彩人が甘さの残るハウリア達を岩盤浴させながら鍛えている裏で、シアはユエに戦闘訓練を受けさせてもらっていた。
樹海のあちこちから破壊音が響き渡る。
その音を出しているのがうら若き二人の乙女とは思えぬ規模であるが。
「でぇやぁああ!!」
主な破壊の理由であるシアが1m以上ある木をほぼ焦土と化した広場に棒立ちしているユエに投げつける。
「……〝緋槍〟」
ユエが自身に迫る木を豪炎の槍が破壊、消滅させる。
しかしそれは同時に隙となる。
「もらいましたよ、ユエさん!」
「…!」
瞬時にユエの背後に回ったシアがハジメに頼んでつくってもらった巨大な木槌でユエに殴りかかる。
「〝風壁〟」
だが、ユエは突風の反動で木槌の打ち付けられる場所から移動、回避した。
かわされるとは思ってなかったのか、シアは技後硬直と動揺で大きな隙を晒す。
「〝凍柩〟」
「ふぇ! ちょっ、まっ!」
そんな相手は格好の標的。ユエの冷凍魔法が待ったをかけたシアの意思を無視してシアの頭以外を氷で包む。
「づ、づめたいぃ~、早く解いてくださいよぉ~、ユエさ~ん」
「……私の勝ち」
「わぁ、凄いね二人とも」
シアが氷の塊になっている前でピースサインをするユエと破壊活動…もとい訓練の凄まじさを呆然と見守っていたハジメ。
シアへの訓練における最終試験としてシアがユエに一撃でもくらわせたら遊園ch…ではなく合格とする、というものだ。
「うぅ~、そんな~、って、それ! ユエさんの頬っぺ! キズです! キズ! 私の攻撃当たってますよ! あはは~、やりましたぁ! 私の勝ちですぅ!」
「え、どこどこ?」
「………(スッ)傷なんてない」
「んなっ!? 卑怯ですよ! 確かに傷が……いや、今はないですけどぉ! 確かにあったでしょう! 誤魔化すなんて酷いですよぉ! ていうか、いい加減魔法解いて下さいよぉ~。さっきから寒くて寒くて……あれっ、何か眠くなってきたような……」
遭難者のような振る舞いをするシアにやれやれと思いユエは〝凍柩〟を解除した。
溶けた氷から物凄く期待した瞳でユエを見つめるシア。反対にユエは不満そうである。
「ユエさん。私、勝ちました」
「………………ん」
「約束しましたよね?」
「……………………ん」
「え、約束って何?ユエちゃん」
「……………」
「もうハジメさん、決まってるじゃないですか!もし、十日以内に一度でも勝てたら……お三方の旅連れて行ってくれるってことですよ!」
「「…………」」
「何で二人とも嫌そうな顔をするんですかぁー!」
シアが三人の旅に加わりたいのは彩人への好意とユエ達と友達になりたいという思いから。ハジメとユエはシアの思いを察しているしユエにとってはシンパシーを感じる相手でもあるため加わる事自体は悪くは思っていない。
しかし二人の行動中心に彩人が居るため貧弱トラブルメーカーウサギ(今までは)が彩人に迷惑をかけるのではないかと思ったからだ。しかし、
「…どうだった?」
「……魔法の適性はハジメと変わらない」
「あちゃぁ、宝の持ち腐れだね……で? それだけじゃないよね? あのレベルの大槌をせがまれたとなると……」
「……ん、身体強化に特化してる。正直、化物レベル」
「……へぇ。私達と比べると?」
「……強化してないハジメの……六割くらい」
「え……最大値だよね?」
「ん……でも、鍛錬次第でまだ上がるかも」
「…それは確かに化物レベルかも」
戦闘能力自体が高めなのは事実。鍛えれば光る原石とも言える。サイヤ人が異常なだけでシアは十分戦える力を持っている。仲間にする価値はある。
「ハジメさん、ユエさん、私をあなた達の旅に連れて行ってくれるよう彩人さんに頼んで下さい。お願いします!」
「「断る」」
「即答!?どうしてですかぁ~!」
だが、それは戦力としてはアリなだけであり、二人にとっては最も重要な事がある。
「シアはさ、彩人君の事、好きでしょ?」
「な、なんで分かったんですかぁ~?!」
「…分かる。同じ人を好きになった。私やハジメと同じ顔をしてた」
「そ、それは………うう。で、でもそれになんの関係があるんですか?」
「「大ありだよ」」
最も重要なのは“同盟“としてのありかた、である。好意がある以上、生半可な気持ちは許されない。それらの事を語った。
「…つまり彩人が好きなら自分の全てを捧げる覚悟を持って欲しいって事」
「惚れた腫れた程度で居られるのは私達にとっても嫌だしね」
「し、しょんなことありません!わ、私はぁ…本気で彩人さんが………」
「……なら、証明してもらう」
「証明?」
「…ん、簡単な事」
するとユエが小さな袋を取り出した。中には何か入っているようだが外からは見えない。
「…この袋の中の香りの感想を言うだけ。嘘は許さない。………未来を見るのも反則」
「な、なんだか分かりませんが………ユエさんの目が本気ですぅ…に、匂いの感想を言えばいいんですね?」
「…ん」
シアはユエから袋を受けとると恐る恐る閉じられた袋口を開く。
「勿論覗くのもダメだからね」
「わ、分かってますよぉ…」
ハジメに念押しされながらシアは恐る恐る匂いを嗅ぐ。すると、
「ひうっ…♡」
シアはブルッと震えたのち女の子座りでへたりこんでしまった。
「…シア、どう?」
