第1部転生編
第1章辺境伯の子編
001プロローグ
「一郎さん、長くの病床、おつかれでしたね。
今生はこれで終わりです。
これから貴方には別の世界へ転生してもらいます。
今度は辛くて痛くて寝てばかりなんてことはありませんよ。
なお、いかなるチートも特典もありません。
どう生きるのもあなた次第ですからね。
でも記憶は消さずに残しますね…。
精一杯生きてくださいね」
女神様が枕元に立ってこう告げた。
(う〜ん、夢にしてはリアルだなぁ。
てか、夢にしてはまだ覚めないし。
転生ものあるあるの見たことのない天井だし。
ひょっとして…俺、本当に死んだ?
辛いだけの病床からやっと解放された?)
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(うん、身体も痛くない。確かに夢じゃないな。
おぉ〜マジかー。これはやっぱり転生か。しかも女神様が登場するテンプレのシーンじゃないか!)
長く病床にいた俺は、出歩くことができなかった。必然、二次元世界やVRの世界に救いを求めていた。
なので、今の転生?この現実を受け入れこそすれ、否定をしない俺である。
どんな世界なんだろう?
目が覚めたら、可愛い女の子に囲まれて勇者様って呼ばれたりして!
ワクワクするなー。
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ここは剣と魔法の世界
人ならざるものも混在する世界
人の生命の価値なぞ取るに足らんとする世界
舞台はそんな世界のとある王国の辺境から。
長い長い物語が始まる。
ドクン ドクン ドクン
落ち着く心音。
何か絶対的な安心感に包まれているようだ。
この音を聞きながら、
ずっと眠り続けていたい居心地の良さ。
だが。
そこから外へ押し出されるような感覚があった。
穏やかな心音が消え、温かなうつわの中から外へ出された。
見えないながらも全身に感じる眩しさと、一斉に聴こえてくるさまざまな音。
煩いなぁ。
そんな喧騒とも言える世界の中に産まれ出てきた俺。
オギャーオギャーオギャー
(眩し〜いっ!)
オギャーオギャーオギャー
(煩〜いっ!)
オギャッ!
(あっ!)
オギャーオギャーオギャー
(赤ちゃんスタートの異世界転生だったんだ)
オギャー!オギャー!オギャー!
(ばんざーい!ばんざーい!ばんざーい!)
産まれ出た瞬間に転生したと理解した俺。
「元気いっぱいの男の子ですじゃ。跡取りのお誕生、おめでとうございます」
オギャーオギャーオギャー
産まれたての俺はただただ泣くばかり。
異世界転生ばんざーいと喜んでいたのだが・・・
(チートも特典もありません)
女神様のこの言葉を思い出した。
オギャッ⁈オギャーオギャーオギャー
(どうしよう⁈最弱じゃん)
パニくる俺。
全身で暴れているつもりだが、産婆の手の中で手足をばたつかせるのみだ。
オギャーオギャーオギャー
「元気なお子ですわい。はい、お母上様に抱いてもらいましょうかね」
「あゝ…よかったわ…」
「奥さま?奥さま?」
「セーラ!おい!しっかりしろ!!」
ツーっと目元から一筋の涙が流れ落ち、そのまま母上は身罷ったそうだ。
俺が産まれたすぐあとに。
難産となった母上のセーラは、俺と入れ替わるように亡くなった。
出産の厳しさ。
未だ医療の進まないこの世界では、妊婦の死も乳児の死も割とよくある話だそうだ。
北の辺境伯とよばれた偉丈夫 父アレックス・ヴィンサンダーはこの日、世継ぎの俺の誕生に喜び、愛する妻の死に悲しむという喜びと哀しみを一度に味わった。