「くそったれぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「彩人君がんばれ~」
「彩人…ファイト」
「てめぇらは気楽でいいよなぁぁぁぁぁぁ!(#^ω^)」
現在彩人はハジメをお姫様抱っこしユエをおんぶしながら舞空術で飛び回っていた。下には160cm以上はある雑草が生い茂っている。
「「「「「「「「「「「「シャァアア!!」」」」」」」」」」」」
その後ろを二百匹以上の魔物が追い駆けてくるが彩人のスピードは桁違いで魔物はどんどん引き離されていく。
「あぁクソっ、キリがねえ!」
そもそも、この階層につくまでは非常にスムーズだった。ハジメの銃とユエの反則級の魔法のおかげである。・・・魔物倒す度に褒めてオーラを出す二人は可愛らしくある意味心のオアシスとなっていた。褒める度に二人はやる気を出して無駄に張り切ってしまうのがたまにキズだが・・・・
そんな三人が降り立ったのが現在の階層だ。まず見えたのは樹海だった。十メートルを超える木々が鬱蒼と茂っており、空気はどこか湿っぽい。しかし、以前通った熱帯林の階層と違ってそれほど暑くはないのが救いだろう。
そこにいたのはお花を生やしたティラノサウルスらしき魔物だったがユエが瞬殺する。次いで現れたチューリップの花をつけた体長二メートル強の爬虫類、例えるならラプトル系の恐竜のような魔物を今度はハジメが撃ち落とす。・・・あえて花だけを。
「お花が流行ってるのかな」
「…魔物だけど、可愛い」
「・・・・そうでもなさそうだぞ」
ラプトルは八ツとしたあと、辺りを見回したのちハジメが打ち抜いた花を親の仇を見るような形相で踏みつけていた。
「え~、何その反応、どういうこと?」
「……イタズラされた?」
「いや、そんな生易しいモノじゃないだろ、めっちゃキレてんぞ」
ラプトルは一通り踏みつけて満足したのか、如何にも「ふぅ~、いい仕事したぜ!」と言わんばかりに天を仰ぎ「キュルルル~!」と鳴き声を上げた。そして、ふと気がついたようにハジメ達の方へ顔を向けビクッとする。
「今気づいたんだ…」
「……やっぱりイジメ?」
「危機感なさすぎるだろ!」
彩人の気弾でラプトルの頭部が爆散する。
「・・・何なんだろ、これ」
「……イジメられて、撃たれて……哀れ」
「いや、イジメから離れろよ。絶対違うから」
そしてこの後の展開も知っている。・・・てか大量の魔物の気。
そのまま進んでいくと直径五メートルはありそうな太い樹が無数に伸びている場所に出るがやはり大量のラプトルが襲い掛かってきた。花をつけて。
「ホントに・・流行りなんじゃ・・・」
「…お花畑」
「そんなわきゃないだろー!」
ハジメが〝焼夷手榴弾〟を投げ落として低空飛行するラプトルを撃墜し高所は彩人が気弾で吹き飛ばす。
「・・・?いくら何でも弱すぎない?」
「…!」
違和感に気づいたハジメとユエ。二人に正解を言おうとしたが再び魔物の気を感じる。
「・・・まだ来るぞ。しかも全方向を囲むようにして」
「…逃げる?」
「いや・・・こうなったら一番高い樹の天辺から殲滅するのが手っ取り早いだろ。行くぞ、二人とも」
三人は素早く大樹に上りわらわらと集まってくる魔物が登れないように枝を切り、地上をティラノが大樹を破壊せんと体当たりし、爪を用いて上るラプトル。
気弾と銃弾で登ろうとしてくる魔物を殲滅し集まってきた魔物が全て完全に大樹を包囲した瞬間、
「ユエ、いけるか!」
「まかせて…〝凍獄〟!」
一瞬にして大樹を中心に氷の平原と化す。氷に閉ざされた魔物は白目を向いて絶命する。
「ホント、凄いな・・・お疲れ様、ユエ」
「…♪」
彩人の称賛にご機嫌になるユエ。
しかしまだ終わりでは無い。
「・・・二人とも、さらに倍の数が来てるよ」
「・・・だろうな。魔物の気を鬱陶しい位感じるぜ」
「たった今全滅させたのにさ、そろいもそろって同じ行動・・・これって」
「…寄生?」
「その可能性が高いね」
「だとすれば本体を叩くまで終わらないな」
「そうだね」
「それじゃ、早速本体を探すか・・・・ってどうして背中によじ登るんですかね、ユエさんや」
「・・・おんぶ」
「子供か!・・・「魔力使いすぎた、補給」もう勝手にしやがれ!!」
半ばヤケクソでユエをおんぶする。
「ハジメはいけるよn・・・何、その顔「だっこ」おめぇもかよぉぉぉぉぉぉぉ!!」
やけになってハジメをお姫様だっこし本体の気を探りながら舞空術で飛び回っている。後ろからだけでなく前からも来るがハジメが全て撃ち落とす。