「な、なんれすかこれぇ…すっごくドキドキしまひゅ………こんな素敵な香り……初めてぇ………れすぅ………♡」
息絶え絶えになり、発情しているかのように頬を紅に染め、無意識に匂いを嗅ぎ続けるシア。
「ふふ…合格」
「…ふぇ?」
それを見たユエはボーッとしたままのシアから袋を取ると満足そうに言った。
「“可能性“はありそうだね。よし、私からも言伝てしてあげる」
さらにハジメも賛同する。
「あ、ありがとうございまひゅ………ところで、その中身はなんですかぁ………?」
ユエが満足そうに袋を開くと、………中には丸まったシャツが。
「……彩人の……脱ぎたて♡」
その後、声にならない声をあげるシアに「「ようこそ、こちら側へ」」とハジメとユエがシアに言ったそうな。
一方彩人側。
「ボス、言われた通り、狩ってきましたぜ」
「・・・あぁ、そうみたいだな」
彩人はハウリア達への試練としてハイベリア
「多くないか?10体分位あるんだが」
狩った証拠としてハイベリアの尻尾を持ち帰らせたが彩人の前にあるのは数十本の尻尾(血まみれ)。
「ええ。一体軽ぅく仕留めたんですがね、アイツら調子にのって複数体で威嚇してきやがったんですよ」
「生意気な面だったからついでに始末してやったわ」
「へっ、狩られる覚悟も無いくせに襲おうなんざ百年早ぇってもんでさぁ」
アカン、バーサーカーになっとる。
サイヤ人仕込みの戦闘訓練の結果、この辺りの魔物は相手にならないレベルに達した。亜人族特有なのか、野生の本能かは分からないが、隠密行動に優れたハウリアに戦闘能力を与えた結果殺戮暗殺者集団となってしまった、戦いを恐れるよりかは生存確率は高いのだが。
「ボス!ご報告があります!発言の許可を!」
「あ、あぁ…言ってくれ」
「ありがたき幸せ!大樹へのルートにて武装した熊人族の集団を確認!」
「…ジンの事への仕返しか。目的地目前でざまぁみろをしたいようだな。その隠密行動、見事だ」
「はっ!、なんという勿体なきお言葉!感謝いたします!」
だが衝突は避けられないと彩人が考えていると、
「ボス、ここは我々にお任せ願えませんか?」
「…カム、か。初日は済まなかった……見せしめとして岩盤送りにして」
「いえいえ、そのお陰で目が覚めましたよ。我々がどれほど脆弱な存在に甘んじていた事に気付きましたから…だからこそ、今の我々がどれだけ奴らに通じるか試したいのですよ………なぁに、そうそうヘマはいたしません」
「相当な自信………やれるんだな?」
「勿論ですとも!」
「・・・なら、任せるとしよう」
すると、ハウリア達の雄叫びが響き渡った。
「いくぞ野郎共!!」
「YA-HAaaaaaaaaaaaaaaa!!」
「・・・加減って大事なんだな」
その後、大樹へのルートに待ち構えていた熊人族に不意打ちで襲いかかったハウリア族の猛攻で戦闘最強種の熊人族は満身創痍、四面楚歌に陥った。
「ど、どうなってるんだ、こいつら本当に兎人族なのか?!」
「ヒャッハァ!だらしねぇなぁ!この程度かよ!」
「く、最強種を舐めるなよ………って当たらん!」
「へっ、力任せの攻撃なんざ当たるかよ!」
「こうなれば、皆引け!ここは私がシンガリを……ギャアアアアア!」
「お前達が戦う意思を見せなければ俺はお前達を破壊し尽くすだけダァ!」
ついに熊人族側のリーダーが膝をついた。
「ぬぅ…我々の敗けだ………ハウリアの族長よ、我はどうなっても構わん、だが部下は見逃してくれ、この通りだ!」
リーダーの土下座に対してカムは、
「断る。貴様らは敵だ、敵は倒さねばならぬ。だがそれ以上に、貴様らを狩るのは楽しい!!!!!」
狂喜に満ちた顔でリーダーに手に持ったナイフでトドメを差そうとするが、彩人に止められる。
「…何故止めるのですか?ボス………いえ彩人殿」
「・・・忘れているようだからもう一度言う。俺は生きるため、家族を守るために力を付けさせた。だが、殺戮を楽しむ今のお前らは………あの“帝国兵“とそっくりだ。そんな顔をシアに向けられるのか?」
「………っ!!」
カムはハッと我に帰り膝から崩れ落ちた。
「初の対人戦としては上出来だ。だが少なくともお前達には真の
「…彩人殿、それはこちらにも非があります。再び、教わってしまいましたな」
「……気付けたならそれでいい」
彩人は熊人族に向き直ると、
「…早急にここを去ると良い。今あった事を出来ればそのまま伝えて欲しい。相違があっても構わないが、その時は樹海が焦土と化すだけだが………宜しいか?」
「…………………ありのままをお伝えする事を誓おう」
脅しも交えて熊人族を見逃した。
その一方で外れてはいけない一線を越えかけた為青ざめてしまうハウリア族。
「ボス、申し訳ない。俺達こそ調子に乗りすぎていたようだ」
「帝国兵と同じ事をしかけていたわ…」
「すまねぇ、兄貴…いや、ボス、軟弱さを克服するためとはいえ出過ぎた真似をした」
「・・・まぁ、強ぇ力ってのは溺れやすいモノだからな。俺の一言で気付けたならそれでいい。これからはそこら辺の精神力も鍛えな」
「「「「「「「「「イエス、ボス!」」」」」」」」」
「…これで俺もサル山の大将、か・・・」
目の前で跪くハウリアを見て呟く彩人だった。
ミレディちゃんは・・・
-
ハーレム入り
-
無☆視☆
-
破壊しつくすだけだァ!