「・・・何故、だと?」
彩人は親の仇を見るかのような目で睨みつけてくる天乃河に冷めた口調で話した。
「当然じゃないか!クラスメイトを・・・仲間を殺したんだぞ!!」
「檜山が最後に放った攻撃は障壁を張る時間もなかった。それとも何か?檜山の為に誰か犠牲になれとでも?」
「話を逸らすな!人殺しは大罪だぞ!」
「それは地球での話だ。それに今は魔人族と戦争中・・・殺すか、殺されるか。いちいちそんな事を言ってるとまた犠牲者が出るぞ」
「・・・っ、だとしても!お前は人殺しに変わりはない!」
何が何でも天乃河は彩人を糾弾したいようだが、ターレスの気が地上に向かっているのでこんな問答をしている暇は無い。すると助け船が。
「……くだらない男。彩人、先に行ってて」
ユエが無の表情で天乃河に言い放つ。
「待ってくれ。こっちの話は終わっていない。轟の本音を聞かないと仲間として認められない。それに、君は誰なんだ? 助けてくれた事には感謝するけど、初対面の相手にくだらないなんて……失礼だろ? 一体、何がくだらないって言うんだい?」
「……」
天乃河は再び的外れな事を言い出したのでユエはもう構う価値もないと判断し、引きつった笑みを浮かべる天乃河をシカトし、彩人に先に行くように耳打ちする。
「おい轟!どこへ行くんだ!話はまだ終わってないぞ!」
「・・・今することじゃねえよ。ターレスが地上へ向かってるんだ。後にしてもらう」
「な・・・はっ!あのサイヤ人が居ない!?・・・しかし何故轟が・・・って居ない!?」
彩人は天乃河を無視し、ヒロインズ、ユエ達、ヴァルキュリア達に天之河と同行させることを詫びながらターレスの元へ瞬間移動する。
「ほう・・・意外に遅かったな」
「てめえ、転移門の位置を調べるために騎士団を襲ったな?」
「さあ、どうだか」
「まあ、関係ねえ、ターレス!覚悟しろ!!」
「フッ・・・このオレに、勝てると思うか?」
ホルアド上空で、激しい攻防戦が始まった。打撃に打撃、蹴りに蹴りとターレスは超サイヤ人に変身可能な彩人と互角に渡り合う。
「神精樹の実か・・・」
「ハッハッハ、そうだ。神精樹の実を食べ続けてきたこのオレにかなうと思うのか!!」
両手で大きなこぶしを作り、彩人を真下に叩き落す。彩人が体勢を立て直した所に蹴りを入れるが足を掴まれて投げ飛ばされる。飛ばされたターレスは追ってくる彩人に気弾でけん制し、距離を離すとリング状の気弾"キルドライバー"を放つ。
「死ねぇぇぇぇ!!!」
「させるかぁぁぁ!!」
彩人も気弾で相殺し辺りが煙で視界がふさがれたがそこから突っ込んできた彩人がターレスを殴り飛ばす。すぐさまターレスは体勢を立て直すが彩人の猛攻にさらされる。
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「なんだ・・・!?どんどん戦闘力が上がっていく・・・!」
ターレスはスカウターに表示された数値がどんどん上昇していくのを見て焦りを感じ始める。徐々に拮抗していた差が彩人側が上回り始め、顔面を狙った右ストレートをガードした瞬間を捉えられ、左のボディーブローが決まる。
「何だと・・・!」
「まだまだぁ!!」
「・・・くっ、このくたばりぞこないがぁぁぁぁ!」
「ぐおっ」
更に追撃を試みるがターレスの頭突きでカウンターされる。それでは終わらず右足の蹴りが彩人の腹部に命中し吹き飛ばされる。ターレスはそれを追跡し右手で彩人を殴り飛ばす。視界から外れたのをいいことに空中で一回転して地面に向かって叩き落し地面にぶつかる瞬間に背中を蹴りあげ、腹を殴り落とす。
「はぁッ!」
「ぐう、ごぉっ・・・がっ・・・!」
「はぁッ!はぁッ!はぁッ!はぁッ!」
倒れこんだ彩人に無数の気弾を撃ち込む。その時、外の騒がしさに様子を見に来てしまった町の人に見つかってしまう。
「・・・ひえっ!?」
「……なんだ貴様、殺されたいか・・・・ごぉ!?」
ターレスが町の人を手にかけようとするが彩人に投げ飛ばされる。
「た、助かった・・・・あ、あんた・・大丈夫か?」
「俺は、平気だ・・・」
「で、でもボロボロ・・・って飛んだ!?」
ターレスの討伐が優先といえど町に被害を出すわけにはいかないのでターレスを町から引き離す。
「情けない奴だ・・・その力が泣くぞ」
「んだと・・・」
その姿を見ていたターレスは呆れた表情を浮かべた。どうやら彩人が町の人を庇ったのが気に入らないらしい。
「サイヤ人はサイヤ人に相応しい生き方をしろ!」
「どう生きようと俺の勝手だ!」
ターレスと彩人は再びぶつかりあう。が、突如ターレスの様子に変化が。
「ぐぅ・・・・ぐぅおお・・・・」
「!?・・・まさか!」
彩人がターレスの見ている方向には、太陽ではなく"パワーボール"が浮かんでいた。ターレスは迷宮に入る前にクラッシャー軍団と別れ、パワーボールを打ち上げておき魔人族の罠が仕掛けられた神精樹の実とは別の実を隠しながら迷宮を下り、ついでに騎士団を襲撃したのだ。
彩人はすぐさまパワーボールを破壊するもターレスは、大猿の姿に変わった。
