ガールズ&パンツァー 鋼鉄の乙女と海の漢達 〜碧き海の世界の物語〜 作:短号司令官
戦争では多くの人命が死んでいきます、例えそれが防衛戦争だろうと侵略戦争であれ関係なく、双方の指導者、軍人は多くの人々の命を奪うことになります。
人の命を奪うことは正当化されません、しかし戦争においてそれが自然と正当化される……酷いシステムだと思うのは私だけでしょうか
見慣れない天井がそこにあった。
ロンメルが目を覚ましたのは、自分の居た総司令部とは別の場所であった。
ロンメル(病院…?)
部屋には、回復を待つ副官と医師が居た。
「お気づきになられましたか」
ロンメル「ここは…?」
「デリー市内の病院であります」
ロンメル(そうか…日本機の空襲に……)
彼の脳裏に、あの時の光景が鮮明に蘇る。
ロンメル「あれから……戦況はどうなったのだ?」
「‼︎……」
ロンメル「答えたまえ、真実を…」
それを聞き、担当医は部屋を退出する。
「閣下は丸二日間、意識を失っておられました」
ロンメル「二日間もか…!」
「その間に……」
副官の報告は、ロンメルの耳を疑わせるものだった。
リップス司令官率いる、第三軍司令部は日英戦車連隊の襲撃を受け、大した抵抗も出来ず降伏。
一方、ハウエッセン大将率いる中央軍は、マウントバッテンの守るナグプールを目前に日本海軍機の急襲を受け、後退を余儀なくされていた。
また、ボンベイ攻略を目指した部隊は、沿岸より紅玉艦隊の砲撃・空襲を受け、これも失敗していた。
ロンメル「信じられん…ハウエッセンともあろう者が……」
「中央軍は補給と各隊から抽出した人員により、再編成を行なっております」
ロンメル「…恐るべき奴だ…」
「マウントバッテンがでありますか…?」
ロンメル「違う、奴にそんな才があるはずが無い。熊谷とかいう日本軍の司令官だ…いや、その背後に居る大高だ」
「オオタカ…?…日本の首相の?」
ロンメル「我々はメッテルニヒ…ビスマルク…或いは大モルト卿をも凌ぐ奴を相手にしておるのかもしれん」
ロンメルに大モルト卿をも凌ぐとさえ言われた大高は、その頃木戸外相と東野源一郎社長を伴い霞ヶ浦から米国へと向け飛んでいた。
白鳳は五大湖の一つのメリー湖へと着水する。
大高と木戸は五大湖周辺の視察に出かけた東野と別れ、一路ワシントンへと向かった。目的は、新任の第34代ロバート・アイゼンハワー大統領の就任を祝うためだった。
大高の訪問は大成功に終わり、公式行事の後、大高はアイゼンハワーに私的な招待を受ける。
コッド岬 アイゼンハワー別荘
2人は前進は共に軍人である。
気心を知れば意見の一致は早い、大高の今訪米のもう一つの目的、印度戦線への米軍の参入にもアイゼンハワーは大きな理解をしましたのである。
デリー臨時独軍総司令部
ロンメル「前線部隊は何をしているのだ⁈ベルリンからは印度制圧はまだかまだかと矢の催促だ」
「前線は完全な膠着状態です、右翼左翼部も艦砲射撃に晒され、侵攻が止まっております」
ロンメル「海軍の支援無くして、半島攻略が無理なのは分かっている。海軍への出動要請はしているのだろうな?」
「はっ、再三に渡り敵水上艦の撃滅を要請しており、Uボートを出しているとの返答があるのですが……もしや…」
ロンメル「もしやとはどういう事だ!?」
「あぁ……もしや、噂に聞くモビーディックが…」
ロンメル「⁉︎…」(海の怪物…X艦隊がいるのか…⁉︎)
「閣下!」
ロンメル「何事か?」
「報告、第302補給部隊が敵の高高度爆撃を受け、壊滅しました」
ロンメル「高高度爆撃⁈相手はなんだ⁉︎」
「それが…米国のBー30だと……」
ロンメル「⁉︎………」
大高とアイゼンハワーの会談から半年が経ったこの頃、印度亜大陸の戦局は新たな局面を迎えようとしていた。
日英軍はカマイタチ作戦成功の後、兼ねてよりの大戦略により南への退去戦を繰り返し、現在は西のトリチュールから東のナガバッティナム至る邀撃線を構築していたのである。
そして、戦線を囲むようにベンガル湾には高杉艦隊、アラビア海には紅玉艦隊が展開しており、遠く天山山脈の東端のウルムチには米国より中古で買い付けたB30で編成された日本空軍の基地があった。
ロンメル(制海権も無く、制空権も無く…ただ補給線が伸びる一方だ…ナグプール攻略での失敗を繰り返す訳にはいかん……こうなれば、残された道として私自身が前線に出向き、陣頭指揮を取るしかない…!)
