現在の二人のステータスは以下の通り。
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南雲ハジメ 17歳 女 レベル:39
天職:錬成師
筋力:1200
体力:1020
耐性:1470
敏捷:1500
魔力:2100
魔耐:2100
技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成]・魔力操作・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚]・風爪・夜目・遠見・気配感知・魔力感知・気配遮断・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・言語理解
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轟彩人 17歳 男 レベル:17
天職:武闘戦士
(気力開放時)
筋力:2800(5600)
体力:1800(3600)
耐性:1430(2860)
敏捷:2300(4600)
魔力:0
魔耐:0
技能:言語理解・胃酸強化・石化耐性・夜目・毒耐性・麻痺耐性
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階下への階段は既に発見しているのだが、この五十層には明らかに異質な場所があったのだ。
それは、なんとも不気味な空間だった。
脇道の突き当りにある空けた場所には高さ三メートルの装飾された荘厳な両開きの扉が有り、その扉の脇には二対の一つ目巨人の彫刻が半分壁に埋め込まれるように鎮座していたのだ。
今までに無い変化に二人は期待と嫌な予感を両方同時に感じつつ準備を整えていた。
あの扉を開けば確実になんらかの厄災と相対することになる。だが、しかし、同時に終わりの見えない迷宮攻略に新たな風が吹くような気もしていた。
「さながらパンドラの箱かな。……さて、どんな希望が入っているのかな?」
早速ハジメが扉の前であれこれやっているのを見届けながら扉の先に感じる高貴な気を読み取る彩人。
「(ここまで来てしまった…あのヤンヤン魔王の前であの子が・・・もう、覚悟を決めよう)」
彩人が覚悟を決めたと同時に扉の魔術に跳ね返されたハジメが飛んできたので支える。
「いたた・・・」
「…大丈夫か?」
「あ、うん…大丈夫。・・・彩人君こそ大丈夫?この世の終わりみたいになってるけど」
「大丈夫だ、問題ない」
「それ、フラグだと思うんだけ・・・『――オォォオオオオオオ!!』!?」
すると突然、野太い雄叫びが部屋全体に響き渡ったのだ。
彩人はハジメを抱えたままバックステップで扉から距離をとり、ハジメをおろす。次いで彼女は腰を落として手をホルスターのすぐ横に触れさせいつでも抜き撃ち出来るようにスタンバイする。
雄叫びが響く中、遂に声の正体が動き出した。
「まぁ、ベタと言えばベタだな」
苦笑いしながら呟く彩人の前で、扉の両側に彫られていた二体の一つ目巨人が周囲の壁をバラバラと砕きつつ現れた。いつの間にか壁と同化していた灰色の肌は暗緑色に変色している。
一つ目巨人の容貌はまるっきりファンタジー常連のサイクロプスだ。手にはどこから出したのか四メートルはありそうな大剣を持っている。未だ埋まっている半身を強引に抜き出し無粋な侵入者を排除しようと二人の方に視線を向けた。
「先手必勝。いいな、ハジメ」
「了解・・・っと!」
ドパンッ!
凄まじい発砲音と共に電磁加速されたタウル鉱石の弾丸が右のサイクロプスのたった一つの目に突き刺さり、そのまま脳をグチャグチャにかき混ぜた挙句、後頭部を爆ぜさせて貫通し、後ろの壁を粉砕した。
左のサイクロプスがキョトンとした様子で隣のサイクロプスを見る。撃たれたサイクロプスはビクンビクンと痙攣したあと、前のめりに倒れ伏した。巨体が倒れた衝撃が部屋全体を揺るがし、埃ほこりがもうもうと舞う。
「悪いが、空気を読んで待っていてやれるほど出来た敵役じゃあないんだ・・・よ!」
左のサイクロプスが油断している隙に奴のモノアイにエネルギー波を放つ。サイクロプスは素早く両腕をクロスさせ、防壁のようなものでビームを防ぐ。奴がニヤリとわらう。が、
「今のは全力じゃねえ・・・ぜ!」
彩人が少し力を入れると防壁が一瞬で破られサイクロプスの頭が消し飛び、この層の壁に大穴を開けた。
「悪い、やりすぎた」
「あぁ・・・うん、これからは気を付けてね」
肉の回収をしていたが先に何かを思いついたハジメは彩人にサイクロプスの魔石を扉にはめるよう頼んだ。
二つの拳大の魔石を扉まで持って行き、それを窪みに合わせてみる。
ピッタリとはまり込んだ。直後、魔石から赤黒い魔力光がほとばしり魔法陣に魔力が注ぎ込まれていく。そして、パキャンという何かが割れるような音が響き、光が収まった。同時に部屋全体に魔力が行き渡っているのか周囲の壁が発光し、久しく見なかった程の明かりに満たされる。
「これで開いたと思うけど…慎重に行こう」
ハジメは肉の保存を済ませると彩人と共に扉を開く。扉の奥は光一つなく真っ暗闇で、大きな空間が広がっているようだ。二人の〝夜目〟と手前の部屋の明りに照らされて少しずつ全容がわかってくる。
