ありふれ世界のサイヤ人   作:M88星雲

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瞬間移動の利用法。


愛ちゃん護衛隊、出動

夜明け前。朝もやが立ち込める中宿でいただいた握り飯を仕舞いこんでウルの町の北門へ歩いていく彩人達。

目的地の山脈は魔動二輪で飛ばせば3、4時間で到着する。

ウィル・クデタ達が、北の山脈地帯に調査に入り消息を絶ってから既に五日経っているため生存の可能性は低いが行かなければならない。・・・のだが。

 

「・・・何してんの?」

 

頭を抱えながら彩人が北門前に立ちふさがる愛子と、園部優花、菅原妙子、宮崎奈々、玉井淳史、相川昇、仁村明人、辻綾子の八人に向かって話した。代表するかのように愛子が答える。

 

「私達も行きます。行方不明者の捜索ですよね? 人数は多いほうがいいです」

 

「…清水の情報もこの町だけじゃこれ以上集まらない」

 

「頼む轟、俺たちも清水を探したいんだ」

 

「轟君、お願い。トシくんに会いたいの」

 

愛子に続いて相川昇、仁村明人、辻綾子が彩人に頼み込む。

 

「お願いします、轟君。私は先生として生徒達を元の世界に還す責任があります。…これだけは絶対に譲れません」

 

決意に満ちた眼差しの愛子。彩人がハジメの方をチラッと見るとハジメは諦めたように頷いた。

 

「・・・仕方ない。一緒に行く」

 

「…彩人」

 

「彩人さん、いいんですか?」

 

ユエとシアが彩人に聞く。前日脅したばっかりだからだ。

 

「…この人は突っ走ったら止まらない。そんな人だ。特に生徒の為なら、な。強引に逃げても地のはてまで追ってくるだろうよ」

 

「そういうこと。…よっと、そうと決まったら善は急げ」

 

ハジメが〝宝物庫〟から魔動四輪を出す。

 

「なっ…いきなり車が…?!」

 

「皆に合わせてたら日が暮れちゃうよ。さっさと乗って。余った人は荷台ね」

 

今のハジメを見て誰が〝無能〟と呼べるだろうか。

女性陣は車内、荷台に彩人と男性陣。ヴァルキュリアが彩人と同じ荷台を所望したが男子生徒の下心が騒いだせいで女子生徒達に引っ張り込まれた。

ハジメが運転し、愛子と話をしている間、彩人は男子陣にモテる秘訣を尋問されていた。

車内では園部達がシアやミレディに彩人との関係などを色々聞いている

「迷宮組はまだオルクスに?」

 

「はい。手紙でしたが天之河君を中心に攻略を進めているそうです。…ただ、その中でも白崎さんは轟君と南雲さんを探すことを目的としているようです」

 

「(香織ちゃん…)白崎さんは元気?」

 

「あ、気になりますか?そういえば南雲さんは白崎さんと仲が良かったですもんね!」

 

「…うん、とっても“仲良し“。…でも、次に手紙を返すとき、彼女に『気を付けるのは仲間』って伝えてくれない?」

 

「…え?」

 

「多分私達は事故で落下してる事になってるんじゃない?」

 

「え…はい」

 

「やっぱり。でも私達は事故で落ちたんじゃない、誰かに落とされたんだ(・・・・・・・)彩人君を確実に落とすために」

 

「あ、あれは轟君を狙ったんですか?だったら何故南雲さんを…」

 

「昨日の彩人君のスピードを見たでしょ?避けられる可能性を考えて私を狙ったんだよ。彼が庇うと分かってて」

 

「…!!」

 

「理由は白崎さんにあると思う。彩人君と一緒に居ることが多かったし」

 

「で、ですが…そんな理由で」

 

だからこそ(・・・・・)だよ、先生。嫉妬心で人を殺そうとする奴だから油断出来ないってこと」

 

「…」

 

