ガールズ&パンツァー 鋼鉄の乙女と海の漢達 〜碧き海の世界の物語〜 作:短号司令官
前原司令の趣味が絵描きで画力は中々、反対にみほは絵を描くのが下手という両者の正反対の点から考えたものです。
大洗女子学園艦内 前原自宅
ある晴れた土曜日、前原はいつもと何変わらぬ1日を過ごそとしていた。
リビングのソファに座り、足を組んで以前買った小説を片手に読書に勤しんでいるときだった。
上の階から誰かが降りてくる音がした。足音がドアの前で止まり次の瞬間扉が開く、そこから顔を出したのは同居人の西住みほだった。顔を見ると少し困ったような顔をしてこちらを見ていた。
前原「どうしたみほ?」
呼びかけに応じて、みほは前原の横へと座り込み彼の顔をじっと見る。
前原「……?…どうした…」
困惑する前原を他所にみほが口を開く。
みほ「あの、前原さんって絵を描くのが上手…ですよね……?」
前原「あ…あぁ、それがどうした?」
みほはそれを聞き黙り込むも、再び彼の目を見てこう言った。
みほ「私に……私に絵の描き方を教えてください‼︎」
前原「え……?」
その一言に、前原は何を言ったか追いつけず頭がフリーズするも即回復する。
前原「えっと、みほ……絵を教えて欲しいって…どういうことだ?」
みほ「実は……私前から絵が凄く下手なんです。友達もその事を知ってて気遣ってくれるんです、でもこの前成績表で美術の欄を見たんですけど………」
前原「けど……?」
みほ「実技の評価が2だったんです……だから絵の上手な前原さんに教えてもらおうって………」
前原「なるほどな…そういうことか、分かった。それなら教えてやろう」
みほ「ほっ…本当ですか!」
前原「もちろんだ。ただ、俺も普通の人から見たら上手いというだけだから、保証はできんぞ」
みほ「そんな事ないですよ!前原さん絵ってすごく上手だと思います!」
前原「ははwありがとう。それじゃあ教える前にだ、まずお前の画力がどれ程のものかを見てみたい。スケッチブックを持ってきて見せてくれないか?」
みほ「あ……はい…」
先程の喜び様から一転して、少し暗くなりつつも一旦部屋を出て、自分の部屋からスケッチブックを持ってくるのだった。
前原はみほからスケッチブックを受け取り、おもむろにに開いてみる。
前原「うぉ……」
それは一言で言うと、まさに阿鼻叫喚そのものであった。前原ですら何を描いたのか分からないものも中にはあった。何を描いているか辛うじて分かるものもあったが数える程だった。
前原「これは……中々のものだな……」
前原は微笑しながら応え、次々に見ていく。
一通り見てスケッチブックを閉じ机に置く。
前原「さてみほ、俺から見たお前の画力だが……」
みほ「はい……」
前原「正直言って壊滅的だ……ここまで酷いのは俺も生まれて初めて見たぞ」
みほ「あぅぅ……」
評価を受けてみほは少し小さくなっていた。
前原「だが……なんとかならなくもないぞ」
みほは虚げに顔を上げ前原の方を見る。
前原「少し待ってろ」
前原はそう言い残すと、リビングを出て自室へと向かう。
しばらくして戻って来ると、彼の手には白い円柱や三角柱が握られていた。
みほ「何ですか?それ」
前原「これはスケッチの練習用の画材さ」
その内の一つの円柱をみほの前に置いて、彼女に鉛筆を差し出す。
前原「それじゃあ、まずこれを描いて見てくれ」
みほ「……分かりました」
鉛筆を受け取り、スケッチブックに円柱を描いていく。その様子を前原は真剣な眼差しで見ていた。
3分程経ったとき、みほは描き上げて前原に見せる。
前原「なるほど……そうか」
みほ「どうかしたんですか?」
前原「お前が何で絵が下手なのかが分かったよ。一筆描きで描いてるからだ」
みほ「一筆…描き?」
前原「一筆描きというのは、簡単に言うと見たものをそのまま描き写す画法だな。まぁよく見られる描き方だから、上手い下手がよく現れやすいもんだが……」
みほ「はぁ……」
前原「なぁに、あることをすればすぐに良くなる。すばりそれは、下書きだ」
みほ「下書き…」
前原「分かるか?」
みほ「う〜よく聞くけど……正直よく分かりません………」
前原「なら結構、俺が手本を見せる。それをよく見てろ」
そう言うと、彼はみほの描いた隣のページに円柱を描き始める。
前原「まず、描くものの輪郭を鉛筆で薄く何度も短く描くんだ。見た目が簡単なものでもな」
鉛筆の筆圧を薄く、短い線を繋げるように一つ一つ描き一通りの形を描いてみせる。
前原「これは特に上手い下手は関係ない。画力は大体この後から決まるもんだと、俺は思ってる」
みほ「なるほど……」
前原「それじゃあここから本書きだ」
みほ「えっ⁈下書きの線は……」
前原「それなら心配はいらん。描いてる内に消えてくよ」
言ってる意味が分からず、みほはきょとんとする。
前原「ここからは少し濃いめの線で描く、ここもさっきと似たような容量でやるんだ」
下書きで描いた絵の上から、濃いめの線を描きなぞるようにゆっくりと描いていくのであった。
しばらくして、
前原「よし、完成だ」
みほは先程自分が描いたのと見比べるが、その違いは一目瞭然であった。
たったあれだけのことで、ここまで変わることに彼女は驚いていた。
みほ「すごい……あんなことをするだけでこんなにも……」
前原「みほ…その絵を見て何か気づくことはないか?」
みほ「えっ?」
そう言われて、前原の描いたものをよく見ている内にあることに気づいた。
みほ「下書きの線が…!」
そう、下書きで描いた筈の線が無くなっているでないか。だがみほは、前原の描いていた様子を思い出すも、彼が消しゴムを使う様子はほとんど無かったのだ。
前原「下書きの線は薄く描いてあるから、本書きをしている内に手で擦れて消えてしまうんだ。その代わり……」
そう言って、前原は手の側面をみほに向ける。
みほ「あ……」
前原「こんな風に側面、特に薬指と小指が真っ黒になるがな」
みほ「そうだったんですね……!」
それを見て両者は微笑した。
みほ「でもこのやり方だと、何だか私でもうまく書けそうな気がしてきました……!」
前原「ほぉ…!じゃあ早速やって見るか?」
みほ「はい!」
そしてみほも、前原がやったように描いて見るとどうだ。先程までのが嘘かと言うほど上達するでは無いか。その後も前原は、みほに対してスケッチや水彩画の指導をし、みほの美術における実技の評価が上がったそうだ。
この手の話は前から考えていたのですが、細かい描写の描き方がどうも苦手で……
話は変わりますが、アンケートで行った「大石長官の所持する銃」に関する回答から長官の所持する拳銃はふた通りになりました。
紺碧、旭日本編→十四年式拳銃
番外編→グロック
という具合になりました。