今回はナユタたちVSハンター。楽しんでいただけると幸いです。
僕達が大苦戦し、あの赫狼竜を倒したフルアーマーナユタすら完封して殺される直前まで追い込んだ泡芽踊タマミツネを圧倒し撤退させた、青色の竜人族の女性。見覚えがあった。カゲン村から比較的近くにある村の一つ、アンゲツ村という酒造りでも有名な村出身の、G級ハンターの中でも屈指の実力を持つ者の一人だったはずだ。
「私はキューラだ……立てるか?」
「えっと…ちょっと立てません」
「大丈夫!?なゆたん!」
キューラと名乗った女性に助け起こされたものの渋い顔をしているなゆたんに駆け寄る。ちぎれた草花が喰い込んで血を流してる手足が痛々しい。でもなんで渋い顔をして……いやなゆたんが身内以外に人見知りになるのは知ってるけど、なんか違うような。
「…ありがとうございます」
「礼を言える元気はあるみたいだな。アソーギという坊やが、お前たちを助けてくれと言ってきたのさ……運がよかったわね」
「アソーギが……」
ぶすっとした顔で礼を言ったなゆたんに頷くキューラがそう言い、私はあの好きになれない外のハンターのおかげで助かったのかと何とも言えない気持ちになる。いや僕じゃ助けられなかったけどさ。なゆたんが無事でよかった。
「あのっ、あのっ!私も助けてください!」
「あ、ごめんイチカ。忘れてた。今助けるよ」
「ひどい!?」
すっかり忘れてた。矢じりを手にイチカさんを拘束している植物を切ってほどいていく。よし、これでいいかな。するとボロボロのなゆたんが歩いて私達の傍にやってきた。
「マゴク、イチカさん。二人とも、ごめんね。私が無謀なことをしなきゃこんなことには……」
「それを言うなら止めれなかった僕も悪かったさ。生きててよかったよ」
「もう外天種に挑むなんて無茶やらないでくださいよ?」
「うん、もうやらない。それで二人とも、すぐここを離れて………危ないマゴク!?ヒャッくん!」
「え?」
いきなり驚いた顔になると咄嗟に僕を突き飛ばして、何かを受け止めるなゆたん。ヒャッくんがグローブ状に変わって受け止めたのは、蛇腹剣の切っ先だった。その先にいたのは、表情一つ変えないキューラ。今、僕を殺そうとした…?
「キュリアを手懐けるとは……大した物だな。だがダメだよ……言い訳は幾らでも出来る物だ。だからこそ、慈悲なる死が必要なのさ……愚かな道に、進ませない為にね」
つまりこいつは、キューラは。なゆたんと私達を殺しにきたってこと…?人間に襲われたのが信じられない私に対して、最初から疑ってたらしいなゆたんはボロボロなのに操虫棍を構えて睨みつける。
「ごちゃごちゃ言ってないでちゃんと言ったらどう?私達を殺しにきたってさ。殺気、隠しきれてなかったよ」
「隠してはいたさ…どうやら、自分でも抑えきれなかったらしい……それじゃあ、死んで貰おうかしら」
蛇腹剣を鞘にしまって棍棒の様な鞘を振るうキューラに、操虫棍を紅い結晶のグローブを纏った右手で握ったなゆたんが迎え撃つ。僕を狙われて怒っているのか普段とは比べ物にならない動きでキューラの打撃を受け止めて行くなゆたんだがしかし、技量の差か押されつつあった。
「くっ、矢じり無し矢は…!」
援護しようと荷物の中から矢じりの無い非殺傷の矢を取り出して弓に番えて射出。しかし跳弾させて死角から狙ったその一撃は片手間に鞘を握ってない方の手で受け止められてしまったばかりか、それに驚いて止まってしまったなゆたんの胸に打撃を叩き込み吹き飛ばしてしまった。
「ハンターであれ、モンスターであれ……私とは、戦争をするつもりで戦って欲しい物だな」
「ならお望み通り!」
瞬間、いつもと違って鬼気迫った表情のイチカがスラッシュアックス
「致命傷は覚悟してよね!」
「ヒャッくん、ヌシ・アオアシラ!」
なゆたんがヌシ・アオアシラの腕状に変形したヒャッくんを纏った右腕を構えて突撃してきたので、通常の矢を五本取り出し距離を取りつつ射出。木々に跳弾させて四方八方から叩き込む。しかしキューラは抜刀したまま太刀を蛇腹剣に変形させて渦を巻く様にして矢を全弾弾き飛ばし、そのままなゆたんの右腕に巻きつけて締め上げて防ぐと跳躍。
「そんなっ……があ!?」
「強過ぎる力というのは、とても良い物だ……まるで甘美な酒の様……それを使っているのは自分と、錯覚すらしてしまうのだから」
キューラは真上の木の枝を乗り越えて蛇腹剣をひっかけ、右腕を吊り上げて地から足が浮いてしまったなゆたんはもがき、毒と氷属性なのか凍傷と紫色の痣ができていく。そのまま鞘を手に身動きの取れないなゆたんの顔を殴りつけるキューラ、冷酷非道すぎる。頭に血が上った僕は阻止すべく、本気で矢を構えて射出した。
