親方!空から女の子が!(娘ェです)
しばらく気絶していた彩人だったが神水のおかげでなんとか復活し水面まで浮上する。しかし、
「お前は人間のようだが、何者だ?ここで何をしている」
先が三股になっている槍を突き出した複数の人が彩人を囲んでいる。人数は10人と少ないがその誰もが、エメラルドグリーンの髪と扇状のヒレのような耳を付けていた。どう見ても、海人族の集団である。
「見ての通り漂流中で・・・」
「騙されんぞ! そうやって近付き、あの子を攫ったのだろう!?」
「そうやって、あの子も攫ったのか? また、我らの子を攫いに来たのか!」
話が通じない。ミュウの事を言っているのだろうがとぼけても正直に言っても捕まる未来しか見えない。舞空術で逃げてもいいがやましい事があるに違いないと思われるだろう。
「逃げようとしても無駄だぞ!海原は我々海人族の庭だ!」
「手足を切り落としてでも、あの子の居場所を吐かせてやる!」
「安心しろ。王国に引き渡すまで生かしてやる。状態は保障しないがな」
海人族は結束力が強く、情も深いため仲間の敵は自分の敵、という訳なのだ。抵抗しても不利になるだけなので降参の意を込めて手を上げる。
「潔いな・・・だがそれで罪が軽くなると思うなよ!!」
一人の海人族が怒りの形相で彩人の両手両足を拘束しエリセンへ連行する。海上を引きずられた上に桟橋に投げ落とされる彩人。
「・・・っ」
「さぁ、吐いてもらおうか。ミュウちゃんは何処に居る?」
桟橋に連行してきたのもあわせて20人、桟橋の周りに15人ほどの海人族が待機している。何が何でも逃がさないつもりらしい。
「アンカジに居る。仲間が保護しているはずだ。フューレンのギルド支部長からの依頼で送還中で」
「嘘をつくな!」
「ここで嘘をつくメリットはない・・・。アンカジに行けば証明できる・・・ここに居るだれかを行かせれば・・・がっ!?」
「黙れ!無駄口を叩くな! 質問だけに答えろ! ミュウちゃんは何処だ!?」
彩人はなんとか潔白を証明しようとするが海人族は彩人が犯人だと信じて疑わないため嘘を言っていると思いトライデントの柄で彩人を殴る。
「アンカジに・・・グフッ・・・」
「いい加減にしろ!!」
今度は石突で腹を突かれた。くの字に曲がる彩人の胸倉をつかみ、海人族は尋問を続ける。組織の人数、仲間の名前など。彩人は正直に答えたが海人族は断固として信用しなかった。ミュウの故郷でありメルジーネ海底遺跡攻略のためにもエリセン・・・もとい海人族との衝突はさけたかったのだが・・・
「ええい強情な奴め!腕の一本でも落とせば少しは素直に‥‥ゴベバァ!!?」
業を煮やした海人族の一人が強引な手段を取ろうとしたその時巨大な魚をぶつけられて吹っ飛んだ。
「な、なんだあれは!?」
背後からの声で振り返るといつぞやの潜水艦・・・の上に立つハジメが魚を投げつけたのだ。しかし問題なのはハジメの目に光が灯っていないのだ。
「おのれ、仲間を呼んでいたのか!この犯罪者m・・・アガッ!?」
彩人が救援を呼んだと勘違いした海人族がトライデントで襲い掛かるが空気の結界で弾き飛ばされた。冷や汗が止まらない彩人だったが、急に自身を拘束していたロープが切り裂かれ、開放される。海人族が混乱しているが、次の瞬間彩人の周りに6人の少女が。
「ねえお前ら、彩人君に何するって?」
「…いい度胸」
「腕を落としていいのは落とされる覚悟がある人だけですよぉ?」
「彩人は・・・私が守る!」
「彼に手を出すというのなら容赦しないわ」
「ウフフフフフフフフフhhhhhhhhhhh!!!」
「ちょ、ちょっと待ってぇぇぇぇぇぇ!」
遅れてミレディがハジメ達を止める。
「どいてくださいミレディさん、私達は後ろの・・・・・上?」
シアがミレディに詰め寄った瞬間ウサミミがピコピコ動き、上を見あげた。そして聞こえる声。
