ドルフロ×呪術廻戦   作:羽の折れた鷲獅子

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ご都合主義の生存を望まれたので書きました


if

「さようなら、私たちの指揮官。これからの旅路に幸あらんことを」

 

 

 最後の灯をもって、己の役目を果たした。これで恩師は助かる、その事実に安堵して来るべき終わりに身を任せた。

 迫る寒さと恐怖を前にしているというのに、理解したからなのかやけに冷静で居られた。

 

 魂を二つにした対価として、体は崩壊し跡形も残らないだろう。徐々に消えていく感覚に違和感を覚えながらも眺める。

 

 

 

 薄れゆく意識の中、トンっと背中を押された気がした。

 

 

▼▼▼

 

「戦術人形は呪力を持って構築してはいますが、理論上は物理的な傀儡に人形としての機能を落とし込むこともできます」

「へぇ?じゃあ京都のメカ丸みたいな感じにもできるんだ」

「・・・まぁ」

「なるほど。奏、試しに私の傀儡を使って試すか?」

 

 

 夜蛾から渡されたのは黒い眼帯をした熊のぬいぐるみ。しかしこれは夜蛾が作った呪骸の元。後は核となる部分を入れれば呪骸として完成する。

 そこに理論上確立しつつある「人形の遠隔憑依」を試すべく、五条も見守る中やってみようと言うことだった。

 

 ぬいぐるみの中に入っているのは空の核。これならば中に人形の意識を落としても問題ないだろう。物の試しとして分かりやすいIDWを呼び出し、入って貰う。

 すると、少しした後にぬいぐるみがピクリと動き、そして両手を振り回しながら奏に抗議するように向かってきた。

 

 

「──!!──!!」

「いや、お前が分かりやすいと思ったからなんだが・・・。嫌がらせじゃない、落ち着け」

「奏、これは成功・・・なのか?」

「一応成功です。まあ、発声機能がないので声は私にしか聞こえてませんけど」

「わぁ、すごいねこれ。皮は学長の呪力なんだけど、中身は奏の呪力ですっごい気持ち悪い。あっちょっこっち来んな!」

「気持ち悪いって言うな、ってすごい抗議してる。いや、IDWは猫なんだけど」

「熊なのに猫なのか」

 

 

 五条の無限によって阻まれているが、熊のぬいぐるみに入ったIDWは抗議の意味を込めて飛びかかっていた。

 今回の試しで、空の核さえあれば今まで以上に自由に動けると判明し、奏としては上々の収穫になっていた。

 これならば、万が一奏自身が死んでも核に入った人形の意識はそのまま残る。これは保険として有用だと分かった瞬間でもあった。

 

 来る日まで、そう残ってはいない。万が一失敗したときの事を考えて策を講じなければと考えていた中で、これが判明したのは非常に大きい事だった。

 最も、同じ事を考えていたのは奏だけではなかったのだが。

 

 

 

▼▼▼

 

 揺蕩うような感覚に包まれ、目を閉じていた。そんな中、肩を誰かが触れてきた。ゆっくりと目を開ければ、そこには今まで自分と共に生きていた人形達が並んでいた。

 

 

「指揮官。私たちは指揮官と共に戦えて、とてもうれしかったです」「ずっと見えない壁の向こうにいた指揮官と、肩を並べて、頼ってもらえて、最後まで役に立てた」

「それは私たちにとって誇りであり、意義であり、恩です」

「──、──」

 

 

 言葉を出したくても、声は出ずただただ口が動くだけ。並んだ人形達は何かを決したかのように奏の手を握り、そしてその背中を押し出す。

 

 

「私たちはここまでです。呪術師としての指揮官はもう、居ません。けれど・・・」

「あたしたちはボスにこんな終わり方なんて迎えて欲しくないんだよ。だから、ここでお別れだ」

 

 

 少しずつ人形達が離れ、消えていく。その顔は皆、満足したかのように笑っていた。

 徐々に遠くなる人形達、そしてその声を聞いているだけで動くことも喋ることもできない自分が、とてももどかしかった。

 

 

「さようなら、私たちの指揮官。これからの旅路に幸あらんことを」

 

 

 前世から最も思い入れのあった人形、一〇〇式が笑って奏の背を一際強く押す。その感覚を最後に、強くどこかへと引っ張られる気がした。

 

