ラージャン装備を身に着け、包帯で目元を隠している盲目らしき若々しい金髪を乱雑の伸ばした女性の元G級ハンター、サイカさんの巨岩をくり抜いてできた庵に寝かされた私は治療を施されていた。部屋にはたくさんの武器が乱雑に置かれている。大剣、ヘビィボウガン、片手剣、チャージアックス、太刀、弓、ランス、ライトボウガン、ガンランス、双剣、スラッシュアックス、操虫棍…全武器種が、種類も別に沢山ある。奥には工房らしきところもあるし、サイカさんが作ったのだろうか。
「腹部に重傷。毒と凍傷がひどいな。それに体に根付く植物……
「いや、ハンターに…」
「ひどいやつもいたもんじゃな。ほれ、漢方薬といにしえの秘薬じゃ」
「むがあ!?」
ブチブチブチ、と喰い込んだ蔓を引きちぎって、適切に回復薬を塗った包帯で患部を巻かれた上で戸棚から取り出した薬を無理やり口の中にブチ込まれて水の入った革袋を突っ込まれる。死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!?
「なゆたーん!?」
「ヒャーッ!?」
「心配するな、息が詰まってるだけじゃ。死んでも叩き起こす。次はお前じゃ、十分重傷だぞ」
「心配しかないけど!?」
がくっと崩れ落ちる私に慌ててマゴクとヒャッくんが駆け寄ってくるが、マゴクを片手で押さえこんで無理やり包帯で巻くサイカさん。絶対この人治療に向いてないでしょ…。それをじっと見つめてたイチカさんが口を開く。
「いにしえの秘薬とか初めて見ました…」
「師匠は薬師でもあるからな。それで師匠、ナユタの容体はどうなんだ?」
「お前なんかよりとりわけ頑丈じゃ。あとは安静にして飯でも食わせとけば勝手に治るぞ。それより興味深いのはお前じゃ。キュリア」
「ヒャッ?」
げほごほとえづいていると、サイカさんがヒャッくんに視線を向ける。まずい、この人もヒャッくんが目的なら止めないと……。
「ナユタとか言ったか。そう心配するな。こいつの持つ毒に用があるだけじゃ」
「ヒャーッ!?」
そう言って、ヒャッくんを掴んで自身の腕に噛み付かせるサイカさん。え、とその場の全員が固まる。ヒャッくんも意図してない行動だからかじたばたしている。
「キュリアの毒は貴重だからな。大地母蜘蛛の一派からはろくに取れんかった。自分を受け皿に取るしかないじゃろ」
「いやその理屈はおかしい」
「この毒は武具を作るのにいるのじゃよ」
そう言いながら注射器を取り出して自分の二の腕に突き刺して採血するサイカさん。怯えたヒャッくんが羽ばたいて私の元まで戻ってくる。何なんだこの人怖い。
「なんだ文句でもあるのか?自分の武器も十分に扱い切れてない小童が。その操虫棍が泣いておるわ」
「っ、なんで…」
「操虫棍の損傷が少ない、限りなく新品に近い。これは武器をあまり使ってない証じゃ。キュリアの力を借りて己の手で戦っているのじゃろう?だから必要以上に傷付く。武器を何だと思っておる」
「うぐっ」
図星だった。確かに操虫棍で殴るよりモンスターの力を借りた方が早いと、移動手段か咄嗟の強化にしか使っていなかった。それを見抜くなんて…。
「…まあ武器を義手の代わりにしている馬鹿よりはマシじゃが」
「誰が馬鹿だ馬鹿師匠」
瞬間、目にも留まらぬ速度でサイカさんが動いたかと思えばバレットさんが転倒し、床に押さえつけられていた。クナイを首元に突きつけられて動けないでいる。
「師匠を馬鹿呼ばわりとは偉くなったのう?ええ?英雄殿?」
「でたらめさは相変わらずかよ…っ」
「隙が多すぎる。そんなんじゃから片腕を失うんだ。馬鹿弟子め」
「…すごい」
思わず感嘆の声が漏れる。英雄と呼ばれるバレットさんを簡単に押し倒したのもそうだけど、この人ただの人間だ。私の様な竜人族ですらない。なのにここまで強いなんて、すごい。
「……ん?おぬしら、血の匂いを垂れ流しながらここまで来たのか?」
「悪い、失念していた」
すると何かに気付いたらしいサイカさんと苦い顔を浮かべるバレットさん。なんのこっちゃと思えば、外から唸り声が聞こえてきた。この重圧感、大型モンスター…!?