遣印軍司令部も前線の後退に連れ、ナグプールから南方要塞内側のここマドゥライに移り、今日ここにある者達の姿があった。
遣印軍マドゥライ司令部
熊谷「それにしてもお久しぶりですな」
前原「はい、ところでどうですか?最近の印度戦線は」
熊谷「早速戦況調子と来なさったか、富嶽画伯夫妻」
みほ「ふぁ…!?…ふ…夫妻……?」
前原「冗談はよして下さい、それと今回は連絡任務です」
熊谷「まぁ月でも見ながらゆっくり話そう」
懐から一本のウィスキーが顔を覗かせていた。
前原「いいですね」
みほ「お酒…」
みほ「物資に関しては問題無さそうですね」
熊谷「我が軍の補給は順調ですよ。大高総理の命令通り、この南方要塞に何年も立て籠もれる。充分に計画し時間をかけて構築した重心陣地は完璧だ」
グラスに注がれ、3人は乾杯する。
熊谷「美味い」
前原「実に」
みほ「こんな味だったんだ…」
熊谷「既にご存知かと思うが、印度亜大陸の南端を切り取り、セイロン島を補給基地としたのが印度南方要塞だ」
前原「伺っております。セイロン島の要塞構築現場を見てきましたが、米軍を主体とした凄い規模のものです」
熊谷「それも高杉・紅玉両艦隊があっての鉄壁の要塞だ。それと貴方方の秘匿艦隊だ。これではロンメルも独海軍も手も足も出せんだろう」
前原「補給線を制し、独軍をここに張り付かせる」
熊谷「ユーラシアもアフリカも敵だらけだが、ここでは独軍150万を遊び駒にする!」
前原「ヒトラーは一見宝庫を手に入れたように思うでしょうな」
熊谷「うむ…益々印度に入り込むだろうが、本国に宝が届くことはない。海上ルートのない独軍は陸路を行くしかないが、その行手にはゲリラと空からの攻撃が待っている!米軍の余剰機体を買い込んだ空軍がウルムチ基地のB30が、中部印度から西はカスピ海までの長いルートのどこでも叩ける。俺はいつまでもここを抑え続けるぞ!」
前原「すると、やはり決戦は…」
熊谷「そこは大高総理に任せるとしよう」
翌朝、前原とみほは前線に赴く伊唐秋彦参謀に同行し、マドゥライを後にした。
伊唐「最も激戦区なのはティルチラパリで、ここはマドラスからの幹線道路と我々の防御線が交差するところなのです」
前原「海軍の私にはよく分からないのですが、戦車戦においては制空権も戦闘の優劣に関係してくるのでは?」
伊唐「仰る通りです。最初は独空軍も活発だったのですが、海軍航空隊に駆逐され最近は殆ど飛んで来ません。制空権はほぼ我々の物と言っていいでしょう。しかし、ロンメルも気の毒です。英国情報部によりますとゲーリングとの確執があるらしく、最新鋭機の配備も無くあからさまな妨害もあるようです。第三帝国のトップは派閥争いが激しいようであります」
みほ「前世の日本のように…ですか?」
伊唐「っははw確かに」
前原「お前も言うようになったな、はははw」
その後しばらくして、ティルチラパラ前線司令部に到着する。
前線司令部
伊唐「入ります」
「おう」
中で待っていたのは瀬戸基少将であった。
伊唐「我が第71・72戦車連隊を指揮する瀬戸少将です」
前原「従軍画家の富嶽太郎です、そしてこの娘は助手の」
みほ「武山華子です。よろしくお願いします」
前原「閣下の武勇伝は熊谷司令より聞いております」
瀬戸「瀬戸基です、貴方方のことも熊谷司令より聞いてます。貴方は足のある幽霊だそうですな?」
前原「は…はぁ」
瀬戸「そしてお嬢さんの方は…変わった世界の住人だと…」
みほ「え……」
