「ヒョヒョヒョ、これは驚いた。まさか現代兵器を持ち出すとは・・・」
「ふむ、あの技術力、殺すには惜しい。私のもとで有効活用してやるとしよう」
あの老人と巨大なロボットが自ら操っている清水を介して集めた魔物たちがウルの町を滅ぼすどころか滅ぼされかけているにも関わらずハジメの兵器を称賛している。
「さらに周りの娘たちの"魔法"とやらも凄まじい力」
「私の復讐に役に立つだろうな」
ユエやティオ、イクスの魔法にも興味を示している。あたかももうすでに自分のモノのように話しているが・・・。
「して、貴方がお望みのお体はこの男で?」
「そうだ。奴の素晴らしい戦闘力を持つ肉体こそわが頭脳に相応しい。周りの女共は奴に気を許している。体を奪えばすべてが手に入る」
画面に映る気功波で魔物を一網打尽にする彩人を見て、ロボットはそうつぶやいた。
「やめ・・・ガァ・・・・ろ・・・・」
その一方で、彩人の攻撃で乗っていたプテラノドンもどきから落とされた清水はいまだロボットに付けられた冠のような洗脳装置に抗っていた。
「おいおい小僧、まだ堕ちてねえのか?あの方に協力してんだからありがたく従ってれば良いんだ・・・よ!」
「ガアッ…」
緑色の人型の魔物が血管のような電気触手で清水を拘束する。気絶した辺りで拘束を解くと清水は操り人形のように不気味に立ち上がった。
「お前にはもう少し働いてもらわなきゃなんねぇからな・・・。行け」
そいつの命令で清水が術を唱えると四ツ目の狼が放たれた。
少し時間を遡る。
ロボットと老人に監視されているとはつゆ知らず、メツェライを構えて銃弾の雨・・・もとい壁で迫る魔物たちを肉片に変えていくハジメ。魔物が避けようとすれど逃がすはずもなく左右に少し振るだけで魔物は次々と血をまき散らし、魔物"だったもの"が辺り一面に散らばる。
その反対側ではオルカンを構えたシアがロケットランチャーを雑に発射している。間の抜けた発射音とは裏腹に着弾すれば半径10mが吹っ飛ぶ。まともに喰らった魔物は粉塵と化し直撃せずとも衝撃波で重傷を負い、後続の魔物の下敷きとなった。
全弾撃ち尽くしても攻撃は終わらない。拡散焼夷弾に入れ替えて発射する。業火の天井が魔物に襲い掛かる。摂氏3000度の炎が魔物を焼き尽くし、暴れた魔物が別の魔物に引火して被害を広げる。
同じく銃器を構えたアクセルも小型ではあるがメツェライ、オルカン、シュラ―ゲンモドキなどを装備して魔物を正確に処理する。
弾数が少なく再装填の弾量も少ないため確実に弾丸一発で複数の魔物を始末する。シュラ―ゲンとオルカンはともかくメツェライを一発一発正確に当てる戦法を使うのは彼女だけだろう。
ティオもまた、突き出した両手から放つ竜形態時にも放ったブレスで魔物を粉砕、消滅させる。彩人から託された指輪から魔力補給しつつ残る魔力の節約するため火炎の竜巻を放つ。縦横無尽に魔物を巻き込む竜巻は業火で焼き払われ、灰塵となって竜巻から放り出される。後に残るは抉れて焼け焦げた大地のみ。
その反対側ではユエ、イクス、ミレディの魔法部隊の独壇場である。ユエとミレディの重力魔法で魔物どころか大地を消滅させ、残る魔物もイクスの重力球で根こそぎ潰される。魔法に関して天才級のユエでも一部の魔法は溜めが必要なのでその隙をミレディとイクスがカバーし、魔物を一切寄せ付けない。
そしてそれでも突破したり死にぞこないを刈るのはゼータ。自身の身長を上回る長剣を羽でも持つかのように軽やかに鋭く扱い、魔物を狩っていく。一度振り下ろせば大地が切り裂かれ、横に薙げば森林もろとも魔物を切り裂く。
そして彼女たちが心酔する男、彩人は気功波を惜しみなく発射する。門前中央に陣取り、ティオのブレスをはるかに上回る極太のビームで砂漠化した大地もろとも魔物を消し去る。天に手を掲げれば無数の気弾が無数の針に分裂し、魔物たちの命をことごとく散らしていく。
そんな彼らの活躍ぶりに町から歓声が上がる。町の重鎮や護衛騎士達も圧倒的な力を目の当たりにし、唖然としている。
クラスメイト達も、彩人たちの強さにただただおののくばかりだった。
「あれが・・・轟と南雲か・・・」
「もう〝無能〟や〝足手まとい〟なんて言えねぇな・・・」
玉井淳史と相川昇が言う中、園部は魔物の大群に立ち向かう彩人と、彼を信じて共に戦う女性たちを見て思った。
「(そっか・・・強くなってても轟は轟なんだ。南雲は・・・変わっちゃったけど、轟と一緒だったから今戦ってくれたのかな・・・?だとしても轟は・・・誰かを守るために・・・戦っているんだ。だからあんなに強くなれたんだ)」
と。そして園部は自身の心臓がドクンと動いたのを感じた。それは恐怖心を感じたことへの罪悪感か、それとも・・・
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「むぅ、妾はここまでのようじゃ……もう、火球一つ出せん……すまぬ」
と、魔力を指輪込みで使い果たしたティオが膝をつく。
「ありがとう、十分すぎる強さだ。後は俺達に任せろ」
「…心強いのう・・・ますますほ・・・・コホン、しばし休ませてもらおうぞ。そなたの武運を祈っておるぞ」
