ありふれ世界のサイヤ人   作:M88星雲

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ヤンデレ要素が入れにくい・・・

文才ある人、ホントに尊敬します。


アンカジ公国

国全体の危機であると必死に頼み込んでくるビィズ。次期領主ともあろうお方が頭を下げている以上、かなり追い詰められているのは事実。

 

「ねぇ、助けてあげられないかな…。迷宮攻略が先だとは思うけど・・・」

 

意外にもミレディが言い出す。ウザくても〝解放者〟なのか・・・は分からんが。

 

「パパー。たすけてあげないの?」

 

彩人が答える前にミュウに聞かれる。彩人(達)なら出来ると信じて疑わない純粋な言葉に出鼻をくじかれたが彩人は答える。

 

「もとよりアンカジにミュウを預ける予定だった。幼子を危険に晒すわけにはいかねえだろうし・・・、救える命は救えたほうが良いだろ」

 

シアとティオは、そんなハジメに「ふふ」と笑みをこぼしている。ミレディもどこか安堵した表情を浮かべた。彩人が、ふと傍らに居るユエとハジメ達を見ると、彼女達は……いつも通りだ。彩人が、どんな選択をしても必ず己の全てで力になる。言葉にしなくてもユエ達の気持ちははっきりと伝わった。ビィズも感謝の言葉を述べた。

 

「・・・とりあえずあれに乗って欲しい。話はアンカジに向かいながらでも出来る」

 

「・・・!こ、これは一体・・・」

 

魔動四輪に驚きつつ、室内空間の快適さ、冷たい新鮮な水と、ビィズは驚きっぱなしだったがやがて落ち着くとアンカジに起こった異変の事を話し始めた。

 

四日前、アンカジにてオアシスが汚染され、多くの医療関係者含め、原因不明の高熱を発し倒れる人が続出し、国の危機となった。

 

症状を改善する〝静因石〟はグリューエン大火山で少量採取できる貴重な物でありストックもなくなったためアンカジの領主、ゼンゲン公の代わりにビィズが救援要請しようとしたが自分も感染しており、あそこで倒れたのだとか。

 

「父上や母上、妹も既に感染していて、アンカジにストックしてあった静因石を服用することで何とか持ち直したが、衰弱も激しく、とても王国や近隣の町まで赴くことなど出来そうもなかった。だから、私が救援を呼ぶため、一日前に護衛隊と共にアンカジを出発したのだ。その時、症状は出ていなかったが……感染していたのだろうな。おそらく、発症までには個人差があるのだろう。家族が倒れ、国が混乱し、救援は一刻を争うという状況に……動揺していたようだ。万全を期して静因石を服用しておくべきだった。今、こうしている間にも、アンカジの民は命を落としていっているというのに……情けない!」

 

知らぬうちに話をするビィズの言葉に熱がこもる。よほど人民思いなのだろう。護衛がサンドワームによって全滅したのもあるが・・・。だが、症状が出たおかげでサンドワームが食べるのをためらったのだから不幸中の幸いというべきか。

 

「・・・オアシスがやられてるのなら水源の確保が要るな・・・よし、作るか」

 

「つ、作る!?そんなことが出来るのですか!?」

 

「あー・・・、正確にはそれが可能な人が居る」

 

ビィズは魔動四輪で新鮮な水を運ぼうとしていたが、発症から死まで約2日前後と考えると、アンカジに貯水池を作った方が早い。彩人がユエの方を見ると、

 

「…任せて。でも、彩人にも手伝って欲しい」

 

と、小さくて赤い舌で舌なめずりした。周りの視線が痛いが話を続ける。

 

「・・・そのために広い場所が必要となる。何処か広い場所はありますか」

 

「それなら・・・」

 

そしてアンカジに到着しビィズの案内で砂や敵から守る〝真意の裁断〟と言う名のバリアを抜け、広大な土地のある農業地帯へ到着した。

 

「約500平方mあるはずだが…彩人殿、あまり時間をかけるわけには」

 

「そうはかかりませんよ。・・・ユエ、いけるか?」

 

「ん…でも一度に全部は少し厳しい。だから…彩人、"アレ"お願い」

 

「やっぱりか・・・了解、頼むぜ」

 

彩人は念の為代替案を提示したがユエが拒否したので仕方なく続行する。ハジメ達を安全な場所へ移動させたのち彩人とユエは作業を開始する。

 

「〝壊劫〟」

 

巨大な重力のブロックを落として地面を陥没させ、水を溜める貯水所を作る。ビィズは目が飛び出かけるほど驚愕し、ハジメを除くヒロインズ達も驚きを隠せない。重力のブロックが消えたと同時にふらつくユエを彩人が支えると正面に向かい合うように体勢を整える。

 

「いただきます」

 

首筋を突き出し、ユエに吸血させる。

 

カプッ! チュ~、

 

外見に反して妖艶な雰囲気を纏うユエは吸血時は艶めかしさがより顕著となる。ただ吸うだけでなく喘ぐような声と流れ落ちる血の一滴も逃さないと言わんばかりに彩人の首筋を淫靡な音を立てて舐め回す舌の動きがエロスを引き立てている。しかも心酔する相手だからかユエは恍惚の表情を浮かべている。

あまりに官能的な光景にビィズが前かがみになり、鈴と雫はその光景に顔を真っ赤にしつつも指の間からチラチラ見ており、ハジメ、香織、恵里、シアはうらやましそうに見ており、ティオは扇子で朱に染まった顔を覆いながら「これはなんとまぁ官能的じゃのう・・」とつぶやき、ミレディはミュウの目を塞ぎながらも顔を真っ赤にしてモジモジしていた。

 

