「む、無理です~!私が女神になるなんて!」
「頼むよ先生」
ウィルとティオがウルの町の役場で今なお迫る危機を知らせている間の仕込みを彩人が愛子に頼んでいる。
「前にも言ったけど俺やハジメの存在や武器は脅威でしかない。でも女神の奇跡ってことにすれば信心深い人たちは納得してくれる」
「それは・・そうかもしれませんが・・・私で・・私なんかが・・・」
「それは違う。先生じゃなきゃダメなんだ。生徒や騎士団に慕われる、”愛ちゃん先生”じゃなければ!」
「え、ええー?!わ、私、じゃなきゃ・・・?」
「頼む、先生。生徒を助けると思って・・・・!」
「・・・・・・・・・・・・し、仕方ありません・・・その役を受けましょう」
「先生ありがとう!!じゃ、準備してくる!絶対負けねえから!」
愛子は渋々引き受け、彩人は去っていった。
「轟君・・・あんなに強くなっていたなんて・・・」
死亡していたかと思っていた生徒が生存していた。それは確かにうれしい。ウルの町を守ってくれるのもありがたいと思っていたし清水を助けるとも言った。
しかし愛子は彩人に不安感を募らせていた。今は良くても力に酔ってしまうのではないかと。地球に居たときは力は強くともむやみに暴力を振るう事は無く弱き者を守るために力を使う人、というイメージを愛子は彩人に付けていた。だが、ティオとの戦いにおいて圧倒的すぎる力を何処か楽しんでいるように扱う(ように見えた)彼に愛子は彩人の暴走を不安に感じていた。
生徒を疑うなんて、と愛子はその考えを振り払ったが心のわだかまりは残ったままだった。
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「・・・・言えなかったなぁ、お礼」
同時刻、愛子と似た考えに至った人物がいる。園部優花だ。彼女はオルクスにて彩人に助けられており義理堅い彼女は彩人に礼を言おうとしていた。しかしレストランでの鎧破壊、ティオとの戦闘で見せた強さを見て、遠い存在に感じてしまった。
そこには恐怖心もあったのかもしれない。
「どうしたらいいんだろう、私」
モヤモヤが園部の心に溜まっていたが、彼女の問いに答える者は居なかった。
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二人の女性が一人の男に対して不穏なモノを抱えていることはつゆ知らず、ハジメは錬成で魔動二輪に乗りながら魔物の襲撃に備えて防壁を丸ッと一周作り上げ、ユエとシアとミレディは粉塵で汚れた体をキレイにし衣服を着替え、ヴァルキュリア達は愛子達と協力し避難勧告と避難誘導をしていたがそれでも町に残ると宣言する者も多かった。
気を安定させるため瞑想する彩人にそっと寄り添うのは準備を終えたハジメ達。そこにいるのが当然と言えるほど自然なふるまいである。
そこへ愛子と生徒達、ティオ、ウィル、デビッド達数人の護衛騎士がやって来た。
「轟君、準備はどうですか? 何か、必要なものはありますか?」
「ありがとう、でも今は特に無い」
瞑想を止め、顔だけ振り返って返答し瞑想を再開する彩人。
「そ、そうですか。では南雲さんは「無いよ、先生」・・・はい、わかりました・・・」
戦闘準備で集中している彩人とややなおざりの態度に口をはさむ者。デビッドである。
「おい、貴様。愛子が…自分の恩師が声をかけているというのに何だその態度は。本来なら、貴様らの持つアーティファクト類の事や、大群を撃退する方法についても詳細を聞かねばならんところを見逃してやっているのは、愛子が頼み込んできたからだぞ? 少しは……」
「デビッドさん。少し静かにしていてもらえますか?」
「うっ……承知した……」
愛子に一蹴され、黙り込むデビッド。その姿はさながら犬のようだったらしい。
「轟君・・・あの・・・」
「何?先生」
「あ、いえ・・・その、黒ローブの男は・・・」
「十中八九幸利でしょうね。でも必ず助けますよ」
「・・・あ、ありがとうございます」
愛子は彩人を信じつつも何もできない自分にふがいなさを感じていた。
「妾もあるじ・・・ゴホンッ! お主に話が……というより頼みがあるのじゃが、聞いてもらえるかの?」
「ティオさん「呼び捨てで構わぬぞ」・・・ティオ?」
「お主は、この戦いが終わったらウィル坊を送り届けて、また旅に出るのじゃろ?」
「・・・そのつもりだが、ついてきたいと?」
