ありふれ世界のサイヤ人   作:M88星雲

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ちょっと長めです。


シアの決意とフェアベルゲン

七大迷宮の一つにして、深部に亜人族の国フェアベルゲンを抱える【ハルツィナ樹海】を前方に見据えて、ハジメが魔力駆動二輪で牽引する大型馬車二台と数十頭の馬が早いペースで平原を進んでいた。

 

相変わらずサイドカーで暴れるシアにハジメがストレスを溜めているがそれ以上にユエに構うので二人は手足をふん縛って引きずってやる、と密かに決心していた。殺気立つ魔動二輪を見下ろす彩人にユエが念話で話しかけてくる。

 

『彩人、手伝わなくてよかった?』

 

『・・・帝国兵のことか?少し試したいことがあった。・・・精神的に』

 

『精神的?』

 

『・・・どのみち人間と戦わなければならないが、殺戮を楽しむ外道にはなりたくねえ。今の自分が戦闘民族の本能にどれだけ耐えられるかを試した』

 

『…大丈夫?』

 

『やっぱしいい気分じゃないな。でも後悔はしていない。大丈夫、俺は戦えるぜ』

 

『…ん』

 

ユエと彩人の会話を聞いていたハジメも上空の彩人に笑顔を向ける。

シアは聞いていなかったが目配せで繋がっている三人を見て疎外感を感じていた。そのためか

 

「あ、あの!良ければお三方の事を教えて下さい・・・!」

 

「・・・?もう話したよね?」

 

「いえ、奈落の底に居た理由とか・・・彩人さんの力とか・・・」

 

「聞いてどうするの?」

 

「た、ただ知りたいだけです・・・この体質で家族に迷惑をかけてしまいましたし・・・みんなは気にしてないって言うんですけど・・・やっぱり仲間外れみたいな・・・でも皆さんと会って仲間外れじゃないって気づけたんです・・・だから・・・その・・・・」

 

もじもじしながら言うシア。あの時は兎人族の探索を優先したので能力も説明しかしていない。疎外感を感じているシアにとって自分と同じ存在が居ることがどれだけ救いになっただろう。

それを察した三人はシアに事細かく話した。

 

「う”ぅ”~酷すぎまずぅ……三人共がわいぞうでずぅ…、それに比べて私はなんて恵まれて………」

 

原作よりかはマシだと思うのだがシアにとっては壮絶な話だったらしく「不幸面してた自分が情けないですぅ」と勝手に反省している。そしてシアが涙を拭い、宣言する。

 

「彩人さん、ハジメさん、ユエさん、私、決めました!私あなた方に「「「断る」」」まだいってませぇん!!」

 

その途中で拒否する。話を折られたのと一緒に行けないことに理由を求めてくる。

 

「どうしてですかぁ!私達は仲間じゃなかったんですかぁ?!」

 

「いつから仲間になったし。付いてきたい、とでも言うつもりだろうが俺達の旅はそんなに甘くないぞ」

 

「正直今のまま脆弱さじゃ完全にお荷物だよね・・・」

 

「…シアは自分の仲間が欲しいだけ」

 

「はうっ!」

 

ユエの言葉が図星だったらしい。

シアは家族を送り届けたら一人ででも旅立つつもりだったが同じ魔力を持つハジメ達に付いていけば家族も納得すると考えたのだ。

 

「・・・ハジメが言ったように今の君じゃ迷宮で無駄死にするのがオチだ。今まで君を守ってくれた家族へ恩を仇で返すつもりか?同行はさせられない」

 

「うう…」

 

彩人の言葉で黙ってしまうシア。その後もシアはサイドカーで静かに座りながら何かを考えていた。

しかし同情で命懸けの戦いに参加させる訳にはいかない。

・・・今のままでは、だが。

 

数時間の移動の果てに一行は【ハルツィナ樹海】と平原の境界に到着した。外観は樹海そのものだがいざ足を踏み入れると霧に包まれるとか。

 

「それでは、彩人殿、ハジメ殿、ユエ殿。中に入ったら決して我らから離れないで下さい。お二人を中心にして進みますが、万一はぐれると厄介ですからな。それと、行き先は森の深部、大樹の下で宜しいのですな?」

 

「宜しく頼む。迷宮と最も関係ある可能性があるからな」

 

