ありふれ世界のサイヤ人   作:M88星雲

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後悔なんてしない。


帝国の使者 byクラスメイト 後編

三日後、現れた帝国の使者たち。

 

迷宮攻略組と国の重臣達、イシュタル達司祭が謁見の間に集結し帝国の使者と5人の部下がエリヒド陛下に挨拶を済ませると早速勇者について聞いてきた。

 

名指しで呼ばれた天之河が陛下に促され前に出る。・・・一応顔は整っているし下心なしの言動と勇者の肩書で天之河はこの世界でも人気だった。

鈍感なのは相変わらずだったが。

次いで攻略組の紹介が行われたのち、

 

「フム・・・勇者の割にはずいぶんお若い。本当に65層を踏破したのかね・・・?」

 

使者が訝しげな表情で天之河を値踏みするかのようにジロジロ見てくる。流石の天之河も表情が引きつる。しかし何とかこらえて返答する。

 

「えっと、ではお話しましょうか?「いえ、お話は結構」 どのように倒し・・・え?」

 

光輝は信じてもらおうと色々提案しようとするが使者はあっさり首を振りニヤッと不敵な笑みを浮かべた。

 

「それよりも手っ取り早い方法があります。私の護衛一人と模擬戦でもしてもらえませんか? それで、勇者殿の実力も一目瞭然でしょう」

 

「えっと、俺は構いませんが……」

 

天之河の了承を聞いたエリヒド陛下がイシュタルに目配せをする。イシュタルはうなづくとエリヒド陛下は許可した。力を示すほうが帝国も納得するからだ。

 

こうして急遽、勇者対帝国使者の護衛という模擬戦の開催が決定したのだが・・・

 

「ガハっ・・・」

 

「はぁ~、おいおい、勇者ってのはこんなもんか? まるでなっちゃいねぇ。やる気あんのか?」

 

たかが模擬戦と侮った天之河が苦戦している。相手の兵士はよく見る普通の兵士だが遠慮も情けもなく天之河に襲い掛かる。

 

「すみませんでした。もう一度、お願いします」

 

「戦場じゃあ〝次〟なんてないんだがな」

 

本気になった天之河に「遅い」と言いたげな兵士だったが天之河の動きが変わり、互角以上の戦いとなる。

 

「ふん、確かに並の人間じゃ相手にならん程の身体能力だ。しかし、少々素直すぎる。元々、戦いとは無縁か?」

 

「えっ? えっと、はい、そうです。俺は元々ただの学生ですから」

 

「……それが今や〝神の使徒〟か」

 

その言葉をニヤニヤしながら言う兵士。教会の関係者たちは不機嫌になる。

 

「おい、勇者。構えろ。今度はこちらから行くぞ。気を抜くなよ? うっかり殺してしまうかもしれんからな」

 

「なっ・・・っ!?」

 

今度は魔法を使用してきた。再び劣勢になるがすぐに持ち直す。が、自身を本気で殺そうとする兵士の振る舞いに天之河は恐怖を感じた。

 

「まさか適当に戦って、はい終わりっとでもなると思ったか? この程度で死ぬならそれまでだったってことだろ。お前は、俺達人間の上に立って率いるんだぞ? その自覚があんのかよ?」

 

「自覚って……俺はもちろん人々を救って……」

 

「傷つけることも、傷つくことも恐れているガキに何ができる? 剣に殺気一つ込められない奴がご大層なこと言ってんじゃねぇよ」

 

兵士が天之河に攻撃しようとしたがイシュタルがそれを阻んだ。

 

「それくらいにしましょうか。これ以上は、模擬戦ではなく殺し合いになってしまいますのでな。……ガハルド殿もお戯れが過ぎますぞ?」

 

「……チッ、バレていたか。相変わらず食えない爺さんだ」

 

もちろんヘルシャー帝国皇帝ガハルド・D・ヘルシャーその人である。四十代位の野性味溢れる男だ。短く切り上げた銀髪に狼を連想させる鋭い碧眼、スマートでありながらその体は極限まで引き絞られたかのように筋肉がミッシリと詰まっているのが服越しでもわかる。魔道具であるイヤリングで変装していたのだ。

 

なし崩しで模擬戦も終わってしまい、その後に予定されていた晩餐で帝国からも勇者を認めるとの言質をとることができ、一応、今回の訪問の目的は達成されたようだ。あまりにもサクサク話が進むので天之河だけでなく周りの人々も置いてけぼりであった。しかしこの皇帝サマはフットワークの軽さに定評がありこのような事は日常茶飯事だ。

それはさておき皇帝の勇者の評価は・・・

 

「ありゃ、ダメだな。ただの子供だ。理想とか正義とかそういう類のものを何の疑いもなく信じている口だ。なまじ実力とカリスマがあるからタチが悪い。自分の理想で周りを殺すタイプだな。〝神の使徒〟である以上蔑ろにはできねぇ。取り敢えず合わせて上手くやるしかねぇだろう」

 

「それで、あわよくば試合で殺すつもりだったのですか?」

 

「あぁ? 違ぇよ。少しは腑抜けた精神を叩き治せるかと思っただけだ。あのままやっても教皇が邪魔して絶対殺れなかっただろうよ」

 

不合格のようです。

早朝、ガハルドが早期練習をしている雫を見かけた。ガハルドは雫を気に入り、彼女に声をかけた。

 

「そこのお前、確か八重樫といったか?」

 

「はい、八重樫は私ですが」

 

「どうだ、俺のつm「お断りします」・・・まだ言ってねえだろうが」

 

話を折られて若干焦る皇帝。雫はわずかなほほえみを浮かべている。

 

「『妻にならないか?』とでも言うおつもりでしょう、皇帝様ともなれば正室や側室もいらっしゃるのでは?」

 

「それはそうだが、俺はお前が気に入った。だから俺の「謹んでお断りいたします」・・・なかなか言うじゃねえか・・・」

 

「それに私には心に決めた方が居ますので」

 

どこかうっとりした表情の雫を見て少し気分が悪くなる皇帝。

 

「はっ、そいつはあの勇者よりも強えのか?」

 

「はい。世界で一番強いです」

 

「ほお・・・断言するとはますます気に入った。今は勘弁してやる。そいつにも会ってみてえしな」

 

皇帝は思った。自分が狙った女にこれだけ言わせた男の実力を見たいと。後にそいつと愉快な仲間たちに黒歴史レベルの大敗を味あわされるとは微塵も思っていない。

ガハルドは去っていったがその後すれ違った天之河を見て鼻で笑ったとか。




雫はヤンヤン度低めですが、彩人以外の異性は眼中にありません。
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