「よくもなゆたんを!」
「そうだ…それでいい……貴様の様な者に相応しい振る舞いだ」
しかし柄を捻ってなゆたんを解放したキューラはそのまましなる刃で僕の放った矢を絡め取ると反転させ返してきた。咄嗟に弓で弾くも、次の瞬間にはキューラが目の前まで迫っていて。
「愚か者程、愛おしく思える物……己の欲求を満たせるのならば、尚更に……だからこそ、躾は大事なのさ」
「ぐうっ!?」
鞘で腹部を殴られ、蹲る。く、くそっ……なゆたんで欲求を満たしているだなんて、屈辱だ。そんなわけ、そんなわけない…!僕は、なゆたんだから……。
「私の親友を馬鹿にするな!ヒャッくん、ブラキディオス!!」
「馬鹿な子ね。根性だけで、どうにかなるとでも思ったか?」
凍傷と毒で苦しそうな姿で右腕にブラキディオスの腕の形状の結晶と粘菌を装備して飛びかかってきたなゆたんの一撃を、渦状にした蛇腹剣でブラキディオスの腕の爆発を防ぎ、受け止めるキューラ。そのまま弾き飛ばし、ゴロゴロと転がって行くなゆたんを追いかけ蛇腹剣を文字通り蛇のように地面を這わせて追撃する。
「くっ……こうなったら、ダイミョウザザミ!」
ダイミョウザザミのヤドを右手に展開し弾きながら距離を取ろうと後退するなゆたん。適度に距離を取るとヒャッくんを操虫棍に移動させ、オロミドロの尻尾の様な形状に刀身を変えると投槍の如く構える。
「ヒャッくん、オロミドロ!いけえ!」
投げた瞬間にガスが噴出。加速する操虫棍のオロミドロの尻尾がキューラに迫るも、キューラも蛇腹剣を放ち、操虫棍は身体を逸らしたキューラに紙一重で当たらず木に激突し、なゆたんは……。
「惜しかったな……」
「がっ、うっ……」
腹部を蛇腹剣で貫かれ、引き抜かれると血を噴きだしながら力なく倒れ伏していた。そんな、そんな……いくら常人よりスペックの高い竜人族でも、こんな傷は……。刀身を戻して鞘に納めたキューラは退屈気に歩み寄っていく。だめだ、止めれない。
「さあ、安らかに……眠りなさ……!?」
すると、突如一部が溶けだした装備に驚き固まるキューラ。見れば、操虫棍が炸裂した木の根元が溶けてキューラに向けて倒れ込んできた。咄嗟に抜刀しようとするキューラだったが間に合わず、押し潰されてしまう。
「はははっ、ざまあみろ……」
「旦那さん!」
倒れ伏しながら笑うなゆたんにマンジュウとイッセンが駆け寄って抱き起こす。ダウンしたのから回復したのか。どうやらイチカもヴァンシーたちが回復薬で傷を治して連れてきたようだ。僕も腹部を押さえながら操虫棍と元に戻ったヒャッくんを回収しつつ歩み寄る。キューラは意識はあるのかなんとか抜け出ようとしていた、時間が無い。
「あれ、狙って?そこまでしなくても…」
「私を犠牲にしないと引っかからないと思ったから……でもどうしよう、もう動けないや。多分すぐ抜け出してくるよね」
「とりあえずガルクに乗って逃げないとだけど、どこに……」
「なんだ、嫌な名前を見つけたから仲間に任せて急いで来てみれば、まさか撃退しているとはな」
困っていたそこに現れたのは、存在しない左腕にヘビィボウガンを付け、背中にライトボウガンを背負い、腰に片手剣を装備した重装備の男ハンター。その特徴的な義手は知っている。カムラの里の英雄の……。
「ついてこい。安全なところに案内する」
「今しがた知らない人に襲われたばかりなんだけど……」
「…英雄のひとり、バレット。なゆたん、彼は信用できる」
「でも、どこか安全なところがあるんですか?」
そんなイチカの問いかけに、バレットは頷いてなゆたんに肩を貸した。
「ああ。俺の師匠の隠れ庵だ」
冷酷非道なハンター、キューラ参戦。あれで意識を失ってないとかいうバケモンです。一応竜人族。蛇腹剣に変形する太刀を使う、アンゲツ村という酒造りでも有名な村出身の、G級ハンターの中でも屈指の実力を持つと知られている人物。名前は似てるけどリキュールとブルーキュラソーが由来なので関係ありません。
相変わらず戦闘時だけ頭がいいナユタ、なんとか痛み分けに追い込みましたが重傷。そこに駆けつけたバレットが案内するのは彼の師匠の…?
次回も楽しみにしていただければ幸いです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。ここすき機能などで気に入った部分を教えていただけたら参考にします。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。