ありふれ世界のサイヤ人   作:M88星雲

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クラスメイト側の迷宮攻略です。




迷宮攻略 by クラスメイト 前編

彩人が吸血姫×2に追い掛け回されているころ。

 

天之河率いる勇者パーティーと、小悪党組、それに永山重吾という大柄な柔道部の男子生徒が率いる男女五人のパーティーだけが再び【オルクス大迷宮】にやって来ていた。

 

理由は単純、彩人とハジメの事でトラウマとなった生徒が続出したからである。

当然、聖教教会関係者はいい顔をしなかった。実戦を繰り返し、時が経てばまた戦えるだろうと、毎日のようにやんわり復帰を促してくる。例の約束についても彩人本人が居ないのをいいことに。

 

しかし、それに猛然と抗議した者がいた。愛子先生だ。

 

愛子は、当時、遠征には参加していなかった。作農師という特殊かつ激レアな天職のため、実戦訓練するよりも、教会側としては農地開拓の方に力を入れて欲しかったのである。愛子がいれば、糧食問題は解決してしまう可能性が限りなく高いからだ。

 

しかし彩人とハジメの死亡が知らされ生徒を無事に帰せなかった事にショックを受けた。彼女は寝込むほどだったが戦えないという生徒をこれ以上戦場に送り出すことなど断じて許せなかった。

 

愛子の天職は、この世界の食料関係を一変させる可能性がある激レアである。その愛子先生が、不退転の意志で生徒達への戦闘訓練の強制に抗議しているのだ。関係の悪化を避けたい教会側は、愛子の抗議を受け入れた。

 

その結果上記のメンツが迷宮攻略に挑むこととなった。当然メルド団長率いる騎士団も一緒だ。

そして迷宮攻略6日目。

 

なのだが天之河たちは立ち往生していた。あの時のような断崖絶壁にトラウマを刺激されているからだ。

香織も底の見えぬ谷を見つめていた。

 

「香織・・・」

 

「大丈夫よ、雫ちゃん」

 

「そう・・・?でも無理はしないで頂戴」

 

「えへへ、ありがとう、雫ちゃん」

 

信頼しあえるからこその会話だが・・・二人の頭の中にあるのはたった一人の人物だけである。

そんな二人に水を差す者。ご存じ勇者天之河(笑)である。

 

「香織……君の優しいところ俺は好きだ。でも、クラスメイトの死に、何時までも囚われていちゃいけない! 前へ進むんだ。きっと、南雲と轟もそれを望んでる」

 

「・・・ねえ、光輝今なんて」

 

「雫は黙っていてくれ! 例え厳しくても、幼馴染である俺が言わないといけないんだ。……香織、大丈夫だ。俺が傍にいる。俺は死んだりしない。もう誰も死なせはしない。香織を悲しませたりしないと約束するよ」

 

殺気を込めた雫に気づかずに香織に的外れの言葉をかける勇者(笑)。・・・香織が闇のオーラを出して杖を握りつぶさんとしているのにも気づいておらず純粋すぎるがゆえに・・・と言ったところか。

 

「どうして二人が死んだようにいうのかな?かな?」

 

「諦めなさい、香織。こいつにはもう何を言ってもかわらないわ・・・」

 

この二人の天之河に対する好感度は地を這っている。雫は厄介ごとを悪化させられ、香織は思い人に難癖つけられる事から最早最低限度の付き合い程度の感覚である。

 

「香織ちゃん、私、応援しているから、出来ることがあったら言ってね」

 

「そうだよ~、鈴は何時でもカオリンの味方だからね!」

 

光輝との会話を傍で聞いていて、会話に参加したのは中村恵里と谷口鈴だ。

 

「うん、恵里ちゃん、鈴ちゃん、ありがとう」

 

高校で出来た親友二人に、嬉しげに微笑む香織。

 

「うぅ~、カオリンは健気だねぇ~、彩人のやつ~! 鈴のカオリンをこんなに悲しませて! 生きてなかったら鈴が殺っちゃうんだからね!」

 

「す、鈴? 生きてなかったら、その、こ、殺せないと思うよ?」

 

「細かいことはいいの! そうだ、死んでたらエリリンの降霊術でカオリンに侍せちゃえばいいんだよ!」

 

「す、鈴、デリカシーないよ! 香織ちゃんは、轟君は生きてるって信じてるんだから! それに、私、降霊術は……」

 

 鈴が暴走し恵里が諌める。それがデフォなのだが・・・

 

「ありがとう二人とも。もう少しで殴り掛かるところだったよ・・・」

 

「ううん、カオリンは悪くないよ。彩人とハジメちゃんを居ないもの扱いしたアレ(・・)が悪いもん」

 

あんなの(・・・・)でも一応勇者だからね・・・彼と再会するまでは我慢しよう」

 