カムが言った〝大樹〟とは、【ハルツィナ樹海】の最深部にある巨大な一本樹木で、亜人達には〝大樹ウーア・アルト〟と呼ばれ、神聖な場所とされている。峡谷脱出時にカムから聞いた話だ。

 

オチは知っているが樹海自体は迷宮ではなく大樹が迷宮となっている。迷宮を隠す為に樹海が存在している、と言うべきか。

 

「お三方、出来る限り気配を消していただけますかな、大樹は神聖な場所でありあまり近づく者はおりませんが他の亜人族と会わないとは限りませんので…」

 

「承知した」

 

カムの指示通りハジメとユエは〝気配遮断〟、彩人は気を限界まで下げる。セルがピッコロ達から逃亡した時の要領で。

 

「ッ!? これは、また……お二方、できればユエ殿くらいにしてもらえますかな?」

 

「えっと……これくらい?」

 

「これくらい、か」

 

「はい、結構です。さっきのレベルで気配を殺されては、我々でも見失いかねませんからな。いや、全く、流石ですな!………はぁ」

 

兎人族は戦闘能力は低いがその分隠密行動や索敵能力に優れている。ハジメと彩人がそれを凌駕したのでカムは若干顔がひきつっている。ハジメはともかく魔力を持たない彩人にショックを受けたのだ。

 

カムに案内されて樹海を進んでいくと兎人族が耳をピクッと動かし、歩みを止めた。魔物の気配を感じ取ったらしい。一応ハジメが作ったナイフを持っているとはいえ戦闘経験のない彼らにはそれでも心もとない。

 

するとハジメがおもむろに手を振るといつの間にか仕込んでいた小型ニードルガンから針が放たれ魔物達を倒す。

続けて魔物が襲ってくるがユエの〝風刃〟と彩人の手刀でその命を刈り取る。

 

またもやキラキラした瞳で彩人達を見つめる子供達と、とっさに動けなかった事に悔しがるシアが居たが特に反応しなかった。

その後もサクサク魔物を返り討ちにし、樹海の奥へと進んでいく…が、突然兎人族が立ち止まったかと思えば耳を真っ直ぐに立て苦々しい表情を浮かべた。シアに至っては顔が青ざめている。

 

「(…正面から多数の気、亜人達に見つかったか)」

 

彩人は気付いているがハジメとユエも感づいており、やれやれと言いたげな表情を浮かべている。

そして茂みから虎の亜人族が飛び出してきた。

 

「お前達……何故人間といる! 種族と族名を名乗れ!」

 

大柄で筋肉隆々とした複数の虎亜人達が殺気立った表情で槍や両刃剣を向けて威嚇してくる。

人間と亜人が一緒に居ること自体が不自然である以上、警戒するのも無理は無い。

 

「あ、あの…私達は…」

 

しどろもどろになりながらもカムが虎亜人に話しかける。しかしリーダーらしき虎亜人がカムを見た途端に更に怒りの形相で怒鳴り付けた。

 

「白い髪の兎人族…だと? ……貴様ら……報告のあったハウリア族か……亜人族の面汚し共め! 長年、同胞を騙し続け、忌み子を匿うだけでなく、今度は人間族を招き入れるとは! 反逆罪だ! もはや弁明など聞く必要もない! 全員この場で処刑する! 総員かッ!?」

 

リーダーが兎人族に襲いかかろうとした瞬間、彼の頬を彩人の気弾が掠め、虎亜人達の背後で破裂し、小型のクレーターを作る。

 

「…今のはほんの小手調べだ。その気になればここら辺一帯を吹っ飛ばせる、一瞬でな」

 

「…な、詠唱どころか………魔力も感じなかった……!」

 

反応出来ないスピードと破壊力、そして魔力を持たないのに放たれた未知の攻撃に虎亜人達は恐怖しながら警戒を強める。

 

「俺達は今ここの兎人族を護衛中だ。もし手を出そうと言うなら一切容赦はしない」

 

戦士となっている彩人の放つ殺気に虎亜人達は凄まじいプレッシャーを感じ取り、動きを止めてしまう。

 

(奴ら…いや、奴は一体何者なんだ……?だが、本能が奴と戦っても勝てないと叫んでいる………!本当に人間、なのか………?)

