グリューエン大火山。
アンカジの北に存在する溶岩円頂丘に近い形をした火山である。
その火山へ行く道は巨大な砂嵐が行く手を阻む。その姿はさながら某天空の城を彷彿とさせる。
砂嵐を魔動四輪で突破しそこから襲い来るサンドワームをユエとティオが蹴散らし、火山へたどり着いた。
グリューエン大火山にある迷宮の入口は、頂上にあるとの事だったので、進める所まで四輪で坂道を上がっていく。露出した岩肌は赤黒い色をしており、あちこちから蒸気が噴出していた。活火山であるにも関わらず、一度も噴火したことがないという点も、大迷宮らしい不思議さだ。
やがて傾斜がひどく魔動四輪では進めないところに来たのでここからは徒歩で進む。
「あっづう・・・」
「これは想像以上ね・・・」
「・・・熱すぎる」
「うわぅ……あ、あついですぅ」
「ん~……」
「これは・・・砂漠の日照りとは別物だね・・・これはさっさとクリアするに限るよ」
「ふむ、妾は、むしろ適温なのじゃが……」
外に出た途端に襲い来る熱気にやられるメンバー達。ティオは平気そうだが、冷房が効いた場所からこの熱気はやる気も失せるというもの。
「情けないな~この程度の熱さなんて私はへっちゃらだよ~?wwww」
「氷魔法使ってるからだろ」
「んな!ずるいよミレディちゃん!」
氷魔法で自身を冷やして煽るミレディのカラクリを見破る彩人。その魔法の使い方を吐かせようとする鈴達を尻目に、
「ふむ…主様、余裕があるように見えるのじゃがそれも"気"によるものかの?」
「いや、熱さに耐える修行をしたんだ」
「ほう…修行とな」
彩人とティオの会話に、周りも集まってくる。内容を知りたがるが、
「後悔しないな?」
と彩人に告げられ、やや身構える乙女達だが聞くことを選んだ。好きな人の事は全部知りたいらしい。
「そうか。あれは、俺がブルックの町に居る時だ・・・」
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「あら~ん彩人きゅん♥今日もイイオ・ト・コ♥・・・それはそうと、今回は灼熱の訓練よ~!」
「灼熱・・・?」
「そう。冒険者たるもの灼熱の大地や極寒も世界・・・ありとあらゆる自然に挑まないといけないのよん!まずは、高温に耐える訓練よ!熱を舐めてはだめよん!」
「それはそうだな・・・して、どのような訓練を?」
「んん~♥積極的なコね♥いいわ、早速いくわよ~ん!!出てらっしゃ~~い!」
「「「「「「「「「「「「「「「「はぁ~~~い♥♥」」」」」」」」」」」」」」」」」」
「・・・え、漢女軍団の皆様……何故にブーメランパンツ一丁」
「そう、今回の訓練はその名も
「・・・なるほど。でも囲んだとはいえ温度は……」
「ノンノン!漢女を舐めちゃだめよん!スクラムの温度は、あの【グリューエン大火山】のマグマに匹敵すると言われているのよ!!」
「これは修行っすね」
「そう!彩人きゅんにはとてつもない可能性を感じるの!!強くなって欲しいのよぉ~ん♥」
「それで、耐えればいいんスね?」
「そう。でも気を付けてぇ~ん、もしスクラムで気絶しちゃったらぁ~ん・・・」
「?」
「
「…」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「もうよいのじゃ!気軽に聞いた妾が悪うかった!」
「お願いだから止めてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁ!オカマが・・・・オカマの山ぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「お、落ち着いてよ鈴・・・で、彩人の自主規制はどうなt」
