僕が怒るのもしょうがないと思うんだ
「なゆたん。なんで一人で行っちゃうのかな君は」
「はいごめんなさい」
今僕は、ギルドマスターの私室で腕を組み怒り心頭でなゆたんを正座させていた。周りにはゴーガシャさんとゴーガシャさんになにやら報告しているイチカさん、フーカさんとフーカさんに治療されてるシギンさんがいる。誰一人怒る気がないみたいだし僕がちゃんと怒らないと、またなゆたんは同じことを繰り返す。心配している人間がいると分かってないんだ。
「どう考えても一人で挑む相手じゃないでしょ!一言言えば僕がついて行ったんだ、頭に血が上ってそれも忘れて!」
「いやでも一人で勝てたし……」
「結果論だし自分も理解できてないヒャッくんの新しい力のおかげでしょうが!」
「ごめんなさーい!?」
「
「正直そんなこと忘れてました!怒りしかなくて……」
「…はあ」
命知らずというかなんというか。思わずため息が出る。あのあと急いで追いかけた私が到着したころには、紅い結晶のフルアーマーに身を包んだなゆたんの姿がそこにあった。私に振り替えるなり、操虫棍にくっ付いていたヒャッくん(他のキュリアと違って造形が微妙に違ってた)以外がキュリアに戻ったかと思うと、なゆたんに群がってちうちうと吸い始めるもんだから慌てて追っ払うと、なゆたんはビターンと倒れてしまったのだから、すごくすごーく心配した僕は怒ってもいいとは思うんだ。
「…まったく。そういうなゆたんのことが僕は好きだから許すけどさ。もうあのフルアーマー?は使わないでよね」
「使い方が分からないし使いたくても使えないです…」
「使えたら使う気満々だね」
駄目だこの子、何言っても通じない。僕が守らなきゃ…!
「あー、もういいかなマゴク。ナユタに聞きたいことがあるんだけど」
「あ、ギルドマスター。どうぞ」
するとギルドマスターのゴーガシャさんがおずおずと尋ねてきたのでなゆたんを差し出す。まあ聞きたいことはいっぱいあるだろうなあ。
「まず報告だ。観測班の報告を聞いたギルド本部はヒャッくんのことを外天種「
「ひゃくりゅーかいそーちゅーだって、かっこいいねヒャッくん!」
「ヒャーッ」
事の重大さをわかってないなゆたん可愛い。
「ナユタ、それにシギン。君達に確認したい。あの鏖の狩人、赫狼竜ジンオウガをナユタが一人で倒したのは事実なんだね?」
「正確には私だけじゃなくてキュリア達の力も借りてだけど、はい」
「うん、私たちはほとんどなにもできてません。あの再生力に太刀打ちできなかった。ナユタが一人で倒しました」
「ヒャッくんもいたよ!?」
「ヒャーッ」
全力で抗議するなゆたんとヒャッくん。可愛いけど違う、そうじゃない。一人で倒したことが悪目立ちするってわかろうよ。
「…一人で倒したとなると、どうしてもその要因たるキュリア……ヒャッくんの事をハンターズギルド本部に通達せざるを得ない。だけどそれは不本意だよね、ナユタ?」
「…え、なんでギルド本部にヒャッくんのことを明かさないといけないの?」
「話聞いてなかったね、なゆたん」
話を聞いてなかったらしいなゆたんに掻い摘んで話す。観測班との事実確認のためにも一人で倒したのは隠しようのない事実となる。
「シギンやフーカ、マゴクがいたなら誤魔化しようはあったけど、万年樹の森のあの頂上区域は観測班にもばっちり見える。遠くて細かくは見えなかっただろうけども、ナユタがキュリアの力を借りて一人で倒したのは通達されているからね。…私としてもナユタとヒャッくんが実験体にされるのは好ましくない。だけど実績がないナユタが、かつて淵古龍マガイマガドと大地母蜘蛛ヤツカダキしか、しかもチームでの討伐例がない外天種を単独で倒したのはどう考えても悪目立ちするだろう」
「じゃ、じゃあ逃げるしかない…?」
「いやなんでさ」
逃げたらギルドナイトが追ってくるのは目に見えてる。対人戦の経験がないナユタじゃ太刀打ちできないだろう。僕だって対人戦の経験はないし。
「というわけで作戦を考えた。まず、この場にいる私ゴーガシャ、ナユタ、マゴク、イチカ、そしてフーカ、シギンにはこれから言うことを口止めをしてもらう。いいかい?」
「ヒャッくんのためなら何でも!」