 

「…あくまでも兎人族に手を出さなければこちらも何もしない。戦争をしに来た訳ではない」

 

「…何が目的だ?」

 

若干殺気を弱めた彩人にフェアベルゲンの第二警備隊隊長であるリーダー虎が話しかける。下手に行動すれば部下がただでは済まないと理解していた。だが同時に同胞を守るため討ち死にする覚悟も持っていた。

 

「この先の大樹にある、本当の迷宮へ行きたいだけだ」

 

「本当の迷宮? 何を言っている? 七大迷宮とは、この樹海そのものだ。一度踏み込んだが最後、亜人以外には決して進むことも帰る事も叶わない天然の迷宮だ」

 

彩人の発言に何を言っているんだ、という表情を浮かべるリーダー。

 

「それは違う、ここが迷宮にしては魔物が貧弱過ぎる。少なくとも俺達が攻略したオルクス迷宮の魔物は多少歯ごたえがあった…、それに亜人族ならば簡単に行けるのなら解放者が与えた試練にしてはあまりにも簡単すぎる」

 

「…(何を言っているんだ……オルクス?試練?解放者?………聞いたこともない話ばかりだ………)」

 

リーダーは理解出来ないが、ここで彩人が嘘をつくメリットなど無いと分かっている。自身が圧倒的有利な状況だからだ。

故にリーダーは悟った。自身の手に余る事と、この男を野放しにしてはならない、と。目的を果たせればなにもしないのならそれに越した事は無い。

 

「……お前が、国や同胞に危害を加えないというなら、大樹の下へ行くくらいは構わないと、俺は判断する。部下の命を無意味に散らすわけには行かないからな」

 

周りの亜人達がどよめく。今までに無い事だからだ。

 

「だが、一警備隊長の私ごときが独断で下していい判断ではない。本国に指示を仰ぐ。お前の話も、長老方なら知っている方もおられるかもしれない。お前に、本当に含むところがないというのなら、伝令を見逃し、私達とこの場で待機しろ」

 

この場における良い判断と言わざるを得ない。目には抵抗の意志が見え隠れしているが。

 

「承知した。先程の言葉を一字一句違えずに伝えて欲しい」

 

「無論だ。ザム! 聞こえていたな! 長老方に余さず伝えろ!」

 

「了解!」

 

すると前衛のその後ろから気が遠ざかっていく。ザムと呼ばれた亜人のものだろう。

それを確認すると彩人は殺気を解く。

その時、今なら殺れるかと亜人達が武器に手を伸ばそうとするが、

 

バンッ

 

「…っ」

 

「お前等が攻撃するより、私の抜き撃ちの方が早い……試してみる?」

 

「……いや。だが、下手な動きはするなよ。我らも動かざるを得ない」

 

「わかってるよ、そっちも変なことは考えないでね」

 

ハジメの早抜きが先手を取った。彩人だけでなくハジメも強いと分かったからか、それ以降は変なことはしなかった。殺意は嫌というほど感じたが。

包囲されたままとはいえ休戦状態になったためカム達兎人族がホッと胸を撫で下ろす。

…が、彩人達よりも強い殺気を向けられているため安心は出来ない。

 

しばらく重苦しい雰囲気だったがユエとハジメが彩人に甘え出し、「私も~」とシアが自然に混ざった。小一時間後、調子に乗りすぎたシアをユエとハジメが追いかけ回してプロレス技をかけるというハプニングで兎人族と虎人族をドン引きさせていた。

そして彩人は森の奥から接近してくる複数の気を感じ取り緊張感を強める。他の亜人達もその気配を察する。

 

そこに現れた数人の亜人。中央にいる長耳で初老の森人族(エルフ族?)が彩人に話しかける。

 

「ふむ、お前さんが問題の人間族かね? 名は何という?」

 

「お初にお目にかかる。俺の名は轟彩人。そちらの名前も伺っても?」

 

亜人族は人間の割には多少は敬語が使えるようだな、と上から目線だった。

 

「うむ…私は、アルフレリック・ハイピスト。フェアベルゲンの長老の座を一つ預からせてもらっている。さて、お前さんの要求は聞いているのだが……その前に聞かせてもらいたい。〝解放者〟とは何処で知った?」

 

「オルクス大迷宮の地下奥底にあった〝解放者〟の一人、オスカー・オルクス氏の隠れ家にて聞いた」

 

解放者という単語と、その一人が〝オスカー・オルクス〟という名であることは、長老達と極僅かな側近しか知らない事であるためアルフレリックは平然としつつも内心は驚愕していた。

 

「ふむ、地下の奥底か……聞いたことがないがな……証明できるか?」

 