瀬戸「海の中にそうそう潜ってられないでしょう」
前原「陸の方が大変そうなので」
みほ「海の方から何かお手伝いできないかと…」
瀬戸「はははwその節はお願いします。伊唐参謀長」
伊唐「はっ」
瀬戸「戦況を漏れなくくまなく伝えるので熊谷閣下に伝えてくれ」
伊唐「分かりました」
瀬戸「敵は艦砲射撃に根を上げ、ティルチラパリから中央突破を試みた」
伊唐「今のところ英印軍が抑えていますが」
瀬戸「だが最近、敵におかしな動きがある。敵右翼、及び中央軍から多数の戦車が居なくなっているのだが、戦線の膠着で我々もうっかり見過ごしていたのだが……」
伊唐「南方要塞攻略をロンメルが諦めた…?」
瀬戸「それはない。戦車は消えたが、歩兵や砲兵の撤退した形跡がない」
伊唐「主力部隊を引き抜き、北へ転用を…?」
瀬戸「いや、そんな大部隊の移動を見逃すはずがない」
みほ「伊唐さん、デリーの司令部の動きは?」
伊唐「熊谷閣下も気になされて、デリーを探らせたのですが別に…何か?」
みほ「いえ、私みたいなのが言うのは……」
前原「いやみほ、お前だからこそ見えることがあるんじゃないか?」
瀬戸「そうです、何か参考になるかもしれませんので」
みほ「分かりました…相手は攻勢することしか考えていないと思います。ですので、これが欺瞞だとしても攻勢に関する事だと思うんです……だとすると……」
前原「すると…?」
みほ「一つしか考えられません……集中攻撃の為に戦車をどこかに隠したとしか…」
瀬戸「若いのに…見事な推測です。私の考えを後押しされました。頼もしい一言です」
前原「お手柄だな」
みほ「…ありがとうございます」
伊唐「となると奴らは…」
みほ「はい、恐らく電撃戦をするつもりかと……」
瀬戸「伊唐参謀、直ちに閣下に常駐してくれ、全軍警戒を厳にせよ!」
折からは外は雨となる。そして、その厚い雨雲に隠れるようにして、南印度攻略軍司令部のあるバンガロールの飛行場に一機のユンカースが着陸した……そこから降りてきたのは、
「ロンメル閣下、お待ちしておりました」
移動中
ロンメル「物々しいな」
「ここはゲリラが活発な地域ですから、それになんと申してもここは前線です」
ロンメル「攻勢準備は?」
「はっ!抽出した部隊は洞窟や掩蔽壕に隠してあります。補給も充分で、閣下の出撃命令を待っております!」
ロンメル「よぅし、次こそ決着をつけ、今度こそ全インドを我が手に握ってやる…!」
伊唐『閣下、いよいよロンメルが動き出します』
熊谷「らしいな、さっきバンガロールにロンメルらしい人物が降り立ったとゲリラから報告があった…!」
伊唐「ロンメルの狙いは、戦車の集中運用によりティルチラパリからインディグ、ここマドゥライまで一気に抜くつまりです」
熊谷『最近の通信量の増大から、まず間違いないだろうし、米軍の支援を頼まねばならん…ここは大高総理の判断を仰ごう!』
後世日本の誇る通信ネットワークシステムが、戦場と日本を瞬時に結ぶ
大本営 陸軍部
大高「分かった、現地の指揮は貴様に一任する、米軍への支援要請はこちらからしよう……うん、分かった」
桂「セイロンのマッカーサーには私から要請します」
大高「お願いする、今欧州ではニルバーナ作戦も開始されている。私からもアイゼンハワー大統領に挨拶しておこう」
マドゥライ
熊谷『山×将軍にも話はつけた、米海兵隊も動き出している。速やかに作戦の立案、物資の補給、資材の用意、編成に取り掛かってくれ!』