 

 

 

 

 

 

「───おはよう、眠り姫。機嫌はどうかな」

『・・・・・・・・・最悪だよ』

「そっかそっか!それは良かった!」

 

 

 少しずつ慣れてきた視界に映ったのは、胡散臭い笑顔を向けてくる白髪黒目隠しの高身長の男。別れを告げたはずなのに見えるその顔に、自分は死に損なったと理解した。

 違和感のある声の出方に、どういうことかを考えていたら脳天に拳骨を落とされた。

 

 

『っっ!?っっっ???』

「こっんの、大馬鹿者が!!自分の命を蔑ろにするなと言っただろう!!」

 

 

 拳骨を落として大声で叱ってきたのは夜蛾だった。だが、その声とは裏腹に、顔はうれしいような悲しいような、複雑な表情をしていた。

 

『・・・それが、一番だと考えていたからなんですけど』

「で、結果が肉体の消滅に、接触の少ない人間から忘却されることとはどういうことだ」

『肉体の消滅は、まあ単純に耐えきれなくなったから。忘却は縛りに記憶に関する事があったからかと』

「・・・・・・・・・はぁー。ここまでやらかすとは思わなかったがな。お前の人形はお前以上に頭が回っていたようだぞ」

『やはり、コレは人形達の仕業だったんですね』

「置き土産、とも言えるが」

「一応、僕も協力したんだから感謝してもいいんだよ?」

 

 

 ほんの僅かに聞こえる機械の駆動音と金属の擦れる音。しかし見た目は人そのものとも言えるボディはまさしく戦術人形の特徴。声に違和感を感じるのは、本来の発声器官ではないからだろう。

 呪力はもうほとんど無いと言って差し支えないほどに少なくなり、前線に立つことはできないだろう。呪術師としてはもう役に立たないというのだけははっきりしていた。

 

 

『一応聞きますけど、どの人形がこの事を?』

「基本的にここに報告書を置きに来た人形全て。あとは京都のメカ丸だ」

「呪力核については僕が完全に作ったワンオフ特別製。こんなことに使うとは思ってもなかったけどね」

『・・・指揮官失格、ですね』

「今のお前はもう指揮官でも呪術師でもない。それに、そんな顔をするな。お前に生きて欲しいと願ったのは他でもない、お前の人形達だ」

 

 

 残影が見せた光景を覆すために奔走し、それで満足だと思った。だが、こうして「後」を見てしまった以上、それだけでは駄目だったらしい。

 役目を果たして消えてしまえばいい、そう思っていたのに。今はどうしようもなく「先」をみたいと願ってしまう。犠牲にして、捧げて失ったはずの未来を得られた今を噛み締めてしまった。

 

 旅路に幸あらんことを、そう願われてしまったのだから。

 

 

「呪術師として生きるだけではない。それはお前が知っていることでもあるだろう?」

『・・・そうですね。まあ、残した手紙を見たなら分かってると思いますけど』

「ああ。だから、これからは捧げた分までのんびりすればいい。お前にはこれからの時間はたくさんあるからな」

「そうだよ。それに、僕だって目の前で消えるだなんて思ってなかったからさ。もうこりごりだよ」

 

 

 仮初めとはいえ得られた未来、それを見るのも悪くない。そう思った自分もいる。

 あのとき、一緒に桜を見ようと言った人形はもう居ないけども、代わりに一緒に見てくれる人がここに居る。それを願った人形達がいるから。

 

 

 

 押された未来の中で、私はこれからを生きていく。そこにはもう、先を失う恐怖はないのだから。




これで本当の終わりです。


→人形たちがこっそり用意した奏そっくりの人形ボディに入って復活。ただし忘れられてるので夜蛾さんの関係者と思われて生きてく。
呪力はないけど戦術人形なので普通に強い。呪いは一応見える。


人形達
→指揮官の魂をキャッチしてボディにシュートした。夜蛾さんにボディを渡して、そこに詰め込んだことはメロンパンボコった直後の五条に伝言。渋谷の残った呪霊を始末して綺麗に消えた。
ボディ制作班筆頭はIDW。突っ込まれた復讐のつもりがまさかの本命手段になった。まあ後詰はよく来てたトンプソンなんですけど。
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