今回は赫狼竜ジンオウガとの対決。楽しんでいただけると幸いです。
「ギルドに要注意対象として知らされていた新種、赫狼竜か…!剛射【絶】…!」
赫狼竜ジンオウガ…でいいのかな?がマゴクの放った矢を宙返りで回避し、空中から複雑な軌道を描く紅い火球を飛ばしてきた。雷属性じゃ、ない!?炎でもない、ってことは龍属性…!?
「ジンオウガ亜種じゃないの…!?」
「いや、亜種は赤と黒……こいつは最近発見されたって言う新種のジンオウガだ!離れて、なゆたん!」
地を蹴り氷塊を蹴り岩壁を蹴り、深紅の炎を噴出して話に聞いたマガイマガドの様に駆け回りマゴクを翻弄しつつ火球の雨を降らせる赫狼竜ジンオウガ。動きも原種とは比べ物にならない……!?
「ヒャッくん!ダイミョウザザミ……ヒャッくん?」
「ヒャッ、ヒャーッ!」
頑張ってるマゴクを尻目に倒れている双子を守ろうと右腕に止まっているヒャッくんに呼びかけるも、赫狼竜ジンオウガに惹き付けられるように固まっていたので呼びかけると反応し、結晶化してダイミョウザザミのヤドを形成。火球を受け止める。
「ごめん、マゴク!遅れた!」
「見てた!どうやらヒャッくんと関係あるようだね……僕が相手するからなゆたんはその二人を守ってくれ!」
弓を連射して赫狼竜ジンオウガを牽制するマゴク。私は頷いてヒャッくんを元に戻すと二人を引き摺って岩陰まで連れて行くと、大粉塵を取り出して使用。双子の傷を癒すと体力回復のために念のために持って来た秘薬を一つずつ飲ませる。
「
一方、紅い光を纏ったかと思うと結構な距離を瞬間移動した赫狼竜ジンオウガは、まるで変異した時のヒャッくんみたいに紅い結晶を爪に纏って炎状のエネルギーを発生させると斬撃として飛ばしてくる攻撃を避けて、鉄蟲糸に掴まって跳躍。空中から矢を何度も炸裂させるマゴク。しかし赫狼竜ジンオウガは背中に紅い結晶を鎧の様に纏って矢を弾き飛ばしてしまう。
「まるでなゆたんを相手にしているみたいで気が削がれるね…!」
紅い光を纏い瞬間移動して神出鬼没に現れながら地面を抉る結晶爪による斬撃を繰り出していく赫狼竜ジンオウガの猛攻を身躱し矢斬りで何とか避けつつ反撃していくマゴク。結晶と矢じりがつば競り合って火花が散ち、マゴクが弾き飛ばされる。
「がっ……しまっ!?」
「ウォオオオオオンンッッ!!」
体勢を崩したマゴクを見てチャンスだとばかりに咆哮を上げる赫狼竜ジンオウガ。するとどこからともなくヒャッくんの仲間(?)たちが飛んできて集結、さらに大気中に分散された龍属性のエネルギーの残滓を吸収していき、全身を紅い結晶の鎧で覆い、体格も一回り大きくなってまるで全身紅く輝く宝石の怪物の様に姿を変えた赫狼竜ジンオウガ。
「か、怪物……」
「ウォオオオンンッッ!!」
形態変化を果たした赫狼竜ジンオウガは瞳と口だけ露出している頭部の角状の形状の結晶から紅い龍属性エネルギーのレーザーを放出し、咄嗟に回避したマゴクのいた場所に炸裂すると大爆発。ゴロゴロと転がり湖に落ちるマゴク目掛けてその巨体でストンプを叩き込み、マゴクは吹き飛ばされて湖に沈んでしまった。
「マゴク!?この…ヒャッくん、ザボアザギル!」
ヒャッくんが操虫棍の刃にくっ付き、ザボアザギルの頭部を模した氷の銛を形成。突きを繰り出して赫狼竜ジンオウガの肩に突き刺す。すると私の方を向いて巨大な前足で私を薙ぎ払い、吹き飛ばされて湖畔を転がる私に向けて背部から紅いエネルギーの火球を複数上空から飛ばしてきた。
「ヒャッくん、オロミドロお!」
咄嗟にヒャッくんが結晶化して変形したオロミドロの尻尾の様な形状になった操虫棍の刃で地面を削って沁み出した溶解液で泥にすると目の前に泥の壁を形成。火球の雨を防ぎきるとそのまま地面を削ってかき混ぜる様にして泥を集めると勢いよく下薙ぎにスイングして射出。
「ウォオオンンッ!?」
「追加、テツカブラ!」
四肢を泥で固められ、身動きが取れなくなった赫狼竜ジンオウガに、今度は操虫棍の先端をテツカブラの尻尾状の結晶に変形。ガスで噴射して跳躍し、テツカブラのジャンピングブレスの様に操虫棍を勢いよく叩き付けんとするも、ガキンとその結晶鎧の防御力に防がれる。
「かたっ……うえっ!?」
「ウォオオオオンンッ!!」
ガコンと変な音がした。嫌な予感がして飛び退こうとした瞬間、右前足の結晶鎧を取り外して拘束から逃れた赫狼竜ジンオウガの爪の一撃を受けて空に打ち上げられてしまう。
「があっ……っ!?」
「ウォオオンンッ!!」
さらに結晶の四肢を取り外して自由になった赫狼竜ジンオウガが宙返り。尻尾のスイングを叩きつけてきて、雪山まで吹き飛ばされ雪に埋まる私の前に紅い光と共に瞬間移動して来て、再び結晶を纏ったガムートの様に巨大な右前足で押し潰されてしまった。
「があぁああああっ!?」
咄嗟にヒャッくんへの指示もできなくて、直撃を受けて吐血する。つ、強すぎるって……マゴクがやられた時にわかっていたことだけど上位とかじゃ相手にならない、G級でも勝てるかどうか分からない強さだ……。気が済んだのか私から離れて勝ち誇ったように咆哮を上げる赫狼竜ジンオウガ。喰う価値もないってか、ふざけんな。私の親友をボコボコにしておいてタダですむと思うなよ…!