この二人に関しても天之河に対する評価は散々である。とくに恵里は原作と真逆に天之河を嫌っている。自身を本当に救ってくれた彩人に対し天之河は原作同様に他の女子に仲良くするように言っただけ。鈴とは彩人の紹介で親友になったのだが天之河はあたかも自身の行動が解決したと思い込んでしまい、恵里は天之河を見限っている。その反動が彩人への好意の重さに繋がっているのだが・・・天之河は何よりも彼女達を失望させた行いがあった。

 

そんな女子四人の姿を、正確には香織を、後方から暗い瞳で見つめる者がいた。

 

檜山大介である。あの日、王都に戻ってしばらく経ち、生徒達にも落ち着きが戻ってきた頃、案の定、清水と辻の証言と目撃者の恵里によって檜山が起こした事が明らかになった。案の定、あの窮地を招いた檜山には厳しい批難が待っていたが察していた檜山はただひたすら土下座で謝罪するに徹した。こういう時、反論することが下策以外のなにものでもないと知っていたからだ。特に、謝罪するタイミングと場所は重要だ。

 

檜山の狙いは光輝の目の前での土下座である。光輝なら確実に謝罪する自分を許しクラスメイトを執り成してくれると予想していたのである。

恵里達からの殺気に怯えつつ土下座を続けた結果、

 

「檜山は反省しているようだし、俺は許そうと思う。仲間が死んだのはつらいがここで立ち止まるわけにはいかないんだ!」

 

という天之河の一言で有耶無耶にされた。香織も元来の優しさから、涙ながらに謝罪する檜山を特段責めるようなことはしなかった。檜山の計算通りである。・・・と檜山は安心していたが香織達ヒロインズはすでにその事を知っているとは思いもしなかっただろう。

天之河もこの行動が彼女達を失望させた行いであるとは知る余地もない。

 

「おい、大介? どうかしたのか?」

 

檜山のおかしな様子に、近藤や中野、斎藤が怪訝そうな表情をしている。この三人は今でも檜山とつるんでいる。元々、類は友を呼ぶと言うように似た者同士の四人。一時期はギクシャクしたものの、檜山の殊勝な態度に友情(笑)を取り戻していた。

 

「い、いや、何でもない。もう六十層を越えたんだと思うと嬉しくてな」

 

「あ~、確かにな。あと五層で歴代最高だもんな~」

 

「俺等、相当強くなってるよな。全く、居残り組は根性なさすぎだろ」

 

「まぁ、そう言うなって。俺らみたいな方が特別なんだからよ」

 

檜山の誤魔化しに、特に何の疑問も抱かず同調する三人。

戦い続ける自分達を特別と思って調子づいているのは小悪党が小悪党たる所以だろう。王宮でも居残り組に対して実に態度がでかい。横柄な態度に苦情が出ているくらいだ。しかし、六十層を突破できるだけの確かな実力があるので、強く文句を言えないところである。

もっとも、勇者パーティーには及ばないので、彼らも光輝達の傍では実に大人しい。小物らしい行動原理である。

 

表面上は問題なく一行は65層に到達する。

 

「気を引き締めろ! ここのマップは不完全だ。何が起こるかわからんからな!」

 

付き添いのメルド団長の声が響く。光輝達は表情を引き締め未知の領域に足を踏み入れた。見たことのある光景に一同が警戒する中、見覚えのある魔方陣が出現する。そしてでてくるのは・・・・もちろんベヒモスです。

 

「ま、まさか……アイツなのか!?」

 

「マジかよ、アイツは死んだんじゃなかったのかよ!」

 

天之河と龍太郎が驚愕をあらわにして叫ぶ。それに応えたのは、険しい表情をしながらも冷静な声音のメルド団長だ。

 

「迷宮の魔物の発生原因は解明されていない。一度倒した魔物と何度も遭遇することも普通にある。気を引き締めろ! 退路の確保を忘れるな!」

 

いざと言う時、確実に逃げられるように、まず退路の確保を優先する指示を出すメルド団長。それに部下が即座に従う。だが、光輝がそれに不満そうに言葉を返した。

 

「メルドさん。俺達はもうあの時の俺達じゃありません。何倍も強くなったんだ! もう負けはしない! 必ず勝ってみせます!」

 

「へっ、その通りだぜ。何時までも負けっぱなしは性に合わねぇ。ここらでリベンジマッチだ!」

 

やけに自信満々な二人にメルド団長がやれやれと思いながらも今の皆なら大丈夫だろうとそれ以上は言わなかった。

 

「グゥガァアアア!!!」

 

咆哮を上げ、地を踏み鳴らす異形。ベヒモスが光輝達を壮絶な殺意を宿らせた眼光で睨む。

全員に緊張が走る中、そんなものとは無縁の決然とした表情で真っ直ぐ睨み返す四人の乙女達。

 

香織、雫、鈴、恵里である。

 

香織に続いて四人の声が重なる。

 

「もう誰も奪わせない。あなたを踏み越えて、「「「私達は彼らのもとへ行く」」」」




ヤンヤンヒロインズは全員原作以上に高い技術を持ってます。
これも愛ゆえに・・・(白目)
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