エセアルラウネを銃殺し、彩人達は奴が待ち構えている100層の直前に来ていた。
そこでハジメは装備点検、確認、補充を行なっているのをユエが興味津々で見ている。
原作よりはサクサク来ている・・・はずだがそれでもハジメと落ちて、ユエと出会ってそれなりの時間が経っている。
ユエとハジメは傍から見れば姉妹のように仲良しなのだがそれ以上にユエは彩人に懐いており食事や就寝時はとくにべったりでありハジメはそれをほほえましそうに見ているが時々『計画通り』という顔になるのは勘弁してほしい。
「ハジメ……いつもより慎重……」
「うん? ああ、次で百階だからね。もしかしたら何かあるかもしれないと思ったんだ。一般に認識されている上の迷宮も百階だと言われていたから……まぁ念のため、って所かな」
彩人とハジメは出来ることはすべてやった。そして現在の二人は、
ーーーーーーーーーーーーーーー
南雲ハジメ 17歳 女 レベル:70
天職:錬成師
筋力:3000
体力:3400
耐性:3900
敏捷:4100
魔力:5000
魔耐:5000
技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+鉱物系探査][+鉱物分離][+鉱物融合][+複製錬成]・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作]・胃酸強化・纏雷・天歩[+空力][+縮地][+豪脚]・風爪・夜目・遠見・気配感知・魔力感知・熱源感知・気配遮断・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・金剛・威圧・念話・言語理解
ーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーー
轟彩人 17歳 男 レベル:37
天職:武闘戦士
(気力開放時)
筋力:8000(16000)
体力:7500(15000)
耐性:6900(13800)
敏捷:10000(20000)
魔力:0
魔耐:0
技能:言語理解・胃酸強化・石化耐性・夜目・遠見・毒耐性・麻痺耐性
ーーーーーーーーーーーーーーー
もうこの時点でだいぶ原作崩壊なんだが、結局彩人には魔力がなく「彩人…かわいそう」とユエに同情されるほどだった。
それはともかく準備を終えた三人がその層へ足を踏み入れる。
その階層は、無数の強大な柱に支えられた広大な空間だった。柱の一本一本が直径五メートルはあり、一つ一つに螺旋模様と木の蔓が巻きついたような彫刻が彫られている。柱の並びは規則正しく一定間隔で並んでいる。天井までは三十メートルはありそうだ。地面も荒れたところはなく平らで綺麗なものである。どこか荘厳さを感じさせる空間だった。
三人が装飾に目をうばわれつつも先に進むと柱に光が宿り、三人を導くように次々に点灯していく。その灯りに誘われるままに周りを探知しながら進んでいくと全長十メートルはある巨大な両開きの扉が有り、これまた美しい彫刻が彫られている。特に、七角形の頂点に描かれた何らかの文様が印象的だった。
「これは・・・もしかして」
「……反逆者の住処?」
「その可能性が濃厚だろうな。嫌な気が迫ってきてる」
彩人の一言に答えるように扉の前に見覚えのある魔方陣。奈落行きの時と同じような紋様だがサイズはあの時の三倍あり禍々しい雰囲気を醸し出していた。
「想像以上の大きさだね・・・」
「……大丈夫……私達、負けない……」
「そうだな、コイツを倒さないと先には進めないようだしな」
魔法陣はより一層輝くと遂に弾けるように光を放った。咄嗟に腕をかざし目を潰されないようにするハジメとユエ。光が収まった時、そこに現れたのは……
体長三十メートル、六つの頭と長い首、鋭い牙と赤黒い眼の化け物。例えるなら、神話の怪物ヒュドラだった。
「「「「「「クルゥァァアアン!!」」」」」」
不思議な音色の絶叫をあげながら六対の眼光がハジメ達を射貫く。身の程知らずな侵入者に裁きを与えようというのか、常人ならそれだけで心臓を止めてしまうかもしれない壮絶な殺気が彩人達に叩きつけられた。
「おでましか・・・行くぞ!」
「うん、行こう!」
「…勝つ!」
三人が奮起した途端、赤い紋章の首が火炎放射で攻撃してくる。
すぐさま飛散しハジメが赤首を打ち抜く。・・・しかし白頭のブレスの白い光が包むと時間が逆戻りしたように再生した。
次いでユエと彩人が緑、青を攻撃するも白頭に回復される。
『まずはあの白を狙おう、キリがないや』
『…分かった』
『了解』
ハジメが念話で二人に伝える。彩人は念話を使えないがテレパシーで念話の波長を掴んでいるのだ。青が完全に回復する寸前にユエとハジメが白を狙う。が、黄頭がサッと射線に入りその頭を一瞬で肥大化させた。そして淡く黄色に輝きハジメのレールガンもユエの〝緋槍〟も受け止めてしまった。衝撃と爆炎の後には無傷の黄頭が平然とそこにいてハジメ達を睥睨している。