中は、聖教教会の大神殿で見た大理石のように艶やかな石造りで出来ており、幾本もの太い柱が規則正しく奥へ向かって二列に並んでいた。そして部屋の中央付近に巨大な立方体の石が置かれており、部屋に差し込んだ光に反射して、つるりとした光沢を放っている。
その立方体を注視していた二人は、何か光るものが立方体の前面の中央辺りから生えているのに気がついた。
万が一扉勝手に閉じる可能性を考慮して彩人は扉を気功波で吹き飛ばした。
「換気よし」
「換気・・・?」
逃走経路を確保しているとその立方体の方から声が。
「……だれか、いるの?」
「「!?」」
二人が振り向くと先程の〝生えている何か〟がユラユラと動き出した。差し込んだ光がその正体を暴く。
「え・・・人?」
〝生えていた何か〟は人だった。
上半身から下と両手を立方体の中に埋めたまま顔だけが出ており、長い金髪が某ホラー映画の女幽霊のように垂れ下がっていた。そして、その髪の隙間から低高度の月を思わせる紅眼の瞳が覗のぞいている。年の頃は十二、三歳くらいだろう。随分やつれているし垂れ下がった髪でわかりづらいが、それでも美しい容姿をしていることがよくわかる。
流石に予想外だったハジメは硬直し、紅の瞳の女の子もハジメと彩人をジッと見つめていた。
「彩人くん…どうするの、この子」
「・・・気を探った。悪意は感じない」
「・・・助けるの?」
ハジメの言葉で少女は何かを期待するような表情になった。原作を知っている以上、助けるべきだが、彩人は額に左手の人差し指と中指を立てた状態で触れたのち
「こんなところに封印されて本当に何もないとは言い切れない。封印を解いたら襲ってくるかもしれんだろ?」
「…!そんなこと、しない」
「・・・確かにそうかもしれないね」
「ま、待って! ……お願い! ……助けて……」
必死な表情の少女。
「・・・だったら教えて欲しい。きみがなぜここにいるのか」
彩人の問いかけに少女は驚くものの小さくか細い声で話し始めた。
「私、先祖返りの吸血鬼……すごい力持ってる……だから国の皆のために頑張った。でも……ある日……家臣の皆……お前はもう必要ないって……おじ様……これからは自分が王だって……私……それでもよかった……でも、私、すごい力あるから危険だって……殺せないから……封印するって……それで、ここに……」
「きみは・・・王族?」
「……(コクコク)」
「殺せないとは?」
「……勝手に治る。怪我しても直ぐ治る。首落とされてもその内に治る」
「……そ、そいつは凄まじいな。……すごい力ってそれか?」
「これもだけど……魔力、直接操れる……陣もいらない」
少女の会話を聞いたハジメが彩人に耳打ちする。
「吸血鬼族ははるか昔に滅んだって本にあったけど・・・彩人君は信じる?」
「・・・悪意を感じない。恐らく本当だ」
「だったら・・・助ける?」
「そのつもりだが、いいのか?」
「うん、私は彩人君の意見に従うよ」
「悪いな・・・すまん」
「いいよ。(それに、あの子から〝同志〟の気配を感じた。あの子も〝同盟〟に入れちゃえば彩人君を修羅場で困らせない・・・♪泥棒猫だったら排除するけどね)」
「・・・・・」
ハジメの闇に戦慄しながらも彩人は右手で少女を拘束する立方体に触れる。
「待ってな、今解放する」
「・・・まりょく、かんじない。・・・できる、の?」
「大丈夫、彩人君は特別だからね」
「彩人君・・・?」
「あ、悪い。彩人は俺の名前だ。」
「さい、と・・・」
「いくぜ・・・はあっ!!」
彩人は気力を開放し少女を抑える立方体を構築する魔力を打ち消していく。
「あ・・・このちから・・・さっき・・・」
「・・・ここまで届いたのか・・・・・」
無論魔力の抵抗もあるがそれも破壊していく。
「この程度のパワーで・・・俺を超えることはできぬう!!」
全ての魔力を破り、立方体が消滅し少女は解放された。
自身が解放されたのに一瞬気づかず目をパチクリしていたが少女はおずおずと彩人に向き直ると
「ありが、とう・・・彩、人・・・」
再びか細い声でそう言った。
「・・・早速悪いがハジメ、この子を頼む」
「あ・・・彩人・・・彩人」
彩人は少女をハジメに預けると離れるように指示。
「彩人君、どうし・・・!?」
ハジメがその存在に気がついたのと、ソレが天井より降ってきたのはほぼ同時だった。
彩人の目の前に落ちてきたのは体長五メートル程、四本の長い腕に巨大なハサミを持ち、八本の足をわしゃわしゃと動かしている。そして二本の尻尾の先端には鋭い針がついていた。
一番分かりやすいたとえをするならサソリだろう。二本の尻尾は毒持ちと考えた方が賢明だ。明らかに今までの魔物とは一線を画した強者の気配を感じる。自然とハジメの額に汗が流れた。
「彩人君!」
「・・・彩人・・・!」
二人は彩人が危ないと思ったが、サソリモドキが動き出そうとした瞬間。
「覚悟はいいな?・・・〝魔貫光殺砲〟!!!!!!」
右手の指先に気を集中させ放つ。螺旋状の気をまとった光線状の気がサソリモドキの体を貫通した。思わぬ一撃でサソリモドキはうごかなくなった。
「死体蹴りは基本」
念のため弱気弾で本当に死んだか確認。微動だにしない。
そんな彩人をハジメと少女は茫然とした表情で見ていた。
サソリモドキは無念の内に亡くなられた。