「うむ、察しがよくてたすかるのう。妾も連れて行ってくれぬか」
「竜人族の使命は」
「それも問題ない。そなたらと一緒に行く方が都合が良い」
「・・・・ダメという理由はないが何故俺達と?」
「そ、それはのう…」
ティオが続きを話そうとするが、防壁の上に立つハジメに阻まれる。
「・・・!来た!!」
ハジメの魔眼帯に映る無人偵察機の映像には大量の魔物による複合の大群が。数にしてなんと10万。さらに飛行している魔物の上で頭を抱えている黒ローブの男のフード部分が外れて顔が見えた。・・・間違いなく清水幸利である。苦しんでいるような動きに愛子と綾子が不安そうにしている。
「・・・みたいだな。悪いけどティオ、話は後で」
「う、うむ・・・仕方あるまい」
「彩人君、敵は10万。しかも森林を砂漠化させて最短距離で来てる。20分あるかないか位だね」
ハジメの報告に青ざめる人々。不安そうに顔を見合わせる彼女達に彩人は
「敵が多かろうが関係ない。魔物一匹通さないつもりだけど万が一の時の為に戦う人は防壁の近くで待機してほしい」
一切の迷いなき言葉に、愛子はただ一言。
「わかりました……君たちをここに立たせた先生が言う事ではないかもしれませんが……どうか無事で……」
それでも不安そうな人々。それでも愛子は街に知らせに走った。園部達も一瞬彩人達を見てから愛子を追いかけた。続いてウィルがティオに何か話した後で彩人達に頭を下げると愛子たちに続いて走っていった。
「今回の出来事を妾が力を尽くして見事乗り切ったのなら、冒険者達の事、少なくともウィル坊は許すという話じゃ……そういうわけで助太刀させてもらうからの。何、魔力なら大分回復しておるし竜化せんでも妾の炎と風は中々のものじゃぞ?」
らしい。なのでハジメに頼んで晶石の指輪を渡す。
「ある・・・彩人殿…いきなりプロポーズされてものう・・・もっと段階を」
「・・・違うから。あと何かデジャヴ」
「…♪」
指輪をはめつつソワソワするティオと何処か嬉しそうなユエ。尊敬する存在と同じになったのが嬉しいようだ。
「ハジメさん、あの人はいかがでしょうか?」
「可能性はある。でも今は初心・・・でも大丈夫そう」
「ならしっかりお迎えしませんとね!!」
そんな会話があったとか。・・・その直後に〝豊穣の女神〟愛子様演説を行った。
「聞け! ウルの町の勇敢なる者達よ! 私達の勝利は既に確定している!なぜなら、私達には女神が付いているからだ! そう、皆も知っている〝豊穣の女神〟愛子様だ!」
「我らの傍に愛子様がいる限り、敗北はありえない! 愛子様こそ! 我ら人類の味方にして〝豊穣〟と〝勝利〟をもたらす、天が遣わした現人神である! 私は、愛子様の剣にして盾、彼女の皆を守りたいという思いに応えやって来た! 見よ! これが、愛子様により教え導かれた私の力である!」
気功波で上空を飛ぶプテラノドンもどきを消滅させる。え、これじゃ”剣”じゃない?知らんな。
その口上と彩人の力でウルの町の人々による「愛子様、万歳!」コールが響き渡る。
後で「許可したのは私自身ではありますが、限度がありますよ!」と言われるのだが知ったことではない。
彩人は背中に町の人々の魔物の咆哮にも負けない愛子コールと、愛子自身の視線と、「何だよ、あいつ結構分かっているじゃないか」と笑みを浮かべている護衛騎士達の視線を感じつつもハジメ達の所へ向かう。
すぐさま魔物が一般人でも視認可能な距離にきている魔物たちを迎え撃つべく、メツェライを構えたハジメ、いつの間にか傍に居たユエ、オルカンを装備したシア、静かに魔物を見据えるティオ、長剣を構えるゼータ、ハジメから渡された様々な銃器を背負うアクセル、魔法の準備をしているミレディとイクスを一回り見回した彩人は、一歩先に出て一言。
「さぁ、始めっか!」
変に心理描写入れたらこうなった。後悔はしていない。
清水は・・・(生存は確定)
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彩人達と一緒に行く
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愛ちゃん護衛隊に復帰
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胃薬もって迷宮組・・・