ガールズ&パンツァー 鋼鉄の乙女と海の漢達  〜碧き海の世界の物語〜   作:短号司令官

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第13話 亀さん北進します!

 

三人を乗せたカッターは、ランプの灯りによる誘導を頼りに旅順港内のドックの一つに入る。

 

中に入り電灯が灯ると、眼前にはイ900型潜に乗った品川が待っていた。

 

品川「司令官!申し訳ありません。外では目立つので!」

 

前原「構わん」

 

品川「早速ですが、第三帝国の英国侵攻を旭日艦隊がハンバー河に於いて食い止めたそうです!」

 

前原「やったか!」

 

品川「あの巨大な日本武尊を遡上させたそうで!」

 

前原「あの人らしいなぁ‼︎」

 

品川「すいませんが、部品搬入用の傾斜路からお上がりください!秘密ドックにご案内します!」

 

 

 

秘密ドック

 

前原「だいぶ形にはなってきているが、先はだいぶかかりそうだな」

 

眼下には多くのシートなどがかけられて作業が続けられている船があった。

 

みほ「前原さん、もしかしてこれが…」

 

前原「あぁ須佐男だ」

 

「耐圧隔内の主要部品は設置しましたが、後は…」

 

前原「戦術運用の変更もあったしな」

 

「太極計画発動までには、間に合わせるつもりです」

 

前原の目的はこれがあった。

つまりは、太極計画発動の要の超潜水艦 須佐男号の進捗状況の確認であった。

この日から三日後、前原とみほ(愛里寿はアズミ達の事を考えて一時帰投する)の体は室蘭の秘密ドックに移っていた。

 

台座に設置されたスイッチを押し、両ドック内に海水が入る。

 

前原「諸君、海軍…いや日本を代表して感謝と共におめでとうと言わせてもらう」

 

前原が向き直った先には、知った顔ぶれや新たな面々が揃っていた。

 

前原「この超潜水艦 亀天と現在建造中の新型艦、そして奥に見えるラ號は今時大戦の趨勢をも変え得るどころか、操りかねない力を持っているだが……いずれも機密ゆえ派手やかな進水式を持ってその誕生を祝すことができない。しかし日本の…いや世界の恒久平和礎として役立て使い切ってみせる事を約束として本職の挨拶としたい」

 

照和24年末 

 

紺碧艦隊司令前原の見守る前でイ3001潜 亀天は誕生、そして海底軍艦 ラ號は蘇った。

それは紺碧艦隊と日本、いや世界の海にとっても新しい時代の幕開けであった。

 

 

照和24年 12月初頭 イーサフィヨルズ付近

 

室蘭の秘密ドックの進水式から数十日、全長160m 全幅21.6m水中排水量1万3250tを誇る超潜水艦イ3001亀天。

全長390m 全幅67m 基準排水量21万3000tを誇る海底軍艦 ラ號の二隻は大西洋はアイスランド島を目指して北上していた。

 

 

ラ號

 

艦橋基部 球状司令所

 

「調音より感あり、右舷30距離二万に多数の艦船を認む」

 

前原「ほぉ、そんなところまで感知できるのか…!」

 

品川「亀天もそうですが、このラ號の調音は今までの艦とは桁外れの精度を誇ります」

 

前原「どこ国のものか分かるか?」

 

「いえ、そこまでは…」

 

みほ「前原さん、どうしますか?」

 

前原「うむ、敵にしろ味方にしろ、今はこいつと亀天の存在を知られる訳にはいかん。進路変更逃げるぞ」

 

入江「航海長、左舷25度に進路作成、通信長亀天に本艦に続くよう命じてくれ」

 

「はっ」

 

「了解」

 

入江「取り舵25 第三戦速へ」

 

「宜候、第三戦速」

 

「取りかぁーじぃー」

 

操作性のあまりの良さから艦が傾く。

 

前原「凄いな…」

 

品川「ラ號なら、さらに空も飛べます」

 

ラ號、亀天はその未知なる俊足にて離脱する。

 

 

 

三日後 アイスランド島近辺

 

入江「司令官、目標が見えました」

 

前原「どれ?…間違いない、目標のイーサ富士だ…!」

 

入江「浮上しますか?」

 

前原「いや、このままだ。この島には大きな米軍基地もある、例え味方の哨戒機といえど、このラ號と亀天を見られる訳にはいかん」

 