「恵里、貴女もおかしくなってるわよ!?」
「あ・・・う・・・・あ・・・・・・・・・」
「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」
「」
恐怖のあまりティオとミレディが話を遮断し、鈴と恵里が発狂し、シア、ユエ、ハジメがトラウマを刺激された。
「・・・だから言ったろうに。実際ほぼ同じだったからビックリだよ。あと、お持ち帰りとか変な事はされてないから」
それを聞いてミレディ以外がホッとし、ミレディがそういう問題!?とか言っていたが無視。これはあくまでも修行なのだから。・・・慣れるまで何回かコレやったけど。
しかし、肝が冷えたからか冷静になれた一行はハジメの〝熱源感知〟を駆使して不意に飛び出てくるマグマを避けながら奥に進みつつ〝静因石〟を探すが、
「小さいな・・・」
「じゃが、これで間違いないぞ、主様」
とにかく見つかる物が小さい。入口付近のは既に取られているらしく、人数が多くても欠片ばかりだった。仕方ないので奥へと進むことにした。
ハジメの〝鉱物系探査〟で取れるだけの静因石を回収しつつ先に進んでいくと未踏の階に到達する。しかし環境が環境なので7層位だが、火山に相応しいマグマを纏った雄牛の火炎が彩人達を襲うも
「〝絶禍〟」
ユエの重力球であっさり無効化される。その炎をレーザー状にして打ち返すが、威力を高めたにも関わらず雄牛はピンピンしている。
「むぅ……やっぱり、炎系は効かないみたい」
「外見が外見だしな・・・・」
炎系統を使う恵里が露骨にがっかりしていたが、
「彩人さん、ここは私にお任せを!」
シアがふんすっ!と鼻を鳴らして前に歩み出る。近くでハジメがサムズアップしている辺り何かあるのだろうが。
「・・・任せた」
「よっしゃーですぅ! 殺ったるですぅ!」
突進してくるマグマ牛にシアはジャンプしつつ縦回転し勢いをつけてマグマ牛の頭部を捉えると、その瞬間直撃した部分を中心にして淡青色の魔力の波紋が広がると同時に凄まじい衝撃波が発生し、マグマ牛の頭部が爆発したと錯覚するほどのパワーでマグマ牛を絶命させる。
シアはその勢いに気圧されるもドリュッケンを支点に回転し地面に着地する。
「お、おうぅ。ハジメさん、やった本人である私が引くくらいすごい威力ですよ、この新機能」
「〝衝撃変換〟・・・侮れない威力だね」
あまりの威力にユエ達も感心する。実は彩人が瞬殺したアハトドの肉をハジメがこっそり回収し得た能力である。ステータスの変化はほぼないが新たな固有魔法を手に入れた。
この〝衝撃変換〟を生成魔法で鉱石に付加し、それを新たにドリュッケンに組み込んだのだ。
だが、その先もマグマを纏った魔物のオンパレード。火山のマグマを利用できる上に生半可な魔法は通さないためかなり苦戦を強いられた。炎系魔法をメインウエポンとする恵里はもちろん、近距離戦の雫やシアは苦戦していたが、鈴の結界でマグマを遮断することで逃亡や攻撃を防ぐといった方法で彩人達をサポートした。
・・・しかし進めば進むほど厳しくなる熱さが冷静さを奪っていく。
「頭が・・・ぼーーっとしてきちゃった・・・」
「うう・・・汗が目に・・・」
「・・・っ、柄まで熱が伝わってくるわ」
「あーもう熱過ぎ!!」
「はぁはぁ……暑いですぅ」
「……シア、暑いと思うから暑い。流れているのは唯の水……ほら、涼しい、ふふ」
「むっ、主様よ! ユエが壊れかけておるのじゃ! 目が虚ろになっておる!」
「これ以上は不味いな」
「・・・冷房型アーティファクト、もうちょい作っておくべきだったなぁ・・・」
仕方ないのでハジメに頼んで即席の避難所をマグマから離れたところの壁の中に作り、〝鉱物分離〟と〝圧縮錬成〟で安全を確保し、ユエに氷塊を出させてクールダウンする。氷に触れた乙女達が溶けていく。