「バランスがいいな・・・だが、これならどうだ!」
すかさず彩人がエネルギー波で黄頭のガードを貫通する。が、ハジメとユエが白頭を攻撃する前に赤、青の炎と氷に阻まれ白頭に黄頭を回復される。
「む…」
『ならば減らすだけ!ユエ、ハジメ、少し離れろ!』
テレパシーで二人に伝え、再び気を溜める。黄色が再びガードし、赤、青は再びユエとハジメを狙い白が準備している。
「いけっ・・・!」
彩人の気功波が放たれる。黄色がしっかりガードするためにどっしりと構えた瞬間。
「〝拡散〟!!」
気功波が黄色に衝突する寸前に多数に分裂しヒュドラを襲う。油断していた赤と青を倒すがすぐに黄色が白と緑と黒を庇う。それでも雨あられと降り注ぐ気功波を防ぎきれず黄色を穴ぼこにし残りにそれぞれダメージを与える。
ここだ、とハジメとユエが白を狙うが
「いやぁああああ!!!」
「!? ユエちゃん!きゃあ!」
「ユエ!ハジメ!」
突然ユエの絶叫が聞こえ、それに気を取られたハジメが緑の攻撃を受ける。ハジメはなんとかダメージを抑えたがユエはうずくまったまま動かない。そして彩人は黒の能力を思い出した。
「彩人君!私は大丈夫だからユエちゃんを!」
「・・・っ、すまねえ!」
彩人は瞬間移動でユエのそばへ行く。
回復した頭たちがユエを狙っていたが彩人の気弾で吹き飛ばされる。
映ろな瞳のユエを見て歯噛みする彩人。黒はトラウマを引き起こすので、ユエは見捨てられる光景でも見せられたのだろう。「一人はいや…!おいてかないで…!」と言い続けている。
「ユエ!しっかりしろ!お前は一人じゃない!」
「…!、さ、彩人…?」
「そうだ。俺はここにいる」
「私…」
正気には戻ったが何処か不安げなユエ。そこで彩人は自身の気を与えた。
「あ…」
「俺の気だが…まだ不安か?」
絶えず襲ってくる頭を吹き飛ばしながら彩人はユエを励ます。
「彩人を感じる…これなら…怖くない。彩人が…傍に居るって分かる…!」
「・・・そうか。アイツを倒して、こんなところはオサラバだ。皆一緒にな」
「…うん!」
ユエは表情が明るくなり、ヒュドラへ攻撃を仕掛ける。
「〝緋槍〟! 〝砲皇〟! 〝凍雨〟!」
次々に魔法が放たれる。炎の槍と螺旋に渦巻く真空刃を伴った竜巻と鋭い針のような氷の雨が一斉にヒュドラを襲う。攻撃直後の隙を狙われ死に体の赤頭、青頭、緑頭の前に黄頭が出て咆哮する。
「クルゥアン!」
すると近くの柱が波打ち、変形して即席の盾となった。彩人とハジメを警戒し時間稼ぎをしようというのだ。
「無駄無駄無駄無駄ァ!」
即席の盾など紙同然と言わんばかりに彩人の気弾が破壊する。防いだと思ったのかヒュドラは動かず赤、青、緑の頭を吹き飛ばす。
すると黒がユエに再び例のオーラを放つ。・・・が。
「…もう効かない!」
ユエは体の中から感じる彩人の気を感じながら恐怖をはねのける。
効かないと分かったため今度は彩人とハジメのトラウマを引き起こす。彩人は爪熊に切られた時、ハジメは彩人の死を・・・
「それがなんだ!」
「よくも私にそんなものを見せてくれたな・・・ぶっ潰す!!」
彩人には通じずハジメに至っては怒りでパワーアップしている。彩人が気功波で黒を消し炭にしハジメが背中に背負っていた対物ライフル:シュラーゲンを取り出し空中で脇に挟んで照準する。白を庇うように黄色が立ちはだかるがそんな事はお見通し。
「まとめて吹っ飛べぇぇぇぇぇぇ!!」
ハジメが〝纏雷〟を使いシュラーゲンが紅いスパークを起こす。弾丸はタウル鉱石をサソリモドキの外殻であるシュタル鉱石でコーティングした地球で言うところのフルメタルジャケットだ。シュタル鉱石は魔力との親和性が高く〝纏雷〟にもよく馴染む。通常弾の数倍の量を圧縮して詰められた燃焼粉が撃鉄の起こす火花に引火して大爆発を起こした。
ドガンッ!!
大砲でも撃ったかのような凄まじい炸裂音と共にフルメタルジャケットの赤い弾丸が、更に約一・五メートルのバレルにより電磁加速を加えられる。その威力はドンナーの最大威力の更に十倍。単純計算で通常の対物ライフルの百倍の破壊力である。異世界の特殊な鉱石と固有魔法がなければ到底実現し得なかった怪物兵器だ。彩人のエネルギー波を上回る威力のレーザーは黄色もろとも白をぶち抜いた。
白によって復活しかけていた赤、青、緑もハジメのドンナー、彩人の気弾、ユエの〝天灼〟で倒された。ヒュドラは動きをとめたが、あらたに銀色の頭が出現する。銀の口から極太のレーザーが三人に向けて放たれる!
「ユエ!ハジメ!」
彩人が全気力を開放して迎え撃つ。
凄まじい閃光の後、ユエとハジメは無事だったが二人の視界に入ったのは
ボロボロで満身創痍の彩人だった。
次回、彩人…覚醒。ぜってえ見てくれよな!