時間は少し遡る。クラッシャー軍団とカトレアの口喧嘩のおかげで何とか逃げおおせた天乃河達。しかし敵は息をつく暇も与えない。
「フフフ・・・見つけたぞ小僧共」
「くそっまだ全快じゃないのに・・・!」
レズンのスカウターに捉えられている天乃河達は負傷者は少なくとも劣勢であることに変わりはない。
「勇者ともあろう男がこんなところでコソコソしてていいのかい?」
「くっ黙れ魔人族!お前は俺が必ず倒す!」
クラッシャー軍団の後ろで天乃河を挑発するカトレア。天乃河は聖剣を構えると聖剣に光が迸る。
「・・・へぇ、流石は勇者様だ」
感心しているカトレアに天之河が切りかかろうとしたその時。
「・・・ターレス、今まで何処に行ってたんだい」
「そう邪険にするなよ・・・上の騎士団を潰していただけだ」
カトレアが心底不愉快な表情を浮かべて天乃河達のうしろに居る人物に話す。天乃河達が振り向くと遠藤が見た男、ターレスがそこに居た。
「お、お前は何者だ!」
「オレか・・・?オレは、サイヤ人だ」
その言葉にカトレアがさらに気分を害するがそれ以上に天乃河達の衝撃が走る。イシュタルから神に傷をつけた不倶戴天の〝神敵〟が目の前に居るのだから。
「貴様だけは・・・許さない!」
正義中毒の天乃河にとって格好の敵である。天乃河の敵意はターレスに向かっている。天乃河が聖剣でターレスに攻撃しようとするが、
「ほう・・・?これでもか?」
「・・・!!メ、メルド・・・さん・・・」
ターレスが右手で掲げたのは満身創痍のメルド団長だった。首を掴まれているために苦しそうな声を出すメルド。
「いい顔をしていたぞ、自分以外の部下が死んだ時のはな!・・・まぁ、オレが殺したんだがなぁ・・・」
ターレスはニヤニヤしながら天乃河を見ており、天乃河の頭に血が上った。
「貴様ァァァァァ!メルドさんを放せぇぇぇぇぇ!」
「…バカめ」
「天乃河くん!右ぃ!!」
「しまっ・・・ガ八ッ!?」
殺意全開でターレスに切りかかる天乃河だったが鈴の声も間に合わずブルータルモドキの攻撃をもろにくらってしまう。
「所詮はガキ・・・無様なものだ」
「…気に入らないが、お前と同じ意見だよ、ターレス。こんな手に引っかかるなんてねえ」
ブルータルモドキがズタボロの天乃河をターレスと同じように首根っこ掴んで持ち上げる。
「うそ……だろ? 光輝が……負けた?」
「そ、そんな……」
「や、やだ……な、なんで……」
敗北した天乃河とボロボロのメルド団長に絶望するクラスメイト達。その中で警戒しながら雫がカトレアに質問する。
「……それで? 私達に何を望んでいるの? わざわざ生かして、こんな会話にまで応じている以上、何かあるんでしょう?」
「ああ、やっぱり、あんたが一番状況判断出来るようだね。なに、特別な話じゃない。前回のあんた達を見て、もう一度だけ勧誘しておこうかと思ってね。ほら、前回は、勇者君が勝手に全部決めていただろう?」
「断れば皆殺し・・・ってところかしら」
そこまでの会話で寝返った方がいいのではという雰囲気が広がる。
「もう、俺達の負けは決まったんだ。全滅するか、生き残るか。迷うこともないだろう?」
その中で檜山の発言で坂上が詰め寄る。
「檜山……それは、光輝はどうでもいいってことかぁ? あぁ?」
「じゃあ、坂上。お前は、もう戦えない天之河と心中しろっていうのか? 俺達全員?」
「そうじゃねぇ! そうじゃねぇが!」
「代案がないなら黙ってろよ。今は、どうすれば一人でも多く生き残れるかだろ」
死ぬのは嫌だが誰かを犠牲にするのも憚られる・・・そんな中、あと一押しと判断したカトレアの提案が。
「ふむ、勇者君のことだけが気がかりというなら……生かしてあげようか? もちろん、あんた達にするものとは比べ物にならないほど強力な首輪を付けさせてもらうけどね。その代わり、全員魔人族側についてもらうけど」
その提案で空気が変わり寝返得るかと思われたが、
「皆・・・誘いに・・乗るな・・・俺の事はいい・・・から・・・一人でも・・・多く・・・に・・げ・・・」
天乃河の言葉で再び揺らぐ。・・・しかし檜山は焦った表情で、