生徒がそんな事をしていた、という事実に愛子は絶望感を隠せなかった。ちなみにハジメは犯人を知っているがそれを愛子に言うと説得しようと言い出して復讐しにくくなるので黙っていた。

魔動四輪で北の山脈地帯に到着。…と言ってもここからは車ではとても進めない急な坂や崖が多いのでここからは徒歩で行かざるを得ない。

「…」

 

「先生?顔色悪いけど…どうしたの?」

 

「あ…少し車酔いしてしまいまして…あはは」

 

園部が愛子を心配するが、愛子は誤魔化した。まだ気持ちの整理がつかないからだ。

 

「…それで、轟達の依頼ってのはなんだ?」

 

「あぁ、遭難者の捜索だな」

 

「捜索っつっても、山ん中だぜ?どうやって探すんだ?」

 

「私のコレを使う」

 

ハジメが〝宝物庫〟から魔動四輪と入れ替えに取り出して空に浮かべていたのは巨大な鋼鉄の鳥。重力制御式鳥形無人偵察機〝オルニス〟である。

クラスメイト達が「もうなんでもありか」と度肝を抜かれている隙にミレディがハジメに話しかける。

 

「重力制御ってことは、私のを使ってるわけね」

 

「そう。貴女の浮遊するゴーレムを参考にね。目はゴーレム騎士のモノを使ってるから私の眼帯に情報を伝えることも出来る」

 

「…言っとくけど元々私の私物なんだからね?」

 

「そんな事知らない」

 

「ひっどーーい!!訴えてやるんだから!」

 

「…お、山頂付近に大きな破壊の跡がある。八合目と九合目の間だね」

 

「あ、こら無視するな!」

 

ミレディがハジメに絡んでる間に、ユエとシアが気を探っている彩人と話をしていた。

 

「…彩人、どう?」

 

「・・・確かにその付近で人の気を感じる。だが徐々に弱まってきているな」

 

「…その人がウィル?」

 

「かはどうかは分からんが事は一刻を争う」

 

「な、ならその人の所へ…」

 

「直行したい所だがバカでかい気で直接向かうのはキツいな」

 

「…敵?」

 

「かもな。…アクセル、先に行ってくれ。お前の気を使って瞬間移動する」

 

『承知しました、マスター』

 

アクセルが高速で山を登っていく。

 

「あ、メイドさんが先に…」

 

「早く行くならこっちの方が早い」

 

彩人の発言に怪訝そうな顔をする愛子とクラスメイト。ハジメ達は知っているので無反応。

 

「早いって…あのメイドさんと何の関係があるのよ」

 

園部が質問する。

 

「まあまあ、すぐにわかるさ・・・・よし『着いたか?』」

 

『はい、マスター。ハジメ様の言うポイントに到着いたしております。周りに魔物の姿はございませんが気配を感じますのでご注意を』

 

「『…そうか・・・よし、ご苦労』・・・アクセルの気を捕らえた。つかまr・・・ぐえ」

 

「右腕もーらい!」

 

「…正面…!」

 

「後ろにしますぅ!」

 

いきなりハジメ達が彩人に抱き着いたのでさらに困惑する愛子達。

 

「・・・ふざけてんの?」

 

「違うって。これからあそこに瞬間移動するから掴まれって事」

 

「「「「「「「「「しゅ、瞬間移動!?」」」」」」」」」

 

「ゼータ、イクス」

 

『うむ』 『はい。失礼いたします、マスター』

 

ゼータが左腕、イクスが左手に触れる。

 

『残る者は我とイクスに触れよ』

 

『少しでも離れると移動できませぬ故、しっかりとおつかまりくださいませ』

 

未だに理解に苦しむクラスメイト達だが、

 

「す、すぐ行けることに越したことはないよな・・・」

 

「し、仕方ねえ、轟を信じてやるかー!」

 

「い、イクスさん・・・し、失礼します・・・」

 

玉井淳史、相川昇、仁村明人の三人はおずおずとイクス達に触れる。美人メイドに顔が緩み切っている。それを見て女子がゴミを見るような視線を向けていた。

その後、全員が直接あるいは間接的に彩人に触れたので瞬間移動。

 