〝血力変換〟で魔力の回復(過剰)を終えたユエをやや貧血気味の彩人が離すとユエは名残惜しそうに彩人から離れた。

ハジメが魔動四輪で金属コーティングを施している間にユエが香織達に彩人の血の味の食レポをしていたが彩人は聞いてないふりをした。

・・・舌なめずりの音が聞こえたが知ったことではない。

 

「〝虚波〟」

 

貯水槽に大量の水が流れ、貯水池はものの数十分で完成した。飲み水が確保できた事をビィズの父、アンカジ領主のランズィに報告した。

 

「かたじけない・・・!これで新たな感染者はでないだろう。・・・もしやあなた方は神の使いか?」

 

「女神と・・・その使いの方だったのですか・・・?」

 

「いいえ、ちがいます」

 

貴重なオアシスの所に案内してもらうためにもランズィと会っておこうというもので、ランズィはすんなりオアシスの所に案内してくれた。途中で香織を医療院に向かわせ、シアもサポートとしてついていかせた。

 

だが、当のオアシスは・・・外見上異変が起きているとは思えないほど綺麗だった。・・・外見上(・・・)は。

 

「(魔物の気・・・)領主さん、ここの調査はどの程度調べました?」

 

「……確か、資料ではオアシスとそこから流れる川、各所井戸の水質調査と地下水脈の調査を行ったようだ。水質は息子から聞いての通り、地下水脈は特に異常は見つからなかった。もっとも、調べられたのは、このオアシスから数十メートルが限度だが。オアシスの底まではまだ手が回っていない」

 

続いてオアシスに漂う黒い物体について聞く。

 

「ではオアシスの底には、何かアーティファクトでも沈めてあるんですか?」

 

「? いや。オアシスの警備と管理に、とあるアーティファクトが使われているが、それは地上に設置してある……結界系のアーティファクトでな、オアシス全体を汚染されるなどありえん事だ。事実、今までオアシスが汚染されたことなど一度もなかったのだ」

 

「・・・そうですか」

 

すると彩人はその黒い物体に気弾を撃ち込む。オアシスで小規模の爆発が起こり、水柱が上がる。・・・と言うより彩人にいい所を見せようとハジメがこっそり魚雷を投げ込もうとしていたので先手を打った。

するとオアシスから全高10m程のスライムのような物体が出現する。

 

「なんだ……この魔物は一体何なんだ? バチェラム……なのか?」

 

バチェラムとはこの世界におけるスライムの名称である。

 

「多分こいつが原因でしょうね」

 

「……確かに、そう考えるのが妥当か。だが倒せるのか?」

 

スライムが怒りに任せて無数の触手を伸ばしてくるがユエ、恵里、ティオの氷、炎魔法で砕かれたり蒸発されたり、雫に切られたりハジメに打ち抜かれたりされ、それでも突破した触手はミレディの重力球に吸い込まれたり鈴が完全に防ぎ、ランズィ達を守った。

 

「ええ、全部吹き飛ばせば関係ないっスから」

 

魔石を体中に縦横無尽に動かしていたが、彩人の気功波で跡形もなく蒸発、消滅した。

 

「……終わったのかね?」

 

「ええ。汚染が治ったかはどうかは別物ですが」

 

ランズィたちは国の危機を招いた元凶があっさり倒されたことが信じられなかったが、彩人達の戦闘能力の方が異常なのと目の前で消し炭になったのでとりあえず水質の鑑定を部下の一人にやらせる。

 

「……どうだ?」

 

「……いえ、汚染されたままです」

 

「…そうか・・・」

 

「まぁ、そう気を落とすでない。元凶がいなくなった以上、これ以上汚染が進むことはない。新鮮な水は地下水脈からいくらでも湧き出るのじゃから、上手く汚染水を排出してやれば、そう遠くないうちに元のオアシスを取り戻せよう」

 

汚染自体は残ったが、ティオの言葉で奮起するアンカジの民たち。愛国心の強さを実感させる。

ランズィから礼を言われたのちグリューエン大火山に向かうのだが、シアと合流するため医療院に向かい、患者を診ていた香織から容態を聞いたのち

 

「香織、どれぐらい持たせられる」

 

「少なくとも・・・三日。頑張れば四日の間は持つよ。その間、だれも死なせない」

 

「そうか・・・済まないが、頼む。・・・ミュウもここで待っててくれるか」

 

「えぇ~!?またおるすばん?やなの!パパと一緒がいいの!」

 

「香織お姉ちゃんを助けてやってくれ。これはミュウにしかできない事なんだ」

 

彩人と離れたくないミュウは駄々をこねるが彩人から期待されていると知るとミュウはぱあっと顔をほころばせ、

 

「わかったの!」

 

と了承した。

 

「香織…僕たちも行くよ」

 

「カオリン、手伝えなくてゴメン!!」

 

「ごめんなさい、香織」

 

「ううん、気にしないで、恵里ちゃん、鈴ちゃん、雫ちゃん。これは私にしかできない事だから・・・ね?彩人くん」

 

「そうだ・・・。頼む」

 

「・・・ね?だからみんなも大迷宮頑張ってね!・・・彩人くんの力になるためにも」

 

香織の言葉でサムズアップするヒロインズ。

 

「・・・じゃ、行ってくるぜ」

 

「私も頑張るから……無事に帰ってきてね。待ってるから……」

 

「おう、ミュウを頼んだ」

 

「うん……それで、その……キス、ダメかな? いってらっしゃいのキス……みたいな」

 

「・・・は?」

 

その一言でほぼ全員の瞳がキラリと光った。数分後、恍惚とした美少女たちが居たそうな。




でも好きに書きたいんじゃい!!

グリューエン大火山に挑むのは・・・(香織は残留確定)

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