カプッ、チュー
彩人が気を探ると樹海を抜けた先、今通っている草むらの向こう側にみえる迷宮の壁、その中央付近にある縦割れの洞窟らしき場所に強い気をかんじた。原作同様に魔物をそこに近づけないようにしていたので間違いない。
カプッ、チュー
「なあ、もう回復したろ?あんま吸われると貧血で気が乱れるんだが」
「……不可抗力」
「嘘つくな。気で分かるぞ」
「……ヤツの花が……私にも……くっ」
「わざとらしすぎて草も生えない」
「・・・今回のお味は?」
「とても美味。汗の塩加減が丁度いい刺激となってまったりしつつもコクのある味に」
「だから食レポすんな!!」
「・・・(じゅるり」
「ハジメ・・・その目はなんだ」
再びユエが吸血し消毒も兼ねて残りをハジメが舐めとることになった。ストレスマッハになりつつも洞窟に飛び込みラプトルに八つ当たりしたのちにハジメの錬成で穴を塞ぐ。
「さっさと降りロットォォォ!」
「「・・・・・」」
「そんな顔してもダーメだ!降りろ!」
二人はホントに渋々といった形で降りる。錬成で入口を塞いだため薄暗い中を進む。十分に警戒しながら広間の中央に着いた瞬間、全方位から緑色のピンポン玉のようなものが無数に飛んできたのだ。三人背中合わせで迎撃し、気で破片・・・もとい胞子を吹き飛ばした。・・・が、
「二人とも…逃げて」
やはりユエだけが寄生されてしまった。原作同様だがよく見ると入口付近からすでに胞子が舞っており遅かれ早かれ耐性を持たないユエは寄生される運命にあった。
「ユエちゃん!」
「・・・クソっ」
ハジメに向かってユエが風の刃を飛ばす。なんとかハジメは回避する。
ハジメがユエの頭に咲いたおあつらえ向きと思うほどよく似合う真っ赤なバラにドンナーを向ける。しかしユエの手が花を庇うような動きをしたのだ。
彩人とハジメが動きを止めた途端にユエの背後に現れたのはもちろんエセアルラウネ。醜悪な顔をニヤニヤさせながら『この子がどうなってもいいのか?』と言わんばかりにユエに絡みつく。
「彩人…ハジメ…ごめんなさい」
申し訳なさげなユエと対照的にヘラヘラ笑いながら彩人とハジメに胞子を飛ばすが効かない。それが面白くないエセアルラウネは不機嫌な顔になりユエを操って先ほどの風の刃を飛ばす。かわそうとすると『避けるな』とユエが自分の頭に魔法を打つ仕草をするので彩人は気合、ハジメは〝金剛〟で持ちこたえる。
「ハジメ、大丈夫か」
「うん、私は平気。どうやら上級魔法は使えないみたいだね」
「だろうな。ハジメの銃や俺の気を警戒してるのに簡単な魔法しか使ってない」
二人が策を練っていると、
「彩人…! ……私はいいから……撃って!」
急にユエが叫んだ。彩人の足手まといになるどころか、攻撃してしまうぐらいなら自分ごと撃って欲しい、そんな意志を込めた紅い瞳が真っ直ぐ彩人を見つめる。
「・・・あきらめてんじゃねぇ!すぐにその花をふっとばしてやっからおとなしく待ってろ!」
「彩人……」
彩人は思わず叫んでいた。心なしかユエの瞳に希望が灯る。
「・・・仕方ない、俺があのエセアルラウネをユエから引き離すからハジメ、頼んだ」
「・・・(ポー)」
「ハジメ?」
「え、あ、うん!いけるよ!(ちょっとドキドキしちゃった)」
「よし、覚悟しやがれ!」
一瞬あっけにとられたエセアルラウネだがすぐにユエを操って人質にする。が、目の前に居たはずの彩人が突然姿を消した。
エセアルラウネが彩人を探してあちこち見回したその時、
「吹っ飛べ!!」
いつの間にか真横に居た彩人の回し蹴りを喰らいユエから引き離される。エセアルラウネは彩人を睨みつけるが後頭部に何かが押し付けられる。
「そんな顔されてもこまるなぁ」
ハジメのドンナーが火を吹き、エセアルラウネは汚い断末魔と共に消滅し、ユエのバラも朽ちて消えた。
「・・・ユエ、大丈夫「…彩人!」おわっ」
「彩人、かっこよかった。私を助けるって言ってくれて嬉しかった。…彩人、大好き」
ユエが満面の笑みで抱き着いてくる。・・・外見は子供とはいえ傍から見ればバスタオル一枚状態なのだ。
一方ハジメは。
「いい感じ…もっと彩人君に依存してもらわなきゃ・・・♪」
・・・とニヤニヤしながら言っていた。
その言葉も聞こえてしまった彩人は難聴系主人公をうらやみながらやけにご機嫌な美少女二人と腕組みしながら下層へ下っていくのだった。
最初からそうしろって言われるかもしれませんが、ハジメの計画通りという訳だァ・・・