「・・・と。着いたぞ」

 

「は・・・?い、いつの間に・・・」

 

「ホントに移動したのk・・・ってうおっ高!!本当に一瞬で移動してるじゃねえか!!」

 

『お待ちしておりました、マスター。それと飛行中にこちらのようなものが・・・』

 

「・・・ペンダント?誰かの持ち物かもな、」

 

アクセルが彩人にお辞儀をしていた。その後ろで、

 

「轟の奴・・あんなかわいい子とハーレム作ってる上にこんな技まで使えるとか・・・チートじゃん」

 

「・・・だな。下手に逆らったら命がねえ」

 

そんなクラスメイトを放置して捜索を開始していたハジメ達だったが、

 

「これ・・・魔物の足跡ですかねぇ」

 

「くぼみの深さと大きさからざっと2~3m位だと思うけど・・・」

 

「こんな破壊出来ませんよね…」

 

大きな川のそばに地面を大きく抉った跡があったからだ。周りの木々は焼け焦げ、抉れた部分が川の支流のようになっている。

続けて川沿いを上っていくと滝つぼを発見する。その後ろから彩人達もついてくるが、

 

「…!やっぱり気配感知にかかった。人間の反応だよ」

 

「生きてる人がいるってことですか!」

 

「うん」

 

「…人数は」

 

「一人」

 

「・・・(道理で気が弱弱しいわけだ)」

 

消息を絶ってから五日経っているため生存は絶望的と考えていた分、愛子たちも驚きを隠せない。

 

「・・・ん、滝の裏に洞窟があるな・・・ユエ、頼めるか」

 

「…ん、任せて」

 

彩人が滝の一部に穴があるのに気づき、ユエに頼む。ユエは彩人の考えを理解し一人歩み出ると

 

「〝波城〟 〝風壁〟」

 

滝の水流をモーセの伝説の如く真っ二つに割り、水しぶきを風で吹き飛ばす。

詠唱なしにこんな芸当を行うユエを見て愛子たちも呆然としていた。が、魔力は無限ではないため全員を洞窟へ移動させる。

洞窟の最奥には20代の男性が倒れていた。衰弱しているが大きなけがもなく、近くの袋には食料が入っていた。

・・・と、ハジメが青年を蹴り飛ばして起こそうとしたので治癒師の辻に任せた。瞬く間に青年は回復した。

 

「・・・?」

 

「気が付きました!轟君!」

 

青年が目を覚ましたので早速聞く。

 

「俺の名は轟彩人。フューレンのギルド支部長イルワ・チャング氏からの依頼で捜索に来た。貴方はウィル・クデタさんですか?」

 

「イルワさんが!? そうですか。あの人が…はい、私がウィル・クデタです。……また借りができてしまったようだ……あの、あなたも有難うございます。イルワさんから依頼を受けるなんてよほどの凄腕なのですね」

 

「いえ、礼は後程。ここでなにがあったかお話いただけますか」

 

「あ・・・そうだった…」

 

ウィルの話によると山道を登っている途中でブルタールと呼ばれる魔物と遭遇。他の冒険者に守られながら逃げている途中で漆黒の竜に行く手を阻まれ、竜のブレスの衝撃で川を流れ、命からがらここへ逃げ込んだらしい。

話している途中でウィルは仲間が犠牲になったのに何もできなかった自分に対する罪悪感を感じ、涙を流していた。

 

「わ、わだじはさいでいだ。うぅ、みんなじんでしまったのに、何のやぐにもただない、ひっく、わたじだけ生き残っで……それを、ぐす……よろごんでる……わたじはっ!」

 

ウィルのに誰もがどんな言葉をかければいいか迷っていた。生徒達は悲痛そうな表情でウィルを見つめ、愛子はウィルの背中を優しくさする。ヴァルキュリア達とユエは何時もの無表情、シアはもちろん流石のミレディも困ったような表情を浮かべていた。