「水上に艦艇が接近、時間通りです」

 

入江「国籍・艦種は?」

 

「2軸タービン推進音、おそらく友軍の駆逐艦かと」

 

入江「連絡通り、出迎えの駆逐艦では?」

 

前原「深度30、駆逐艦の真下につけてくれ」

 

駆逐艦 弦月から音通があり、防潜網がある為浮上を求めてきたが、第三者に見つかることを懸念し日没を待った。

 

ラ號はイ601から紺碧艦隊旗艦の任を移譲され、習熟航海と技能試験を兼ねてアイスランド島のイーサフィヨルズにある、旭日艦隊基地に立ち寄ったのである。

夜七時を回った頃、両艦は浮上し前原達は亀天に移る。

理由としては、イーサフィヨルズにラ號のような巨体が入るドックがないこと、また目立ちすぎるとの理由からラ號は沖合で待機することになった。

 

 

弦月の誘導に従って、亀天は波浪の中を慎重に進む。

しばらく進むと、亀天の近距離用索敵電探にラ號程ではないが巨大な艦影を補足する。

 

前原「それだろう」

 

みほ「それじゃあ…」

 

近づくにつれ、艦影の正体が判明する。

 

入江「司令官…!」

 

前原「あぁ…日本武尊だ……‼︎」

 

かの戦艦大和を彷彿とさせる外観、しかし武装・機能面では大和を遥かに上回っている。

 

入江「初めて見ますが、想像以上に巨大ですなぁ……」

 

前原「空母も大きいが、それとはまた違った質量と迫力がある」

 

入江「歴戦の黒鉄の城ですな……!」

 

みほ「これが……日本武尊……」(それで…この船に……)

 

日本武尊の後方から内火艇が現れ、今度は内火艇の指示に従い動く。

さらに進むと、奥の岸壁にぽっかりと海中洞窟が開けられており、そこへ入る。

奥は新設されたであろうなドックがあり、扉が閉じると電灯が瞬時に灯る。

 

入江「驚きましたな…紺碧島の新ドックより、よくできています」

 

前原「これも米国の底力というやつだろう」

 

前原は艦を降りると、特務士官以上を桟橋に集める…とそこへ、

 

大石「おぉ、来たな!」

 

前原「旭日艦隊司令大石元帥に敬礼!前原以下乗組員一同、研修を兼ねてお世話になります」

 

大石「うむ、歓迎するぞ諸君」

 

前原「直れ」

 

大石「遥々良く来てくれた。このイーサ基地には大和湯という温泉もある。食い物も美味い、しばしの間だが存分にくつろいでくれ」

 

前原「はっ!解散!」

 

士官らはその場を離れるが、その場には大石と前原、みほそして……

 

大石「久しぶりだなぁ」

 

前原「閣下とは紺碧会結成以来であります」

 

大石「あれからもう九年か…」

 

まほ「みほ!」

 

みほ「お姉ちゃん‼︎久しぶり!」

 

まほ「元気そうな、みほ。長旅ご苦労だった」

 

みほ「うぅん、今までもいろんな所に行ってるから大丈夫だよ。ところで…いつ以来かな?」

 

まほ「みほが前原司令について行って以来、五年ぶりだ」

 

みほ「五年も…」

 

まほ「前原司令、お久しぶりです」

 

前原「うん、まほ君も元気そうだな」

 

大石「知ってるのか?」

 

前原「はい、前に一度だけ…あぁ紹介します。この子がみほです。みほ、この人が俺の学生時代の恩師の大石蔵良長官だ」

 

みほ「初めまして、西住みほです」

 

大石「うむ、大石だ。君のことはまほからもよく聞いている。宜しくな」

 

みほ「はい!」

 

一同はそのまま、歩きながら話す。

 

大石「紺碧艦隊の活躍を聞く度に、俺も誇らしく思う」

 

まほ「私もそれがみほの活躍みたいで、なんだか嬉しかったし無事だって分かって安心してたよ」

 

みほ「ありがとう、お姉ちゃん」

 

大石「貴様は俺の教え子の中でも特出者だ」

 

前原「海軍兵学校では搾られましたが、それにしては不詳の生徒でありました」

 

大石「ふっ謙遜するな」

 

前原「それにしても閣下、この地下ドックは凄い設備ですなぁ」

 

