今回はVSブラキディオス。楽しんでいただけると幸いです。
あれから一週間。マゴクの病室で、操虫棍を手入れしながら持って来たこんがり肉を食べ、のんびりと過ごす。結構命の危機だったらしいけどもう完治すると言う。助かって本当によかった。
「…ねえ、僕を助けてくれたのってなゆたん?」
「うんそうだよー………って、違う違う!何の話かな!?」
やべっ、気が抜けてた。マゴクも鋭いな。どう誤魔化そう。
「マゴクがディノバルドを倒したんじゃないの?相打ちみたいな感じで」
「僕はあのとき、存在を知らない大技をまともに受けて動けない状態だった。そこを救ってくれた少女がいたはずなんだ」
「それが私だって?まさかー、こんな貧弱なのに丸太を投げるなんてできるわけ……」
「僕、丸太だなんて言ったかい?」
「あ、えっ」
やらかした。後ろを見てみればマンジュウとイッセンもあちゃーと言いたげな顔だ。
「やっぱり、ディノバルドを倒して僕を助けてくれたのは君だったか、なゆたん」
「あはは……そうです、お願いだからギルドには黙っててください」
「うん、いいよ。その代わり、教えてくれるよね?なゆたんが隠していること」
「…えっと、このヒャッくんがですね…?」
マゴクの圧に負けて
「モンスターの能力を使うことができる、ね…確かにそれは黙りたくもなるね。この、僕にも…!」
「黙ってたのは悪かったからつねるのやめてー!?」
お腹をばっさり斬られて弱ってたけど、不機嫌になると私の腕をつねってくるのは相変わらずでちょっと安心した。特にギルドマスターのゴーガシャさんと話すと機嫌が悪くなるから先日ごはん作ってもらったのは黙っておこう。
「…でもそれ、このままじゃ食費が追い付かないよね?」
「そうなんだよね。一回戦うだけですごく食べないと回復しないし」
「やっぱり上位になるしかないんじゃないかな。食費以外にも報酬を割けるかもしれないよ?そろそろ新しい装備を誂えた方がいいと思う」
「え、いいよ……ヒャッくんの力を借りてなんとかなってるだけで私はよわよわだし……」
マゴクは楽しそうに提案してきたが勘弁してほしい。私は貧弱ハンターなのだ。下位でもギリギリなんだ。
「イャンクックやリオレイアに苦戦するんだよ?」
「単純に飛ぶやつが苦手ってだけじゃないかな?」
「それはそう」
単純に当たらないんだもの。ヒャッくんを射出して撃墜しないとロクにダメージを与えられなかった。
「ヒャッくんがいれば攻撃力は問題ないし、なゆたんは危機回避が上手い。僕も援護するから大丈夫」
「えっ、大丈夫?病み上がりだよね?」
「大丈夫大丈夫。何針か縫ったけど」
「大丈夫じゃないじゃん!?」
「僕が大丈夫と言えば大丈夫なのさ!」
「マゴクって意外と頭悪いよね」
「失礼な」
思わずドストレートな罵倒が出て、小突かれる。ちょっと自覚はあるのか控えめだ。
「じゃあちょうどよさそうなクエスト探してくるから先に集会所の準備室で待っててよ」
「あ、うん……程ほどにしてね?」
そう頼み込むといい笑顔を浮かべるマゴク。ちょっと待って、その顔は嫌な予感がする。
数時間後、私は最寄りの火山地帯である溶岩洞に来ていた。
「ほどほどのにしてって言ったよね!?」
「程ほどだよ。なゆたんなら行けるさ」
「ブラキディオスは程ほどじゃないと思うよ!?」
マゴクが私に何も言わずに受注して、ここに来るなり伝えてきたのは砕竜ブラキディオスが溶岩洞に現れたから討伐してほしいという上位のクエスト。マゴクはゴーガシャさんに相談してこれを私の昇級クエにしてもらったらしいけど、バカじゃないかな!?