「――ッ」
「・・・・ちょ、」
「――パッ!」
「今かぁぁぁぁぁ!!!?」
「――パパぁー!!」
彩人が声の方向にロケットの如く舞空術で飛び出す。落下しているのに満面の笑みを浮かべる幼子――――――ミュウだ。
彩人が焦りながら受け止めるとミュウは嬉しそうに彩人の胸に顔をすりすりする。
海人族はハジメ達や空中を自由自在に飛ぶ彩人、ミュウの帰還、その後ろから黒竜が・・・という理解しがたい現実に頭を抱えた。
ミュウは彩人に甘えようとするが桟橋に着いた直後、彩人に諭すように説教された。勿論飛び降りたことだ。特に怒鳴ったり怒った顔はしていないが、ミュウは事の重大さを感じ取り泣きながら謝罪した。
「ぐすっ、パパ、ごめんなしゃい……」
「もうあんな事しないと約束できるか?」
「うん、できる」
「そうか、ならいいんだ。おいで、ミュウ」
「パパァーー!!」
素直に反省し涙を流す幼子を受け止める彩人は父親にしか見えなかった。幼子の"パパ"呼びも拍車をかけているのだが。
彩人が反省したミュウを抱き上げてあやしていると背中に抱き着く人物、香織だ。
「よかった……よかったよぉ~、ぐすっ」
「香織・・・お前も心配かけたな、済まねえ。だからもう泣かないでくれ、俺は生きてる」
生存はティオから聞いていても、道中で光が強くなってもやはり感じた不安はあったのだろう。涙を流しながら彩人にしがみついている。
「うっ、ひっぐ、じゃ、じゃあ、もう少しこのまま……」
余計に抱き着く力が強くなり彩人は若干苦しいが、正面からまた別の人物。竜化を解いたティオだ。安堵した表情で彩人の顔を自身のたわわな胸に抱き寄せる。
「信じておったよ? 信じておったが……やはり、こうして再会すると……しばし時間をおくれ?主様…」
「むぐっ・・・ティオ、言ったろ?俺は死なねえ」
ティオの豊かな双丘で話しにくいが彩人はティオを安心させるべく笑みを浮かべた。その直後にミュウも参加しその勢いでユエ達にも抱き着かれた。美女と美少女たちにもみくちゃにされた後、海人族のリーダー、サルゼに依頼書とステータスプレートを提示し、細かい事情は後で説明するとしてなんとか誤解は解けた。・・・が、
「それはそうと、どうして彩人君を痛めつけてたのかな?」
「そ、それは何と言いますか…………お互いの認識の相違があり…………」
〝威圧〟全開のハジメが彩人に尋問していた海人族を問い詰める。恐怖のあまり海人族はでまかせを言ってしまう。流石の彩人もそれには待ったをかける。
「・・・待った、そちらは俺の言い分を一切聞かず一方的に暴力を振るっていただろうに」
「「「「「「へぇ……?」」」」」」
彩人の証言にハジメだけでなくミレディを除いた潜水艦組全員がキレた。
「そ、それについては謝罪する! 賠償金を払ってもいい! しかし、こちらもその子を攫われて気が立っていたのだ! それだけは分かって欲しい!」
途端に謝罪する海人族。彩人に謝罪しているだけマシだが、一切こちらの言い分を聞かないというのはあまりにも理不尽だ。
「いえ、賠償金はいりません。家族を攫われたらそりゃあキレる。俺だってキレる。・・・・・でも一方的に暴力を振るっていい理由にはなりませんよね?・・・なので」
「……なので?」
「彼女達に処罰を受けて下さい。俺はいいですが、皆は許せないそうなので」
「」
その直後、目麗しい美少女たちによる海人族水切り大会が開かれた。雫達ですらこの世界では超人なのにそれをはるかに上回るハジメ、ユエ、シアの飛距離は異常であった。
ティオがミュウの視界を塞ぎ、ミレディは彩人の後ろに隠れた。香織は参加していなかったが「それはそれ、これはこれ」として海人族のSOSを拒否した。桟橋の周りに海人族が辺り一面に広がった。(手加減したので死んではいません)