大石「今は我々旭日艦隊が間借りしておるが、元は米軍の秘密基地だ。あの国の底力には心底恐ろしいものがある。だが大和湯は我々が手番頭で掘ったものだ。中々だぞこいつは」

 

前原「風呂は潜水艦乗りにとって、最高の贅沢であります」

 

大石「ふははwあと小さいながら女湯もある。覗くなよ、まほから風呂桶が投げつけられるぞ」

 

みほ「えぇ…⁉︎」

 

そう言われてみほは姉の方を見る。

 

まほ「大石さんじゃないが、前に少しあってな」

 

みほ「……」

 

前原「恐ろしいな、君は…」

 

大石「まぁ、大いに楽しんで行ってくれ」

 

 

その夜、日本武尊のダイニングルームでは、大石長官主催の旭日艦隊と紺碧艦隊の主立った者達の懇親会がもようされた。

 

大石「諸君、乾杯の前に一言挨拶をさせてもらおう。孫子曰く、兵法には陰と陽があり、共に重要であり陰陽を合一して、宇宙の原理を表す…だ。例えて言うなら、前原司令官に率いられた紺碧艦隊を陰軍とすれば我々旭日艦隊は陽軍である。我々はこれまで一同に会することは無かったが、世界戦局の変容を考えると今後こう言うこともあると考えられる。そういう意味でも今日は記念すべき宴である」

 

それをもって大石は一つ区切りをつけ、話を続ける。

 

大石「また、今日12月8日がどういう日であるか…八年前の今日、運命の開戦を行った日である…」

 

前原「!……」

 

そう…全ては八年前、高杉航空機動部隊が前世同様ハワイ真珠湾攻撃を行い、米艦隊を倒したあの日である……

 

大石「そしてまた、我々が彼の少女達に出会いこの戦争に巻き込んだ日もほぼ同じだ……罪深きことである。そのことは深く自覚せねばならない…だが世界の歴史が戦争へと流れ始めた時、我が国だけが逃れ傍観者となることはできなかった。しかし、流れることのできない歴史の中に我々や彼女達は存在している…!人類は単独で生きられないというのは、自明の真だ。我々は戦争が悪であることは重々自覚している。その為己を悪と成し、歴史の孕む悪と戦わねばならない。歴史そのものを正さねばならない!修羅の道ではあるが、それが我々の使命なのだ……些か舌足らずの面が無き霜にあらずだが、開戦記念日の挨拶としよう」

 

前原「紺碧艦隊、起立ッ!」

 

原「旭日艦隊、気をつけ!」

 

大石「それでは諸君、世界恒久平和を祈念して、乾杯」

 

「「乾杯‼︎」」

 

 

平和を祈念する者が居れば、その一方で……

その祈りを嘲笑うが如く、野心の炎を燃やす者が居た

 

 

ベルリン皇帝宮殿

 

OKR

 

マイントイフェル「皇帝陛下にはご機嫌麗しゅう…」

 

ヒトラー「世辞はいい、話を聞こうかマイントイフェル君」

 

マイントイフェル「は、早速ですが、我が帝国の戦略ラインであるハーケンクロイツラインであります。皇帝陛下念願のハーケンクロイツラインを完全なものにする為には、米海軍をも超える圧倒的なシーパワーが必要です。しかし、この点は地中海を造船拠点に計画は遂行中です。問題は……地中海の出口である紅海とジブラルタル海峡を塞ぐ日本艦隊でありますが、殊に旭日艦隊が目障りであります。これを排除しない限り、鉄十字の鎌計画は成し得ないということです」

 

ヒトラー「つまり、旭日艦隊を葬る策ができたのかね?」

 

マイントイフェル「残念ながら、奴らと対等に渡り合える艦隊は我が海軍には存在しません。旭日艦隊と対峙するには身を切らせて骨を断つ覚悟が必要です!」

 

ヒトラー「うぅむ……多少の犠牲はやむを得んだろう、言ってみたまえ」

 

マイントイフェル「……一個機動艦隊及び一個航空団程度は…」

 

ヒトラー「何…⁉︎」

 

しかし彼はそれを言って怯えるような様子は特段無かった。寧ろ若干笑みを浮かべていた。

 

ヒトラー「……よかろう、詳しい話を聞こう」

 

マイントイフェル「はっ、ありがとうございます」

 

 

 