「
「怨嗟響めくマガイマガド…!?マガイマガドの特殊個体です!淵虎竜マガイマガドにこそ及びませんが、
「そんな…なゆたんは重傷で動かせないのに…」
「責任は俺にある、俺がやる…!」
サイカさんの言葉に驚いたイチカさんが説明した内容に軽く絶望する中、バレットさんが片手剣とヘビィボウガンを携えて外に出ようとするのを、サイカさんが止めた。
「よい。素材の方から来てくれたんじゃ、僕が相手してやらんとな」
そう言いながら大剣とスラッシュアックス、操虫棍と弓と矢筒を手に取り、弓と大剣を背中に、操虫棍と矢筒を腰に取りつけ肩にスラッシュアックスを担いで出て行くサイカさん。四つの武器を持つと言う前代未聞に度肝を抜いていると、結構大きな扉を蹴り開けて外に出て行くサイカさんの向かう先には、通常個体以上に長く鋭く発達した腕刃に牙、鋭利で堅牢な傷だらけの甲殻、隻眼と片方だけ折れて焼けただれ、もう一方は長大に伸びた角が特徴的な全身を鬼火で覆われているマガイマガドがいた。見るからにヤバいんだけど。
「すまんの、お茶の一つも出せんで。帰るというなら無理に追いはしないが…」
「グオアアアアアアアッ!」
「無駄な相談じゃったかの?」
瞬間、鬼火を腕刃に集中させて燃え上がらせると飛びかかってくる怨嗟響めくマガイマガドの一撃を、背中から引き抜いたスラッシュアックスのスラッシュモードで受け止めたかと思えば、大剣をもう片方の手で引き抜いて長大に伸びている角を叩き折った。一撃で部位破壊!?
「グオアアアアッ!」
危険を感じたのか距離を取り、尻尾に集中させた鬼火を弾にしてばら撒いてくる怨嗟響めくマガイマガド。それを、まるで双剣の如く大剣とスラッシュアックスを両手に持って一歩踏み込むことで跳躍し接近。
振り回して、スラッシュアックスを変形させてアックスモードにして何度も何度も斬撃を叩き込んで怨嗟響めくマガイマガドの鬼火の刃を斬り弾いて行く。
「操虫棍じゃというのに、一匹しか操らないのは無駄の極みだと思わないか?」
大剣とスラッシュアックスを投げ捨てると操虫棍を高速回転させ、どこからともなく大量の猟虫を呼び寄せるサイカさん。そのままリオレウスを思わせる竜の形に群れさせると突撃させて怨嗟響めくマガイマガドを切り刻んでいく。しかし大爆発で猟虫を散らせる怨嗟響めくマガイマガドが、鬼火を集中させた腕刀を振りかぶった、瞬間。
「足元がお留守じゃ」
先程突撃させた際に潜り込ませていたのか地面から猟虫十数体を飛びさせると顎をクリーンヒット。怯み、大きく距離を取ろうとする怨嗟響めくマガイマガドに弓を引き絞るサイカさん。
「距離を取るのは悪手じゃったな。僕の餌食だ」
そして放たれた矢が怨嗟響めくマガイマガドの首を捉えると、ズパン!という音と共に怨嗟響めくマガイマガドの首がもがれて吹き飛んだ。首から上を失い、崩れ落ちる怨嗟響めくマガイマガドの巨体から鬼火が消えて行く。
「え…」
「あの人は鍛冶職人のサイカ。災禍とも呼ばれる、元G級ハンターだ」
「私の知ってるG級の強さじゃないんだけど」
傍若無人を絵に書いたような人物、サイカ。師匠がこんななのにバレットは比較的まともに育ったのはなんでじゃろね?書いててヒビキかマシロの師匠と言われた方が納得できる気もしました。
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