「ヒャッ、くん……お願い、力を貸して……ヌシ・アオアシラ……!」
「ヒャーッ!」
血反吐を吐きながらも立ち上がり、右腕に止まらせて結晶でヌシ・アオアシラの剛腕を形作る。躁虫棍を横に地面に突き刺して赫狼竜ジンオウガに向けて固定、その上に飛び乗るとガスを噴出してまっすぐ横に突撃する。
「ドラアァアアアッ!」
「ウォオオオンンッ!」
一声吠えて巨大な結晶の右前足を掲げた赫狼竜ジンオウガの一撃と、ヌシ・アオアシラの拳を激突。押し合うも、私は左腕で操虫棍をくるりと回すと噴出孔を背後に向けてガスを噴射。噴射、噴射!!さらに空中で加速して、拳を押し込んで吹き飛ばした。
「ウォオオオオオンンッッ!?」
「ヒャー…ッ」
「ヒャッくん…!?」
赫狼竜ジンオウガを湖の奥まで殴り飛ばしたところまでは上手く行ったが、許容できる衝撃の限界を迎えたのかヒャッくんが元の姿に戻ってしまい、私はヒャッくんを抱えてゴロゴロと地面に転がった。
「ヒャッくん、大丈夫…?!」
慌てて指をヒャッくんの口に入れるがいつもの様に吸ってくれない。短期間で無理させ過ぎた…?
「なゆたん、無事かい…?」
「マゴク!どうしよう、私は大丈夫だけどヒャッくんが……」
するとマゴクが湖から這う這うで上がって来て、私は慌てて駆け寄ってヒャッくんを見せると神妙そうな顔を見せた。
「……見間違いじゃなければ、あの赫狼竜にエネルギーを奪われていた様に見えた。多分そのせいだ」
「どうしよう!私、私……」
「なゆたん…………っ!」
湖の方を見て構えるマゴク。瞬間、紅いエネルギーの火球が飛んできてマゴクが飲み込まれて吹き飛ばされた。見てみれば、悠然と歩いて湖から出てくる赫狼竜ジンオウガの姿が。うそっ、全然効いてない……?ヒャッくんを庇いながらも片手で操虫棍を構える。どこまでやれるかわからないけど…!
「やってやる…!」
「無謀です。どうやら回復された様ですねー、はい」
「私達が付けた傷も完全に癒えてる。ふざけんなよこの野郎、うん」
「あなたたちは…」
すると現れたのは、ズタボロの巫女服の様な色違いの装備を身に着けた双子の少女。回復したんだと喜ぶのもつかの間、私は驚く。二人が手にしたのは、それぞれ一本ずつ握った一対の双剣だったのだから。
「え。え…?」
「でもここまで弱ったならば、シギン。行きますよー、はい」
「わかったよフーカ。フーカもボロボロにしたクソ野郎を潰してやろう、うん」
瞬間、赫狼竜ジンオウガに向けて駆け出す二人。まるで二人で踊るように跳ねて、空中でくるりと回転。赫狼竜ジンオウガの放った火球を回避するとフーカと呼ばれた桃髪の少女は右手に、シギンと呼ばれた水色の髪の少女は左手に双剣を握って、開いている手で相手の手を握ると跳躍、息を揃えて急降下斬りを赫狼竜ジンオウガに叩き込み、その角を叩き折った。
「ウォオオオンン…!」
すると分が悪いと見たのか紅い光に包まれ瞬間移動した赫狼竜ジンオウガの姿はどこにもなく。
「…機を見ることもできるとはただのジンオウガではないようですねー、はい」
「逃がしちゃったって言うとギルドの偉い人共に怒られるから黙っておこうよ、うん」
おっとり口調のフーカと、口が悪いシギン。新たに仲間となる双子との出会いは、私にとっては苦い敗北の記憶でもあった。
一対の双剣を二人で使う双子ハンター、フーカとシギン参戦です。
・赫狼竜ジンオウガ
雷光蟲の代わりにキュリアと共生して突然変異を起こしたジンオウガの個体。雷ではなく龍属性の炎の様なエネルギーを操り、不規則な軌道を描く火球として射出できる他、メル・ゼナの様な瞬間移動も行使できる。
周囲に隠れ住んでいるキュリアやそのエネルギーを吸収することで結晶の鎧に覆われ一回り巨大化した強化形態に変身可能。防御力もある大質量と瞬間移動を駆使して標的を追い詰める。
強さ的には血塗れマガマガと一緒ぐらいのバケモン。ヒャッくんが元気をなくして完全敗北のナユタとマゴク。再起できるのか。
次回も楽しみにしていただければ幸いです。よければ評価や感想、誤字報告などもいただけたら。ここすき機能などで気に入った部分を教えていただけたら参考にします。感想をいただければいただけるほど執筆速度が上がります。