OKR参謀総長マイントイフェル大将の考案した、旭日艦隊壊滅作戦の幕はノルウェーのトロンヘイム空軍基地から切って落とされた。

基地からは独空軍主力爆撃機、ヨルムンガンドD50機が飛び立つ。

 

 

クラウス・ヘルヴィッヒ大佐

「爆撃目標のイーサフィヨルズまでは、2時間の距離だ」

 

「旭日艦隊の命運も、後2時間というわけですな」

 

クラウス「そういうことだ。如何なる最強戦艦とてこのヨルムンガンドD50機の爆撃を受けて助かる術などあり得ん、ましてや手負いで動きもままならぬヤマトタケルとはな」

 

「はっ!」

 

 

 

この発進の報はすぐさまマイントイフェルの下へ届けられる。

 

「ノルウェートロンヘイム基地からです。作戦名ボーゲン発動、第216飛行航空団発進完了、尚…()()()()()()…?も発進せり…?…なんのことでしょう?……っ‼︎」

 

マイントイフェル「ご苦労、下がって良い……あぁ、書類は全て焼却するように…()()()()()()については全て私にもってくるように、分かったな?」

 

「はっ‼︎」

 

 

何かの陰謀が張り巡らされようとしていたその頃……

 

 

イーサ基地

 

日本武尊

 

大石はお気に入りのサイフォンで珈琲を淹れていた丁度その時、前原がやってきた。

 

前原「朝風呂を頂いて参りました。北の海を見渡しての露天はたまりません!」

 

大石「っはははwそうだろ」

 

前原「おぉ、いい香りですね」

 

大石「英国女王おめかしのブルーマウンテンだ、水はアイスランドの氷河からだ。君にも味わってほしい」

 

前原「恐れ入ります」

 

珈琲片手に大石は前原にあることを聞く。

 

大石「一つ気になるのだが、君の亀天と一緒にきたラ號、あれはどうやら大和に似ている部分があるようだな」

 

前原「はい、確かにラ號は船体や武装の一部を除けばほぼ大和です」

 

大石「そうか……一つこの目で見てみたいものだが」

 

前原「残念ながら、ここだと恐ろしく目立つので……」

 

大石「はははw分かってるよ」

 

前原「長官、ところで二人は?」

 

大石「あぁ二人か?それならそろそろ…」

 

と彼が言いかけた時、西住姉妹が入ってきた。

 

まほ「おはようございます」

 

みほ「おはようございます…ふぁ〜…ネムイ」

 

「「おはよう」」

 

前原「どうしたみほ?らしくないな」

 

みほ「はい、実は昨日夜遅くまでお姉ちゃんと話をしてて…久しぶりに夜更かししちゃいました」

 

前原「それなら閣下の珈琲を飲むといい」

 

大石「あぁ、眠気覚ましには打ってつけだ」

 

まほ「大石さんの珈琲を飲んだら最後、他の珈琲は美味しく感じなくなるぞ」

 

みほ「そんなに美味しいんですか?」

 

大石「はははwあぁ保証しよう」

 

それからしばらく、四人は朝の団欒(だんらん)を過ごすが……

それを邪魔するように突如として警報が鳴り響く。

 

前原「何事ですか…⁈」

 

大石「空襲のようだ、空襲の殆どが偵察か嫌がらせ程度のものだが…」

 

まほ「今回は恐らく、あれに掛かりましたね」

 

みほ「あれ…って…?」

 

大石「先のハンバー河遡上の際の被害を、些か誇張して流した」

 

前原「嵌め手でありますか…?」

 

大石「真に受ければな、すぐ出港するが貴様らはどうする?」

 

前原「亀天は地下ドックに、ラ號は沖合にいるのです簡単にはバレないかと。後学のためこのまま乗艦させてもらえればと」

 

大石「そう言うと思ったぞ、一緒に来い!」

 

 

 

艦橋

 

「乗員五十二名が陸より未着ですが、戦闘・出港に問題ありません」

 

大石「未帰還者は各自の判断で防空任務に就くように伝えてくれ」

 

「はっ!」

 

富森「出港、湾外へ向け微速前進」

 

 

日本武尊は、各方面・部隊に指示を発信しながら直掩艦を従え湾外へと出る。

このとき、トロンヘイムを発進した爆撃隊はまずレイキャビクの連合軍基地を襲撃し、その後イーサフィヨルズを攻撃する予定だった。

日本武尊はイーサ湾を抜け、直掩空母との合流を目指して沖合に出る。

 