「ガゥガガァァァァアアアアーーーー!!」
「くそ、こうなったらとっとと尻尾を切り落とすしか・・・グゥっ!?」
彩人はターレスの背後に回って尻尾を切り落とそうとするが、尻尾に弾き飛ばされてしまう。
『ククク・・・いつまでもただの猿になるとでも思っていたのか?』
「!?理性が保てるのか!」
『大猿になったサイヤ人は戦闘力が10倍・・・分かるはずだ・・・』
「・・・!」
『貴様が中々出来る奴だからな、こちらも全力で行くぞ・・・?』
「クッ!!」
大猿の巨体が彩人に迫る。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「な・・・なんだ、アレ」
大猿ターレスを見た遠藤が震えながらつぶやく。クラスメイト達は勿論、メルドやハジメ達もホルアドの町の外で暴れまわる巨大な怪物に戦慄していた。その中で、ミレディがつぶやく。
「"大猿"・・・サイヤ人の変身の一つ・・・」
「大猿って・・・ミレディ、知ってるの?」
「ええ。ヤモシが言ってたわ。"サイヤ人は月の波長(ブルーツ波)で巨大な猿に変身できる"って・・・でもどうしてまだ昼過ぎなのに・・・」
「・・・あ、前、彩人が言ってたよ!パワーボールって言うのを使えば疑似的な月を作れるって!」
鈴の言葉で変身した理由は分かったが、ミレディは腑に落ちない顔をしている。
「・・・でも、大猿になってるのに理知的な戦いをしてる・・・。ほとんどは理性を失って暴れるだけなのに」
「彩人くんは勝てますよね!?」
「…ん、でもきつそう」
戦いを見ていたユエが焦りを含んだ顔で告げる。恵里が真っ青になる。
「嘘・・・・」
「今のままじゃかなりきついね。巨体のパワーと見かけ以上のスピードだ・・・」
「弱点とかはないのかしら・・・」
「・・・確か、尻尾を切れば元の姿に戻るけど…下手に近づくのはかえって危険ね」
心配そうに彩人の戦いを見守るハジメ達。町への被害を防ぐため、イクス、香織、鈴を中心に魔法を使える者が協力して強力な障壁を張っているが時折ターレスが放つ口からのレーザーのダメージが凄まじい。・・・ちなみに天乃河は「勇者の俺が倒す!」とか言っていたが、坂上と永山の死にに行く気か!と怒鳴られ、メルドの指示で障壁強化に参加している。
「ハジメお姉ちゃん!ユエお姉ちゃん!!」
「こ、これ!離れるでないミュウ!・・・・おお、そなたらか」
「…ミュウ?」
「ティオ!」
そこにミュウとティオが走ってきた。ミュウは大猿を見ると驚いて泣きそうになってしまったため、ティオがあやす。ユエがティオに現状を説明した。ティオ曰く、怪物の出現でミュウをかくまっていたが勇者一行の帰還を聞いて彩人達が戻ってきたと感ずいたミュウがここまで来てしまったのだとか。
「…障壁の手伝いを」
「うむ、助力させてもらおうぞ」
「ユエお姉ちゃん!パパは?パパはどこなの?」
ティオも障壁展開に参加するとミュウが彩人を探してきょろきょろする。
「…ミュウ、パパは今戦ってる。だから待ってて」
「パパが!?パパーーー!!負けないでなのーー!!」
「「「「パパぁ!?」」」」
ミュウが彩人の居る方向に叫んだのを聞いたヒロインズが動揺する。
「ど、どういう事なのハジメちゃん!彩人くん、誰を孕ませたの!?せっかく皆でお祝いしようと思ったのに!!」
「お、落ち着いて香織ちゃん・・・」
「落ち着きなさい、香織。この数か月であそこまで育つわけないじゃない…」
「そ、そっか・・・そうだよね・・・あはは」
「…既成事実」
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『ククク・・・今から焦土と化すあの町のど真ん中に、お前の墓を建ててやる』
「な・・・!」
『同じサイヤ人として生まれたオレからのせめてもの贈り物だ・・・』
ターレスが口に全エネルギーを集中させる。彩人は気を溜めて迎え撃つ体勢に入る。
「来い!」
『・・・町を庇うとはな。サイヤ人の面汚しめ・・・ここで死ねえええええええ!!!!』
「う・・・・・ぐ・・・・・・ぐああああああああ!!!」
大猿ターレスの放った超魔口砲が彩人を巻き込みホルアドに一直線に飛んでいく。彩人は全力で押すがスピードは落ちない。そして障壁にぶつかる寸前、突如大爆発が起こった。その勢いは常軌を逸しており、まだ耐久力のあった障壁が粉々になったが直撃はしなかったため町は奇跡的に無事だった。・・・が、
「彩人くぅぅぅぅぅぅぅん!!!!!!」
香織の悲痛な叫びが響く。クラスメイト達も絶望に満ちた表情を浮かべる。
『フン、所詮は下級戦士・・・無様なもんだ』
ターレスが勝ち誇ったように言う・・・だが。
「…!ハジメ…!」
「・・・・!」
その中でユエとハジメだけは何かに気づき、頬を緩める。と次の瞬間煙が一瞬で払われ、一人の人物が。
『・・・何!?な、なんだ・・・その姿は!』
その人物は、黄金の光を纏って現れた。
「…オレか?オレは・・・
まだ決着ではないぞ。もうちっとだけ続くんじゃ。