今回かなり長いです。
「(・・・・今かよ)」
彩人がスーパーノヴァを破壊した途端に降り注いできた白い極光。それが目の前に迫った時に彩人はそうつぶやいた。一刹那の直後、凄絶な熱量と衝撃を伴った破壊の嵐が彩人を飲み込んだ。
「「彩人(君)!!!!!!!!!!」」
一瞬目の前の現実に気が動転し固まっていたシア、ティオ、ミレディ、雫、鈴、恵里だったがユエとハジメの今まで聞いたことのない悲痛な叫び声で正気に戻される。極光が収まると同時にユエとハジメは〝来翔〟で満身創痍の彩人を支え、近くの足場へ彩人をおろす。
今まさにヒュドラの時の悪夢がよみがえってしまった。
「彩人!彩人!!」
「・・・!やっぱり効きが悪い・・・!!」
ユエが必死に呼びかけ、ハジメが神水を飲ませるもやはり治癒の速度が遅い。全身のほとんどが焼けただれており、反応が無いのも二人の不安を煽る。半ばパニックになりつつあった二人だが、
「上じゃ!!」
ティオの叫び声と同時に無数の閃光が豪雨の如く降り注いだ。それは、縮小版の極光だ。先程の一撃に比べれば十分の一程度の威力と規模、されど一発一発が確実にその身を滅ぼす死の光であるが、ユエ達は冷静さを失っており気づくのが大幅に遅れてしまう。
「させんのじゃ! 〝嵐空〟!」
「せ、〝聖絶〟!!」
ティオの風系統の中級防御魔法〝嵐空〟と鈴の〝聖絶〟が極光を防ぐ。
「〝絶禍〟!!」
鈴が障壁を張ったおかげで猶予が伸び、極光をまとめて打ち返す。
ドドドドドドドドドドッ!!!
しかし攻撃は止まずユエも〝聖絶〟を発動し、白き死の雨をしのぐ。ただ、極光は彩人に集中しティオ達には足止め程度だったが近づけない。
「彩人さぁん!!!彩人さぁぁぁぁん!!!!」
「落ち着くのじゃ、シア! 今、妾の守りから出てはお主でも死ぬぞ!」
「でも・・・彩人さんがぁ・・・!」
「我慢して!」
そんな状況でも飛び出そうとするシアをティオとミレディが何とか止める。隣でもシアと同じく彩人の所へ向かおうとしている恵里を雫が押さえている。
「彩人!!!彩人がぁ・・・!!!」
「ダメよ恵里!」
「エリリン落ち着いて!皆同じ気持ちだよ!でも今行ったらダメだよ!!」
狂ったように彩人の名前を叫び続ける恵里とシア。ティオも雫も鈴も気持ちは痛いほどわかる。今すぐにでも彼のもとへ行きたいと。しかし超サイヤ人でも耐えられない上に神水による治癒効果すら薄れさせるという恐るべき攻撃の最中に無防備で飛び出させるわけには行かない。
十秒か、それとも一分か……永遠に続くかと思われた極光の嵐は最後に一際激しく降り注いだあと、ようやく終わりを見せた。周囲は、見るも無残な状態になっており、あちこちから白煙が上がっている。
ユエとティオ、鈴は魔晶石でなんとか魔力を回復する。ユエは未だ意識の戻らない彩人を抱き寄せた。
「彩人…貴方は私達が守るから…」
同時に、上空から感嘆半分呆れ半分の男の声が降ってきた。
「…寝首を掻かれたとはいえ待ち伏せていて良かった。仕留めることは出来なかったが〝神敵〟に裁きの鉄槌を下し、裏切り者のクウラも始末できた」
ユエ達がその方向を見ると、大きな白い竜を中心に同じような白い竜が無数に視界を覆い尽くしている。大きな竜の背には赤髪で浅黒い肌、僅かに尖った耳を持つ魔人族の男がいた。
「しかし、私の白竜が、ブレスを直撃させても殺しきれんとは……おまけに報告にあった強力にして未知の武器……女共もだ。まさか総数500体の灰竜の掃射を耐えきるなど有り得んことだ。貴様等、一体何者だ? いくつの神代魔法を修得している?」
ユエ達の実力を神代魔法だと思っているようで、魔人族の男はティオとよく似た黄金の瞳でハジメ達に質問する。
「質問する前に、まず名乗ったら? 魔人族は礼儀を知らないの?」
ハジメはドンナーを魔人族の男に向けてそう答えた。
「……これから死にゆく者に名乗りが必要とは思えんな」
「同感。テンプレだから聞いてみただけ。私も興味ないし気にしなくていい。ところで、お友達の腕の調子はどうかな?」
彩人の回復の時間稼ぎのためにハジメが魔人族を挑発する。・・・が、心配なのは変わらずドンナーを握る手がわずかに震えていた。