瀬戸「了解しました……諸君、我々は孫子の兵法、金蝉脱殻の法を持って遂行する。要するに蝉の抜け殻、敵に戦力を見せつけつつ主力を抜け出させる戦法だ」
前原「独軍も同じ手を使っていますね」
瀬戸「なぁに本家はこちらだ、こちらの方がもっとうまくやる。英印軍主力は日暮と共にティルチラパリから後退する。邀撃線はここディンディグルだ。敵はサルムに集結しており、サルムからマドゥライまで南下してくるだろう。ロンメルはこの一手に勝負を掛けるだろうが、我々はそれを逆手に取る!この作戦は迅速を持って旨とする。各隊の燃料の補給と機動歩兵との連携に気をつけろ!」
印度現地時間二〇〇〇
瀬戸少将は夜豹師団各戦車隊に、出動の号令を発した。
無限軌道が地を鳴らし、鋼鉄の像が高野を駆ける。
同じ頃、バンガロール南インド軍総司令部作戦室でも……
ロンメル「これより南インドを一気に抜く脊髄作戦を開始する!」
ロンメルの大号令が発せられていた。
敵砲連隊の攻撃を掻い潜り、夜豹師団は敵後方へと回り込む。
また同時刻、作戦に呼応して米海兵師団が出動。
敵後方に上陸すべく、コマンデル海岸に沿って北上。
ロンメルの策した脊髄作戦を巡って、両軍は激しく動く。
英印の主力がディンディグル邀撃線を守り切る間に、夜豹師団と米海兵隊が後方へと回る。だが、タイミングがズレると、日英印の南方要塞が崩壊するリスクを持つ作戦なのだ。
ともあれ、勝敗の行方は神の振るサイコロに委ねられた。
両軍の間で激しく火線が飛び交い、時に爆炎が上がり時に誰かが死ぬ…
両軍が動いて2時間余りが経った頃、局面は意外な展開を迎える。
独軍バンガロール最前線司令部
ロンメル「何⁉︎総統閣下が…⁉︎確かな情報か⁈……うん…そうか、分かった……いや駄目だ、やはり私が……」
彼は深刻な顔つきで受話器を戻し口を開く。
ロンメル「諸君、緊急事態が起こった…私は至急本国へ戻らねばならない……作戦を中止する!…全軍に撤退を命じてくれたまえ…」
一本の電話により、ロンメルは去り脊髄作戦は中止された。
作戦の中止は敵味方問わず、戦場に混乱を呼んだ。
『エノケンよりバンツマへ、お客さんが入場をやめた。帰り支度を始めている模様』
熊谷「それは本当か!?……うん、分かった。引き続き客の入りを見ていてくれ……理由は分からんが、敵戦車軍団は進撃をやめ撤退行動に入った」
伊唐「それでは、夜豹師団と米海兵隊が敵の真っ只中で身動きができなくなってしまいます!速やかに撤退命令を…!」
熊谷「もう遅い、彼らは今まさにその敵の真っ只中だ。米海兵隊は間に合うかもしれんが、瀬戸達は下手に動けば敵に攻撃され袋の鼠になる!」
そうとは知らない瀬戸達は尚も進撃をしていた。
前原「閣下!内密にお話が…!」
熊谷「うむ…何かいい考えが?」
前原「閣下、敵の撤退が意図的なものなのか、それともその他の要因による突発的なものなのかで、対応も変わってくると思いますが」
熊谷「その通りだ、本国に何か情報が入っとるのかもしれん」
日本国 大本営 陸軍部
大高「そうか、撤退を始めたか……うん…実はそれに関して心当たりがあるのだ」
大高の言う心当たり、それは……
この少し前、欧州で行われているニルバーナ作戦に呼応し、旭日艦隊と行動を共にする陸軍特殊部隊の霞部隊が、ヒトラー別荘を襲撃する。
ヒトラー暗殺には失敗したが、司令中枢の一時的な破壊には成功し、独軍全体に混乱が生じていた。
この作戦は、旭日艦隊司令の大石蔵良が独自に考えだした[理性の術策]という作戦の一部であった。