アルフレリックは万が一他の亜人が洩らした可能性を考慮した。

 

「証明…オスカー氏にまつわる物があれば宜しいか?」

 

アルフレリックは頷く。あれば、の話だが、と付け加えた。

 

「ハジメ、オルクスの指輪を」

 

「うん、これだよ」

 

「…魔石もあると良いかも」

 

「あ、確かに。えっと…〝宝物庫〟から……」

 

ハジメが差し出したオルクスの指輪と魔石を見てアルフレリックだけでなく周りの亜人達も驚愕した。

 

「こ、これは……こんな純度の魔石、見たことがないぞ……」

 

「なるほど……確かに、お前さんはオスカー・オルクスの隠れ家にたどり着いたようだ。他にも色々気になるところはあるが……よかろう。取り敢えずフェアベルゲンに来るがいい。私の名で滞在を許そう。ああ、もちろんハウリアも一緒にな」

 

当然亜人族は兎人族も含めて驚きの表情を浮かべる。そして亜人族は猛抗議する。人間をフェアベルゲンに招き入れるなど、前例が無いのだから。

 

「彼等は、客人として扱わねばならん。その資格を持っているのでな。それが、長老の座に就いた者にのみ伝えられる掟の一つなのだ」

 

アルフレリックの鶴の一声で黙り込む亜人族。

 

「お心遣い感謝する」

 

彩人は知ってる(・・・・)ので素直に感謝し頭を下げる。それに待ったをかけたのはハジメだ。

 

「待ってよ。何勝手に私達の予定を決めてるの? 私達は大樹に用があるのであってフェアベルゲンに滞在する理由は無い。問題ないなら、このまま大樹に向かわせてよ」

 

「いや、お前さん。それは無理だ」

 

「どういう事?」

 

ハジメが殺気を出す。しかしアルフレリックは困惑した表情で、

 

「大樹の周囲は特に霧が濃くてな、亜人族でも方角を見失う。一定周期で、霧が弱まるから、大樹の下へ行くにはその時でなければならん。次に行けるようになるのは十日後だ。……亜人族なら誰でも知っているはずだが……」

 

それでも向かうのか?とアルフレリックが続けるとハジメはゆっくり案内役のカムを見る。……皆さんお察しの通り、忘れていたのである。

 

「カム?」

 

「あっ、いや、その何といいますか……ほら、色々ありましたから、つい忘れていたといいますか……私も小さい時に行ったことがあるだけで、周期のことは意識してなかったといいますか……」

 

ユエとハジメのジト目に耐え切れなくなったカムは責任を擦り付けようとする。

 

「ええい、シア、それにお前達も! なぜ、途中で教えてくれなかったのだ! お前達も周期のことは知っているだろ!」

 

「なっ、父様、逆ギレですかっ! 私は、父様が自信たっぷりに請け負うから、てっきりちょうど周期だったのかと思って……つまり、父様が悪いですぅ!」

 

「そうですよ、僕たちも、あれ? おかしいな? とは思ったけど、族長があまりに自信たっぷりだったから、僕たちの勘違いかなって……」

 

「族長、何かやたら張り切ってたから……」

 

「お、お前達! それでも家族か! これは、あれだ、そう! 連帯責任だ! 連帯責任! 彩人殿、罰するなら私だけでなく一族皆にお願いします!」

 

「あっ、汚い! お父様汚いですよぉ! 一人でお仕置きされるのが怖いからって、道連れなんてぇ!」

 

「族長! 私達まで巻き込まないで下さい!」

 

「バカモン! 道中の、彩人殿やハジメ殿の容赦のなさを見ていただろう! 一人でバツを受けるなんて絶対に嫌だ!」

 

「あんた、それでも族長ですか!」

 

この世界でも残念ウサギは変わらなかった。彩人は顔を覆いながら、

 

「ユエ、頼むわ」

 

「…ん」

 

とだけ伝えた。ハジメも参加させようかと思ったがゴム弾でもダメージは大きいのであえて参加させない。ユエが兎人族に近づくと責任の擦り付け合いが加速したがユエはただ一言言うだけ。

 

「〝嵐帝〟」

 

アァァァァァァァァァァァァァ………

 

樹海に竜巻と兎人族の断末魔が轟いた。

 




時間が無かった。

ミレディちゃんは・・・

  • ハーレム入り
  • 無☆視☆
  • 破壊しつくすだけだァ!
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