「こら、なんでもなんて女の子が言わないの。……なゆたんのためならなんでも!」
「ツッコミ待ちですか?あ、私はもちろん。ナユタさんを害するつもりはありません」
「私も、妹を助けてもらった恩がありますし、はい!」
「うん、私も……ちょっと納得いってないけど感謝してる」
「よろしい。私の作戦というのはだね、むしろ目立ってヒャッくんを使いこなしていると証明しようということさ」
「???」
なゆたんは理解してないけどなるほど、そうきたか。でもそれは……。
「なゆたんが実績を作るまで逃げないといけない?」
「そういうこと。なので私はあえてナユタが逃亡したと報告することにする。そこで頼みがある。マゴク、イチカ。君達二人にはナユタに同行してサポートしてもらいたい」
そう言ってきたゴーガシャさんだが、答えは決まってる。イチカも同じの様だ。
「もちろん。なゆたんは僕が守る」
「私も!ナユタさんの専属受付嬢として尽力させてもらいます!」
その言葉に満足げに頷いたゴーガシャさんはフーカとシギンに向き直る。
「フーカとシギンはこのことは黙ってジョウゲンヤの都に帰ってもらうだけでいい、だけど君達にもナユタは逃亡したと報告してもらいたい。数が多い方が信憑性が上がるからね。あと、もし関わることがあったら助けて欲しい」
「それだけでいいんですか…?」
「それでいいなら……」
「君達二人も立場があるだろう?ナユタも、それでいいね?」
「えっと……マゴクとイチカさんと旅をして片っ端からモンスターを倒せばいいってこと、かな?」
「つまりそういうことだ」
あ、ゴーガシャさんが説明を諦めた。まあいいや、なゆたんもこのカゲン村から当分の間離れると聞いたら嫌がりそうだし。
「まずは万年樹の森を抜けた先の「送りヶ原」に尾槌竜ドボルベルクが暴れているという報告があった。そいつから討伐したらどうかな」
「よーし、そうと決まれば!いくよヒャッくん、マンジュウとイッセンを迎えに行こう!」
「僕もバゲストとヴァンシーを呼んでこなきゃ」
「私も準備がありますので、カゲン村の裏門に集合ってことでどうです?」
「じゃあそれで!」
「できれば目立たない様に村から抜けてね」
心配そうなゴーガシャさんに、サムズアップを見せる。じゃあ、いってきます。
それから十分後。荷物を纏めて万年樹の森に繋がる村の裏門にこっそりと移動して門によりかかり待っていると、大きな鞄を背負ったイチカさんがやってきた。
「お待たせしました」
「なゆたんも遅いからいいけど…それは?」
「あ、これですか?サブキャンプ設営のための道具と、未討伐のモンスターのクエストやまだクエストになってない噂などを纏めた書類を持ってきました。これを参考にすればよいかと」
「いやそうじゃなくて……」
僕が信じられないとばかりに指を指したのはその鞄に括りつけられた大剣と同じサイズの武器。剣斧、スラッシュアックス。剣にも斧にも変形するハンターの武器だ。なんで…?
「お恥ずかしい話なのですが私、数年前までハンターでして……引退してたんですけど引っ張り出してきました。自衛ぐらいならできますよ!」
「あ、それは安心…」
正直スラアク使い…前衛がなゆたんの他にもいるのはいいことだ。戦略の幅が広がる。
「にしてもなゆたん遅いな…いったいどうして……ん?」
道を見やると、荷物を背負ったガルクとその上に乗ったアイルーを連れた少女が全力で走って来ていた。なゆたんだ、しかし様子がおかしい。その後ろには……!?
「マゴク!イチカさん!走ってー!」
「逃がすか血塗れナユタ!」
「アソーギ…!?」
大剣使いのハンター、アソーギが数人のハンターを引き連れなゆたんを追っかけてきていた。いったいなにをやらかしたんだなゆたん。あとで怒るからね!
第二章、実績作りの旅へレッツゴー。マゴクとイチカ、オトモ達を引き連れての旅です。しかし最初から波乱万丈、ナユタだからねしょうがないね。
ヒャッくんの正式名称決定。外天種「
フーカとシギンは立場があるので別行動、代わりに参戦スラアク使いのハンターだったと判明した受付嬢イチカさん。レギュラー入りです。
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