ともあれ、これにより遥か印度のロンメルをも動かしたのであった。
熊谷「ヒトラーがまた暗殺を⁉︎」
大高『詳しいことはまだ言えんが、この件に関しては欧州戦線のニルバーナ作戦が絡んでいる』
熊谷「はい……分かりました…はっ……」
受話器を戻して熊谷は向き直る。
熊谷「聞いての通りだ、ヒトラーが暗殺に見舞われたことが原因らしい」
前原「成程…」
みほ「それで…ヒトラーは…?」
熊谷「生死は不明らしい」
前原「敵の撤退が予定外なら…手はあるかもしれん…」
伊唐「どんな手ですか?」
熊谷「是非聞かせてもらおう」
前原「
洋上
健御雷
高杉「了解した、時間が無いので早速取り組ませてもらおう。情報及び暗号班を直ちに集めよう」
健御雷の中でも、本国の情報部にも匹敵する超高速電算機が熟練した情報部員の手によって、暗号解読と制作に全能力を傾け始めた。
「司令長官、暗号解読終了しました。これが木霊用の偽装電文です」
高杉「……戦闘は流動的である……脊髄作戦は…ロンメルの作戦は脊髄作戦というのか…」
優花里「脊髄作戦……うぇ…なんだか生々しくて気持ち悪いです……」
高杉「よって、作戦は当初の如く実行せよ…か……よしこれでいい。バンツマ及びアラカンへ伝達、〇二〇〇作戦を開始する」
前原「はっ……感謝します。木霊の準備完了しました」
木霊作戦とは、健御雷の高速電算機にて暗号を解読、偽文案を作成し独軍の通信妨害の後、ロンメルの名を騙り攻撃再開を命令するものである。
マドゥライ
前原「そうだ、秘匿保持者以外誰もいない…そうだ、座標はまた後で送る……全艦同時着弾で頼む」
何事かの通信を前原は終える。
前原「秘匿兵器を使用します」
熊谷「頼みます」
洋上
前原からの命令を受けた紺碧艦隊が浮上する。
イ601
「諸元入力開始」
後部噴進弾発射口が開き、操作を終えると艦対地ミサイルが次々に発射される。
他艦も同様の手順を踏み放つ。
「バンツマに打電、ロッパより取っておきを配達する、到着を待て」
電文は前原らの下に届き、熊谷に伝えられる。
紺碧艦隊より放たれた誘導噴進弾は、敵レーダー基地・中枢基地、司令本部など様々な通信要所を破壊、その上で星鵬がECMを開始、部隊間の通信無線をも奪う。
「もの凄い電波妨害です、我々の通信網にも影響が出ております!」
熊谷「瀬戸少将との通信は確保しておけ、木霊発動!〇三〇〇全部隊緊急計画に基づき行動せよ!」
敵通信網の沈黙の知らせを受けた健御雷では、
高杉「よし木霊を発信せよ!」
「了解!特定周波数にて木霊を発信します!」
健御雷より木霊は発せられた。賽は投げられた。
高杉が…前原が…みほが…熊谷が息を詰めて反応を待った……
独軍側
ハウエッセン「やったぞ…脊髄作戦は当初の如く続行だ…‼︎これでナグプールの雪辱を晴らすチャンスが再び来た!」
偽装電文を受けた独軍は進撃を再開する。
『アラカンよりバンツマへ、お客さんが再入場を始めた。役者は楽屋入りを始められたし!』
その通信は有線通信を駆使し、熊谷の下へも届いていた。
ハウエッセン独中央軍を中心に戦局は動く、戦車を前面に押し出す中央軍はティルチラパリ近郊で英印軍の抵抗を受ける間、後方から夜豹師団が侵入していった。
英印軍の抵抗も激しかったが無事ティルチラパリを抜け、マドゥライ北40kmの地点まで接近、勝利を確信したその時であった‼︎
高度一万より反撃の一手が降り注がんとしていた!
