父上が倒れた。
そして意識を取り戻さないまま3日後に亡くなった。
転生した俺は産声を上げたすぐあとに母上を亡くした。
その僅か3年後に、今度は父上を失くしたわけだ。
転生前の記憶があっても、チートも何の特典もないただの3歳児には両親の死を防ぐことはできなかった。
父上の死は、心が張り裂けるくらいに辛く悲しいものだった。
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父上の葬儀は領都教会で多くの参列者を集めて行なわれることとなった。
教会に向かう前。
屋敷で、継母のオリビアが俺を呼んで言った。
「ショーン、父上の遺言で跡取りは、シリウスに決まったわ。だからお前は、葬儀中シリウスの前や横に居てはだめよ。いちばん後ろにいなさい!」
「ち、、父上は長男の僕が家の跡取りだと言ってたよ!」
継母オリビアの突き刺さるような鋭い目線。
この目に怖くなっていた俺だったが、勇気を振り絞って精一杯こう叫んだ。
が、継母のオリビアは
吐き捨てるように言った。
「そんなのはウソ!!」
取りあわないどころか、あの鋭い目で俺を睨みつけてこう言った。
「お前が世継ぎだという何か証拠でもあるの?
あったら見せてちょうだい!それと母親たる私に向かってその口のきき方は何!口を慎みなさい。お前が世継ぎだという何か証拠は?あるならすぐに見せてみなさい!」
「そ、それは…」
俺は何も言い返せない3歳児だった。
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屋敷の人間から厩の爺と親しく呼ばれる男、マシュー。
厩に住み込み、ヴィンサンダー伯爵家所有の騎馬を世話している。
齢60少々。柔和な顔だちに物腰も穏やか。好々爺然とした、小柄の男である。
その男が今、葬儀の準備で主だった者が出払った伯爵家屋敷内を軽やかな忍び足で高速移動をしている。
斥候職の冒険者が見れば、感嘆するほどのスキルの高さである。
勝手知ったる屋敷の部屋配置。
とある部屋の鍵穴を器用に解錠し、室内に侵入する。
アレックス・ヴィンサンダー伯爵の執務室である。
生存時の伯爵はこの執務室で、領内統治のあれこれ執務をおこなっていた。
机を筆頭に、書棚もあれこれ探しながら1人呟やく。
(やはり無い。どこに隠した?)
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ほぼ同時刻
辺境伯アレックス・ヴィンサンダーの遺体が安置された教会奥の小部屋。
遺体を前に、初老の男女が小声で話し合う。
領都教会のモンデール神父と王都で薬師をしている女性ルキアである。
遺体の口元。ほんの微かな異臭を嗅ぎわけると、顔を顰める薬師ルキア。
「ノクマリ草の香りがするねぇ」
「ふむ…」
モンデール神父が思案げに長い顎髭に手をやり薬師ルキアを見遣った。
「確証を得るには、腹の内容物を調べるしかないね。その結果によっては、王都のサイラスの力も必要じゃろ」
薬師ルキアが言う。
「なるほどのお。致し方あるまい。お館様ならお身体の傷もお許しになるはずじゃ。旅立ちの祭壇前。首謀者たちにも気づかれまいて」
モンデール神父が呟く。
しばらくして。
トン トトトン
特徴的な調べで小部屋をノックする音がした。