「……こんな状況で、一体何人が生き残れると思ってんだ? いい加減、現実をみろよ! 俺達は、もう負けたんだ! 騎士達のことは……殺し合いなんだ! 仕方ないだろ! 一人でも多く生き残りたいなら、従うしかないだろうが!」
檜山はとにかく香織を手に入れること、生き残ることのみを考えた発言なのだが・・・周りのメンバー達はすこしづつ投降の意志を固めつつあったが、ある人物の声がそれを阻む。
「ぐっ……お前達……お前達は生き残る事だけ考えろ! ……信じた通りに進め! ……私達の戦争に……巻き込んで済まなかった……お前達と過ごす時間が長くなるほど……後悔が深くなった……だから、生きて故郷に帰れ……人間のことは気にするな……最初から…これは私達の戦争だったのだ!」
「ほう・・・まだ息があったか」
メルド団長である。メルドはターレスの手を振り払い、カトレアに向かって突進していく。クラッシャー軍団の間をかいくぐり、〝最後の忠誠〟という自爆用アーティファクトで道連れにしようというのだ。
「魔人族……一緒に逝ってもらうぞ!」
「……それは……へぇ、自爆かい? 潔いね。嫌いじゃないよ、そう言うの」
「抜かせ!」
味方がやられそうなのにも関わらずターレスやクラッシャー軍団はニヤニヤ笑みを浮かべ、カトレアも余裕の表情だった。
「喰らい尽くせ、アブソド」
「なっ!? 何が!」
アーティファクトは六足の亀、アブソドに喰われた。
「がっ・・・・」
次いでメルドはカトレアの作り出した剣に刺し貫かれ、「済まない」と一言残してこと切れた。
「へっへっへ、無駄死にでっせい!」
虫の息となったメルドをアモンドが蹴り飛ばし、鮮血が舞う。
「うぅ、お願い! 治って!」
急いで香織がメルドを治療するがほぼ休憩なしで治療を行ってきたため魔力残量が少なく、治りが遅い。
「へっ、所詮は雑魚、無様な奴だ」
「・・・ターレス、なんで生かしておいたんだ?アブソドが居たとはいえ」
「フン、その程度でやられるなら貴様が弱いというだけだろう」
「・・・・チッ、まあいいさ、これは一つの末路さ。あんたたちはどうする?」
死の恐怖のあまり檜山が代表して受け入れようとするが・・・
「……るな」
「は? 何だって? 死にぞこない」
それを阻んだのは天乃河だ。
「クックック・・・さぁ見せてみろ、貴様の本気を」
ターレスはスカウターを介して天之河の戦闘力が増大しているのを眺めている。
「アハトド! 殺れ!」
「ルゥオオオ!!」
馬頭の魔物アハトドが二体、〝魔衝波〟で攻撃を仕掛けるが天乃河の周りに光が集い二体の片腕をへし折る。〝限界突破〟終の派生技能[+覇潰]を発動させた天乃河の力であり、メルドの仇と言わんばかりにターレスに切りかかる。
「なんだと・・・?」
「メルドさんの仇だ!」
ターレスは容易く切り割かれ、仰向けで倒れこむ。続いてクラッシャー軍団に襲い掛かる。
「なぁッ」
「これは・・・」
「ンダァッ」
「これまでか・・・」
「あ、兄者・・・」
雫達とは比べ物にならないスピードでクラッシャー軍団を蹴散らし、カトレアを袈裟切りにする。
「まいったね……あの状況で逆転なんて……まるで、三文芝居でも見てる気分だ」
血を流しながらも胸元からロケットを取り出すカトレア。天乃河はメルドと同じものと思いトドメを差しにかかる。・・・が。
「ごめん……先に逝く……愛してるよ、ミハイル……」
「・・・・!?」
寸前で止めてしまった。
「まさか、あたし達を〝人〟とすら認めていなかったとは……随分と傲慢なことだね」
「ち、ちが……俺は、知らなくて……」
「ハッ、〝知ろうとしなかった〟の間違いだろ?」
「お、俺は……」
「ほら? どうした? 所詮は戦いですらなく唯の〝狩り〟なのだろ? 目の前に死に体の一匹がいるぞ? さっさと狩ったらどうだい?おまえが今までそうしてきたように……」
「……は、話し合おう……は、話せばきっと……」
あろうことか剣をおろしてそんなことを言い出した天乃河にカトレアは呆れてものも言えず、代わりに
「アハトド! 剣士の女を狙え! 全隊、攻撃せよ!」