「気が変わった。貴様は、私の名を骨身に刻め。私の名はフリード・バグアー。異教徒共に神罰を下す忠実なる神の使徒である」
「神の使徒・・・神代魔法を手に入れてそう名乗るのを許されたって事かな?あんな極光を撃てる魔物がこんなにいるとは思えないから・・・魔物を作る類の魔法かな?協力無比な軍隊を作れるなら、そりゃあ神の使徒くらい名乗れるよね」
「その通りだ。神代の力を手に入れた私に、〝アルヴ様〟は直接語りかけて下さった。〝我が使徒〟と。故に、私は、己の全てを賭けて主の望みを叶える。その障碍と成りうる貴様等の存在を、特に主に牙を向いたその〝神敵〟を!!私は全力で否定する」
神敵、のあたりの圧が強かった。よほどサイヤ人が憎いのだろう。
「え・・・?私の時代では魔人族は神を信仰していないどころか〝アルヴ様〟なんて居なかった・・・!」
フリードの発言にミレディが困惑する。
「我が主を拒絶するか、不届き者め!ここで死n・・・!?」
「ごちゃごちゃうるせえよ・・・妄言吐く暇があるのか?」
ミレディの発言に腹を立てたフリードがミレディを攻撃しようとするが気弾に阻まれる。
「ぬ・・・貴様!!生きていたのか!!」
「彩人君!」
「「「「「彩人!」」」」」
「彩人さん!」
「無事か!主様よ!」
何とか上体を起こすがふらつくのでユエに支えてもらう。
「ああ・・・俺は大丈夫だ。だから今は目の前の"敵"に集中しろ!!」
その言葉で奮起する乙女達。ハジメはクロスビットを召喚しユエが〝雷龍〟を、ティオがブレスを、シアが炸裂スラッグ弾で、ミレディは重力魔法と他属性の魔法で攻撃する。
・・・が、灰竜と呼ばれた小型の竜が射線上に入り背中の亀がバリアを展開するのでなかなか攻撃が通らない。ハジメも〝空力〟で直接叩きに行くものの数の暴力で押される。ハジメは負傷していないので使える武器を反動を気にせずガンガンぶっ放すが灰竜の壁が阻み、フリードに攻撃が入らない。
「私の連れている魔物が竜だけだと思ったか? この守りはそう簡単には抜けんよ。さぁ、見せてやろう。私が手にしたもう一つの力を。神代の力を!」
グリューエン大火山で手に入れた魔法であろう"ソレ"で彩人の裏をかこうとするが、
「「〝界穿〟」!・・・・何!?」
フリードが出てきたのは全く的外れな場所。
「…私達も、持ってる」
「くっ、貴様らもか!!」
ユエがフリードの神代魔法、〝空間魔法〟に干渉し位置をずらした。とはいえユエでも発動が安定しないため確実に発動するため気をそらして時間を稼いでいた。フリードが灰竜を呼び寄せて防御しようとするが、灰竜はフリードの乗る白竜を攻撃した。
グエエエエエェ・・・・
「ウラノス!・・・これは・・・まさか!」
「そう、僕の〝降霊術〟だよ~」
よく見ると灰竜同士で撃ちあいが起こっていた。倒した(形の残った)灰竜は恵里が降霊術で操り、味方としていた。
「おのれ・・・!報告にあった〝降霊術師〟か!」
フリードは劣勢になったのを感じているが、彩人だけはどうしても殺したいようでハジメの追撃をいなしながら灰竜で彩人を攻撃するも、
「もう彩人は傷つけさせないよ!!」
「〝結界師〟・・・!」
鈴の障壁が防ぐ。何とか障壁を突破しようとしたが、
「彩人の仇よ・・・受けてみなさい!!」
「ぐあっ!!!・・・おのれ・・・!!」
彩人に気を取られて灰竜に乗って接近してきた雫に攻撃される。残る灰竜もユエ、ミレディ、シア、ティオの攻撃をいなすのが精いっぱいで防御にまわるのが厳しい。フリードに追撃しようとするハジメと雫から主を守ろうとウラノスと呼ばれた白竜が二人を振り払う。その間にもフリードは彩人にトドメを刺そうとするがハジメ達の妨害で一向に狙いが定まらない。
「…紙一重で決定打を打てないとはっ!」
重症を負っているにもかかわらず彩人に攻撃することすらできず、数では上回っているのに瞬時に劣勢となりフリードは歯噛みし、再び〝空間魔法〟を発動しようとするが、
〝そうはさせんよ!〟
「黒竜だと!?」
ハジメ、雫に続いてフリードを追い詰めるのは〝竜化〟したティオだ。サイズは白竜に若干劣るがそれでも凄まじい存在感を醸し出している。雫とハジメから距離を取っていたところをティオが弾いた。それと同時に巻き込まれないようにハジメと雫が離れたのを見届け、ティオは白竜とフリードを睨みつけた。