直掩の駆逐艦の姿はあるが、空母の方は…

 

 

大石「電探・無線封鎖、逆探のみ使用」

 

「防空軽空母より、合流は一二〇〇とのこと」

 

原「間に合わんぞ、それでは!」

 

また同時に米軍基地からの通報も入る。

未確認機多数がレイキャビク方面に接近中とのこと。

 

敵爆撃隊は敵のレーダー基地を妨害電波で無効化、この頃ではレーダーに対する電波妨害は当たり前になっていた。

また爆撃隊の様子にも変化があった……

 

日本武尊

 

「米軍が迎撃戦闘に入りました」

 

「電探基地との通信途絶……」

 

前原「⁈」

 

大石「迎撃機はどうした…⁉︎」

 

 

レイキャビク港では、米戦闘機の必死の抵抗も虚しく、ただの3機しか落とせなかった。それを尻目に爆撃隊は()()()()()と共にイーサフィヨルズへと向かった。

 

「米独共に戦闘機をぶつけ合い、派手にやり合ってる様子です」

 

大石「爆撃機に護衛機だと…⁈」

 

みほ「?…護衛なんていても当たり前なんじゃ?」

 

まほ「いや、そこじゃないんだみほ……!」

 

大石「!航空参謀、爆撃機は欧州から来たのだったな?」

 

「はっ第三帝国は、トロンヘイムからです」

 

大石「第三帝国に、欧州本土とここを往復できる戦闘機はあったかな?」

 

「空中給油…いや、潜水空母か…?」

 

大石「そうかな…?」

 

原「航空参謀、頭を働かせろ。艦載機だ‼︎」

 

「艦載機⁈とすると、近くに空母機動艦隊が…⁉︎」

 

前原・みほ「「‼︎」」

 

原「戦闘機の来襲方向を調べさせろ」

 

「索敵機を発進させますか…?」

 

みほ「前原さん、もしかして……」

 

前原「あぁ…ありうる」

 

二人はある確信を得ると、前原が大石に耳打ちする。

 

前原「長官…三日程前北緯六十度付近にて、艦籍不明の音源を多数探知したのですが、もしや…」

 

大石「うん…敵は南にありか……第三帝国も考えたな。我々はこのまま敵機動部隊の索敵に当たる、イーサ湾の防空は空中指揮管制機に任せる」

 

原「はっ」

 

「陸上基地にいる光武隊も出します」

 

大石「防空軽空母に索敵機を出させろ、対空・対水中砲戦用意!」

 

大石の司令を受けた基地防空隊の噴式蒼莱は全力出撃をする。

中隊は管制機と合流し。泊地上空一万で敵を待ち構える。

 

 

爆撃隊の方は、イーサまで後少しまで迫っておりレイキャビク同様にレーダー爆撃をしようとしたが妨害電波を受け、やむなく直接照準に変更し高度を落とす、果たして彼らが見た湾の様子は……

 

クラウス「いない…艦隊がいない……⁉︎」

 

視界に広がっていたのは間抜けの殻と化したイーサ湾であった。

そうこうしている内に敵の対空砲が始まり、早速2機がやられた。

 

「司令、爆撃を続行しますか…中止しますか⁉︎まだ港湾施設を爆撃できますが…」

 

クラウス「…失敗だ……大失敗だ……‼︎」

 

「司令…決断を‼︎」

 

クラウス「俺は……銃殺になるかもしれん…‼︎」

 

「‼︎…全機爆撃せよ、直ちに離脱!」

 

クラウスがもはやまともに指揮が取れないと悟った副官が爆撃を命じ、各機は投弾するが、指示が遅れた為かタイミングも目標もバラバラになりまともに爆撃すら出来なかった。

 

「投弾後、全機予定のコースで退避する!よろしいですな司令…⁈」

 

クラウス「あぁ……」

 

彼はもう自分の身に起こる事に恐怖し、返事しかほぼできなくなっていた。

爆撃隊は6機がやられ3機がなんとか後続している状態だった。

 

 

 

退避する爆撃隊を捉えた管制機は、陸上基地から上がった迎撃の光武改(F22ラプター)の部隊に先回りを指示。

 

迎撃隊

 