「気持ちは分かるけど汗は拭いておいた方がいいと思うのだけど・・・」
「あ、タオルならあるよ」
雫が言うとハジメが〝宝物庫〟からタオルを取り出し、全員に配る。
「主様は、まだ余裕そうじゃの?・・・・やはり修行とやらの成果が」
「余裕・・・とは言えねえ。長時間は流石にキツい」
「ふむ、主様でも参る程ということは……おそらく、それがこの大迷宮のコンセプトなのじゃろうな」
「コンセプト、か・・・言われてみればそうだな・・・」
「うむ。主様から色々話を聞いて思ったのじゃが、大迷宮は試練なんじゃろ? 神に挑むための……なら、それぞれに何らかのコンセプトでもあるのかと思ったのじゃよ。例えば、主様が話してくれた【オルクス大迷宮】は、数多の魔物とのバリエーション豊かな戦闘を経て経験を積むこと。【ライセン大迷宮】は、魔法という強力な力を抜きに、あらゆる攻撃への対応力を磨くこと。この【グリューエン大火山】は、暑さによる集中力の阻害と、その状況下での奇襲への対応といったところではないかのぉ?」
「試練そのものが解放者達の〝教え〟って事か・・・改めて考えると考えられてるな」
「確かにこれが試練って感じ」
ティオの見解に彩人が感心する中、ハジメが嬉しそうに言う。
「ハジメ殿、何やらうれしそうなのじゃが、何かあったのかのう?」
「人の悪意が入ってない試練って素晴らしい!」
「…試練らしい試練」
「どこぞのファッキン迷宮も見習って欲しいものですよ」
「なんで!?もういいじゃん!仲間でしょぉ~!?」
「「「それはそれ、これはこれ」」」
「…タスケテ」
「自業自得だろうに・・・」
「ミレディ殿、こればっかりは主様と同意見じゃ」
ミレディが顔面蒼白になって彩人にしがみついている。ハジメ達は未だ根に持っているようだ。
それはともかく、彩人とて一人の男。周りに美女や美少女が肌を晒しているのだから熱さで集中力が落ちているのも重なって無意識のうちに首筋、胸元、腹部、太ももといった部位に視線が向いてしまう。慌てて視線を逸らすが手遅れだった。
不意にハジメが彩人の耳元でささやく。
「彩人君のス・ケ・ベ♡」
「・・・・済まねえ」
「ううん、いいんだよ?むしろもっと見ていいよ」
「…彩人、綺麗にしてくれる?」
「彩人さん、私はいつでもウェルカムです!お好きなだけ触ってください!」
「主様、妾も触っても構わぬぞ?」
「」
ティオはまんざらでもない様子で、他のメンツはウェルカム状態。彩人が固まっていると今度は後ろから、
「君がいいなら僕の事も拭いて欲しいな・・・♡多少変な所に触れちゃっても僕は平気だから・・・♡」
「彩人・・・私も大丈夫だよ・・・?」
「あ、貴方が良いなら・・・私も触って・・・いいのだけれど」
「・・・」
完全に受け入れ体勢だった。この後彩人が取った選択は・・・ご想像にお任せします。
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アンカジ医療院にて。
「・・・・、すみません、少し休憩を・・・」
丸一日ぶっ通しで患者対応をしていた香織はふらつきながらも休憩用の部屋に入っていく。
「聖女様も流石にお疲れのようだな・・・」
「しかし聖女様に頼りっきりではいかん。少しでもお役に・・・」
その時だった。
「はうぅぅぅぅぅぅぅ~~!!彩人くんのシャツ(スーハースーハー)!!!・・・・・♡♡♡はぁーーーーッ生き返るぅぅ・・・♡(スーッハーーーーーーッスーーーーーーーッ)」
「「」」
少しの間をあけて、扉から元気溌剌の香織が出てきた。
「さぁ!もうひと踏ん張りですよ、皆さん!!!」
作業効率が爆上がりしたそうな。