「投下‼︎」
ウルムチより飛び立ったB30爆撃隊が、上空より死の雨を降らし始めた‼︎
そして夜明けと共に、海軍航空隊の一大空爆が始まった。
銃弾・爆弾・ミサイル、ロケットが辺りに降り注ぎ攻撃は波状的に繰り返され……中央軍は抵抗もないまま戦力を消耗していき……さらには後方に展開していた夜豹師団により、整備中隊・歩兵師団・補給部隊が壊滅する。
そして退路も進撃路も絶たれた虎達に夜豹師団がとどめを刺す‼︎
この大規模な日独戦車師団の戦いの決着は、昼までには着いていた。
結果は独中央軍の壊滅、ハウエッセン大将の戦死であった。
日英印そして米の連合軍の勝利は、間をおかず日本にも届いていた。
大本営 陸軍部
桂「総理…」
大高「我々は恒久平和の為とは言え、戦争という悪を指揮している…この後世世界に携わる者として敢えて罪を犯している……」
桂「それは、私とて同じであります」
大高「再び訪れるであろう私の死も…私の行く末は再び地獄であろう」
桂「総理がそのお覚悟なら、私も高野総長も木戸君も皆喜んでお供します…!」
大高「ありがとう……」
舞台は戻り、印度亜大陸
熊谷「これが我々の戦争だ…どうだ、参考になったか?」
先の戦闘での独戦車の残骸、そして屍を前に2人に熊谷は問う。
前原「はい…大変…」
側にいたみほは口元を抑えて少しふらつく。
前原「みほ……大丈夫か…?」
みほ「はい……想像はしていましたけど…こんな風になるだなんて……でも覚悟は……」
前原「陸の戦闘は空海と違って具体的です。互いの顔の見える距離で戦い、屍を踏み越えて戦う…」
熊谷「酷いか…しかしこの酷たらしさにもやがて慣れてしまう。人間は不思議と慣れる…こんな事にもな……勝利は得たが正直心は重い…死んだ独軍兵士とて故郷に帰ればただの人だ。そして彼らの運命は明日の我々やもしれん……」
前原「仰る通りです。だからこそ…」
熊谷「だからこそ…」
二人はその後の言葉を胸の内に飲み込んだ。
続くべきは恒久平和の誓いだ、しかし今は言葉に出せない二人であった。
後にティルチラパリの悲劇と呼ばれるこの戦いは、後世大戦史にその名大きく刻み、みほの後の人生にも影響を与えるきっかけにもなった。
独中央軍は司令官ハウエッセン大将戦死を含む戦死者五万人、捕虜二万人以上、損失車輌1500輌以上にもなり壊滅した。
ここに印度亜大陸の戦局は固定した………
第10話 決戦の刻来たれりです! 〜終〜 次回へ続く