ティオは安心したような表情で座り込んだ。
「ユエ、イクス、ミレディ、そっちはどうだ?」
「……ん、残り魔晶石2個分くらい……重力魔法の消費が予想以上。要練習」
『魔晶石換算でユエ様と同じ位にございます…』
「あーもう多すぎ!10万とか何考えてんの?!私もギリギリ!」
「いや、かなり数を減らせた。後は直接叩くから援護を頼む」
「んっ」
『承知いたしました、マスター』
「・・・これで負けたら承知しないからね!!」
ユエとイクスはともかくミレディも阿吽の呼吸になりつつある。
「ハジメ、シア、アクセル、ゼータ、魔物の統率に気づいたか?」
「うん」
「はい。操られていた時のティオさんみたいな魔物とへっぴり腰の魔物ですよね?」
『リーダーを操り、下を動かしています』
『アタマを狩れば下級の魔物は逃げ出すだろう』
「そうだ。だから残ったリーダーをまとめて仕留める」
「なるほど、私の方も残弾が心許ないですし、直接殺るんですね!」
ずずいっとシアが彩人に近づく。
「そ、そうだ・・・。随分積極的になったな、お前」
「はい!彩人さんたちのそばに居るためです!!」
シアなら問題ないと感じ、魔物たちの方を見る。ハジメは問題ないと分かりきっているからだ。使っていたメツェライは限界寸前だったのでハジメはドンナーとシュラークを構えた。
「リーダー格は後ろに避難したみたい」
メツェライとオルカンやティオのブレスが来ないと気づくと魔物は進軍を開始する。
「〝雷龍〟」
『〝天雷〟』
ユエの放った雷の龍とそれを囲むように無数に放たれる
「落ちるよぉッ」
後続の魔物はミレディの魔法で発生した重力に耐えきれず圧死する。とはいえ邪魔になりそうな敵のみを倒している。
前衛の四人が分かれ、それぞれでリーダー格を次々に撃破していく。
『彩人君、リーダーたちは私達に任せて!清水を助けるんでしょ?』
『ああ、なら頼めるか?』
『もちろん。任せてよ』
『サンキュ、任せた』
ハジメとテレパシーで会話するが、ゼータとシアも気づいているように彩人に目配せした。彩人は小さくありがとな、と言って清水の気を探る。ある程度魔物の数が減ってきているので探知しやすい・・・のだが。
「・・・そう簡単にはいかない、か」
彩人はいつの間にか4体の四ツ目の狼に囲まれていた。
すぐさま背後の一体が彩人に襲い掛かる。裏拳で迎え撃つが彩人の腕を回転軸にし裏拳をかわした。そしてそのまま彩人の首を食いちぎる・・・ことはなく、彩人はしゃがんで避ける。
「・・・っこの!」
そのまま伸びあがって頭突きを喰らわせる。狼の首が必要以上に曲がり、息絶えた。
「"予測"出来るんだったな・・・あぶねえあぶねえ」
三体はカウンターを警戒し周りを回りながら彩人との距離を詰めてくる。だが体術の間合いに入ってはこない。しばらくにらみ合いの我慢比べが続いたが彩人が一体に正拳を放つ。正面の一体は難なく避けて彩人の右腕に牙を突き立てる・・・前に狼の死角から左手で気弾を撃ち込み、上半身を爆破する。
「・・・警戒するなぁ」
遠距離攻撃を警戒し大きく距離を取る二体。離れれば直線状の攻撃はかわせると踏んだのと空中に飛ばないようにしている。
「よし、出来るか試してみるか」
彩人はDBの技を試すことにした。左手で右手首を掴み、バスケットボールほどの大きさの気弾を作り出す。
同時に投げてくると判断し狼たちが距離を取る。
「〝操気弾〟!!」
彩人が気弾を投げると一直線に飛ぶ気弾を難なく避ける狼。連続では打てまいと鋭い歯で彩人の足に食らいつこうとするが、背中に先程の気弾が命中した。もう一匹が〝予測〟し、回避の体勢に入る。
「避けてみろ!」
縦横無尽に追跡する気弾を紙一重で回避する狼。狼の移動先に置きうちする、が狼はそれすらも予測し、着弾点を回避し気弾が地面を抉る。勝った!と言わんばかりに走ってくるが、狼の真下の地面が盛り上がった。・・・・刹那、地面から飛び出した気弾が狼の腹部を貫通し、空で弾けた。
「ふい~、分かってても緊張するなぁ。・・・にしてもどこから連れてきたんだか」
実は、この狼は奈落に居た魔物レベル(低層だが)の強さを持っていた。しかし今は清水を探すのが先なので彩人はその場を去った。
「・・・!この気は・・・よし、捉えた!」
見知った気を感知し瞬間移動する彩人。そして目の前に倒れていたのはもちろん、
「幸利!おい、しっかりしろ!」
清水である。気絶しており気を与えるが目覚めない。
「・・・かなり体力を消耗してる…連れて行くしかねえか・・・大分洗脳に抗ったみてえだしな・・・」
清水の頭に付けられた装置を破壊し、彼を背負ってハジメ達と合流し彩人は街へ戻った。
「いよいよだ。この私が表舞台に返り咲く時が!」
「あなたこそ神、いや神を凌駕する存在・・・!」
「復活の時は目前だ」
「ヒャハハハハ!楽しみだなァ!!」
「ぶへへ・・・」
彼らを見つめる存在もまたウルの町へ迫っていた・・・・。
次回、決戦。
清水は・・・(生存は確定)
-
彩人達と一緒に行く
-
愛ちゃん護衛隊に復帰
-
胃薬もって迷宮組・・・