その中で言葉を話した者が居る。彩人だ。

 

「・・・生きてほしいから助けるんだよ、ウィルさん。貴方に生きてほしいから他の亡くなった方も命を賭して助けたと思う」

 

「…でも、そうだとしても……!」

 

「・・・同じことがあるから分かる・・・じゃないけど俺もここにいるハジメを助けるために死にかけたことがあるんだ」

 

「・・・ええ!?」

 

驚きを隠せないウィル。愛子やクラスメイトも目を丸くしている。知っているメンバーは黙っていたがハジメがつらそうな顔をしていたのでユエがそっと寄り添う。

 

「その時思ってたんだよね、"死んでほしくない"ってさ。まぁその後にハジメに助けられたから説得力は低いかもな」

 

「・・・・彼らも、そう思っていると・・・?」

 

「少なくとも俺はそうだと思ってる。むしろせっかく助けたのに死んじまったらそれこそ・・・言い方は悪いが"死に損"になる。救った命を散らすことこそ、"最低"な奴なんじゃないか?恩に報いたいのなら死ぬんじゃなく、生き続けるんだ」

 

「生き…続ける…」

 

彩人の言葉を繰り返すウィル。あと一押しかと彩人は畳みかけた。

 

「そもそも、貴方が死んだら貴方を待っている人はどう思う?」

 

「・・・!!」

 

彩人の言葉にハッとするウィル。ついでにアクセルが見つけたペンダントを渡す。・・・とそれはウィルの持ち物であるのだが。

 

「これ、僕のロケットじゃないですか! 失くしたと思ってたのに、拾ってくれてたんですね。ありがとうございます!」

 

「・・・正確には向こうのメイド(アクセル)が拾ったんだが…間違いないか?」

 

「はい、ママの写真が入っているので間違いありません!」

 

「・・・にしては随分お若いようで」

 

「せっかくのママの写真なのですから若い頃の一番写りのいいものがいいじゃないですか」

 

「そ、そうか・・・じゃ、じゃあ・・・母親の為にも生きよう、な?」

 

「はい!彩人さん、あなたの言葉で目が覚めました!本当にありがとうございます!!」

 

知っているとはいえあまりに純粋な笑顔に若干引き気味の彩人。その場にいた全員が「あ、マザコンか」と冷めた目で見ていた。女性陣は冷たい視線を向けていた。

そんな中、

 

「彩人君・・・あの「何も言うな、ハジメ」・・・」

 

「今のは俺の本心だ。熊ん時も。ヒュドラの時もな、ユエ」

 

「あ…」

 

「俺の意志をお前らが否定するわけねえよな?」

 

「・・・・!う、うん・・・」

 

「…んっ」

 

「心配だったか?でも俺は死なねえ、お前らと一緒に居るためにな」

 

「「彩人(君)…!」」

 

彩人は二人に笑みを向け、抱き着いてくる二人を受け入れる。「もちろんシア達もな」と付け加えておいた。後が面倒だからだ。シアはデレデレしながらくっついてきた。その光景に愛子達が目を瞬かせていたとか。

 

早速下山することとした。竜の存在も気になるがウィルを巻き込むわけにはいかないと説明すると彼は納得してくれた。

瞬間移動のために再びアクセルを行かせる。・・・が、

 

『マスター、緊急事態です、"竜"が滝の前に…』

 

「『だろうな』」

 

洞窟の出口に待ち構えていた者が全員の視界に入る。

 

「グゥルルルル」

 

低い唸り声を上げ、漆黒の鱗で全身を覆い、翼をはためかせながら空中より金の眼で睥睨する……それはまさしく〝竜〟だった。




ウルの町からでよくね?と思いましたがハジメと先生の会話を入れたくて。(意味あるかは知らんけど)

ティオは・・・

  • ケツパイルしてドM
  • ケツパイルしないけどドM
  • ケツパイルしてもそのまま
  • ケツパイルなしでそのまま
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