「私でも知ってるよ最強クラスの獣竜種の一体!比較的小柄だけど打撃や粘菌の爆発を駆使するモンスター!」
「でもディノバルドに勝ったしいけるいける」
「不意打ちで勝った奴言われても困る!」
そう言いながらも、バゲストに乗ったマゴクにイッセンに乗ってついていき、水没した洞窟内を走る。上位昇格は魅力的ではあるし、上位ハンター先輩のマゴクがいれば何とかなると思えるからだ。
「よし、じゃあヴァンシー。ここらへんに仕掛けを頼んだよ」
「あ、いいな。マンジュウはできないの?」
「アタシのロールはファイターだにゃ…でもヴァンシーの護衛に残りますにゃ」
「うん、よろしくね」
オトモアイルーの二匹と別れ、ガルクに乗って奥に進む。たしか、そろそろ溶岩と水脈の境目のはずだ。水脈が流れながらも溶岩が流れている幻想的な最奥と思われる広場に出ると、マゴクがバゲストから降りて屈んで岩を眺める。
「うん?爆発跡………なゆたん、避けろ!」
「へ?っ、ヒャッくん、ザザミ!……!?」
瞬間。こちらに振り向いたマゴクの警告の声と共に振り返った私はそれを見て咄嗟に指示、ヒャッくんが結晶化して広がりダイミョウザザミのヤドを模した盾を生成、黄緑色に輝く粘菌を纏った頭突きを受け止め吹き飛ばされる。上への道から現れたのは標的、ブラキディオスだ。
「不意打ちとは卑怯、なあ!?」
「なゆたん!この…!」
瞬間、盾にくっついた粘菌が爆発。結晶が散ってヒャッくんが元の姿に戻ってぱらりと右腕から剥がれ落ちてしまう。
「そんな、ヒャッくん!?」
「ゴアァアアアアッ!」
たまらずヒャッくんを拾い上げるとそのまま咆哮を上げ、粘菌を纏った両腕でパンチを繰り出してくるブラキディオス。咄嗟に避けるも粘菌がくっ付いた場所が爆裂。その衝撃でヒャッくんを抱えたままゴロゴロと転がるも、すぐ立ち上がって左手でヒャッくんを抱えたまま右手で操虫棍を抜いて突きを繰り出すも、軽いフットワークで回避し一回転して尻尾を叩き込んでくるブラキディオス。
「なんて動き…!?」
「ゴアァアッ!ゴアッ!?」
すると頭部の粘菌に爆発する矢が突き刺さってブラキディオスが怯んだ。マゴクだ。
「僕の親友に手は出させないよ…!」
「ゴアァアアアアッ!」
マゴクに向けて大ジャンプ、両腕を叩きつけてくるブラキディオスの攻撃を身躱し矢斬りで回避し、至近距離から矢を三本ずつ叩き込みつつ距離を取るマゴク。その間に私はヒャッくんの口に人差し指と中指を突っ込む
「ほら、吸っていいよ!ごめん、私の不注意だ。元気になって、ヒャッくん!」
爆発の直撃を受けてボロボロのヒャッくんが弱々しく私の指に噛み付きちうちうと吸って行く。体力が失われていくので私はポーチから取り出したこんがり肉を食して気力を回復、元気になったヒャッくんが私の周りを旋回する。
「いくよ、ヒャッくん!」
「ヒャーッ!」
旋廻するヒャッくんが走る私についてきて、操虫棍からガス噴射してマゴクと攻撃して避けられの攻防を繰り広げているブラキディオスに突撃する。
「ヒャッくん、リオレイア!」
すると操虫棍にしがみ付いている私の右足にヒャッくんがくっついて結晶化。飛竜の脚を形作り、一件不格好なそれを空中で振りかぶる。リオレイアの脚爪だ。
「追加、ドスマッカォとウルクスス!」
さらに脚力に特化している二体のモンスターの力の追加を渇望。紅いオーラを纏って脚力がみなぎり、サマーソルトキックをブラキディオスの横顔に叩き込んだ。
「ゴアアァアアアッ!?」
「それがヒャッくんの力か、やるねなゆたん!なら僕も…トリニティレイヴン!」
怯んで倒れ込んだブラキディオスに三連続の矢が叩き込まれ、吹き飛ばされる。いやどんな威力だ、モンスターの力を借りずにそれができるマゴクはやっぱりすごい。
「ゴアァアアアッ!」
「ヒャッくん、ヌシ・アオアシラの腕!」
粘菌が黄緑色から薄黄色へと変色、何度も拳を叩き込んで即時に爆裂させてくるブラキディオスが連続で私達を追うように叩きつけてきたので、私とマゴクは回避しつつガルクに乗って後退。
「マゴク、私が殴り飛ばすから!」
「準備は任せて!」
ある程度後退すると、私は脚から離れたヒャッくんを右腕に止まらせて結晶化、ヌシ・アオアシラの右腕の形状にすると左腕に握った操虫棍で地面を突いて跳躍して爆発の範囲攻撃を回避。右腕も合わせて操虫棍を握ると、勢いよくスイングして顔面に叩き付けた。
「ゴアアアアアッ!?
ヌシ・アオアシラのパワーで殴り飛ばされたブラキディオスが吹っ飛び、ゴロンゴロンと地面を水飛沫を上げながら転がって行くと、仕掛けられていたシビレ罠に突っ込んで全身痺れて身動きが取れなくなる。そこに、ヴァンシーと共に大タル爆弾Gを持って来て設置するマゴク。
「爆弾、設置したよ!」
「わかった、離れてマゴク!ヒャッくん、イャンクック!」
マゴクが離れて行く中、私がそう指示すると結晶化して翼の形状に変形。羽ばたくように振るって火球をいくつも飛ばし、大タル爆弾Gに当たって大爆発。ブラキディオスは力尽き、崩れ落ちたのだった。
「…ね?相手にならなかっただろう?」
「割とヒャッくんと組んでから初めてのピンチだったけどね」
駆け寄って握り拳を向けてきたマゴクに、ヒャッくんにちうちう吸われている右腕の拳をぶつける。…強敵だったとはいえ使いすぎたなあ、とふらつくとイッセンが受け止めてくれた。さすが私のオトモ……ぐふっ、眠い・・・。
ナユタ、上位昇格。ヒャッくんのピンチには身を削れば復活可能だと明かされました。攻撃力最強クラスのディノバルドの大剣を使わなかったのは当たる気がしなかったからだったりします。
次回も楽しみにしていただければ幸いです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。ここすき機能などで気に入った部分を教えていただけたら参考にします。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。