ドルフロ×呪術廻戦 作:羽の折れた鷲獅子
──翼無き鷲獅子よ、鋼鉄の乙女と共に在れ
名前の彫られていない、まっさらな墓石の前に立つ強面の男性の手には花束が握られていた。
男性は花束を墓石に置き、静かに祈る。
「・・・恩は返さなくていいと、散々言ったのだがな」
墓石の前で祈る強面の男性、夜蛾は一人呟く。
名前のない墓、秀内奏は渋谷事変と呼ばれる特級呪霊と呪詛師によって引き起こされた災害にて多数の呪霊を排除、五条悟の封印阻止に奔走し死亡した。しかしその人物のことを覚えているのは少しの呪術師だけ。大半の人々からは忘れ去られていた。
そして数少ない奏の私物の中に、宛先の無い手紙が一枚残されていた。
そこには、いずれ来るであろう己の末路を書いたものが綴られていた。
寿命を対価に呪力と操作性を得る、胎を潰すことでさらに呪力を増し、記憶を対価にマルチタスクの能力を得た。最期の時には一ヶ月のことしか覚えておらず、ほとんどは会話による推測と自分で書き残したデータを元に「秀内奏」を演じていたとも。
そして、五条悟封印をなんとなく知っていた自分は、恩師である夜蛾を死なせないように五条悟の封印を阻止する、とも。
五条の封印阻止の裏にあったのは、最後まで夜蛾への恩を返すという一つの行動指針だけだった。ただ道中に大きな出来事として「五条悟」の封印というのがあった。それだけで命をかけて阻止するなど、誰が予想できようか。
墓石に名前が彫られていないのは、その死体は呪霊のように消えてしまったから。そして奏のことを覚えているのが夜蛾と五条悟などごく一部の人間だけであるからだ。
縛りの対象に記憶を盛り込んだのがトリガーとなり、他者からも消えてしまった奏は書類上の仮想人物とされ、墓石に名を刻むことなく「無名の特級呪術師」ということにされた。
この墓に花を手向けるのはきっと片手で数えるほどしか居ない。それでも、夜蛾は己の全てを掛けて恩を返そうとした不器用な人形使いに思いを馳せる。
「・・・お前が残した唯一の人形は俺が持っている。・・・大馬鹿者が、自分がいなければ意味が無いというのに」
一体いつから、ずっと一人で抱え込んでいたのか。孤独な世界で自分の人形をひたすらに操っては、手に取れる可能性を得るために対価を支払っていた。
最後には、自分が消えることを前提とした計画にして。
なぜ夜蛾を死なせたくなかったのか。その理由は書いていなかったが、きっと奏の事だ。ほんの些細な理由なのだろう。それを最後まで通し貫く忠義は決して忘れない。
「お前のおかげで呪詛師の計画はご破算、呪詛師と繋がっていた上層部はお前の保険があったおかげで全員捕縛。・・・一体、どこまで考えていたんだか」
呆れた声を出しながら、夜蛾は何も入っていない墓を撫でる。僅かな時間とはいえ、家族として過ごしていた時間もあったのだ。思うところはある。
それでも、もうその声は届かない。
「あとで五条も来る。もう少し、お前は怒られるべきだったな」
後悔無き死は呪術師には無い。だが、きっと奏は最後は呪術師ではなく、人形使いとして死んだのだろう。だからその死に、後悔はないはずだ。そうであると、夜蛾は願いたい。
風に運ばれて飛んできた桜の花弁が、墓石にひらりと乗った。
ドルフロ要素も呪術廻戦要素も微妙な感じがしますが、書きたいと思ったところを書けたので満足です。原神の方も好きかってしてますが、生暖かい目で見てください。
・秀内 奏 (ひでうち かなで)
22歳 女 特級呪術師
→転生者。前世一般人、今世一般家庭出身呪術師。転生特典的なのでドルフロのデータをそのまま現実に持ち出せる能力を得た。ただし使えるだけで出せるとは限らない。リソースがなかったので最初は死にかけてた。
傀儡操術と偽っていたが、正式には「術式:ドールズフロントライン」となる。そりゃあ誰も分かんねえよ。五条も困惑。強くなる上の縛りとして「実銃に烙印を刻む」という項目を作ったため余計に苦労した。実銃求めてうーろうろ。
夜蛾に拾われたのは13の時。呪力だけでなんとか呪霊をボコボコしてた時に保護された。
五条に対して口が悪いのは「胡散臭い高身長のイケメン」だから。詐欺と勘違いした出会いが元凶。あと野次馬。野次馬しないで助けに入っていれば口は悪くならなかった。
夜蛾さんへの好感度が高かったのは前世の推し+今世で拾ってくれた恩から。忠犬兼狂犬と化した。
封印の時にルール違反って言っていたのは「前世+今世の魂がある」と自身への仮定を呪力で無理矢理現実化させて2人分の偽の魂を作ったから。1人の体に2人の魂が入っているものとして演算した。ただし反動で肉体は消える。
存在がチート。
・五条悟
おなじみGLG。奏を見た時、ガッチガチの縛りと複雑な術式で詳しく見えなくて困惑した。死に際に紐解かれたことで見えたが、それは同時に奏の「死」を意味するのでSANチェックが入った。
奏への感情は「口の悪い夜蛾の忠犬」。あとは生徒に向けるものと似たような感じ。年下だったから尚更。
奏の献身()で封印を逃れメロンパンを最強パーンチ。メロンパンは死んで、遺体は火葬した。安らかに眠れ。
消える奏の遺体をみて追加SANチェック、報告でさらに情緒が危なくなるも意地で耐える。
・夜蛾正道
学長。奏の身元引受人でもあった。出合った当初、こんな小さい子供が…と思ったらとんでもない奴に化けて胃が痛い。でも可愛がって家族認識だった。
遺言状みたいな手紙を読んで泣いた。残された人形は傀儡として最高峰すぎて「馬鹿やろう」と思ってる。(いろんな感情が混ざってる)
この度、死刑宣告を受けなかったため生き延びている。これが奏の願いなのだ…。