〝紛い物の分際で随分と調子に乗るのぉ! これ以上、主様は傷つけさせんぞ!〟
魔人族側に竜人族の存在を知られるのは避けたかった。また500年前のように淘汰される可能性があるからだ。しかしティオは自分が無敵と信じて疑わなかった彩人が極光で重傷を負ったことで激しく動揺した。そして思い出した。超サイヤ人であれど一人の"人間"であることを。一瞬の油断が命取りになりかねない事を。そのことを忘れるほど自分は彩人に心酔していたのだと、失いたくない存在であると自覚した。
だからこそ〝竜化〟することを選んだ。仲間の命がかかっている以上、出し惜しみなど出来ないし何より竜人族ティオの誇りにかけて仲間の命と掟を天秤にかけることはしてはならなかったのだから。
〝若いのぉ! 覚えておくのじゃな! これが〝竜〟のブレスよぉ!〟
「ウラノス!!」
ティオが暗黒のブレスを放とうとするのを見てフリードはウラノスに指示を出し、白いブレスで迎え撃つ。だが意志と覚悟を持った者とまがい物では明らかな差がある。徐々に白いブレスが押し返されていく。
「くっ、まさか、このような場所で竜人族の生き残りに会うとは……仕方あるまい。未だ危険を伴うが、この魔法で空間ごと……!?」
撤退の意志を固めたフリードだが、右側に青い光を見た。その方向を凝視すると、両手を上下で重ねた超サイヤ人の彩人が気功波を放つ寸前の状態で急に現れた。
「き、貴様も神代魔法を!!??」
「くたばれフリードォォォ!!!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!??」
彩人の両手から放たれた〝超かめはめ波〟がティオとのブレスの押し合いで動けないウラノスごとフリードを飲み込み、火山の岩壁にクウラの開けた穴以上の大穴を穿ちまとめて吹き飛ばす。それと同時に主の危機を察したのか灰竜たちも穴から出ていく。
「・・・!ブッ・・・ゴホッ・・・ガハッ」
〝主様よ! しっかりするのじゃ!〟
フルチャージさせたかめはめ波の反動で吐血しながら落下しそうになる彩人をティオが自身の背中に乗せることで救出する。近くの足場に彩人をおろすとユエ達が寄ってくる。
「彩人…」
「彩人君!」
「「「彩人!」」」
「彩人・・・!!」
「彩人さん!」
しかし、彩人達の真上に満身創痍のフリードとウラノスが居た。よく見るとといつぞやの白鴉が10羽ほどぐったりしている。とはいえ飛ぶのが精一杯と言ったところだが。
「……恐るべき戦闘力だ。……ハァ、ハァ……侍らしている女共も尋常ではない、な……。よもや、神代の力を使って、なお、ここまで追い詰められる、と、は……最初の一撃を当てられていなければ、蹴散らされていたのは私の方、か……」
ボロボロでありながら彩人に殺気を送れるのは大した胆力である。
「この手は使いたくはなかったのだがな……貴様等ほどの強敵を殺せるなら必要な対価だったと割り切ろう」
「・・・っ、やりやがったなてめえ・・・」
少し微笑むフリードと苦々しい表情の彩人の会話に周りがキョトンとしていると突然マグマの流れが激しくなった。
「んぁ!?」
「「わぁっ!?」」
「「「「きゃあ!?」」」」
〝ぬおっ!?〟
そして、よく見るとマグマの水位が上がっている。
「一体何を!?」
「要石を破壊しただけだ」
ミレディの質問に淡々と答えるフリード。
「ここは活火山なのに噴火が一度も起こっていない・・・だとするならマグマの流れをコントロールする"何か"がある。・・・それを破壊したんだろ?」
「察しがいいな。マグマ溜まりを鎮めている巨大な要石を破壊させてもらった。間も無く、この大迷宮は破壊される。神代魔法を同胞にも授けられないのは痛恨だが……貴様等をここで仕留められるなら惜しくない対価だ。大迷宮もろとも果てるがいい」
そう告げるとフリードはさっさと火口から脱出しようとする。逃がすはずもなくティオが追跡するが灰竜の妨害にあう。ユエの
〝絶禍〟と恵里の傀儡竜の援護で進むが極光のレーザーが行く手をはばむ。同時にハジメから〝宝物庫〟を借りた彩人が瞬間移動でティオの背中に乗る。