『百舌一番、これより発射点まで上昇』

 

迎撃隊は敵に悟られぬまま一万五千まで上昇する。

 

『弾倉開け、発射ぁ‼︎』

 

機体底部弾倉、及び主翼に取り付けられた二つの弾倉(外観:8AAM)を開きミサイルが発射される。

ミサイルは一定距離を進むと後部が切り離され、弾頭部からパラシュートが出た状態となった。

これが対爆撃機用空中機雷 空雷である。

 

空雷はそのままゆっくりと落下しながら爆撃隊前方上空に展開される。

 

そして爆撃隊がその真下に差し掛かった時、弾頭部の赤外線センサーが敵機を捉える‼︎

1.5秒点火のロケットブースターが起動した弾頭部は、制御フィンに誘導されつつ敵機を目指す。

 

空雷が炸裂した機は次々に落とされ、クラウスもその犠牲者となった。それでも空雷の雨を掻い潜る機体もいたが、生き残りにはさらに行手で待ち構えていた噴式蒼莱が襲い掛かる‼︎

 

二重三重の罠が独重爆隊を襲う。

 

 

日本武尊にも独重爆隊壊滅の報は届く。

 

「四、五機ほどが損傷を受けつつ、逃走した模様」

 

大石「次は我々の番だ」

 

「敵機多数接近‼︎」

 

まほ「来ました…」

 

大石「あぁ…‼︎」

 

前衛には駆逐艦弦月がおり、対空戦闘に入るが……

間も無く、黒煙が前方で上がると同時に弦月からの通信が途絶える。

 

大石「‼︎……」

 

まほ「っ……‼︎」

 

みほ「そんな…‼︎」

 

前原「……」

 

原「…距離九千、間も無く対空ロ号弾の射程に入ります」

 

富森「一、二番主砲、電探と連動、左舷十一時方向に…!」

 

前部51cm三連装砲二基六門が天を睨む。

敵機も日本武尊を捉え、接近する。

 

散布域・信管などが終わり発射態勢が整う。

 

富森「長官、いつでもどうぞ!」

 

大石「弦月の仇を討つ!主砲対空ロ号弾、ってぇぇい‼︎」

 

号令と共に主砲が唸り、振動が脳へ響き、爆炎が広がる。

 

前原「おぉ…!」

 

みほ「凄い…‼︎」

 

初めて見るロ号弾の威力がどれほどか前原は双眼鏡で確認しようとしたが大石に止められる。

 

大石「双眼鏡はやめろ!目をやられるぞ!」

 

前原「はっ?」

 

まほ「みほ、これを」

 

みほ「えっ?」

 

彼女の手にはサングラスが載せられており、それを手に取る。

 

みほ「なんでサングラスなんか…」

 

まほ「いいから早く…!」

 

言われるがまま、みほはサングラスをかけ、前原も大石から受け取る。

 

刹那、殺人気化弾が炸裂し、辺りは眩い閃光に包まれる。

 

前原「うぉっ…‼︎」

 

みほ「きゃっ⁉︎」

 

まほ「うっ……!」

 

大石「おぉ……!」

 

 

閃光が収まると空中から、つい数秒前まで敵機だったものが海上に落下・散乱した。

 

 

前原「噂には聞いていましたが、凄まじいものですな…」

 

みほ「これが…対空ロ号弾……」

 

大石「所詮、大量破壊兵器だ」

 

まほ「無惨なものよ……」

 

直後、偵察機から敵機動艦隊発見の報が入る。

 

前原「居ましたね」

 

大石「うむ、航空攻撃準備せよ」

 

みほ「日本武尊は…?」

 

まほ「無論、突っ込むわ。みほ、大石さんの戦い方その目で見ていってくれ」

 

みほ「うん……!」

 

大石「前原少将、みほ君、ここからが我々旭日艦隊の戦いだ」

 

前原「はっ!見させていただきます…!」

 

 

 

前原一征、そして西住みほは、図らずも恩師大石蔵良・姉西住まほの戦いを目の当たりににするのだった。

この事に天が含ませた意味は大きく、また深いものがあったが……それを知る者はこの時点では居なかった。

 

マイントイフェルの仕掛けた一手は失敗したのか?

北の海を沸き立たせるが如き、一大海戦が迫っていた!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第13話 亀さん北進します! 〜終〜 次回へ続く




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