰ぎ見る。その視界には天井の他に、今出している人形達の視界とパラメータ、そして監視対象の情報が隙間なく表示されていた。

 一瞬で目と頭に入る情報が増えた弊害で頭痛がするが、それを無視してすべてに目を通す。カチリ、と脳内のスイッチを入れるように意識すれば、すべての動きがゆっくりになった。

 

 バレットタイム、と奏が呼ぶそれはゾーンとも言う。それを意図的に起こし、脳の処理能力を無理矢理上げて素早く判断を下したり、動きを考えたりする。

 視界に映る監視対象は六人、そのうち三人は寝ているのを確認し、残りはバラバラに動いて何をしているのかを見張る。呪詛師は一般人に危害を加えることをメインに動く者がほとんどであり、奏はその能力の汎用性故に現行犯で捕らえることを任されていた。

 

 

「(対象確認、今のところは動きは無し。ただし三番は依頼を受けたことから近日中に動きあり、これは報告だな。五番は呪霊との戦闘で負傷、しばらくは動けなさそうだ)」

 

 

 状況を確認し、力を抜いて目を閉じる。短時間で酷使した脳は痛みを訴え、先ほどから殴りつけるような、それでいて締めつけるような痛みを発している。

 そこにピタリと氷嚢が当てられた。

 

 

「また無茶をしていたな。無理に受けなくてもいいと言ったはずだが」

「やれる人が居ないからやってるんです。それに、この位熟さないと貴方に恩を返せない」

「はぁ・・・それも考えなくていいと何回も言っているんだが」

 

 

 部屋にやってきたのは夜蛾だった。すでに外は暗くなる時間帯であるため、おそらく自分の仕事を終わらせてから直接来たのだろう。

 奏のセーフハウスは基本的に夜蛾と一部の人にしか教えていない。それ故に、人形以外に誰かが来ることは滅多にない。

 夜蛾に個人的な恩がある奏は、夜蛾にその恩を返そうと必死だった。

 

「貴方に拾われなければ、今頃私は死んでます。なら、この命は貴方の物です。それに、元々捨てられてたのですから──」

「それ以上は許さんぞ」

「うっ・・・」

 

 

 軽めの拳骨を落とされ、呻く。夜蛾は呆れた顔で奏の机の周りに置かれた資料をさらっと確認していた。

 呪詛師の情報、未確認の呪霊、行方不明者のリスト、そしてどこから入手したか分からない外国の言葉で書かれた何かの資料。様々な物が散乱しているが、そのどれもが平和とは無関係の事ばかりである。 まだ年若い彼女が背負うには、あまりにも重すぎる物ばかりだ。

 

 

「私の人形は本体を作る必要はありませんが、縛りはあります。人形の本体は【銃】なんです」

「・・・お前が自分の術式のことを言うとは、正直考えていなかったぞ」

「まぁ、言えば利用されますから。今セーフハウスにいるのは貴方だけですし、周りに誰かがいるような反応も、電子機器の類いもありませんから」

 

 

 一枚の資料を夜蛾に渡す。その紙には銃のイラストと恐らくその銃に関するスペックと説明が書いてあった。

 

 

「銃本体に【烙印】という物を刻み、そこを起点に呪力で人形を構成します。一度作ればそれで登録され、烙印を壊されればその人形は構成できなくなります。烙印は私自身の命を削って作る物、壊される度に私の寿命も縮んでいきます」

「なっ!」

 

 

 突然の暴露に夜蛾は言葉を失った。使う人形達はある意味、奏自身である、そう言ったのだから当然の反応だ。

 

 

「銃弾には呪力を、稼働にも呪力を、しかし人形の記憶は私の記憶にもなり、同時にバックアップとも言えます。私が死ねば人形達はすぐには消えませんが、長時間残ることもないです。呪骸や傀儡とは違う点ですね」

「お前は・・・一体何を抱えて生きてきたんだ」

「分かりません。あえて言えば、罪と後悔、ですかね」

 

 

 ゲームの中の指揮官と奏は違う。人形を扱う奏が背負う業は果たして何だろうか。それは今も昔も考え続けていることの一つである。

 

 

「この代償は当然なんです。むしろ、得られる利益を考えれば破格で緩い位ですから」

 

 

 だから、その言葉の先を夜蛾は忘れることができない。

 

 

 

 

「私の自由は猶予という名の寿命と引き換えに得た、束の間の夢なんです」

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