「ティオ、お前は
〝主様よ、妾は、妾だけは最後を共に過ごすに値しないというのか? 妾に切り捨てろと、そういうのか? 妾は……〟
「違う。〝静因石〟を確実に届けるためだ、俺達は死なねえしアイツは今度会ったら消し炭にする。だが、気が減ってる今じゃアンカジまで飛ぶのはキツい。今頼れるのはお前だけなんだ、ティオ!」
彩人の言葉に内心歓喜に震えるティオ。本気で伴侶になりたいと思う相手から託されたのだから。それに対しティオはただ一言。
〝任せよ!〟
「ついでに・・・香織とミュウに伝言を。〝ちょっと寄り道する〟だ。頼んだぞ」
〝ふふ、委細承知じゃよ〟
ティオに〝宝物庫〟を託したのち、彩人がティオの背中に触れると黄金の光がティオの周りを包む。
〝これは・・・?〟
「俺の気だ。俺が生きてる限り気がお前を守る。頼んだぜ」
〝・・・!!〟
それを言った直後、彩人は再び瞬間移動でハジメ達の元へ。
黄金の気を纏った黒竜は妨害する灰竜のレーザーの雨の中を突き進んでいく。ユエと恵里の援護を受けつつ〝痛覚変換〟で灰竜のレーザーを突破するティオ。しかしフリードに気づかれ、白竜のブレスがティオを襲うが、黄金の気がティオの正面に集中し、ティオを守った。
〝(この妾が誰かに守ってもらうとはのう……じゃがとてつもなく嬉しいのう。主様よ、愛しておるぞ)〟
「あの状況から出て来るとはっ! 化け物揃いめっ! だが、いかに黒竜と言えど既に満身創痍。ここで仕留めッ!?な、何故貴様が・・・」
〝!?〟
上空でとんでもないことが起こっていたがそれに気づかず彩人はハジメに頼んで潜水艦をあらかじめ出させておいたのを近くに持ってきていた。
「全員乗れたよ!」
「彩人…行こう」
全員乗り込み瞬間移動で戻ってきた彩人が乗り込もうとしたその時。何者かによって彩人は潜水艦からはじき出される。
「逃がしはせんぞ、サイヤ人!!」
「なっ・・・サウザー!!」
「…!させな…!?!?」
「お前たちに用はない!!」
ボロボロのサウザーだった。サウザーは潜水艦から出ようとするユエ達が攻撃する前にハッチを閉め、マグマの海に落としてしまった。
「フハハハハ!これで貴様も袋のネズミだ!」
「はっはっは!でかしたぞサウザー!」
真上を見るとあちこち焼けただれたクウラが再び〝スーパーノヴァ〟を放とうとする。
「どいつもこいつもオレをコケにしやがって・・・フリード、貴様はさっきの空間魔法とやらで消えたフリをしたらしい・・・まだまだオレも甘い。ここで貴様ら全員皆殺しだァ!!」
「くっ・・・『ティオ、逃げろ!!生き延びろ!!』」
『〝!?何を言うておる!主様!あれを今度喰らったら・・・〟』
「『俺は絶対に死なない、俺を信じろ』」
『〝…っ、承知した〟』
ティオにテレパシーで呼びかけた直後、サウザーの気弾でダメージを受ける彩人。
「何をしている?貴様の仲間はもう居ない!・・・だが念の為、ここで死ね・・・・!?」
サウザーが確実に彩人にトドメを刺そうとするがマグマが不安定だった為かサウザーの立つ足場が崩れ、サウザーはマグマの海へ落ちて行った。
「何処へ行こうと同じだ!・・・この大地もろとも・・・消えてなくなれぇぇぇぇ!!!!!」
クウラはありったけの力を込めたスーパーノヴァを放つ。火山に接触すると同時に閃光と共に大爆発が起こった。
クウラ本人も爆発に巻き込まれ、爆風でフリードたちは勿論先に移動を開始したティオにまで影響し、吹き飛ばされた。閃光が止むと同時に吹き飛ばされながら視界に入った光景に目を疑った。
砂嵐が消え、火山が丸ごと消失し広大な砂漠の大地に巨大なクレーターが出来ていた。
それでもティオは黄金の気を感じ、彩人の生還を祈った。・・・が、次の瞬間、
〝!?な、何故じゃ…気が…どんどん弱く……!!〟
ティオの周りの黄金のオーラがなくなっていく。
〝嫌じゃ…嫌じゃ…!!主様!!妾を置いて行かないでおくれ……!!!主様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!〟
虚空の彼方にティオの声がこだました。
クウラのしぶとさと因縁を考えたらこれくらいするよな・・・って思う。