「な、どうし・・・ゴフッ!?」
天乃河の危険性を感知し発言力のある雫を重点的に、クラスメイト達全員に魔物が襲い掛かった。そして振り向いた天乃河に一撃を入れたのは
「今のお前ではオレの相手にはならないぜ」
「な・・・なぜ・・・」
ターレスだった。天乃河に斬られたふりをして彼らを観察していたのだ。ターレスが無事ならば勿論、
「ダァ―ハッハ!とんだ甘ちゃんでっせい!」
「貴様らは〝戦争〟をしているのだろう?」
「ンダンダ・・・」
「話し合いで解決するのなら、我々はここに居ないはずだ」
「未熟な精神に強大な力・・・危険性はあるだろうな」
クラッシャー軍団もピンピンしている。天乃河の言動に呆れた表情を浮かべ、下品な笑い声が響く。するとアモンドがターレスの方へ向き、話しかける。
「ターレスさん、
「フン、
その言葉で一気に絶望に叩き落されるクラスメイト達。魔物ですら歯が立たないのにターレス達は本気ではなかったのだから。
それからは魔物とターレス軍団の猛攻で数分経たずに絶体絶命の状況となり、天乃河も覇潰の副作用で動けなくなっていた。
「あぐぅう!!」
「雫ちゃん!」
数少ないアタッカーの雫も重症を負い、周りのメンバーも魔物を防ぐことすら難しいのに更に強いクラッシャー軍団の攻撃でズタボロとなっていた。負傷した雫に寄り添う香織。
「か、香織……何をして……早く、戻って。ここにいちゃダメよ」
「ううん。どこでも同じだよ。それなら、雫ちゃんの傍がいいから」
「……ごめんなさい。勝てなかったわ」
「私こそ、これくらいしか出来なくてごめんね。もうほとんど魔力が残ってないの」
すると薄いバリアが張られる。二人が振り返ると互いに支えあう鈴と恵里が。
「えへへ。やっぱり、一人は嫌だもんね」
「どうせなら、一緒がいいかなって」
「鈴・・・貴女ってば・・・」
「恵里ちゃん・・・」
あまりにも心もとないバリアは魔物の攻撃で砕かれようとしている。次の攻撃で香織達は拳の餌食となるだろう。
それ以上に、守ると決めた人に会えぬまま死ぬことに彼女たちは心の中で謝罪し、その人の名を呼んだ。
「「「「……彩人(君)」」」」
魔物が最後の一撃を放つ・・・その時だった。
「グギャァァァァァァァァ!!」
何かが魔物の脇腹に蹴りを入れて反対の壁にめり込み、絶命させた。自分たちが歯が立たなかった敵を蹴り一発で倒されたことに驚くクラスメイト達。そしてカトレアも驚きを隠せない。
「ほう・・・これはこれは」
そんな中スカウターの表示を見てニヤリと笑うターレス。
そして、その人物は四人の方に肩越しで見やると、
「呼んだか?遅れて悪い」
とだけ話した。白いオーラを纏い、厳しい表情をしていたが、変わらぬ姿に彼女達が気づかぬはずがなかった。
「「「「彩人(君)!!」」」」
次回、「オルクスまるごと超決戦! 前編」ぜってぇ見てくれよな!
檜山は…
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○す(オルクス)
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○す(王都侵攻)
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○す(王都侵攻後)
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反省して更正
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恵里に傀儡にされる
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肉壁
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戦犯として牢獄にぶちこまれる
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トランクスルー化